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第35話 パーティーという小さい世界 in 異世界

お待たせしました!

よろしくお願いします!(´ω`)


※後半の一部を修正しました。

41階層からは暑いじゃなくて、寒いでしたm(__)m

 


 眠たい目を擦りながら、俺は詩葉さんと街中を歩いていた。

 目的は主に食料の補給と素材を売って資金調達。まずは、資金調達からする為にギルドへと来ていた。



「昨日の三人はちゃんと連れて行かれたのかしら?」

「入口には居ないし……大丈夫じゃない?」



 朝の内にギルドの誰かが連れていってくれたのか、はたまたそれよりも先に目覚めて逃げ出したのか……ま、どちらにせよどうでも良いことである。

 闇組織の人間が出てきたとしても、まずはあの三人が粛清の対象であろう。エルフを持ち逃げしたらしいし。



「じゃあ、換金してくるわね」

「俺はクエストでも見ておくよ」



 別に受注もしないけど、見るだけ見ておく。素材集めや人探し……いろいろとあるのは冒険者が便利屋に近いからだろうな。

 特に面白そうなクエストが無いと思った時に、不意に足に何かが巻き付いた。子供だ。子供が何故か俺の足を強く抱き締めている。

 真上からだから微妙だが、よく見れば見覚えのありそうな子だった。その子が顔を上げた時、やっぱりか――そう思った。



「…………ミミちゃん」

「……んぅ」



 ちょっと……というか、今にも泣き出しそうな顔を見せている。今泣かれたら場所的にも非常に困る。事情聴取まっしぐらだな。



「ミミちゃん、こんにちは。また会えたね」

「お兄ちゃん……怒ってる? ミミ、嫌い?」

「大丈夫。腕だってもう治ってるからね」



 安心させる様に、頭を撫でながら出来るだけ落ち着いて語りかける。正直に言うと、あの一件で帝国が嫌いになった所はあるが、割りと物騒なこの国で、子供が迷子になったら親は慌てるだろう事くらいは理解できる。

 だから、国は好きじゃないが別にもう怒ってはいない。ましてや、ミミちゃんは悪くないのだから嫌いになる理由は特に無い。



「これ……」



 ミミちゃんが肩掛けポーチから紙で綺麗に包まれた物を取り出した紙越しでもうっすらと臭いがする。これは……薬の臭いだ。



「お薬?」

「そう……近くのお薬屋さんに……教えて貰った」

「ミミちゃんが作ったの!? 凄いじゃん! 将来は凄い薬師になっちゃうかもね」



 まさかの手作り。手作り薬をいただいてしまった。もう火傷は治っているが、これはまた別の時に使わせて貰おうかな。



「えへへ……良かった……渡せて」

「ありがとう、ミミちゃん」



 いつの間にかミミちゃんの泣きそうだった顔に笑みが浮かんでいた。ミミちゃんも申し訳無い気持ちでいっぱいだったのかもしれない。それが、薬を渡す事で軽減されるのなら、それはそれで良いと思う。気にしすぎはあまりよくないからな。



「ミミちゃん、今日もお母さんと?」

「…………一人」



 おそらく、ギルドの中にあるテーブルに座ってるあのローブが……もしかすると母親かもな。ミミちゃんが来た方向もあっちからだ。

 俺がミミちゃんの母親に怒るかもしれないと、考えたのかもしれない。母親なら……というか、攻撃してきたのならせめて謝って欲しいと思ったりするが、期待はしていない。そういう国だと諦めたと言い換えてもいい。

 だから、ミミちゃんが庇うというのなら、それを尊重してあげよう。



「そう……お迎えには来てくれるの?」

「……ん。そのうち……」

「そっか、ごめんねミミちゃん。お兄ちゃんの仲間が戻って来たからそろそろ行かないと」



 詩葉さんがギルドの受付からこちらに(いぶか)しみながらやって来るのが分かる。まるで小さい子を誘拐しようとしている人物を見ている目だ。これぞ疑ってる目って感じだな。



