第3話 他の勇者だよ in 異世界
短めですが、よろしくお願いします!
「ようこそ勇者様!召喚に応じて下さり、誠にありがとうございます!」
俺の名前は名前は坂倉和也。今、非情に困惑している。というか頭がついていかない。どういう事だ?さっきまで教室に居てみんなで簡単な自己紹介をしながら、先生と遅刻してるだろう生徒二人を待っている所だったのに。急に床が光って、気づいたらこの状況だ。目の前には王冠を被った人が居て、両隣には綺麗な子とイケメンな人が居て…もう、訳が分からない状況だ…。
「あの、すいません。状況が飲み込めないのですが。僕達はどうしてここにいるんでしょうか?」
「それは私から説明させていただきますわ」
金髪でぱっちりとした目に可愛らしい口から出る声。驚くほどに可愛い。この場にいる俺を含めた男子達が全員見惚れてしまっている。女子達も、金髪のイケメン……この子のお兄さんだろうか、その人に釘付けだ。
「今、この世界は魔王という存在の復活が予言され、危機に瀕してます。予言では、異界より勇者を召喚すればこの世界の安寧はもたらされると出ました。私達は勇者召喚の儀式を行い……その結果、皆様が勇者としてここに居るのです」
分からないから聞いてみたけど、より分からない事が増えてしまった。魔王?勇者?ちんぷんかんぷんだ。俺達にどうしろというんだ。今日から高校生の俺達に勇者なんて力は当然持っていない。
「とは言っても俺達ただの高校生だぞ?」
「ていうか、ここどこよ?帰してよ!」
「俺達に戦えと言ってんのか?」
「皆様が不安に思う気持ちはお察しします。ですが、安心してください。昔にも勇者の召喚は行われましたが、その時の勇者様は魔王を封印した後に元の世界に帰ったと文献にはあります。魔王さえどうにかすれば皆様も元の世界に帰れるのです。そして、召喚された時に皆様には魔王を倒す為の強力な力が宿っている筈です。誰かこの水晶に触れてみてください。」
「じゃあ、俺がやってみよう」
俺は言われた通りに水晶に触れた。
「はい。これで大丈夫なはずです。指を前に、下に振りながらステータスと唱えてみてください」
「ステータス」
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カズヤ サカクラ Lv1
HP 200/200
MP 300/300
STR 60
VIT 60
DEX 60
AGI 60
INT 60
LUK 60
スキル
光魔法 Lv1
聖魔法 Lv1
ユニークスキル
『聖剣』
称号 『聖剣の勇者』
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おぉ…なんだこれ。よくゲームとかで見るステータスじゃないか。
「みんな、とりあえずこの水晶に触れてくれ……って!全員いない!?」
俺は振り向いて初めてクラスの人数を把握した。教室の席は37名分あった。今いるのは…19人しかいない。どういう事だ?みんな一緒に光に包まれたと思うんだけど…。
「あれ?千香がいない」
「涼介もいねーぞ」
「おい、和也。どういう事か聞いてくれ」
俺にそう言ったのは中学からの付き合いのある三倉祐也だ。俺はサッカー部で祐也は空手部だったがいつの間にか意気投合してよく一緒に居るようになった親友だ。
「分かった。あの、僕らが光に包まれた時にもっと人が居たのですが…」
「それはですね、召喚の儀式をしたのはこの国エルミック王国ともう1つ、ボルトン帝国という国です。ここに居ない方はその帝国に居るのでしょう。私達の共通の敵は魔王であり、魔族です。その辺も追々説明いたしますがこちらの世界に居るということは申し上げておきます」
良かった。他のみんなからも安堵の声が聞こえてくる。
「という事らしい。とりあえずみんな水晶に触れてみてくれ。」
ここに居るみんなが順番に水晶に触れた。王様らしき人も姫様らしき人も他の人も笑顔というよりはニヤケてる、そんな顔をしてる気がした。
