第33話 そういう臭いがするよ…… in 異世界
お待たせしました!!
よろしくお願いします!(´ω`)
かなりの量の汗が流れる。
布で拭いても追い付かず、ルフィスに水を掛けて貰う方向に変えてから少しはマシになった。が、それでも頭のてっぺんから足の先まで全身から汗が噴き出す感覚がずっとある。
「これ……脱水に……なるかもしれない」
「塩も調味料として買ってはあるけど……足りるか分からないわね」
確かに水だけを飲んでいても体から流れ出ていくのは水分だけじゃない。確かにほとんどは水だけど、塩分的なあれも流れ出ていくのだ。
「……塩? お塩ですか? どうしてお塩が必要なんです??」
「ルフィス……いえ、貴女はもともと大量に汗を掻いたりしない立場だったわね。簡単に言うと、汗の成分に塩が入っているのよ。出ていった塩分を摂取しておかないと、不調を起こすわ」
「そうなんですか? 暑い日に体調が悪くなる事はありましたが……回復魔法ですぐによくなりましたよ?」
ルフィスのその情報に俺と詩葉さんは顔を見合わせる。
俺はともかく、詩葉さんが知らないとはどういう事だろうか? 百年前はそんな情報が無かったのか、それとも詩葉さんのパーティーが異常だったのか。なんか、後者な気がしてならない。
でも、熱中症が回復魔法で治るという情報はありがたいな。安心要素として知っておけば、実際に熱に浮かされた時に慌てずに済むしな。
そんな事を話し合いながら、俺達は三十一階層を進み始めた。
犬型のモンスターだし、鼻が良いのかは分からないが、やたらと遭遇する。この階層からモンスターの数が増えているのかもしれない。
「……ったく、暑いのに次から次へと」
「一縷さん! あそこに二体居ますよ!!」
少し離れた所に居るモンスターをルフィスが見付けた。目視できる程度の距離にしかいないなら、すぐに迫って来るだろう。
「ルフィス、一体は足止めしてくれ! 一体ずつ倒すぞ!!」
「分かりました、任せてくださいっ!」
ドーベルマンを少し凶悪にしたモンスターがこちらに気付き、すぐに動き出す。
右側のモンスターをルフィスに任せて、俺は左側のモンスターへと意識を向ける。飛び掛かる直前の一瞬のタイミングを狙い打つ為に、槍を少し長めに持って構える。
「さん……に……いち、ここだっ!!」
「――ッキャワッン!?」
俺に狙いを定め、飛び掛かる為に足に力を溜めたその一瞬に、上から槍で叩き潰す。そして――すぐに槍を首元に深く突き刺してトドメをさした。そう硬くないモンスターとはいえ、この階層に居るモンスターだ……キッチリ最後まで倒しきらないと不安が残る。
ルフィスが足止めしてくれている残りのモンスターへとダッシュで近付いて、その首を斬り裂いた。
戦闘時間にしてはそう長くないのに、頭から大量の汗が流れ出す。モンスターよりも厄介だと、戦闘が終わる度に思う。
◇◇◇
三十二階層にヘロヘロになりながらもやって来て、少し休憩を取る事にした。とは言っても、座っていても汗を掻くというどうしようも無い事態。これと言って良い案が浮かぶ事も無く、早く変熱耐性のレベルが上がらないかと、心で祈りながら座っていた。
「灼熱だなぁ……」
「一縷さんも、指輪はちゃんと着けた方が良いですよ……」
着けた方が良いのは分かっている。
この暑さを軽減した方が良いのは分かっているのだが、詩葉さんの涼しげな感じが、俺の中で指輪を着けさせなくしている。
日の光で温度が変わっている訳では無い為、これ以上暑くなる事も無ければ寒くなる事もない。不変である。
つまり、今の段階で我慢出来無いという事が無い以上、今後は楽になる筈なのだ。……それがいつかは分からないが。
しばらくの休憩で息を整えたらまた、索敵をしながら歩き出す。
俺は先行して、曲がり角で様子を伺ったり、モンスターが一体なら即座に倒しに向かう。この階層のモンスターは先程と違って、二足歩行の蜥蜴……一メートルは越えてるくらいの小さな恐竜みたいなモンスターだ。
一階層進むだけでドーベルマンから変わっているし、この先も違うタイプが現れるかもしれない。
爬虫類が好きな人がみたらテンションは上がりそうだが、モンスターだ。調教師でも無い俺に出来るのは、別の道を行くか殺られる前に殺る事しか無い。
『シャアァァァッ!!』
「動きはそう速くない……行くかっ!!」
槍を片手に走りだし、下から上に切り上げの構えに入ったその距離に達した時、俺の腹部に衝撃が走った。