「お兄ちゃん……また会える?」

「世界は広いから分からないけど……ミミちゃんが凄い薬師になったら、お世話になるかもしれないね」

「うん! なる、なるから絶対来てね? 約束……よ?」



 最後に薬のお礼をして、俺はギルドの外へ向かった。いつまでも居たんじゃ、ミミちゃんの嘘が露見してしまうだろうから。けして、詩葉さんが怖かった訳じゃない。これは本当だ。ギルドに居ようが居まいが、変わらないからな。



「いたたたたっ!! 無言はやめて! 無言はやめて!」



 相手は五歳程度の女の子だ。気にしすぎだと思うが、女性の事は簡単に理解出来ない。だからこの皮膚の痛みを受け入れるしか、俺に出来る事はなかった。



 ◇◇◇



 次に向かったのは食材を取り扱っている店が建ち並んでいる通り。次のダンジョンアタックで最下層まで攻略をするらしく、けっこうな量を買い込んでいた。



「すぐ(ぬる)くなるのと冷えるのを考えないといけないわよね……一縷君、何かアイデアはあるかしら?」

「アイスと肉まんかなぁ……」

「いつもの、肉野菜炒めで良いわね。ダンジョンだし」



 何故聞いたし……という視線を送るものの、見つめ返されると恥ずかしさが上回って俺から逸らしてしまった。

 結局は、前回と同じ食材を前回よりも多く買うことで買い物は終了だ。レーロが加わった分、食費も上がってしまったがその分はちゃんと働いて貰わないとな。



「他にどこか寄るところある?」

「そう……ね、糸と針が欲しいわ。一縷くんの服にも小さい穴が空いてるじゃない?」



 目立つ程ではないが、小さい穴が空いている箇所がある。一ヵ所じゃなく数ヵ所もだ。直してくれるなら早い内が良いだろうし、お願いしたいかな?



「じゃあ、売ってる所に寄って帰ろう……場所は知らないけど」

「服飾店で布も買わないとね。まだ時間はあるし、少しだけ遠回りして行きましょうか」



 明日にはきっとダンジョンだろう。宿で過ごさないといけない皆には悪いが、休日というのを謳歌させて貰おう。詩葉さんと二人だし、明日の準備とはいえ、デートと言っても過言ではないな。

 他の皆には甘い物でも買っていけば、退屈も少しは晴れるだろうし、それで大丈夫だろう。



 ◇◇



「あ、私……あんまり加工品とか駄目なんですけーど?」

「……よし、皆で切り分けるぞー!」

「嘘です! 大丈夫です! 全然食べるんで!」



 街でアップルパイ的なのが売ってあったから買ってきたのだが、開封そうそうレーロが何か言い出した。エルフの生活習慣的に、素材そのものの味を楽しむ傾向があるのだろう。エルフがリンゴを使ったパイよりは、そのものを好むのは……まぁ、想像できる。

 だが、買ってきちゃったから仕方ないだろ? 想像は出来るが、レーロを中心にお土産を選んだ訳じゃないのだから。



「仕方ない……今度から木の実でも買ってきてやるよ」

「あ、取れ立ての瑞々(みずみず)しい物をお願いするんですけど……あいたっ!?」



 瑞々しい物だなんて贅沢な。そんな高い果物を買うくらいなら謎肉を卒業するっての。それを今度から体験させる必要があるな。させるというか、一緒に居れば勝手にするんだけど。

