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第32話 やっぱり寒い方がマシかも? in 異世界

すいません、少し短いですが、帰る頃には明日になってそうなので投稿します!


よろしくお願いします!



 


 翌朝、いつもの様にアレコレと準備をしてダンジョン前の広場にまでやって来た。普通に歩くだけでも新調した装備のありがたさが分かる。

 軽装とローブの時よりは若干重たくはあるが、頑丈なのに少ししか重たく無いと考えればかなり凄いし、靴だって足裏の衝撃が弱く疲れにくいし走りやすい。



「今日は遠征に行っていた勇者様が帰還されたお祝いの最中で、他の勇者様もダンジョンには来ないぞー、でも明日には来る可能性もあるから稼ぐなら今のうちだー!!」



 有加達が帰って来たのか。たしか、遠征に行ってるから連日に渡って潜り続けるなんて事をしていた筈だ。皇帝が帰って来た事でどうなるのかは分からないけど……俺達には関係ないな。攻略法は出来ているし。



「ルフィス、貴女を見付けようとダンジョンに潜ってる冒険者が居るかもしれないわ。顔は出さない様に。聖女、今度は勝手に魔法を掛けない事」

「冒険者に追われるのは嫌ですぅ~分かりました! 杖もローブの中に隠しておきます」

「ちゃんと祈って来たのでしばらくは大丈夫ですよ~」



 たった一人で、いくら魔法が苦手なオークとはいえ、ポンポンと倒せる者が居たら戦力として欲しがるのは分かる。そして、冒険者とは基本的に自己中心的な生き物だ。欲しいと思った物は力ずくで手に入れたがる。

 勿論、全員がそういう野蛮な思考回路を搭載している訳ではないが……交渉次第でどうにかなると踏んで、ルフィスを探している冒険者も居るかもしれない。



「とりあえずリコルに渡したアイテムも試さないといけないよね? どこで試す?」

「そうね……弱すぎてもいけないし、とりあえず二十階層のボスに一回だけ使ってみましょうか」



 行き先が決まった。なら、後はそこまでどのくらい早く辿り着くかだな。二日目の途中で着ければ良いペースだろう。俺達はダンジョンの中に足を踏み入れて進んで行った。



 ◇◇◇



 火魔法の使用を避けるべく、ルフィスは十階層から十九階層までの暑いエリアを水魔法で攻略してもらい、それ以外は俺がモンスターを倒しながら進んで、二日目の動き始めてから数時間後には二十階層のボス部屋にまで辿り着く事ができた。


 因みに、一日目の終わりに、詩葉さんから『笑いの先駆者』という称号を手に入れた事がバレて、滅茶苦茶笑われてしまった。先駆者が俺の為、少し後でダジャレを言った詩葉さんには何の称号も付いていないらしく、あるだけで少し気恥ずかしい称号はどうやら俺だけが手に入れたらしい。



「前回、二十階層のボスはリコルが倒したし……リコルのアイテムを確めたら、一縷君が倒すとしましょうか。蜘蛛だったわね」

「了解。じゃあ、リコルに発動の為の言葉を教えておこうか」



 ボス部屋の前で、軽い打ち合わせをしておく。リコルの先制攻撃が決まればモンスターはリコルに狙いを定めるだろう。そこにどうにか割り込んで俺が倒しきらなければならない。

 敵が跳んで俺を乗り越えて一直線にリコルを狙う場合など、およそ想定できる限りのパターンを出しあって頭の中に入れていく。普段ならここまでしないのだが、リコルの為だもの。皆の本気度が分かるな。



「リコル、不用意に発動の言葉を言わない事。寝るときは首から取る事。約束よ」

「う、うん……!」



 初めての戦闘かどうかは分からないが、緊張しているみたいで声が少しだけ上擦っている。適度な緊張なら良いのだが……緊張のし過ぎは、心と体が離れすぎて上手く噛み合わない状態を引き起こしてしまう。