「――ぅぐ……尻尾かっ」
俺に一撃を与えた小恐竜は、跳び跳ねる感じで後ろへと下がる。ダメージ自体は問題無いが、不意を突かれた事の方がダメージになった。
「まだまだ距離感の調整が上手く無いな……小さくすばしっこい相手は面倒だ」
だが、自分が苦手だと感じる相手はいつだって成長を促してくれる。俺は暑さを気にしないで小恐竜に向かって行った。
尻尾の動きは自由自在な様で、体を回しながら打撃として使ったり、回避の時にバランスを取ったりと尻尾が本体かのような扱いの上手さがあった。
なら、試さないといけないだろう。尻尾が無くなった時の状態がどうなるかを。弱くなるなら良し、凶暴になるならそれも良しだ。とりあえず知らなければ対策もできないのだから。
「悪いが、使わせて貰う『切断の風』」
勿論……風魔法ではなく、消滅魔法。『ロスト』で尻尾を狙うより、残した方が良いかもという理由で尻尾の根元付近を『カット』した。
尻尾はそのまま地面に落ち、小恐竜は突然の攻撃に奇声を上げながら地面に倒れ込んだ。
人で言う下半身を切断されたかの様に、立てなくなったのか起きてくる事は無く、声を上げ続けた。
「尻尾が弱点か……。『ロスト』」
流石に槍で攻撃する気になれず、魔法で消滅させた。
次からはちゃんと槍で戦うからと、心の中でそっと告げて先に進みだした。
◇◇
やはり、モンスターとの遭遇率が高く、ルフィスと交代しながら体力が底をつかない様に上手く調整しながら進んではいるものの……そろそろ限界が近い。
飲んだ水が汗となって出ていき、補給出来ていない感じしかしてない。
「ちょ……詩葉さーん」
「私もそろそろ疲れましたぁ~」
「なら、今日の泊まる場所を先に見付けなさい」
泣き落とし作戦に出るも、正論で返され……まだ休むのは先になった。こんな時に限って行き止まりの丁度良い場所に辿り着けず、先に下の階層へ進む坂を見付けてしまった程である。
途中、リコルからの方向指示に従った結果のこれだ。本来なら良くやったと褒める所だが、詩葉さんが隣に居ることで今は少し疑っている。リコル……まさか……と。
結局はチャンスを見逃せないと、進む事になり……とりあえず左に突き進み、右への曲がり角だが行き当たりで壁を二つ設置する事となった。
今日は普通に歩いてるだけでも疲れる。リコルや聖女もどうやらお疲れの様であった。
「リコル、今日は休んでて良いわ。ご飯は簡単な物にするから」
「ごめんね、詩葉姉……」
地面に座るとうっすらと熱を感じるが、熱くて座れないという訳ではなかった。壁もそうで、結局はどこが原因で暑いのか謎である。ダンジョンの不思議ってやつだな。
詩葉さんが調理を開始して、今日はあっさりした物が食べたい気分だが……聞こえてくる音は何かを炒めてる音。加熱しないとたしかに怖いが、今日はそうめん、蕎麦あたりを食べたい気分だった。
まぁ、出てきた物に文句は無い。俺は料理が出来ないからな。
◇◇
「詩葉さん、今日も特訓するの?」
「他の子は休ませても良いけど、一縷君はと・く・べ・つ……よ?」
「死ぬほど嬉しく無いな……」
逃げられる訳が無いのは知っているし、教えを乞うたのは俺だからやるしか無いのだが……今日は普段よりキツくなりそうだ。
寒いエリアの時は力が入らなかったり痛みがあったが、暑いここはまた別でキツい。
「おーい……ルフィス~、お前も特訓しない?」
「今日は遠慮しておきます……宿に帰ったらしますのでぇ~」
その選択肢があるなら、俺も……と詩葉さんに言おうと顔を向けたら既に構えている。そして、“俺に回避出来る速さ”で拳が風を切り、襲い掛かってくる。
詩葉さんの右手を首を動かして避け、続く左手を俺は右手で下から弾く様に押し上げて逸らした。詩葉さんの右足の動きを察知して、下がる事で距離を取った。
「いきなり過ぎませんか!?」
「一縷君が何かを言い出す前に……ねっ!!」
迫る詩葉さんに俺も構えを取って迎え撃つ。
――膠着は許されていない。
詩葉さんに数秒腕を捕まれるという事は、骨ごと潰される事を意味しているし、服を数秒捕まれれば投げられるという事だ。
実際に握り潰す事は無いが、最近は投げる事も増えてきた。だから、下がる以外に体勢を整える術が無い。
「がぁっ!? ……くそっ!!」
「足元がお留守よ。その後の回避は思考が停止し無かった良い証拠ね」
額から流れて来た汗に少し気を取られたらコレだ。油断したらすぐに地面に転がされる。布でも頭に巻くかね?