 昼飯はジャーキーみたいな肉と、たいして甘くも無い果実。冒険者なんてそんなものだ。

 レーロの今までの食生活は知らないが、俺達のルールで今後はやって貰わなければならない。まぁ、前の連れ回されて居る時よりはマシだと思うけどな。



「レーロ、新鮮な物を“誤魔化す為”に……調理をするんだぞ」

「一縷君、“より美味しくする為”よ。まるで私が材料をケチっているみたいな事は言わないで欲しいわね」

「えぇー!? 肌荒れちゃわないかなぁ……」


「ニキビやシミが出来たら俺の『肌のシミ除去(アンチエイジング)』で何とか……」



 ――視線を感じた。

 一人、二人……いや、三人の視線。リコルはアップルパイをモグモグしている。エルフはパイを食べるかどうかを悩んでいる。この二人を除く三人。詩葉さん、ルフィス、聖女。年頃の女の子がこちらを見ている。

 場合が場合なら照れるかも知れないが、視線の種類が違う。その視線は殺伐とした、殺気を含むものであった。



(ま、まさか! 伸びた(ひげ)を俺が毎朝魔法で手入れしている事が!? ……違うか。“何故言わなかったのか”という事か)



 何なら髪のベタつきだって取ろう思えば取れる。まぁ、自分の髪を見る機会がダンジョンに居ると無いからそれに気付くまで時間がかかった。

 言うなれば、俺も肌にニキビが出来た時にやってみたら出来ただけで……それはついこの前の事である。隠していた訳では無いのだ。断じて、それだけは違うと断言させて貰おう。



「いや、ホント……」

「「「ホント?」」」


「お悩みのある方は一列にお並び下さい……」



 きっと言い訳なんて通用しない。それに、女の子側からしてみれば、『いつから出来た』より『今出来る』の方が重要なのだろう。そう、思ったね。


 それから髪で隠されていたニキビや、腕や足の手入れ。おおよそ他人の目に触れる場所を綺麗にさせられた。

 三者三様では無く、便利な手入れ道具を見付けたという三者一様の顔をしていた。自分の近くに居る女の子が可愛くなる分には、全然まったく一向に構わないのだが……コキ使われたのにも関わらず、報酬がアップルパイ的な物を大きめに食べて良いというのだけなのは、割りに合わないと思う。

 お腹か内腿(うちもも)を見れると思った、この純粋な好奇心を返して欲しいね。というか、見せてよ! 手入れするから!



「スベスベですぅ!」

「一縷さんにご加護がありますように~」

「ちょっと、一縷君。ちなみにだけど、日焼け後も消せたりするのかしら?」



 リコルも将来的には美容に気を使う様になるのだろうか……と考えたが、モチモチモチ肌のリコルには関係ないなとそこで思考はストップした。

 金に困ったら、金策として世の女性から巻き上げるのも良い手かも知れないな。別に消しただけで、もう出て来ない訳じゃない。一生稼げるかもしれないな。



「日焼けは……難しいかも? 分かんないけど。じゃあ、このアップルパイ貰うな! もう部屋に戻るんで」


 翌日から俺の仕事に肌の手入れが加わったのは当然の流れ。逆らう事は不可能である。まぁ、綺麗になる分には良いと思う。



 ◇◇◇



 翌日、まだ早朝だが目が覚めた。

 起きると体力も無事に回復していて、体調も良い。

 詩葉さんが呼びに来て、みんなで朝ごはんにする。宿の人が早起きで助かった……もちろん、みんなと言ってもレーロは部屋でお留守番だ。エルフの存在はバレるとヤバイからだ。だから、今日の移動も乗り合いの馬車は使わずに徒歩で行く事になっていた。



「今日はダンジョンをさっさと攻略するからその予定で。と言っても……リコル、聖女、疲れた時は遠慮無く言いなさいね」

「うん!」

「はい~」



 リコルも体力はついてきたし、戦闘も挟むからキツいのは最初から三十階層あたりまでだろう。疲れたとしたら詩葉さんが運んでくれるだろうし、俺とルフィスは戦闘にだけ注意しておけば大丈夫だな。今は望遠レンズという遠距離からの不意討ち攻撃も出来るから楽になると思うけど。



