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第30話 凶悪なコンビ技だよ in 異世界

すいません、けっこう書いてるつもりが、何故か思ったほど文字数いってないという現象に見舞われていました。


よろしくお願いします!

 


 私達はラッカーラ王国での祭りを終えて、エルミック王国へと戻っていた。



「葉桜さん……大丈夫かい? どこか、浮かない顔に見えるけど」

「えぇ、大丈夫」



 私に声を掛けた坂倉君も顔は暗い。というか、私は別に普通だ。少し考え事はしていたけども。

 考え事と言っても深刻な事じゃない。有加に会えた、それに……一縷も居た。居ないと思っていた一縷がいたのだ。本人は秘密にしないといけない事情があるみたいだけど、それでも居てくれて助かった。面倒事は全て一縷と有加に任せれば良いのだから。



「一縷……強かったな」

「えっ? ひかりちゃん、何か言った?」


「ううん、何でも。ただ、あのローブの人強かったなって」



 私の発言で更に暗い雰囲気になってしまう。

 確かにまだ三ヶ月程度といえ、勇者なのだ。ベテランの冒険者には届かないかもしれないけど、能力の上がり方は優遇されている筈だった。

 そんな皆が束になっても苦戦していた魔族を、あのローブの人……一縷は倒してしまった。私と有加に手伝わせていたけど、そんなものは必要無かったくらいに強かった。

 時期的にはきっと同じ筈なのに、差が広がりすぎている。



「確かにな。報酬が優先のいかにも冒険者って奴だったが、強かったな」

「魔法って見ましたか? 雷魔法の初歩の初歩って技だけで、後は槍でしたよ?」



 今までの一縷には考えられない動きをしていた。それは、有加にも言える事だけど……皆、変わっていってるのだろう。

 私は、どうだろうか? 後ろから皆に回復魔法や光魔法での援護。ほとんど動かなくて良いポジションだ。



「まぁ、私らしいか。私に出来る事以上の事は出来ないんだから」



 一縷や有加の様に槍を振り回したりなんか出来ないし、そもそも動き回るのは面倒臭い。

 出来ない事を無理してするよりは、出来る事を伸ばした方が良いと自分に言い聞かせて、割り切る。


 エルミック王国へまでの帰り道、私はラッカーラで有加と話した事を思い返し始めた。



 ◇◇◇



「はぁ……何だったんだアイツは」



 いかにも不良で、確か……後藤とかいうボルトン帝国に召喚された奴が色々と言っている中、私は有加の元に近寄って話し掛ける。



「やっと、話せるタイミングが出来たけど……話すことも増えたね」

「うん……。ひかり、私泣きそうだよもう……」



 元々、背は大きいのに心は小さめな有加だ。ボルトン帝国で大変な思いもあっただろう。特に後藤。このラッカーラに来ているという事は、おそらく有加と同じパーティーだろうし。



「でも、良かった。一縷のお陰で面倒が減る」

「ふふっ、ひかりは一縷君に任せすぎよ。相変わらずだけど」



 それから有加と一縷の強さについてや、お互いの国についての情報交換……国を抜け出せない事の確認とか、色々と話し合った。


 勇者を……有加に腕輪を着けているボルトン帝国は信用出来ないと思う。でも、エルミックも監視はしているし、まだマシという程度でしか無いと思える。



「とりあえずは力を付けないといけない、今以上に」

「そうだね。大変だけど……足を引っ張ら無い様にね」



 今のままだと誰の足を引っ張るかは分かりきってる。

 私も面倒は押し付けるが、足を引っ張りたいとまでは思ってない。



「皆の者。ご苦労であった!」



 王族だからこの世界では仕方がないとはいえ、真っ先に逃げていったエルミックとボルトンの王族が戻ってきた。

 魔族が倒れて居るのを確認した、ボルトンの皇帝が開口一番そう言った。


 王達は見ていないから私達が倒したと思っているのだろう。だが、私達の空気は少々重たい。仕方がない事だけど。



「して、トドメは誰が刺したのかな?」

「いえいえ、ここは誰が活躍したかを聞くべきでしょう」



 魔物の死体からは素材が取れる。それが魔族の死体ともなれば、より価値があるのだろう。誰の攻撃で最後に倒したか、誰が活躍したかは、別のパーティーが一緒になって戦った時に配分に関わってくる。

