表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/46

第34話 エルフと名前と宝箱だよ in 異世界

お待たせしました!

よろしくお願いします!(´ω`)

春は出会いと別れの季節……すいません、言ってみただけです(作者の別の作品と出会って欲しい感)

 


「どこぉぉ!? ここ、どこなのぉ!? 助けてよ、うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」



 エルフが泣き止まない。ルフィスが近付くと離れ、攻撃はしてこないものの、いつ何をやらかすか分からないという危険な状態だ。

 俺と詩葉さんもこのエルフをどうするかを考えてはいるが、結論はまだでない。

 下手をすれば、人族がエルフに手を出した事が明るみになり……魔王討伐どころか、滅ぼされる未来しか無いだろう。



「仮にこのままエルフを森に逃がしても攻め込まれる可能性はあるし、一緒に居ても厄介事にしかならないわね……」

「このままここに居るわけにもいかないし……時限爆弾みたいな存在だな。どうにかまずは対話にまで持っていきたいが……」



 落ち着いてくれれば、まだ会話も可能だろうが……今のエルフは錯乱状態だ。時間が解決してくれるかもしれないが、他の冒険者が来ないとも限らない。



「エルフさんだ! 凄い!! 本物だぁ~」

「暑いよぉぉ……暑いよぉぉ……ん? 子供……はっ!!」

「わっ!? な、何!?」



 リコルの声が聞こえて、ルフィス達に任せていた方を見ると、エルフがリコルを捕まえている様にもみえる。

 後ろから抱きついてる可能性もあるが、首を絞める手前の状態からするに、違うのだろう。



「に、人間!! と、とり……とり……ひ……ひっ」

「エルフ、手を離すか死を選ぶか五秒で決めなさい」



 感想としては、だろうな。

 詩葉さんが殺気をエルフに向けるのも“だろうな”だし、それによってエルフが戦意を喪失して手を離すのも“だろうな”だ。


 殺気じゃ敵わないかもしれないが、視認できる範囲の遠距離攻撃なら、俺も準備していた。当然、ルフィスもだ。



「エルフのお姉ちゃん? 怖いの? そういう時はね、こうやって……お互いに手を繋ぐんだよ。そしたらね、ほらっ! 何だか落ち着いてくるでしょ?」

「ひぅ……うぅ…………うん……うん」



 リコルがエルフの頭を胸に抱いて、撫でてあげている。何だか娘の成長を見た親の気持ちになってくる。この気持ちがソレなのかは親になったことが無いから分からないが。

 エルフはまた泣き出してしまった。


 エルフが立ち直るまでの間、俺達は集まって色々と意見を出しあったが……やはり、結論は出る事が無かった。



 ◇◇◇



「…………ぅぅ」

「怖くないよ、エルフのお姉ちゃん。この人達はね、私のお姉ちゃんお兄ちゃんだから大丈夫だよっ!」



 リコルの背に隠れ……実際には隠れきれては無いのだが、エルフは泣き止むと共に、リコルは安全だと判断したのか、懐いた。

 これからの事を話し合う為にも前に出て来て欲しいとは思うが、ここまでの状態になったのは良い事だし、とりあえずはこのままだな。



「エルフ、先に言っておくけど……私達は貴女と敵対するつもりは無いわ。そこまで暇じゃないの。それを踏まえてだけど……貴女はどうしたい?」

「か、帰りたい……」


「まぁ、当然よね。でも、貴女にそのつもりが無くても、エルフを引き連れて人族を攻撃されても困る……今はね」



 魔王を倒した後に攻撃してくる分には……まぁ、拐っている以上、庇うことは出来ない。やられて怒ったらそれは、逆ギレだから。

 可能ならば、エルフを拐った奴等だけにして欲しいが……そう上手い話は無いだろう。



「し、しない……とは、言えない。エルフが居なくなるのは、だいたい人族が拐うから」

「えぇ、本当にどうしようも無いわね。私もどちらかと言えば嫌いだわ」

「同じ人間なのに……?」



 同じ人間だから。

 詩葉さんはそう言った。詩葉さんの両親はこの世界の“人”に殺されている。魔物や災害ならまだ諦めがついたかもしれない。

 でも、この世界の人に殺されている。この世界に来てから時代が違うとはいえ、人に対してずっと心の底に黒い感情が渦巻いていたのだろう。それは今も変わらずに。