「一縷君は移動中例のやつを消しておいてね。ダンジョンの中でも最初は見えなくした方が良いでしょうね」

「中層ではルフィスを探してるから下層に行くまでって感じか? キツくない? 魔力的に……」



 魔力はそれほど減らないが、長時間となるといつ魔力が切れるか分からない。というかほぼ体に怠さを感じたら魔法を解除するだろう。近くに誰もいなければ、そこからしばらくはローブで顔や耳を隠しながらでいいが、変なタイミングだと最悪は追いかけ回される事になりかねない。



「まぁ、どうせ下に逃げれば追いかけられないわよ。それに、どうせこの街もそろそろ()つのだから」

「嫌な予感しかしないけど……やらない訳にはいかないしな。ま、なるようになる……か」



 嫌な予感というのは的中する。いや、的中することをどこかで感じているから嫌な予感と言うのかもしれない。


「ぐぅ~……」


 それは、二十階層の中盤に辿り着いた時。魔力を回復する薬を飲んで腹が減っている俺のお腹が鳴るのならまだ分かる。

 だが、よりによって“勇者達のいる階層の勇者達の居る所”でお腹を鳴らした者が居た。レーロである。



「へっくしゅん! あ、くしゃみもしちゃったんですけど!」



 そのタイミングで怠さがやって来て、もう少し頑張る事も出来たのだが……気が抜けて俺も魔法を解除した。



「お前ら!! 何者だ!? いま、どっから!?」



 ですよねー……ははっ。



「あいたっ!?」

「バカ! レーロ!」

「私じゃないですよぉ~、私のお腹が悪いんで、頭を叩かないで欲しいんですすけどぉ~。うぇ~ん、リコルちゃ~ん」


「あんまり、名前は出して欲しく無かったかなーって……」



 落ち着いているな、流石はリコルだ。どこぞの馬鹿エルフよりもよっぽどしっかりしている。



「おーい! 皆きてくれぇーー!! とりあえず大人しくしろよ、お前ら……」



 誰が誰かは知らないが、帝国勇者に取り囲まれてしまった……。

 皆はローブを深めに被っているし、俺や詩葉さんは眼帯というか布を巻いているからとりあえずは大丈夫なはず。


(んー、エルフをこいつらに預けれ……駄目か。帝国の犬にされるのがオチだろうな。アホのくせに敵に回すと厄介だし)



「どうする?」

「とりあえず、壁を作り出して私達を囲うわ。一縷君の魔力回復と、皆の体力を回復させましょう」

「そろそろお腹も空いたし、ちょうど良いかもな」



 詩葉さんがパチンッと、指を鳴らす。すると地面から壁が出現して俺達は壁の中へと自らを閉じ込める。高さは四メートルくらいの壁で天井には達していない……勇者達の驚きの反応が聞こえてくるのが少しだけ面白いな。



 ◇



「さて、休憩にしましょうか……あとレーロ、貴女は正座よ。リコル、皆に食べ物を」

「はーい! レーロ姉……大事なのは同じ失敗をしないことだよ?」



 外の喧騒、壁を攻撃している音も聞こえてくるが、中は割りと落ち着いている。

 レーロは説教。まぁ、これは詩葉さんに任せておこうか。この後の対応……これも詩葉さんに任せておこう。



「はい、お兄ちゃん!」

「ありがとう。ちょっと寝るから、何かあったら起こしてくれ」

「うん!」



 寝ると言っても、目を閉じて休んでおくだけ。三十分程して怠さが無くなってきた頃に、それが分かっていたかの様に詩葉さんの説教も終わって……次の行動に対する動きの話し合いになった。