「リコルちゃん」

「は、はい。何でしょうか、聖女様?」



 緊張してローブを握ったり放したり、(せわ)しないリコルに聖女がそっと近付き、これまたそっと手を握った。



「私も一緒に立ちますから~大丈夫ですよ~」

「せ、聖女様っ! ありがとうございます!」



 握った手をそのままに、聖女は柔和な笑みを浮かべ……リコルもそれに釣られる様に顔の表情が(やわ)らいだ。



「聖女の聖女らしき所を久し振りに見た気がするな……」

「流石は聖女様ですねっ! 魔法なんて使わなくてもリコルちゃんの緊張を(ほぐ)すなんて!」



 俺や詩葉さん、リコルが同じ行動を取ったら安心感は与えられるだろう。だが、緊張まで緩和させてやれるかと言ったら微妙な所だ。失敗出来ないと、より緊張をさせてしまうかもしれない。

 リコルと同じく、対モンスターへの戦闘力という面では無いに等しい聖女だから……安心感だけじゃない何かを与えてやる事が出来たのだろう。



「リコル、そのアイテムは自分を守るため……そして、隣の聖女を護る為の物だ。それを忘れない様にね! さ、行こうか」



 ルフィスが扉を開いてくれて、そこをリコルと聖女が先頭で入っていった。



 ◇◇



 前回と同様に、入ってすぐには蜘蛛の姿は無い。だが、上を見るとそこには複眼を光らせた蜘蛛が張り付いている。

 もう少しだけ部屋の中央に進むと落ちてくるだろう。俺はリコルを確認してから、蜘蛛が反応するその少し分を踏み出した。



『キシャアァァッ!!』



 半回転しながら着地したそれは、少しだけ土煙をあげながら耳障りな声を発した。



「行けッ!! リコル!!」



 踏み出してすぐにバックステップで戻った俺は、モンスターを見ながらリコルに合図をだした。



「うん……私を、皆を護って!! 『守護の剣風(ソード・スサノオ)』!!」



 首飾りの魔石部分を、まるで大切なお守りを掴むみたいに片手で優しく包んでいる。そのリコルの手から、緑の魔法陣が六角形を形作(かたちづく)るかの様に浮かび上がり、そして……。



 ――竜巻が全てを塵と化す(六つの風が暴れ狂った)



 いくら二十階層とはいえ、ボスモンスター……これは、予想外だ。

 勿論、ボスモンスターが完全に塵になった訳ではない。が、体に無数の穴、切り傷を作った蜘蛛が壁際に張り付いて息絶えていた。



「「「「…………」」」」

「お兄ちゃん……これ、返すね」



 そうリコルに言われても、眼前の壊れ具合に圧倒されて何も返せなかった。

 レベル的には俺とそう変わらない魔族だった。その魔族から取れた魔石だ、凄いとは思っていたが……ちょっと斜め上過ぎたな。

 加工してくれたお姉さんも、威力より回数……耐久性があると言ってた筈だ。話が違うな……ある意味詐欺と言っても良い程に。



「リコル……寝る時は外すんだぞ? ホントにね?」

「いや、怖いよ! お兄ちゃん、これ危ないよっ! ど、ど、どうすれば良いの!? 詩葉姉、ルフィス姉、聖女様~!」



 皆反応が薄いというか、困っている。それはそうだろうな、本当に御守り程度な威力だと思っていたから。



「で、でも……安心ですよねっ! ねっ!」

「今の威力なら一人でも何とかなりそう……リコル、レベルが上がったわよ?」


「本当に!? ス、ステータス! ……ほ、本当だ」



 レベル一桁のリコルが急に二十階層のボスを一人で倒したらそりゃ、上がるか。アイテムを使ってもレベルがる事については、少し驚きであるが。


 はしゃぎ始めたリコルを背に、俺は蜘蛛の様子を見に来た。見るからにボロボロで、素材として使えそうな所は無かった。

 それを考えるならば、本当に形振(なりふ)り構っていられ無い時限定にした方が良さそうだな。

 モンスターならともかく、人に対して使うのもリコルにさせない様にしなければならないだろう。その責任を負わせない為に。



「うーん、宝箱も無いみたいだし……先に進みますかね」



 皆に声を掛け、次の階層である寒いエリアに進むことにした。

 リコルには悪いが、アイテムの使用には何度も耳にタコが出来るまで言い聞かせる事にした。と言っても……リコルの事だから、あの威力の危うさは理解済みだと思うから数回くらいで大丈夫だとは思うけど。