「指を前に出して下に振り下ろしながらステータスと唱えてみてくれ」
「なんだこれ!」
「これ、ゲームとかであるステータスのまんまじゃねーか」
「ちょっと詳しい人これの英語のとこの意味とか教えて欲しいんだけど」
ここに居るみんなが自分のステータスに興味深々だった。俺だってこんな非日常でゲームのような世界に来て少しワクワクしている。
「見ろよ和也。俺は闘拳の勇者だとよ!何か、スゲーなこれ!」
と、言われるが……どうやら他人のは見えないみたいだな。
「皆様、ご自分のステータスを確認されましたでしょうか?恐らく皆様にはユニークスキルや強力なスキルがあると思います。そのお力をどうか、この国、この大陸に住む全ての人の為にお貸しください。魔王から我々人類をお救いください。」
王女様が深々と頭を下げた。クラスの男子は既にやる気になっている者ばかりだ。女子はまだついて行けていない者もいるが誰も断ったりしていない。俺もせっかく人の為になる力を持っているなら頑張ろうと思っている。勇者として人を救わないとな。
「分かりました。僕達がこの大陸の人々を救ってみせます!」
「よく言ったぜ和也。俺もやってやるぜ!」
「ありがとうございます!自己紹介がまだでしたね。私はシャリー=エルミックです。こちらは、この国の王で私の父であるジークス=エルミック、その隣が私の兄のマルグス=エルミックです。皆様のお名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「俺は坂倉和也です」
「俺は三倉祐也だ」
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:
「私は葉桜ひかりです」
「私は叶美空だよ!よろしくね」
全員の自己紹介が終わった。俺達も出会ったばっかりで名前もちゃんと把握してなかったからいい機会だった。これから一緒に頑張っていくメンバーだしお互いの事はなるべく知っておいた方がいいだろう。後で俺達だけで話し合う場を作った方がいいな。
「皆様には武器の扱いや魔法の訓練、この世界の知識の勉強など、やって貰いたい事が沢山あります。少し忙しくなりそうですがどうぞよろしくお願いします。数日後には大々的にパレードを行う予定でして、皆様には人類の勇者として国民にお披露目します」
「分かりました。僕達もまだ出会ったばかりでして、みんなの意思も聞いておきたいと思うので僕達だけで話せる場所をお借りしたいのですが……」
「分かりました。案内させますので話終わったら外の者にお声をおかけ下さい。皆様を部屋に案内させますので今日はお休みください。」
「はい、ありがとうございます!シャリー王女」
「私の事はシャリーでいいですよ。カズヤ様」
「シャリーですね、分かりました。では、お部屋をお借りします」
俺達は部屋に案内してもらい、みんなで話し合う事にした。
「みんな聞いてくれ。僕はこの大陸を救おうと思う。色々と分かってない部分も多いけど人類の危機というのを見過ごせないんだ。どちらにせよ魔王をどうにかしないと元の世界には帰れない。この世界を救う力があるなら僕は救いたいと思う。勿論、戦った事なんてないし、魔王がどのくらい強いかも分からないけど……僕達は勇者の力を持っている。しっかり訓練すれば勝てないなんて事は無いと思う!だからみんなで力を合わせて頑張りたいんだけど、どうかな?」
「俺はやるぜ和也。あんなに王女様に頼まれちゃやるしかないだろ?」
祐也の発言に男子達は頷いてる。良かった。
「和也くんがそこまで思ってるなら私も頑張ってみようかな?」
「私も!」
女子の反応も悪くは無いようだ。
「えぇっと……葉桜さん、だよね?大丈夫?」
「あ、うん。その……同じ中学だった人が一緒のクラスだったんだけど"居なかった"から少し心配で」