「案がある人は言ってちょうだい」


「うーん……今は音も()みましたけど……たぶん、まだ居ますし、力ずくは辞めといた方がいいかと」

「祈れば良いと思うのですよぉ~」

「足がぁ……動けないんですけどっ……!!」



 ルフィスの言う力ずくは確かに辞めておいた方が無難だろうな。馬車を使っている以上、検問が厳しくなるのは避けたい。流石に馬まで消して行くのは難しい。



「また、見えなくなるのは? それか詩葉姉の催眠で……」

「聖女とレーロは休んでて良いわよ! さ……リコル、ルフィス。作戦を練りましょうか。一縷君も起きたなら加わりなさいな」



 俺は体を起こしてとりあえず賢いリコルの頭を撫でておく。柔軟な発想は若い子の方が出るものだな。



「えいっ」

「んにゃぁ~~~~~~っ!!」



 レーロの足を突っつくという悪魔的な攻撃をした所で作戦を詰め始めた。と言っても、ほとんどリコルの案だけで十分(じゅうぶん)だけどな。言うなら今のレーロに声を出させたのだって、俺の思い描く作戦の一つだ。



「俺の魔力的に余り猶予は無いから、出来れば動かない方向で願いたいかな。ちょっと移動するくらいなら仕方ないけど」

「そう……なら、作戦はこうね。一、その場に居ないと思わせる。二、石を投げてその音の方に居ると思わせる。三、ダッシュで逃げる。その二は催眠で何とかするわ。自分で言っててあれだけど凶悪ね、催眠が絡むと犯罪臭いわ」



 うむうむ。見えない敵から催眠をくらう勇者。というか、勇者じゃなくても防ぎようの無い攻撃。



「じゃあ、作戦その二を考えておかない? 予備的な作戦だから、強引にダッシュからの詩葉さんが壁を作り出して完全勝利的な」

「それで良いんじゃないかしら? レーロ、足の痺れは取れたかしら?」

「もうちょっと……もうちょっとなんですけど、エルフは痺れに弱いんだけど!?」



 そんな弱点がエルフに? いや、あれだな。レーロが勝手に言ってるだけだろうな。

 さて、足が治ったら行きますかね。



 ◇



「そーろーそーろー、転移してー帰りましょーかー?」

「そーだねー! 囲まれてるもんねー、早く帰ろー」


「「よし!」」



 何故かルフィスとリコルが残念そうに俺と詩葉さんを見てくるが、俺等の演技力に何か言いたい事でもあるのだろうか? 褒め言葉だろうが、後にして貰うしかない。



「『消音(みゅーと)』『盲点に在る者(ゴーストモード)』」



 俺は詩葉さんと繋いでいる手を二回握る。背中にはレーロ、左手にはルフィス。ルフィスの背中にリコルで詩葉さんの背中に聖女で背中組も俺の一部を掴んでいるからぎゅうぎゅうだ。

 ゆっくりと壁が地面へと戻っていく。俺達は壁際で佇んで、勇者達の反応を見る。



「おい、誰もいねーじゃねーか!?」

「お前らに壊せねぇ壁を俺達冒険者が壊せる訳ねーしよ」


 通したのか、冒険者達を。封じていたのに。まぁ……それでもやることは変わらない。

 詩葉さんから手を二回握られた。催眠の準備は終わったようだ。俺はルフィスの手に合図として一回握る。



 ――コンッ



 離れた所で音が鳴る。冒険者、勇者達が一斉にそちらを向く光景は異様で、下手なホラーより怖い。

 だが、目の前の人達が移動し始めたのを見ると作戦の成功を嬉しく思う。さて、行きますかね。


 俺達は反対側へ進み、曲がり角を曲がってからは姿を現して下の階層へと向かう。



「へへ、やったな」

「皆さん追われてる……もしかしてとんでもない人達です?」



 間違っちゃいないけど、エルフ程じゃないさ。

 追っ手を確認しながら進んでいるが、今のところ問題は無いっぽい。大丈夫みたいだな。



「問題は無いみたいですね! 一縷さん!」

「そうだな……いや、そうだと良かったと言うべきかなぁ」



 ルフィスの指示通りに進んできたお陰で、おそらく最短距離で来たはずである。念のためかどうかはしらないが、あの状況から俺達が抜け出してくると予想したのだろうか? 変な奴が居たものだな。