 王達が気にしているのはそこの部分だろう。利益の争いが起こるのは仕方がないとはいえ、目の前でこうも露骨に繰り広げられるとひどく醜いと感じてしまう。



「いえ、これは迷惑をかけたラッカーラ王国に……気持ち程度ですが贈ろうかと思います」



 坂倉君が口にしたことに三倉くんも同意する言葉を続けた。またしても後藤という男だけが不満の声をあげていたが、勇者側の総意とするために黙殺されていた。


 王達は少し協議に入り、ラッカーラに取り分を五割で二国で残りを半分という事に決まったらしい。本当に汚い。



「勇者達よ、明日は魔族の討伐も大々的に宣伝する。祭りは明日までである。十分に交流を深めよ」

「今日は疲れたであろう……十分な休息を取るとよい。勇者達を部屋へと案内してさしあげろ!」



 交流を深めろと言いつつも部屋は個室で、部屋の前には兵士が常に待機している。深く関わって情報の流出を恐れているのかもしれない。

 あぁ、何にも縛られて無い一縷が羨ましいと思ってしまう。隣の芝生は青く見えるというやつなのだろうけど……。



「じゃあ、有加。また」

「うん……絶対無事でいてね……これから先も」



 私は危険な事はしないし、どちらかと言えば私の台詞だと思いながらも、その場を後にした。

 次の日も結局は話す機会に恵まれず、そのままお互いの国へと戻る事になってしまった……次に有加と会えるのは魔王が復活してからかもしれない。一縷に会えるのは、果たしていつになるだろうか。



 ◇◇◇◇◇◇



 どうにか目を覚ます事が出来た。どうやら、この寒さの中でも死ぬことは無く、無事に睡眠を取ることが出来たみたいだ。

 この前、久しぶりに旧友というか……小学校からの同級生に会ったからか、今更だけど夢を見た気がする。全然思い出す事は出来ないけど。



「寒い……寝袋から出たくない」

「一縷君、体が(あたた)まるお茶を入れるから早く出てきなさい」



 詩葉さんに誘われるままに、お茶を目指して動き出す。

 詩葉さんの作った壁に異変は無いし、モンスターからの攻撃は無かったのだろう。本当はあったかも知れないが、問題無いならそれでいい。

 今日は出来ればこの寒いエリアを何とか抜け出したいと思うが、下に行けば行くほどダンジョンが広がっていくみたいだし、厳しいかもしれないが、どんどん進みたい所だ。幸いにして、モンスターはまだ余裕である。



「今日はお兄ちゃんが一番お寝坊さんだね!」

「うぅ……リコル、ちょっとおいで」



 何とか寝袋から這い出て地面に座った俺は、リコルを呼んで暖房代わりに足の間に確保した。

 普通の体温であるリコルは、俺からすれば十二分に暖かい。



「お兄ちゃんも我慢しないで指輪を嵌めたら良いのに……」

「それはそうなんだけどね……もう少しだけ頑張ってみるよ。でも、朝はリコルに助けて欲しいかな?」


「しょうがないなぁ~お兄ちゃんは!」



 リコルはそう言って、大人しく座っていてくれた。

 詩葉さんにお茶を貰って、猫舌を気にしないで、熱さを我慢しながらお茶を飲み込んだ。喉から胃にかけて一気に熱を持ったのを体感して、朝食のサンドイッチを食べていく。これで一応、俺の朝の準備は終わりだ。