「タイム!! ちょっとターイム!! 頭に布を巻いておきたい」
「ふふっ、却下」
「鬼!! 悪魔!! 鬼畜黒髪ロング!!」
立ち上がる時間はくれたが、特訓は更に続いた。正直、ご飯を吐きそうになった時がピークだった。特訓後はルフィスの水魔法で全身を洗い流して貰い、乾くのを待ってから眠りに就いたが……こんなに寝苦しい夜はこの世界に来てから初めてだな。
◇◇◇
翌朝、寝汗を大量に掻きながら、喉の渇きが堪えられない所で目が覚めた。
先に起きていた詩葉さんにお願いして水を用意して貰い、喉を潤す……が、髪は顔に張り付くくらいにべたついてるし、服は汗で肌に張り付く。寝起きとしたら最悪だ。
だが、不思議と昨日程の暑さを感じない。もしやと思ってステータスを確認すると……変熱耐性のレベルが一つ上がっていた。
「こんな短期間に上がる程の……って事だよな。よし!! なんか、頑張れる」
「お水は?」
「お願いします……」
食欲が無いが詩葉さんの……
「食べないの?」
という一言に誰が抗えるだろうか? いや、無理だろう。上目遣い……では無かった、確かに違う。どちらかと言うと見下ろされていた気もする。アレ? 『食べないの?』だっけ? 『残すつもり?』だった……っけ?
「まぁ、美味しいから……うん」
「食べないとキツいのは一縷君よ」
うん、こうやって気を使ってくれてる所をみると、やはり気を使った言い方をしてくれたに違いないな。
リコルやルフィス、聖女も起きてきて皆で朝食の後、片付けや準備をして俺達は出発した。今日もとりあえず先頭は俺が行く。
三十三階層も相変わらず暑いが、下に進むほどに気温が上がる訳では無いようだ。耐性が上がった分、少しは楽になったがまだ指輪を着けた方がマシだろうな。
「一縷君、近くに他のパーティーの気配があるわ」
「あぁ……えっと、どうする? ルフィス、暑いかもだけど一応ローブを」
「うへぇ~……でも、仕方ないですね……」
冒険者達が遠ざかるならまだしも、どうやら近付いて来ているみたいだ。遭遇してもお互いに別の道を行くのが無難だろう。軽い挨拶なんてしてみるのも良いかもしれない。
「暑いってのは理解してるけどよぉ、体はまだ慣れねーよ……ったく」
「ちょっと、暑いからって防具や服を脱ぐのはやめなさいよ!! 命に関わるわよっ!!」
「とは言ってもよ…………あら? 他のパーティーさん? 初めて見る顔だな」
俺達が微妙に迷ったままの時に現れたのは、俺達と同じく男女混合のパーティー。会話していた三人と、少し後ろに黒い仮面を着けてローブを被った人の四人パーティーみたいだ。
おそらくこの階層にまで居るという事は、Bランクくらいはありそうだな。詩葉さんに言わせたらどのランクにまで落ちるのかは分からないが……。
「初めまして、僕達はまだ新米ですし……と、言っても冒険者になってからまだ日が浅いって事ですけど」
「なるほどね……って、ひゅ~っ。お前の所の女の子、中々に可愛いじゃねーか……いたぁ!?」
「何が可愛いじゃねーか……よ、そう言うのは相手と釣り合う顔を持ってから言いなさいよ」
まぁ、確かに顔で詩葉さんに釣り合う程では無いが決して格好悪い訳じゃない。少しチャラいがどちらかと言えばイケメンと言っても良い具合だろう。詩葉さんには釣り合わないが!!