「一縷君、とりあえず先に進みたいからモンスターは出会ったら即殺でお願いね」

「そんな物騒なお願いを平気でしてくるのは詩葉さんぐらいだろうよ……」



 それから進むが順調とは言えず、詩葉さんが『そろそろ今日は……』というまでに残念ながら余り進めなかった。

 リコルが荷物が軽い荷物が軽いと嬉しそうで無かったら、ただただ残念な気持ちしか無かっただろう。



「うーん、やはり一縷君が先頭だからかしら?」

「やはり……。気のせいじゃない? まぁ、確かに何回か逆の方向に行っちゃったけど……偶々(たまたま)じゃない? 偶々(たまたま)



 偶々だと信じたい。いや、むしろ俺が普通だと思う。いつも思う、ルフィスの運が良すぎるだけだと。



「お兄ちゃん! お兄ちゃん! 掌底(しょうてい)ーっ!」

「せいっ! ……こら、リコル! いきなり掌底をしてはいけないと言っているでしょ!?」



 いや、言ってはいないけど。分かるでしょ? そろそろいつもの訓練の時間ではあるけど……リコルはいつの間にか熱血になっちゃったのかな?



「でも、レベル上がったから! お兄ちゃんに勝てるかと思って……ごめんね、お兄ちゃん」

「ぐはぁっ!!」



 キュン死。リコルはいつでも俺を殺す武器を内包しているな……下手すると詩葉さんすらも倒せるかもしれない。内のパーティーで最強なのはリコルだな、やっぱり。



「リコル、ちょっとおいで」

「なになに~?」



 俺はリコルに詩葉さんキュン死作戦を仕込み、送り出した。結果はまぁ、仕掛け元がバレて俺の訓練が厳しくはなったが……リコルにデレデレな詩葉さんはマジレア物だったな。


 たった今、蹴られて意識を失いそうなその一瞬の間にそう思いながら、俺は地面に沈んだ。



 ◇◇◇



 翌日、何とかお昼休憩の頃には二十五階層にまで辿り着いた。

 今回は食料を多目に持って来ているし、目標は四十階層という話だ。まだ先は長いが強くなる為の近道がダンジョンだし、頑張らないと。



「冒険者は避けるべく移動するけど、怪しまれ無い程度にどうどうと」

「ここから先は三十階層を越えるまで速めに動きますかね」



 お昼休憩を終えて、引き続き俺が先頭に立って進んでいく。今日は方向指示だけをルフィスに任せて進んでいる。一応、今後の為に俺とルフィスで違うかを調べているからだ。同じだと信じたい所だが、結果――つまり、真実は誰にでも良いこととは限らず、誰かにとっては残酷で、今回は俺にその事実を突き付けてきた。



「こうも露骨にペースが変わるものかね……」

「ぐ、偶然ですよ一縷さん」

「実際に、幸運度は一縷君が一番低いけどね。因みにというか、やはりというか、一番高いのは聖女よ」

「あらぁ~、きっと神スフィアの御加護ですね~」



 早いなら良いじゃないかと自分に何度も言い聞かせながら進み、自分の判断で遅くなるくらいならと思い始めた時には、だいぶ真っ白なオークも倒していた。気付けは三十階層の手前、二十九階層に来ていた。


 ここでも多少の問題があった。俺達が前回来た二十八階層あたりから、とにかく冒険者と遭遇しそうになっていた。階層の出入口には必ずと言っても冒険者が居るし、女冒険者には片っ端から声を掛けていた。