「全員とは言わないわ。好きな人もいる、嫌いな人もいる、興味が無い人もいる……そういう事よ」

「人は不思議ね。魔族も獣人も。エルフは皆が同胞。好き嫌いはあるけど……争うまでには発展しない。おかしいのはどっちなの?」


「あぁ、なるほど。エルフがこの世界の争いに興味無いのは、そもそも違うんだな。成長の過程というか、産まれた時にほぼ完成されているから……」



 美しい見た目、卓越した魔法の技術、自然との共存、長命、およそ敵対する者が居ない環境。

 競うという事があまり無いだろう。だから他の種族がおかしく見える。

 おそらく、これから先も大きく変わる事は無いだろう。エルフはエルフだし、人は人として最小限の関わりで。



「とりあえず、そうね。うん……これは話しておかないといけない事ね。エルフに話しておかないといけない事があるわ。それと聖女にも……私と一縷くんの存在について」



 詩葉さんがポツポツと話始めた。


 特殊な封印をしていた魔王が復活する事。

 人族が勇者召喚を行った事。それが自分達であること。

 神スフィアから頼まれた事。

 自分達が死なないのが優先な事。



 神スフィアから頼まれていたルフィスの保護は、継続中だが完了していると言っても大丈夫だ。とりあえず、強い能力を貰う代わりのお願いは達成しているだろう。

 後は魔王を倒すだけだが……そういえば魔王について聞いたっけ? いや、聞いた様な気もするが……聞いていない気もする。



「……という感じよ。だから今、人族を減らされる訳にはいかないの。戦力にはなるから」

「勇者……たしか、お婆ちゃんが百年前に戦った事があるって……まさか!?」

「それなら私かもしれないわね。ちょっと素材を頂こうと思っただけなのに……まぁ、力ずくで奪ったのだけどね」



 おや……? まさかだとは思うけど、エルフが他種族と関わらない気持ちをより強くさせたのは詩葉さんなのでは?



「詩葉さん……あ、いや。前にも聞いたかもだけど……魔王について聞いていいかな? リーガルという名前しか覚えてなくて」


「えぇ……魔王ね。前回は私が特殊な封印をしたのは覚えているかしら?」

「その話は覚えてるよ」



 あれはまだ召喚された国に居て槍の練習をした時だ。詩葉さんの過去を聞いて、イカした一言でも……と思ったが、思った以上に重い話だった時。その時も特殊な封印と言っていた気がするが……いったい何だろうか?



「まず前提として、魔王とは概念であり思念体。魔王の称号が必ず一人に宿るの」

「……概念? 特定の誰かじゃなくて、『魔王』という称号が宿ったら強制的に?」

「そう。強い者が下を従えるのには変わり無いわ。『魔王』という称号が付いた時点で、その者は魔王としての力を得る。そこは『勇者』と同じね」



 なるほど。話が見えてきた。詩葉さんが封印したのは魔王リーガルその体では無くて、リーガルに付いていた『魔王』という称号なのだろう。



「それって……個体差とかあるの? こっちサイドで考えると、兵士長が『勇者』になるのと、農夫のお爺さんが『勇者』になるのじゃ違うと思うし」


「変わるでしょうね。だから誰に称号が付くのかで変わってくる……火に耐性がある者に付いたり、物理耐性のある者についたら戦い方にも影響があるわ」



 理知的な者につけば戦略が、戦闘好きな者につけば個々の力を。

 これは大変だ。今の段階ではどうしようも無い事だ。願えるなら争いの嫌いな子……でも、そんな子を討伐と考えるとツラいな。

 くそっ……本当にどうしようも無いな。



「魔族である以上、魔法には強いのだろうが……出来るだけ弱い奴に願いたいな」

「そうね。それで……他の皆から聞きたい事はあるかしら?」



 詩葉さんが目配せをして周囲を伺うが、悩んでいるのか、何も聞くことが無いのか……声は上がらない。



「聞いても~よろしいですかぁ~?」



 そのままエルフの話に戻ろうかとした時に、聖女から声が掛かった。俺達も質問があるとしたら聖女では無いかと思っていた。おそらく、神スフィアの事だろう。聞かれても白く光る丸いナニかとしか答えようが無い。



「えぇ、答えられる事ならば」

「そろそろ~ご飯の時間だと思うのですが~、まだでしょうか~?」



 俺と詩葉さんは、おそらくもう二度とやる事は無いであろう……後ろにひっくり返るというコテコテの転び方をしていた。


 ――聖女……本当に他に聞くことは何も無かったのかい?