「ははっ、仲が良さそうなパーティーですね」
「まぁな、これでもずっと仕事は一緒にしてるからな」
仕事? あぁ……そうか。クエストとかの事かな? 確かに冒険者という職業なら仕事と言うのもおかしく無いのか……。クエストなんて全然受けて無いからその辺の感覚が薄かったな。
「――ねぇ、その仮面の子。なんであなた達のパーティーに居るのかしら?」
詩葉さんの問い掛けに、数秒の沈黙があった。
俺達は質問の意図が全く解らなくての沈黙。だが、相手グループは理解していての沈黙の様で……数秒経ってから口を開いた。
「お前、何を言っているんだ? 悪いが意味が分からないな」
「そうよ、この子はうちのパーティーメンバーだし……大事な戦力だから欲しいって言っても上げないわよ?」
「いえ、別に要らないわ。でも、そうね確認を取らずに聞いたのが私の間違いね。リコル、“エルフ”との関係ってどうなっているのかしら?」
詩葉さんの確信めいた言葉に相手側冒険者の顔が強張り、焦りだす。ルフィスや聖女も少し驚いた表情をしていて、ただ一人……この場で空気を読んでいない者が居た。勿論、俺だ。
「エ、エ、エルフゥゥゥ!? ちょ!? エルフって、あのエルフ!? ちょっ!? まっ!? えぇ!?」
「うるさいわよ、一縷君。それで、リコル?」
「あぁ……うん。えっとね……エルフっていう種族は、どこにも属して無いけど、中立でも無いの。エルフさんは森に住んでるらしいけど、そこを襲っちゃダメってなってて……誘拐も奴隷にするのもエルフの怒りを買うからダメって……聞いた事……ある」
「言わば、相互不干渉。昔、エルフの高い魔法技術を狙って誘拐を試みた国が、誘拐の失敗だけじゃなく、エルフに壊滅させられたという話もあります。その魔法の技術は魔族をも上回ると聞きますし、亜人族や魔族は知りませんが、人族は手を出してはいけない……となっていますよ?」
リコルの説明に聖女が追加で説明してくれた。なるほど……強いなエルフ!? 魔法が上手いとか森に住むとかはイメージ通りではあるが、好戦的なのは少し意外だ。家族や仲間が誘拐されてキレるのは理解出来るが……国まるごと滅ぼす性格だとはな。
「さて、子供でも知っている事をあなた達が知らない事は無い筈でしょう。もう一度問うけど……その仮面の子、何であなた達のパーティーに居るのかしら?」
鑑定スキル持ちはチート。今、それがハッキリと分かりましたね。敵に居たら厄介過ぎるが、味方に居たら心強い事この上無し。
「ちっ、おい戦闘準備だっ!! 一つの雑魚パーティーを倒すのにエルフの力はデカ過ぎるが……生かして逃がす訳にも行かなくなったからなぁ。どうして知っているのかも吐いてもらわねーと」
「ルフィス! 念のために二人を連れて後方で防御に徹しなさい!! 流れ弾でもエルフの魔法は強いわよ、一縷君、エルフの魔法、消しきれるかしら?」
「魔力の限りならいけますぜ!!」
ルフィスが迅速に前線を去り、残ったのは俺と詩葉さんに相手パーティー。俺の役目は敵の三人を倒す事じゃなくてエルフの魔法を防ぐ事。詩葉さんの補助だ。
「水精魔法『水槍』」
美しい声と共に視界一杯の魔方陣が浮かぶ。詠唱破棄でこの量の同時発動。しかも魔方陣の規模も大きい。俺はもはやエルフ以外に注意を割いている余裕は無かった。必死に眼球を動かしながら魔法を使う為に心の中で一言。
――『文字消去』
と、唱えていった。詠唱破棄に近い事を俺もしていた。
だが、数が数で発動しきる前に消せたのはせいぜい十から十五。それ以外は発動と同時に『範囲消滅』で全てを消し去った。
エルフは仮面の奥で驚いた様子すらしていないだろう。でなければ、次々に魔法を放つ事も出来ないと思う。思いたい。
「火精魔法『火槍』」
「風精魔法『風槍』」
「雷精魔法『雷槍』」
「……はぁ……はぁ……んぐっ『範囲消滅』!!」
「一縷君!! こっちは終わったわ」
詩葉さんが気絶させた三人を後方へと運んで戻ってきた。正直助かる……そろそろ魔力が心許ない。
これだけの魔法をエルフ総出でやられたら、そりゃ国も滅ぶだろう。
「土精魔法『土杭』」