「大丈夫。ここは私一人だから。一縷なんでしょ?」

「正解だ。言い訳をさせて貰うぞ、お前達が封鎖しているからこんなやり方をしたんだからな!」



 俺だけフードを取って有加と対面する。本当に周囲には誰も居ないみたいで、有加が一人ここに居るみたいだ。

 もし、俺達じゃなく危ない奴等だったら格好の餌食になっていただろう。せめて二人くらいで行動した方が良いな。



「それは……ごめんね。でも、私達も早く強くならないといけない……」

「ちょっと良いかしら?」



 詩葉さんが出撃するみたいですよ?

 じゃない、いざとなったら止めないと何を言い出すか分からない。気をつけなければ。



「貴女達、この世界に来て四ヶ月。今、レベルはどのくらいなのかしら?」

「え……あ、私はあれから頑張って三十くらいに上がりましたけど」

「はんっ」



 詩葉さんすっごい……凄い嫌みな女子生徒を演出してらっしゃる。これはやられた方はイラッとするだろうな。



「で、では貴女は! いえ……そもそも貴女は誰なんですか!?」

「自分の情報をペラペラ話す訳無いじゃない。甘いのよ。でもそうね、一人だけここに居たという多少なりの知恵が回る事に免じて、一つだけ教えてあげましょう。一縷君、んっ……」


「何でだよ!?」

「……痛いじゃない」



 するわけ無いでしょうよ、こんな状況で! まったく、詩葉さんがボケに回るなんて珍しい。やはり、俺が話してさっさと通るのが早いかな。



「有加、今のところお前達は弱い。それは間違いない。死ぬ気で特訓しているのか気になるレベルだな。俺みたいに自由が無いのも分かるけど、槍を振る時間は同じはずだろ? ま、そういう事だ。どいてくれ」

「いや、どういう事よ!? 要約するとお前は弱いって言ってるだけじゃない!!」



 しまった……そんな事を言いたい訳じゃ無かったのに。言っておきたい事とどいて欲しい気持ちが混ざってしまった。

 でも、正直なところ……この先レベルが上がりづらくなる事を考えると、やはり少し心配だ。俺の方がレベルが上がりやすいのかも知れないが、移動時間でけっこう無駄にしている。その間は技術を磨いてはいたけれど。



「有加、ちょっと槍を構えてくれ」

「な、何よ……まさか」

「強い人と戦うと強くなる! 俺はそうしてきたから有加にも分けてあげる。一回だけだから集中してくれよ」



 皆には悪いが少しだけ時間を貰おう。せめて有加を鍛えておかないと……あっけなく死なれるのが一番やりきれない。




 ◇◇◇



「はぁ……はぁ……」

「有加、俺達は元々ただの一般人だし、この世界を救ったからといって何かを得られるとは限らない。だから……強い人を倒して倒して倒して、強くなって自分を守れるようにはなって欲しい」

「一縷、最後に……」



 聞きたい事だろうか? 槍の強くなる秘訣? 戦う時に心掛けてる事? 今なら何でも答えてあげる。有加が強くなる為なら手を貸そう。



「パーティーメンバーに女の子しか居ないのは何でかな? ローブで隠してても分かるのよ?」

「皆、行くぞ! じゃあな有加! 魔王戦まで生き残れよ! 絶対だぞ! ちゃんと強くなれよ! 次は王国に行くからよろしく!」


「ちょ……答えなさいよーー! 一縷ぅぅぅぅぅぅ!! ひかりによろしく伝えておいてぇぇぇぇ!!」



 さらば、有加。次に会うときまでに強くなって……いるかなぁ? けっこう精神的に弱い所があるしな。

 いや、幼なじみだからといって全部を面倒見れる訳じゃない。俺だってまだギリギリなのだ。詩葉さんの足下が見えてきた程度。俺も頑張るからお前も頑張れとしか言えない。ひかりへの伝言は任せておけ。