「ありがとう、リコル。じゃあちょっと、壁の外を見てくるね」



 リコルにお礼を言って、壁に寄って穴を開ける。そこから外を見てみるが、モンスターの様子は見られなかった。これなら普通に動き出しても大丈夫だろう。



「詩葉さーん、問題は無さそうですよ」

「分かったわ。こっちの片付けが終わったら行きましょうか……ちゃんと身体を温めておきなさいね」



 詩葉さんが調理道具を片付けている間に、身体を伸ばしたり、槍を振ったりしておく。

 ルフィスが今日は先を歩くと言い出した為、汗を掻かない程度に変更だ。汗で冷えるとより寒いからな。


 数分後に準備が整った詩葉さんが土壁を崩して、俺達はダンジョン攻略を再開した。



 ◇◇



「よし……大丈夫ですね」



 前を歩くルフィスが曲がり角から首を出して、確認している。

 見付かる前に見付ける。これは大事なことで、先手必勝というのは勝つためには必要な事だ。



「もう、王女成分は欠片程度しか残ってないな」

「王女なんて物語に出てくる様な綺麗なものじゃないのよ? 本当はね……ルフィスは珍しいと言えるわ」


「お姫様は綺麗であって欲しいというのは男の我が儘かね……」



 ゲームの姫やお話の中にいる姫はたいてい綺麗なものだ。悪役の姫というのも居るだろうが、少数だろう。

 だが、残念な事に詩葉さんが言うには、性格の裏表を使い分ける悪女の様な姫がほとんどらしい。この世界では、お姫様だとしても(したた)かで無いと生きていけないらしい。



「詩葉さん、一縷さん、モンスター発見です! 行ってきます!」

「気を付けてな」



 この寒いエリアではルフィスの火魔法が大活躍していると言っても良い。敵モンスターの弱点でもあるのだろうが、初級の魔法でもモンスターを倒せる為、効率がとても良い。しかも、本人もいつもよりモンスターが倒しやすいのか……調子が良さそうである。



「よし……皆さん、大丈夫ですよ! 先に進みましょう!」

「ルフィス姉凄い! 今日は大活躍だねっ」



 ルフィスの使う初級より、モンスターを倒して次を見付けるまでに回復する魔力量の方が上回っているみたいで、俺の体は冷えていくばかりだ。


 それから順調に階層を下へ下へと進んで行き、二十三階層から下へ行く坂道を見付けた時に問題が起きた。勇者である。

 俺達がダンジョンに潜る時は二十三階層に居るという情報であったが、今は一つ下に進み、二十四階層に居るらしい。つまり、封鎖していやがった。



「潜っていたパターンだったね。ホントに封鎖してんだな」

「そうね。ちょっと一縷君、話を聞いてきて貰えるかしら? いつ引き上げるのかを」



 もう坂の前で陣取っている兵士姿の男に俺達は見られている。と言っても、ローブを被ったり、布で顔を隠した状態の俺達だが。だから、特に気にせずどんどんと進んで行く。



「すいません。下へ進みたいんですが、勇者様達はいつ頃引き上げるのでしょうか?」

「……ふん。今は皇帝陛下が、他国へと赴いておられる。だから、城へと帰る必要が無い……食料は交代で兵士が届けるからな。それに、陛下からもダンジョンに泊まって強くなるように言われている。ここまで言えば分かるな? 勇者様が優先だと言うのは理解出来るだろ?」



 なるほど……。皇帝に対して『さっさと帰ってこいよ』という気持ちもあるが、今の問題点はそこじゃない。

 それまでの間、どうやっても勇者達より先に進めないという事が一番の問題だ。次点で、勇者達のペースが遅いという事……速ければ問題無いのだがな。


 だから普通の冒険者はここで諦めるしか無いだろう。方法が無いから仕方ない。そう……普通なら、な。



「分かりました。ありがとうございます」



 方法の幾つかは既に思い付いている。物騒なものから安全なものまで、選り取り見取り。

 俺は詩葉さん達の元に戻り、今聞いてきた事を伝えて、作戦を練り始めた。



「私はぶん殴るのに一票よ」

「物騒な……ルフィスやリコルが真似し始めたら困るから、その案を第一に持ってくるのはやめてくれ……」



 お手軽だし、後先を考えないで良いのならその手段が一番だ。だが、絶対に目を付けられるだろう。俺達のこの姿は見られてもいいが、悪目立ちは良くない。ルフィスが居るしな。



「俺の『消音空間(サイレンルーム)』と『連結する隠密(コネクトバニッシュ)』で……」

「ちょ、ちょっと一縷君!? ごめん、急に技名(それ)……どうしたのかしら?」



 ん? どうしたんだろか? 俺の作戦だったらあの兵士を少し退()かすことが可能なら、音もなく侵入出来る。何かおかしい点でもあったのだろうか?