「土創成魔法『地盤強化』」
エルフの魔法に対して詩葉の魔法。
どちらも地面に手を着いている状態。地面から押し出ようとするエルフの魔法と、それを阻止する詩葉さんの魔法が鬩ぎ合っている。
いくらエルフとはいえ詩葉さんに拮抗した実力まであるとは思わなかった。これがエルフ……強すぎるだろう。二人がお互いに動けない状況なら、動ける俺が何かをするしかない。
「詩葉さん、どうすればいい? そもそも何故、あのエルフは戦う!?」
「精神支配か隷属のアイテムを使われているのでしょう。誇り高いエルフがあのパーティーに素直に居るとは思えない」
俺はエルフを良く観察し、腕輪、首輪、なにかそれらしきアイテムを探したが……どこにも着いていない。有香が腕輪を付けられていたから、腕輪がありきたりなのかと思ったがそうでは無いらしい。
「くそっ、そんなアイテムどこにも……」
「仮面よ!! 仮面!! 一縷君、ふざけてるの!?」
あっ……あぁ!! 良くみたら一番怪しいじゃん!! 顔隠す為のやつかと思ってた。見れば見るほど黒の仮面ってヤバいアイテム見たいじゃないか。ちょっと格好いいと思ったのがいけなかったっ!!
「そうと、分かればこっちのもんだ。消滅魔法『切り離し』!!」
その瞬間、地面にあったエルフの魔方陣は消え、仮面は地面に転がって……エルフはうつ伏せの状態で地面に倒れた。その一瞬の間だったが、あの特徴的な耳を見ることが出来た。
「うぉぉっ!! じゃなくて……あっと、えっ? いや、俺は仮面外しただけ……だよね?」
「仮面の強制力が強かった反動か何かでしょう。まぁ、何はともあれ良くやったわ。ルフィスー、もう大丈夫よ」
詩葉さんはルフィスとリコルと聖女を呼び戻し、エルフの看病を任せていた。
俺と詩葉さんは今から両手両足を縛られた冒険者達に色々とお話を聞かなければならないからな。まぁ、色々と聞くのは詩葉さんだけど。
◇◇
詩葉さんが気絶した冒険者が起きるのを待つ訳も無く、少しの回復魔法と水をぶっかけて意識を取り戻させる。三人同時に起こすのは厄介だから一人ずつ水を掛けて、魔法を掛ける様にするらしい。
一人目は女の子だ。
「コホッ……コホッ……ぐっ」
「お目覚めかしら?」
悪役の様だが、これは役になりきってるだけかもしれない。なんだか、声が楽しそうだし。
「状況はすぐに飲み込んで……こちらの質問に答えて貰うわよ。拒否権は無いわ。まず一つ。エルフをどうやって手に入れたのかしら?」
「私は知らない。連れてきたのはリーダーのジェスさん。……ちっ」
「武器は全部預からせて貰ったわ。魔法を発動したければどうぞ?」
流石に不利なのを理解したのか、聞く事には答えてくれていた。だが、ほとんどが『知らない』という答えだけど。
女の子を寝かせて、今度はジェスと呼ばれた方の男を起こす。チャラい男はニールで、今起こしている少しだけ年上そうな男がジェスだ。
「……くそっ」
「あら、飲み込みが早いのね。それじゃあ質問に答えて貰いましょうか?」
「まて!! エルフはどうした!? 何故お前らは生きている……」
「簡単な事よ。あそこに倒れてるエルフが視えるでしょ? で、良いかしら? それで……エルフはどこから手に入れたのかしら?」
ジェスという男は答えずに黙秘をしている。何か策は無いかと必死に考えているのかもしれないが、一番楽なのは全てを話してしまう事だ。そしたら後はここに放置かギルドに連行されるかを選べるのだから。
どちらかと言うと運ぶのが大変だし、放置を選んで欲しいけど。
「仕方ないわね。催眠術を何度も使うとは……」
ジェスは、簡単に話始めた。
「元々は……闇競売に掛けられる予定だった。俺は繋がりのある男と共にそこに行ったが、エルフなんて俺の金じゃとうてい買えない代物だ……。だから、闇市で偶々手に入れた隷属のアイテムを使う事を考えた……。良いスキル持ちを集めて会場で騒ぎを起こし……隙を突いて連れ出した……逃げる時はエルフの魔法を使えば……簡単だった」
「ふーん、エルフはたまに売られるのかしら?」
いや、ふーんて……。尋問している筈なのに興味が薄すぎませんかねぇ?