 ◇◇◇



「さて、ご飯を食べながらで良いのだけど……エルフの今後について考えていきましょうか」

「あの……あたし、レーロって言うんだけど」



 そう言えば自己紹介がまだだったと、エルフのレーロに対して一人ずつ名前を教えていった。



「詩葉よ」

「一縷だ」

「ルフィスですっ!」

「リコル!!」

「ラクラムです~」


「えっと……うた、る、リコルちゃん。ラク……すいません、一度にそんなに覚えられませけどぉ~!?」



 長命だから記憶力は良くないのだろうか? それともレーロが残念なのだろうか? きっと後者だろうな。

 というか、聖女の名前を久し振りに思い出したな。聖女呼びが普通になっていたから、仕方ないけど。



「まぁ、良いわ。レーロ、貴女の住処(すみか)はどこかしら? 仮面を使われていても記憶はあるのでしょ? ここは帝国だけど、近いのかしら?」

「えっと……シュラレスト大森林ですけど……」



 俺は当然聞いたこと無い場所だけど、この世界に住んでいる人なら知っているのだろう、そして、詩葉さんは頭を抱えている。

 その反応だけで分かる。上手くいかない事を嘆いているのだろう。周辺地図には大森林の様な場所は……たしか南の方に大雑把に描かれていた気がする。



「遠いんだよね……?」

「えぇ、この地図を見て。南の方に少し描かれているけど、この辺りから東に向けて広がる……その東の方が奥地ね。南に行きたい時は基本的に、西に進んで森を避けるルートを通るわね」



 なるほど……地図を見せて貰ったから分かる。

 移動に一ヵ月は確実にかかる距離だろうな。それくらい遠くにある。


 困ったな。レーロに構っていられない距離だ。しかも、エルミック王国からも離れる場所にある森だし。

 エルフ一人の移動速度は分からないけど、往復で半年くらいかかるとしても、魔王が復活する前にエルフ侵略が始まるかもしれない。レーロをすぐに返す訳にはいかないかな……。



「レーロ……何であんた捕まったのよ、面倒な」

「ひぃぃ……私だって森の木の実を食べていただけなんですけどぉ」



 ストレートな詩葉さんの言い方はいつも通りだ。

 それにしても、木の実を食べていたら捕まるとは……しかも仮面を付けられて戦闘人形にされていたとはなんとも可哀想だ。



「どうするんですか、詩葉さん。問題は詩葉さんにぶん投げるスタイルですが……」


「……レーロ」

「は、はぃぃ……」

「お姉ちゃん、レーロさんを怖がらせちゃダメだよっ!」



 リコルに言われたら流石の詩葉さんも改善するようで、眉間に寄ったシワを解して、再度問いかけ直した。



「レーロ、悪いけど貴女を今すぐ森に帰す訳には行かないわ。これは取引よ。貴女の無事は保証するから私達と居るか、あそこに眠らせている冒険者達の所に帰って貰うか。他の選択肢があるならそれでもいいけど、どうする?」



 一緒に居るなら、良い別れの機会が巡ってくるまではずっと居る事になるだろう。詩葉さんが保証するというのなら、俺も協力する。


 だが、拒むのであれば……冒険者達の所に戻す。捕まって貰うし、もう助けないだろう。余裕が無いからな。


 他の選択肢。自力で帰るというなら、このダンジョンを抜け、街を抜けなければならない。だが、目立つだろう。魔法を使えば逃げ切れる可能性はあるけど。



 果たしてこれが取引になっているかと言ったら、全然なっていないだろう。

 これで、拒む選択をすると言うのであれば……やはり価値観の違う種族だったとしていつか本にでもしてやろう。レーロの名を載せてな。



「た、対価は何ですか……も、もしかしてあたしに、そこの男の慰み者になれとでも言うので……あいたっ!?」

「そんな対価なんていらねーよっ!! それなら無償で守ってやるから黙ってついて来い、アホエルフ!!」



 うん。歪んだ価値観は少しずつ強制してあげないと……。危ない危ない、また詩葉さん達に余計な心配を掛ける所だった。

 このアホエルフは今後も発言には注意していかないとな……ってアレ?