「え? いや、俺なりに作戦を考えてみたんだけど……駄目だった?」

「いや、良いのよ? 作戦自体は、一縷君の能力を十全(じゅうぜん)に活かせているし……その、なんて言えば良いのかしら? 技名だけど……いつの間にそんな“格好良く”なったのかしら!?」


「それ、私も思いました! 何やら凄そうな技名ですけど、どんな技なんです?? 名前だけじゃ私達には分からないのですが……」



 ふふっ、やはり詩葉さんとルフィスは反応したか。予想通りではある。これは、二人に寄せた技名だからな。

 正直に言うのならば、技名とか必要無い。でも、あった方が“二人のウケが良い”……その為だけに言っている感がある。



「ほら、『消音空間』は周囲の音を消すやつで、『連結する隠密』は皆で姿を見えなくするやつだ。まぁ、その場の勢いと思い付きで言ってるから、その都度変わると思う」


「あぁ、あれですね! でも……あの体格の良い人に退いて貰わないとぶつかって通れませんよ?」



 問題はそこだけ。まぁ、それも方法はある。成功するかは分からないけど、一度くらい試してみる価値はあると思う考えだ。

 俺はその作戦の為に必要なスキルを持つ詩葉さんに概要を説明して、一緒にあの兵士の所へついて来て貰った。もちろん、姿は消して……だ。



 ◇◇◇



 “ルフィス、石を放り投げてくれ”

 “分かりました!”



 声が聞こえない為、ルフィスの右手を三回握って合図を送る。

 俺の左手にはルフィス、右手には詩葉さん、背中にリコルを背負って、聖女は俺の服の裾を掴んでいる。

 始めは手を繋いで一直線で行く予定だったのだが、新事実が発見された。俺と手を繋いでいたルフィスと詩葉さんは消え、リコルと聖女が消えていなかったのだ。


 原因は何かと探った結果、分かったことと言えば、俺が触れていると感じる距離に相手が居ないと、技が発動しないという事だ。だから、リコルは背中で聖女は真後ろで服の裾を掴んで貰っている。



 ルフィスが足下にあった石を投げると、それに反応した兵士が道を開けて確認しに行く。作戦は……成功した。石を拾って戻ってくる前に、俺達は急いで坂道を下って行き、二十四階層へと辿り着く事ができた。幸いにして下りて来た所の出口には兵士が居らず、消滅魔法の効果を一度解除することにした。


 俺達は音が響かない様に、静かに手を合わせて作戦の成功を喜びあった。



「上手くいったわね」

「あぁ、俺の技と詩葉さんの催眠。悪用したらとんでもない事になるな……」



 凶悪としか言えないコンビ技だ。俺の『見えざる者(ゴーストモード)』と詩葉さんの人を操る催眠。犯罪者が使えたら国家転覆じゃ済まない能力だと思う。

 俺達が国を欲しがる反逆者じゃなく、純粋無垢な少年少女だった事に感謝し、表彰しても良いレベルだ。実際にそんな事をされても迷惑だし、言ってみただけだけど。


 詩葉さんが掛けた催眠は単純で、『自身の近くで何かの音を聞いたら確認しに行く』というものだ。これなら、変な違和感も残らない筈である。



「流石に私でも……一縷君のその技を見切るには、神経を集中させないと無理ね。匂いも消されたら……後は本当に気配や土の動き、魔法で風を流して、それを頼るしか無いのだし。それ以外にも遠距離の攻撃を……厄介ね」

「詩葉さんが大袈裟に言ってるんじゃないとしたら……強すぎる能力だな、消滅魔法って。再生持ちの、一発で核を潰さないといけない敵くらいかな、苦手な敵っていうのは」



 褒められてむず痒いが、魔法が強いだけなんだよな。詩葉さんの様に多種多様なスキルを持つ相手だと、狙いを定められなかったり、翻弄されて負けてしまうだろう。だから今は槍を鍛えたり、戦闘での動き方を学んでいる途中だ。



「まぁ、私が敵になることはそうそう無いし、今考えても仕方ない事ね。さて、この階層だけど……一縷君の魔力が残ってる内に駆け抜けるわよ! 聖女は私が背負ってスピードを上げるからルフィスも手を離さない様に」