「いや……年に一度あるか……ないか。エルフを捕らえる為の……魔法を使えなくするアイテムが希少……らしく、その上……捕らえる事自体も難しい……みたいだ」
「やはりあるのな……魔法が使えなくなる系のアイテム。その情報が聞けて良かったですね、しかも希少ならなおさら」
「そうね……話は分かったけど、どうしましょうか? 冒険者とエルフ」
確かに面倒な案件ではある。おそらく水面下ではエルフ探しでヤバい奴らが動いているだろう。そこでギルドにコイツらとエルフを連れて行ったら大騒ぎ間違い無しだ。
かと言って、冒険者はともかく、エルフを置いていく訳にはいかないだろう。おそらくルフィス達が騒ぐと思う。
俺も詩葉さんも頭を抱えて悩みだした。
「催眠解除……あんた、これからどうすれば良いと思う?」
「……くっ、何しやがった!? とっとと解放しやがれ!!」
「詩葉さん、コイツらに聞いても仕方ないんじゃ……?」
猫の手も借りたい気持ちは分かるが、犯人にこれからの行く末決めて貰うのは、流石に考えものだと思う。
ちょっと錯乱してうるさいし……。
「とりあえずコイツらは別件で……ダンジョンで冒険者を襲っていたという呈で夜中の内にギルド前に放置しない?」
「そうね、とりあえずしばらく眠っていて貰って……エルフの方にも話を聞いてみましょうか」
その為には場所が必要だという事になり……俺は冒険者を引きずって運び、ルフィスがエルフを運んで、詩葉さんは昨日の様に通路の突き当たりを切り取る様にに壁を設置し、空間を作り出した。
流石にエルフには水をぶっかけられないという事で、起きるのを待つことにした。詩葉さんの我慢が続く限りだけど。
それから二十分くらいして、ようやくエルフに意識が戻った。
「うっ……私は何を……ここは?」
「大丈夫ですかっ?」
「な……に、ににに人間!!?」
エルフが飛び起きて、壁際まで後退る。
当然の反応だとは思うが……ルフィスであの反応なら男の俺が最初に声を掛けたなら、いきなり魔法を使われてた可能性がある。と言うか、人間嫌いな状態だろうなぁ……。
「こ、来ないで!! 近寄らないでっ!!」
仮面の無い今、フードが取れると、エルフの顔や頭、耳の全てがちゃんと見える。ルフィスの金髪を白っぽく淡い色にした髪に、碧の瞳は自然を彷彿とさせ、スリムな身体は上品さを醸し出し、尖った耳が存在感を出していた。だが――。
「なんか、ポンコツの臭いがする」
「何ででしょう……凄く同意出来るわ」
「人間やだよぉ!! 怖いよー!! うえぇぇぇぇぇんっ!!」
背丈はリコル以上、聖女未満……ルフィスと同じくらいだろう。エルフだから実年齢は俺達より上かもしれない。
だが、人間に捕まって戦いの道具にされて、今泣いているこのエルフに神秘を感じるかと聞かれたら……当然、否である。
いや、本当に……どうしようか。
誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!
もし、お時間がある様でしたら
新しく書き始めたハイファンタジー(ほのぼの予定)をよろしくお願いします。
お手数おかけしますが……マイページから、『秘境案内人』というタイトルです!(´ω`)