「ど、どうしたの? ……詩葉さん? 連れていく方針で間違って無いんだよね?」

「はぁぁ……どうして一縷君はこう……はぁぁ」



 何か落胆されているが……断ったよね? 俺、ちゃんと断ったよね!?



 ◇◇◇



 方向性が決まったなら、動き出すのは早いのがうちのパーティーの特徴だ。

 まずは冒険者をギルド前に送る為に地上へ戻らなければならない。

 今が……たしか三十三階層。本来の予定では四十階層に向かいたい所だが、三十一階層まで戻る方が良いかもしれない。



「じゃあ、地上へと戻りますか……」

「そうね」



 ジト目がツラい……普段ならジト目もチャーミングと褒める所ではあるが、今はそんな冗談すら許して貰えそうに無い。なんで、そんなジト目をさせてしまっているか、理解できて無いからだ。いや、本当に分からんぞ……。



「えぇ……っと、あのぉ……下に進んだ方が早いかと思うんだけど」

「レーロさん? レーロ? うーん……レロレロ?」

「あっ、レーロで良いですけど?」



 そうか。なら、レーロと呼ばせて貰おう。たぶん、レーロの方が歳上だろうけど、気にしない方向で。



「レーロ、どうして下に? 早く戻るなら三十一階層の方が早いと思うけど?」

「あたし、さっきまで三十四階層に居たんですけど、そのぉ……三十五階層がボスの部屋になってる? とかで、ここまで戻って来ていて」



 エルフの『あたし』って一人称が物凄く気になるが、今の情報が本当なら、進んだ方が良いかもしれない。

 でも、ボス部屋は十階層ずつだった筈だ……いや、常識に囚われ過ぎているかもしれない。あまり、ダンジョンに関しての情報を集めて居なかった分、ここも十階層ずつとは断言出来ない。

 アホエルフが下に行って戻って来たと言うのであれば、信じてみるのもアリかもしれない。もし、嘘だとしても……それならそれで四十階層を目指すだけだし。



「情報ありがとうレーロ。詩葉さん、どうする?」

「行ってみましょうか。レーロ、嘘だったらお仕置きに、しばらく貴女のご飯は肉だけにするから」

「お、恐ろしい……こんな恐ろしい人、見たことないのだけどっ!?」



 エルフは色々と違う。それは分かった。分かったけど……そのエルフの中でもレーロはまた変わったタイプなのだと思った。

 馴染むのが早い……それが一番の驚きだ。リコルのお陰かもしれないが、もっと警戒して然るべきだろう。

 疑い始めるとアホなのか、それを演じているのかも分からなくなってくるな……泥沼に入りそうだ、気を付けないと。



「あいたっ!? ……痛いよぉ、森じゃないと歩きにくいんだけど!!」

「あー……ははっ、気にしすぎだったな。ヤバかったら手加減はしないけど」

「なんか、この男から不審な言葉が聞こえて来たんだけどぉ!? 誰か……リコルちゃ~ん助けて下さいぃ」



 ◇◇◇



「はひゅー……はひゅー……ぅぇ」

「俺の分の指輪着けたから少しはマシだろ?」



 レーロがバテた。というか、熱にやられた。

 仮面を着けられていた時は、何かの強制力で暑さとかを気にする事は無かったらしいが、いざ仮面が無くなるとヤバいらしい。

 話していた時に何とも無かったのは、パニックでソレどころじゃなかったという……何ともアホっぽい理由だ。



「おい、吐くなよ?」

「しゅびばせん……はひゅ……だ、大丈夫。背中、ありがとうございます……」



 意気揚々と前を歩いていたのに今やグロッキー……倒れかけた時に近寄って、そのまま背中によじ登られた流れで今だ。お陰で詩葉さんに冒険者達を引きずって貰っているし、なんかジト目が強くなってるし、ゲロの危険もあるし。