「リコルは俺が背負ったままな~、落ちない様にね」

「はーい!」



 勇者が居る場所の先にさえ行っていれば、後ろからやって来ても先に進めば良いだけである。だから、勇者より前にとっとと行ってしまおう作戦だ。

 これは下手すると、今後も使う作戦にもなるだろうな。



 俺達は手を繋いで……走り出した。ルートを決めるのはルフィス。ルフィスに手を()かれてその方向に進んで行く。

 時には戦っている勇者達に遭遇して慌てて引き返したり、モンスターの横をスッと通り過ぎたり。魔力が減っていくのは感じるが、これも修行にはなると思い、走り続けた。



 ◇◇



 俺の魔力がだいぶ減った時に、ようやく次の階層へ進む坂を見付ける事ができた。結構ギリギリだったが、走ったお陰でだいぶ身体は暖かい。



「こっちの方には兵士は居ないんだな?」

「そうみたいね……行きましょうか、階層を飛ばしたという事だけど、時短できたしね」



 そういう言い方もあるな……と思って、俺達は二十五階層へと降りて行った。この辺りからはダンジョン半ば、モンスターも強くなっていくだろう。より気を引き締めていかなければ怪我をしてしまうだろう。気を抜いて怪我をしたら……詩葉さんからの指導で怪我が大怪我になる事間違い無しだ。


 本当に気を引き締めていかないと……な。



「一縷君? 何かしら?」

「な、何もないよ! 次は俺が先頭に立つね! ふんふんふーん」



 少し視線を送っただけなのに、鋭い視線を返される関係。

 少し詩葉さんを怖く考えていたから間違ってないし、むしろ察してくれているから仲が良いとも言えなくは無いが……それよりもシンプルに怖いが勝る。


 俺はそんな心情を含めて色々と誤魔化す為に、鼻歌混じりで先頭を歩く。


 そして、二十五階層に到着して少し歩き、曲がり角のその先で久しぶりにアイツを見ることになった。



『ブモォォッ!!』

 

「オーク……」

「一縷君、あれは白豚人(スノーオーク)よ。普通のオークと違うのは、肌の色だけじゃなくて……凝血の早さね。血が流れて数秒には固まり始まるの。つまり、流血での消耗戦はあまり意味が無いわ」



 前に戦った時は少しずつ削り、体力の消耗と血の消耗をさせて勝ってきた。血の消耗が無くなるとすると、部位を完全に断ち切るか、心臓部や頭部を貫くしか無くなる。

 防御力の高いオーク……オークが居るならばオーガも居ると思った方が良いだろう。そのモンスター相手に攻め勝たないといけないというのは疲れるだろう。

 あの時に皮膚の硬い魔族と戦っておいて良かったと、今更ながらに思う。


 今回も先に戦闘を観察したかったが……すぐソコにオークが居るし、仕方ない。俺は前回のオークを思い出しながら戦う為に、曲がり角からタイミングを見計らって、走り出した。



「はぁぁっ!!」

『ブゥッッ!? ブォォ………ォ!!』



 くそ、背中から腹部にかけて真っ直ぐに貫いたが……これじゃ倒れはしないか。すかさず手を振り回して反撃してくるその耐久力と精神力は凄い。


 だが、動きは遅く感じる。あの時よりも俺が成長したからかもしれないが、今のオークの動きなら問題無く対象出来る。



『ブモッッ!!』



 こちらに向かってくるオークの腹部を見ると、流血はしていない。正確には止まっている。痛みはあって欲しいと願うが、こう走って来られたらそれも疑問に思わざるを得ないな。



「元々、痛みには鈍感なんだっけ……かっ!!」



 オークの右の拳を避け、その反撃として脇腹につま先を突き刺すつもりで蹴りつける……が、ダメージが通った感触は無い。低反発のクッションを蹴ったかの様にオークの脂肪に吸収されていった。



「雷魔法『弱電撃(スパーク)』!!」


『――――ッッ!?』



 オークが声が出ていないが叫んでいる様に口を開けて痺れている。やはり、魔法には弱いんだな……それが分かっただけでも一安心だ。

 以前は魔法が使えずに槍の訓練相手になって貰っていたが、今度からは、効果的な初級魔法の使い方を試す相手になってもらおう。

 俺は痺れて動けないオークの首を槍で()ねて、久しぶりの相手に別れを告げる。



「終わったよ」



 詩葉さん達に声を掛けて、戦ってみた感想をルフィスに伝える。打撃が効かないから、魔法オンリーで前と同じ様に戦えばルフィスも問題無いだろう。むしろ、俺よりも短い時間で倒せるし。