 当然、俺達も捕まるが……これは逆にチャンスだと考えていた。そう、稼ぎ時だと。


 俺とフードを被った聖女が戦闘を歩く。聖女に髪をローブからはみ出させる事で、女性であることを露骨にアピールさせた。



「ちょっと、あんた達……話を聞いていいか?」



 そうすると、大概はこうやって話し掛けてくる。一人が話し掛けてくる間は、他の奴等は聞き耳を立てるだけで近寄っては来ない。



「なんだ? 今日はやけに冒険者に会うが……」

「ある、女冒険者を探していてな。火魔法を使うんだが……その子がそうなんじゃないかと思ってな」


「残念ながら、この子はただの僧侶だし後ろに居る奴も剣士と槍使いと荷物持ちだ」



 詩葉さんとリコルはそのまま……ルフィスに俺の槍を持たせてある。俺は男だし、そもそも対象外である。



「僧侶だと?」


「あぁ、何なら誰かを探すのに役立ちそうな加護でも与えようか? 勿論、幾らかのお布施はいただくが……足が速くなるのもあるぞ?」

「……悪くないな。効果はどれくらい続く? それと、幾らだ?」



 交渉成立、しかも自然と俺達の中に居ないという事も信じさせられている。勿論、これ以上に踏み込んでこない相手側に助けられているのもあるが、こっちには最終手段の催眠がある。

 聖女がようやく稼げると意気込んでいるのが、この作戦で進めた理由の一つでもある。



「効果は一時間程。お布施は気持ちだ……とりあえず加護を与えるから、その効果に対する分をお願いしたい」

「了解だ。だが、まずは確証が欲しい。いきなり呪いを掛けられたんじゃたまったもんじゃないからな」



 これも想定の範囲だ。俺だって疑って掛かるしな。俺達に加護では騙すつもりは無くても相手にとっては未知なのは変わらないし、初対面でもあるからな。



「分かった。僧侶、俺に加護を……その後にこの人に」

「かしこまりました~」



 聖女に加護を付与してもらい、俺は適当に走って見せる。当然、軽く驚いて貰える程度に抑えておくが。

 冒険者達の近くを走る事でアピールにもなるし、ウハウハだな。ルフィスの出来事も上手く利用すれば金になる。一〇〇%マッチポンプではあるが、そこは気にしないでおこう。



「加護はどうする?」

「受けさせて貰おう。僧侶さん、お願い出来るか?」

「えぇ、いきますよ~」



 加護を受けたその男が効果を確かめ、満足したのか、それなりの額を支払ってくれた。この階層で稼いでるくらいだから金回りが良いのか、価値をそれなりに理解してくれたのかは知らないが、その男を引き金に他の冒険者達からもそれなりの金が入った。



「じゃあ、俺達は他の冒険者にも掛け合ってくるよ。見付かると良いな、その魔法使い」

「あぁ、俺は見たが綺麗な髪だった。あれは美人に違いねぇ……一目惚れしちまったよ。それが冒険者だぜ? しかも、強いときた! 絶対に見付けて告白してやる」



 おや? こいつがおかしいのか? ……いや、他の冒険者も頷いている所をみると一定数は同じ思考の奴がいそうだな。

 これは別の意味でバレる訳にはいかないと思いながら、俺達は先へ進むことにした。

 この後も似た手口で金を稼ぎ……と言うと悪いことをしてそうだが、ちゃんと加護は与えているし、ちゃんとした商売だ。ルフィスの次はこの事で話題になりそうだと、少し不安な気持ちはあったが、貴重な収入源でもあるし今後も続けていく予定だ。



「まさか、ルフィスを探している理由がなぁ……」

「確かに少し驚いたわね。後ろ姿しか見てないのに惚れる男が居るという事実に」

「ふっふっふー……私に告白したいなら華麗に危機から助け出して貰わないと、ですっ!」



 俺と詩葉さんの頭の中に『あ、調子に乗り始めるぞ』というのが浮かび上がった。あと、何気に詩葉さんの男という生き物に対する考えが刺々しい……これも何とか緩和しておかなければ。