 俺達は下へ下へと進み、三十五階層……前と同じボス部屋ゾーンへと辿り着いた。



「ここからはサクサク行くわよ」

「ボスが続くらしいからな……ルフィス、交代でいくか?」

「がってんですよ! 私が先に行きますからねっ!」



 ボスを倒せば休憩出来る。一戦一戦、調子や気合いを整えられるのはありがたいな。ボスとの連戦は流石に疲れるからな。有加にあれだけ言った以上、次に会うときに弱いと思われるんじゃ最悪だしな。



 一つ目、大型狼、百を越える木の魔物、鋭い鉤爪を持つ巨大鳥。硬い鱗を持つ飛竜。

 あっさりといく時もあれば、時間がかかる時もあった。だが、俺とルフィスは自分の番をしっかりとやり遂げた。誰の助けも借りずに、自分の力を信じて。

 無論、傷を負う事もあって、リコルとかは凄く心配してくれたけど、必要な行動の結果だから仕方ない。痛みを知らないと強くはなれないと思うしな。


 四十一階層からはめちゃくちゃ寒いエリアに変わって、ボス部屋じゃなく、ダンジョンに戻っていた。



「きっとあれね……」

「だろうなぁ、四十五階層まではこんな感じで……五十階のラスボスまではまたボス部屋の連続か。この辺りからはモンスターのレベル的にもより気をつけないと」



 レベルはまだ俺の方が上かも知れないが、そこそこのレベルの魔物が数体集まると厄介。というか、苦戦する。遠距離から倒してみたり、観察して動きを確かめないと……油断とかしてる暇なさそうだな。



「そんなに鍛えてどうするか……気になるんですけど?」


「エルフの森を……冗談よ。ただ、魔王を倒してついでに王族に打撃を与えられたら私としては上々かしら?」

「また物騒な……。俺は死ななければとりあえずはそれで良いかな? 仮に魔王が暴れたとして、人族の領地が無くなっても、寿命まで死ななければとりあえず」


「いや、一縷さんも割りと凄い事言ってますよ……?」



 よくよく考えてはみたのだが、俺達を鍛えるよりも戦える国民を一人でも増やした方が結果的には良さそうだと思っている。既に戦える者はより強く。新しい武器の開発なんかも有効だろう。

 まぁ、今更準備しても遅い事くらいは俺も分かっているし口には出さない。でも、異世界に連れて来られて死のリスクを背負って強くなり、死のリスクを背負って魔王と戦うのは俺達に頼り過ぎだろう。

 魔王一人が復活したからって全人類を滅ぼすとは限らない……むしろ、生かした方が世界の頂点という位置に立てる。魔族に賢い副官とか居れば良いのだがな。

 と、ここまで思考を巡らせていろいろと考えてみたものの、俺にチンピラが如く魔族の奴が絡んで来たらどうだろうと思って、今までの考えを捨てた。



「一 生 対 立。それが一番マシかもな」

「……悪くは無いわね」

「まぁ、エルフに害がなければどうでも良いですけど?」


「リコルちゃん、対立に共感出来ちゃうお姉ちゃんをビンタして?」

「私も……今が一番マシなのかと思うと共感できちゃう。お兄ちゃん、お姉ちゃん達が居るからだけど」



 確かに、このパーティーで行動するならどっちでも良いかもしれない。皆、家族が居ないからか、このパーティーの事以外は興味が薄いのかもな。



「ま、とりあえず魔王が話の分かる奴なら良いんだけどな。世界を半分くれるかもしれない。獣人を含めたら三分割?」

「夢物語はそろそろ終わりにして、行きましょうか」



 俺達は凍える身体を(さす)りながら、最下層へ向けてラストスパートを掛け始めた。








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