 だが、もうすぐでボス部屋のある三十五階層に着くだろう。そこで休憩だな。



「ルフィス、大丈夫そうか?」

「はい、魔法の効く敵なので任せてくださいっ!」



 うんうん、環境の変化に弱いアホエルフより、頼りになるな、ルフィスは。このまま、お願いしておこう。

 ルフィスを先頭に進み、リコルがレーロに声を掛けたりしなが二十分くらい歩いただろうか、下へと進む坂を発見できた。やはり、ルフィスが先頭だとスピードが違うな。もう、確実に。


 坂を下りきると分かる。いつもならここからダンジョンの通路が広がっている筈なのに、ここは一本道。ボス部屋へと続くときと同じである。

 先が薄暗くて分からないが、二〇メートルくらい進めば見えてくるだろうな。



「じゃあ、扉の前まで行って……休もうか」

「一縷君、レーロに少し甘くないかしら? 前までだったら、背負わずに歩かせて……いや、引きずっていた筈なのに」

「いや、そんな鬼畜じゃないよ!? それに、仲間以外はあまり信用してないしね」



 詩葉さんの中で俺のイメージがどうなっているのやら……。それに、だ。仲間とそれ以外はちゃんと分ける。


 

「はひゅ……ふぅ~、ご苦労なんだけど! うっ……ふゅ~はひゅ~……」

「……そいつは良かったな。とりあえず水でも飲んでろ」

「いや、その……果実ジュー……いや、何でも無いですけどぉ」



 うむ。レーロも立場をよく分かったという所で、詩葉さんの言葉もあるし、スパルタに変更しようかな。



「はい、休憩終わり。というか、ここを通りすぎたら戻るんだから休憩は要らなかった訳だし!! ほら、行くぞレーロ」

「ひぇぇ~……うぅ……行きますよぉ! 行けばいいんでしょ!?」



 三十五階層のボスは一つ目の鬼。手には棍棒を持ち、その巨体を揺らしている。いわゆる、サイクロプスとか言われるモンスター。肌がくすんだ青色で不健康そうなのに、一つしか無い目は充血したように白目の所が赤くなっている。



「こわっ……でも、弱点が分かりやすいな」

「あの目ですねっ! 一縷さん、行きましょう!!」



「雷精魔法 貫通の書『刺雷(しらい)』」



 一つの(いかづち)が走った。いや、気付いた時には全て終わっていて、その残滓(ざんし)だけでそう結論付けた。

 空気が焦げた臭いを辿り、その一つ目を貫かれて倒れていくサイクロプスから後ろへと顔を向ける。



「早く、帰ろうなんですけど……ぅぇ」



「ルフィス……お前の目指す所はあそこだな」

「いや、そもそも魔法の仕組みから違うんですけどっ!?」



 アホエルフではあるものの、その力は本物だ。強い……強い。

 三十階層中盤のボスが一撃。人族でも不可能では無いだろうが、それは強力な魔法ありきでの考えだ。種族の差がこれほどある世界……なるほど、エルフが俯瞰して生きているのも納得だな。



「私の方が強い」


「えっ…………え?」


「私の方が強いわ!!」



 なぜ詩葉さんは、そんな分かりきった事を言っているのだろうか?

 まぁ……良いか。素材を取ったらさっさとダンジョンから退散しよう。地上でのエルフの扱いにも気を配らないといけないし、やる事はまだ多い。

 宿に帰るまでが冒険である。



「じゃあ、ちょっと待っててね! すぐ剥ぎ取っちゃう……お兄ちゃん!! 宝箱!!」



 リコルの声に、おそらく全員が注目しただろう。リコルがサイクロプスの影から取り出したのは金色の箱。この色は当たりだ。

 金品でもアイテムでもレアな物が手に入るだろう。もしかしたら、レーロのラック値が高かったのかもしれないな。

 くそっ……俺が倒していたらと考えてしまうが倒したのはレーロだ。この宝箱の所有権はレーロにある。



「あぁ……いや、お世話になる代金として……その、受け取って良いですけど。そんな凝視されたらやりづらいのだけど……」

「おっと、すまない。よし、リコル開けちゃって」

「ふぃぃ!? へ、変な声出た。お兄ちゃんが開けなくて良いの!?」



 勿論。俺は運が()()()()()良くない方だからな。



 ――やはりというか、リコルに託したのは正解だった。十センチ程度の望遠レンズを、何か分からないまま運んで持ってきてくれた。

 俺がリコルを抱っこしながら回転させたのは当然の流れだろう。

 リコルを下ろして、早速望遠レンズを覗いてみると、すぐ目の前に壁がある。うん、性能には問題ないな。問題があるとすると、片目しか使えない俺は、近くの敵に対応出来ないという事だろう。