「ルフィス、加護を付与したアイツ等に追われるという危機でも味わってくるかい? 誰かが助けてくれるかもよ?」

「い、一縷さんが助けてくれるのです……よね?」



 俺は無言のまま、笑顔を浮かべる。どう解釈するかはルフィス次第であるが、勿論、助けないの意味しか含んでいない。

 ルフィスみたいな子は、絶対に慣れてくると調子に乗って『その魔法使いの他に良いところって……』なんて聞き出そうとするに違いない。

 パーティーの中だけなら、調子に乗るくらいは良いんだけどね。



「詩葉さん、俺は詩葉さんの後ろ姿は背筋が伸びてて綺麗だと思いますよ。正面の詩葉さんを知ってるから言えるのかもしれませんが、街中で詩葉さんの後ろ姿を見たら、思わずついて行きたくなる程に」

「納得はしないわよ。一縷君が私に似た他人の後ろ姿を見て、ついて行きたくなる可能性を含んでいるのだもの。肯定したくは無いわ」



 あー……そういう捉え方も出来るのか? なるべく詩葉さんの名前を連呼したつもりだが、失敗だったな。



「あ、オークだ。行ってくるね」



 話の流れを切るように、俺は現れたオークを倒しに走り出した。

 お布施を集めながらになったから少し遅くなったが、三十階層のボス部屋前にまで、ようやく辿り着けた。



「今日はここで泊まってからボスに挑む? それとも……」

「「倒してから休みましょう!!」」



 俺とルフィスの声が重なって、もう少しだけ頑張る選択をした。三十階層のボスは、白いゴリラみたいなモンスターで、前回は加護を付与して貰ったルフィスが倒している。

 だから今度は俺の番で、動きの機敏さとパワーを兼ね備えた厄介なタイプだが、いつも通りにやれば勝てると踏んでいる。でも一応、聖女に加護を貰っておこうかな。



 ◇◇◇



『ウゴォォッ!!』

「ちっ、思ったより硬いっ」



 対ゴリラ戦。おそらくオーガ並みに武器での物理攻撃が通らない。今までなら時間をかけてゆっくりと削っていけたが、今はそう上手くいかない。

 俺が付けた切り傷は血がすぐに固まる。だと言うのに、ゴリラの攻撃は食らうと骨に響くだろう。回避を失敗すると怪力の餌食となる。



 ――だが、それは今までだったらの話。



「三秒『弱電撃(スパーク)』!!」

『ウガァァッ――――ッ!?』



 一撃の弱電撃ではなく、継続型の弱電撃。

 このゴリラ、厄介な事に魔法からの立ち直りが早かった。一撃を与えれば確かに痺れるが、こちらが距離を詰めようとした時には反撃の体勢に入っている。


 だからこその継続型。魔方陣を維持する分、少し多目に魔力を消費するデメリットはあるが、継続的に魔法を行使して相手の動きを阻害出来るメリットを今回は取る事にした。

 そして俺は、その動けなくなっている間にゴリラの背後に回り込み、首を槍で貫き、引き裂いた。



「ふぅ……少しだけ厄介だったが、色々と試せたな」

「お疲れ様。リコル、剥ぎ取るわよ」

「うん!」



 残念ながら、宝箱はまたしても出なかった。まぁ、そんなポンポン出るとは思っていないけど、毎回ガッカリ感はどうしても味わってしまう。

 次のボスに期待か、また来た時に期待するしか無いな……。


 リコルが硬い筋肉に四苦八苦しながらも、何とか詩葉さんに教わりながら解体して、使える部位を手に入れた。

 リコルがゴリラの腹を()(さば)いて、その中に手を突っ込む姿は……まだ慣れないな。



「さ、時間も惜しいし行くわよ」



 ボス部屋を後にして、次の階層へ続く扉の前にやって来た。普通のエリア、暑いエリア、寒いエリア……指輪が二つの種類しか無いことを考えると、暑いエリアか寒いエリアがくるだろう。



「詩葉さん、このダンジョンの最高到達エリアってどこまでか知ってる?」

「たしか、最近……と言ってもだいぶ前らしいけど、四十階層のボス部屋らしいわ。そこまで行くより、少し手前で稼いだ方が割が良いらしいのよ。ダンジョンについては深く調べては無いのよね」