「この辺もまだ、見付けたら倒すってレベルで良いと思うよ」

「そう……じゃあ、それで行きましょうか。先導任せたわよ」



 リコルがオークから牙を剥ぎ取って、俺達は次の階層を目指して歩き出した。


 先ほどの階層で見た勇者達は、パーティーで戦っていた。それが悪いとは思わないが、一人でも倒せる様に訓練しなくて良いのかと、少しだけ思うところがある。

 冒険者達も基本的にはソロよりパーティーらしい。本当に悪いとは思わない……が、オークと再会して、前のダンジョンでキングオークに殺されたパーティーを少し思い出した。

 誰かがやられるとそのまま崩されそうで怖いのが、パーティーというものだ。その辺も誰かが考えてくれればいいんだけどな。



「ま、俺が気にしてもしょうがないか……よし! じゃあどんどん進もうか!」

「ですねっ! 一縷さん、疲れたらいつでも交代しますからね!」



 身体が暖かい内は、任せてくれとルフィスに言って、周囲を警戒しながら二十五階層の通路を進んで行った。



 ◇◇◇



「ったく、後一日も掛かんのかよ……」



 後藤の文句を聞くのにも慣れてきた。もうすぐボルトン帝国に戻ってくるが、行きと違って私の心は興奮が収まっていなかった。

 ひかりにも会えた、それに一縷にも会えたからだ。


 本当に良かった。この世界に来たことは良くない事だろう。でも、来てしまった事を前提にすると、やはり一縷が居てくれて良かった。それだけで私は腐らずに済む。まだ希望がある。本当にピンチの時は、あの時みたいにまた一縷が来てくれるって。



「それにしても、あのローブ野郎」

「また、そいつの事かよ? ずっと言ってるぜ?」



 自分より圧倒的に強かったのが許せなかったのだろうか? そんな心情は全く分からないけど、一縷の事を黙っていなければいけないもどかしさがある。

 凄いんだぞって、あれは私の……親友なんだぞ! って言って回りたい。



「おい、ボルトンに着いたらダンジョンに(こも)るぞ。今頃、他の奴等は潜ってるそうだしな」

「あー、それはずりーよな? 俺達もレベルとか上げてーし? みたいな?」



 それは同じ意見だ。目的は違うけど。私は一縷をお手本に頑張るつもりだ。あの時に槍捌きをみせて貰っているから。一縷は元々、あんな芸当は出来なかった筈なのに、いつの間にか強くなっていた。

 相当努力したと思う。私はまだ足りてないんだなって思った。こんなんじゃ、置いていかれるばかりだと……それだけは少し悔しい。


 とりあえず、自主練をもう少し増やして、槍を振っていようかな。一縷の槍のフォームは一挙手一投足、ちゃんと覚えている。



「握り方はこうで……」

「佐島さんもずっとだぜ? ……暇なのは分かるけど槍を持ちすぎじゃね?」



 今は一秒でも多く槍に触れていたいのだから、仕方ない。癖になるくらい槍を握っておくくらいで丁度良いはずだしね。



「早く、ボルトンに着かないかな……」



 そんな事を口に出しながら、一縷のお陰で私だけ自由を手に入れた事で、抜け出したい気持ちや他の人への迷惑になるという気持ちを葛藤していた。


 いつも結論は出ない。それでも考えてしまう。


 いつ結論が出るのかは分からないが、いつかの為に考えておく。空を見てため息を吐く。最近、というかこの世界に来てからため息も多くなったと、自覚しながらボルトン帝国まで馬車に揺られて行く。



「そういえば、一縷って誰かと……居たよね?」



 誰かと居たことは、あの会場を思い出してなんとなく分かる。だが、しっかりと見ていなかった為、それが何人だったのか、男性だったのか女性だったのかが分からない……またもどかしい気持ちが一つ増えてしまい、ため息もまた一つ増えてしまった。



「はぁ……」



誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)

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