 だからこれは、遠距離狙撃用になるだろう。先手必勝の一撃必殺。ともかく、戦力強化に繋がったな。他にも偵察用にも使えるし、優れもの。流石、リコルだな。



「さ、帰ろう。すぐに帰ろう!」

「ま、待っててお兄ちゃん! すぐに剥ぎ取るから」



 リコルの負担を減らしてあげようと、俺も手伝う事にした。凄い邪魔をしてしまった感があるけど、まぁ……気のせいだろう。



「リコル。疲れただろ? おんぶしてあげよう」

「だ、大丈夫だよ? お兄ちゃん……落ち着いて」



 うぅむ……たしかに気持ちが昂っているのは認めよう。だが、今日で収まるから見逃して欲しい。まさか、このタイミングで手に入るとは思っていなかったからな。期待をしていないと言ったら嘘になるけど。



「では、お願いするんだけどー」

「え? 何を?」

「えっ? 背負ってくれるって言ってたんだけど?」



 あれはリコルだけ……いや、でもこいつも功労者か。というか、こいつはどうせ隠して行かなければならないし、別にいいか。

 俺達は先に進み、一度はワープポイントを通り過ぎて更に先を確認しておく。



「また……ボス部屋か。なるほど、これは四十階層まで連続してボス部屋なのかもしれないな」

「楽でいいわね」



 詩葉さんに同意見だ。歩き回らなくて良いだけありがたい。

 そんな会話をしつつ、俺達はワープを通り、ダンジョンの外へと帰って来た。さて、ここからはレーロに消滅魔法の派生『見えざる姿(ゴーストマン)』を掛けて街を行く。


 外は暗い。もう夜中だろうし、人も出歩いては居ない。こんな時間に居るのは不審者か酔っ払いくらいだろう。宿に帰る前にギルドに冒険者達を捨てておく。勿論、催眠で冒険者を襲って返り討ちにされた事を自白する様にしておいた。詩葉さんがだけど。



「基本はルフィスと同じでローブを被るとして……顔はどうしようか、あの仮面でも着けさせるか?」

「ひぃぃ……」

「見えないけど声は聞こえるから黙ってなさい。そうね、仕方ないから移動中はこれでいきましょうか」



 それから宿に戻るまでに色々と決めておく。部屋は四人部屋だけど、五人で使う事にするらしい。

 まぁ、明日はきっと準備期間になるだろうし、また買い物だろうな。お留守番をして貰うとして、やはり動くのは俺と詩葉さんがベストだろう。

 明後日のダンジョンアタックで踏破する事になるだろう。今は八月後半で、次への移動時間を考えるとそろそろ終わらせておきたいしな。



「すぴー……すぴー……」


「もうやだ、こいつ……聖女よりアホでマイペースだぞ」

「比べられても困りますよ~ふぁ~、眠たいですが~」



 宿に着いてすぐに部屋へと運ぶ。そしたら後はお任せだ。俺も部屋に戻って寝るとしようかね。



「じゃ、また明日。おやすみ」

「ふふっ、一縷君の『消音(ミュート)』があれば中庭でちょっと訓練しても平気よね?」


「あっ、はい!」



 俺と詩葉さんだけ、まだ一日が終わっていなかったみたいだ。

 ボロボロにされたが、まぁ……トータルでプラスだから良しとしよう。


 翌朝、いや、翌昼まで起きなかったのは疲れのせいだな。

 うんまぁ、詩葉さんに叩き起こされたけど。まだ眠いぞ……これ。


誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)


『秘境案内人』とか、丁寧目に書いてますよ!お暇でしたら、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