 まぁ、どんなモンスターが居るのかは行けばわかるし、四十階層より先に冒険者が居ない……もしくは少ないのなら、多少は暴れても平気だろうし、好都合ではある。

 行き来で何日も掛かる事を考えると、確かに、稼ぐのならこの辺りで集中した方が良いだろう。強くなりたい者だけ先に行けばいいのだし。



「じゃあ、開けますよっ!」



 ルフィスが扉を開くと――十一階層よりも、更に暑さを増したエリアが俺達を待っていた。寒いエリアを指輪無しで耐えてきた俺だけが、気温差でそう感じてる訳では無い。指輪をずっと使っていたルフィス達も暑いと声に出しているのだから。



「ヤバい……もう汗が止まらないんだけど。一回指輪使おう」

「これは……流石に暑いわね」



 詩葉さんが暑いと言うんだから気温的には四十度後半以上はあるかもしれない。太陽の熱ならば日陰に入る事で多少はマシになるかもしれないが、ダンジョンのこのエリア自体が暑いのだ……どうしようも無い。男の俺なら上着を脱ぐ事も出来るが、他の皆はそうもいかないだろう。



「ルフィス、ちょっと……水掛けてくれない? 流石に暑い」

「服のままですか? じゃあ、とりあえず……それっ!」


「あ、ちょっと気持ちいい。服のままでもすぐに乾くだろうし、良いかも」



 冷たいのは数秒で、すぐにヌルくなる。そして、汗か水なのか分からなくなってくる。

 前に暑い方が寒いよりマシと思ったが……これは、考えを改めないといけないかもしれないな。



「とりあえず、進んでみようか……」

「はーい……」


 暑さにやられ始めたのか、ルフィスですら元気が無くなって来た。だがしかし、こういったダンジョンならば俺達が適応するしか無いだろう。



 ◇◇



 めっきり冒険者の姿を見掛けなくなった。詩葉さん曰く、居るには居るらしいが前の所と比べるとかなり数は減っているらしい。

 俺達も水分をこまめに取る事で対応はしているが、流れる汗を止める方法が無い以上じり貧だ。

 詩葉さんもここまでの暑さにだとは流石に思っていなかったらしい。『驚きね……』と、汗ひとつ掻いてない顔で爽やかに言われた。これもレベル差だろうか? それとも変熱耐性のレベルが高いのだろうか? それもあるだろうが爽やかに言ったのは単純に俺への嫌がらせだな。



「一縷君、曲がり角の右からモンスターが来るわよっ!」

「うっし、それはそれこれはこれ!!」



 俺はモンスターが出て来るまでに気持ちを切り替えて槍を構えた。

 姿を見せたのは、ドーベルマンの様なスリムなボディを持った犬のようなモンスター。この暑いエリアでは、速さのある動き回る系のモンスターが一番厄介だと思っていた所に……このモンスターの登場だ。



「ルフィス、魔法で狙えるか?」

「やってみますっ! 『水呀斬弾(カットバレット)』!!」


『グゥゥ……ウォンッッ!!』



 ドーベルマンが火を吹いた。

 しかも、ルフィスの魔法に正確に当ててくる命中精度の高さも兼ね備えている。流石は帝国のダンジョンだ。そりゃ他国より強くはなるよな。


 だが、オークみたいな体の強度はなさそうだ。見た目も細いしな。

 ここは、ルフィスの出番じゃなく、俺の出番だろう。暑いから最小限の動きで速やかに倒しきる。倒しきれなきゃ俺が負ける。


 三回程繰り返し自分に言い聞かせながら、今までの経験を元に攻略法を模索する。



 ――よし、いくか。



 俺は自分の出せる最速の動きで近寄り、同じく動き出したドーベルマンと対峙する。大事なのはタイミング。口を開けて噛み付いてこようするドーベルマンを跳躍することで真上に回避し、そのまま体を半回転をさせながら槍で胴体を貫き、そして、切り裂く。



 汗が、大量に流れ出して来た。



誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)



新しいハイファンタジー作品を投稿しました!

よろしければ、マイページの方から移動して読んでやってくだせぇ!

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