「なるほど……そのうち帝国にも行けるように王女様に言ってみよう。勇者としての目的は同じだろうからいずれは会えると思うけど、早く会えるようにもみんなで頑張っていこう」
「……そうだね。(有加は居たけど、アイツは学校にも来てなかった……向こうの世界はどうなってんだろ)」
その後、俺達は自分達のスキルや称号についての情報を交換し合った。魔法の使い方とかはこれからだけど、スキルを見ながらみんなで想像を膨らませていった。
結構長いこと話して今日は解散となった。1人1部屋与えられぐっすり眠る事が出来た。
◇◇◇
「シャリー、勇者共の様子はどうだ?」
「特に何の疑問も持たずに魔王討伐に乗り気になってるみたいですよお父様」
「ふん。それならいい。さっさと強くなって魔王を討伐してもらわないとな。帝国には負けられんよ。小国は論外だな」
「えぇ、水晶で勇者様の位置は特定出来ますし、脱走されても問題無いです。今後はサカクラ様を中心に育てて行く予定です」
「不満を漏らす者にはメイド達に色仕掛けさせて黙らせろ。それで十分だろう。明日からは任せたぞ」
「はい、お父様。」
エルミック王国に召喚された勇者達の1日目はこうして過ぎていった。
◇◇◇
私の名前は佐島有加。このボルトン帝国に召喚された勇者……らしい。なぜ召喚されたのか、私達にどんな力があるのか、他のクラスメイトがどうなっているのか、皇帝と呼ばれる人に懇切丁寧に教えて貰った。エルミック王国という所に他の人達は居るみたいだ。
しかし、勇者の印と言われブレスレットを腕に嵌めたとたんに皇帝、ガルーラ=ボルトンの様子が豹変した。
「くくっ……帝国に現れし勇者よ!なんとしても我が国が最大の戦果を得ねばならん!魔王が復活するまでは己を鍛えよ。そして、我が国に繁栄をもたらすのだ!」
「どういう事だよ!さっきまでは協力して事に当たるとか言ってたじゃねーか!」
そう吠えたのは後藤雅也という見た目から荒々しい男だ。
「黙れ。反抗的な態度はするな、お前らは帝国の駒として働け。そのブレスレットがある限り余に逆らえぬと思え。衣食住に不便はさせぬ。ただ鍛え、王国より強くなる事が貴様らのすることだ。なに、魔王を倒す間だけの事よ……」
「くっそ、このブレスレット外せないぞ!」
「おい!ふざけんなっ……ぐああああ」
「どうした!?大丈夫か?」
「い、いてぇ………うぐっ」
「そのブレスレットの効果である、これで分かったであろう。無駄なことはせずに鍛えよ」
私達は男女合わせて16名だ。勿論、運動が苦手な子も居るし、戦闘向きのスキルが無い子も居る。だが全員が戦闘訓練を受けることになった。ブレスレットがある限り反論は出来ない。強くなりさえすれば不自由は無いみたいだけど。王国もこんな感じなのだろうか?ひかりの事が心配になる。…私達はとんでもない所に来てしまったのではないだろうか?
「くそ!なんでこんな事に巻き込まれないといけねーんだよ!」
「ホントだぜ!ステータスを見た時はテンション上がったのに…クソッタレがぁ!」
男子のリーダー格が後藤雅也と北野涼介という不良と言ってもいい男達のせいか男子の纏まりは悪い。
女子達のまとめ役は一応私がやっている。私も本当は気の強い方じゃない。が、背が高いせいなのか頼られてしまっている。この身長は少しコンプレックスだけど、安心感を少しでも与えられるなら女子達だけでも安心させたい。
数日後には勇者お披露目のパレードを行うらしい。それを伝えられその日は解散となった。メイドさんに案内されて、2人1部屋で過ごすように言われた。
「佐島さん、どうなっちゃうんだろ……私達」
「伊藤千香さんだったわね。私達には鍛えるしか道は無いのかもね……私も怖いわ。女子だけでも力を合わせていきましょう」
「うん、よろしくね……」
私達の1日目はこうして過ぎていった。私は居るはずのない彼が助けてくれるんじゃないかと淡い期待をしながら眠りについた。
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