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第26話 娯楽だ! in 異世界

熱は無いですが風邪ですわ……


ですが、書き上げたので読んでやってください……


ハックション( >д<)、;'.・

 


 翌朝。肉体の回復もあるが、精神的な回復もされており目覚めの気分は良かった。このダンジョンは五十階層まであるらしいし、先は長いが頑張れそうだ。


 先に起きていた詩葉さんとリコルが簡単に作った朝食を用意してくれて、それを食べ始めた。パンに野菜と肉を挟んだだけ……のサンドイッチだが、美味いから別にお手軽過ぎるのは気にしない。



「ルフィスと聖女、どっちが先に起きるか予想しない?」


「時間制限有りなら良いわよ? いつまでも寝ていられてるとは限らないしね。十数分でどうかしら? 私はタイムオーバーすると思うわ」



 もう、普通に朝……かどうか、正確な所は分からないが睡眠的には十分に取れていると思う。だからどっちかは起きると思う。



「俺は……聖女かな? ルフィスは起きなそうだし」


「じゃあ、私はルフィス姉にする!」



 リコルに余った選択肢を選ばせて悪いと思うが、三人が分かれた事で少しだけ面白い展開になった。ただの予想で今の所、何かを賭けたりしていないが……した方が盛り上がるかな?



「正解したらどうする? それか、外したら」


「正解した人に特典とした方がいいんじゃないかしら? こんなので罰ゲームは嫌よ」


「リコルが当たったらねぇ~、お兄ちゃんに肩車して貰いたい!」



 俺はスッと動いてリコルを肩車してあげる。こんな事ならいつでもしてあげるって話だ。リコルは良い子だし、いつも頑張ってるからな。


 壁で閉ざされているからそこまで広い空間では無いが、リコルを乗せたまま動き回る。丁度良い暇潰しにもなるし、楽しいし、一石二鳥だ。



「わーい! はやーい! お兄ちゃんしゅっぱーつ!」


「行くぞ~」



 リコルは絶叫系のマシンも平気なタイプかもしれないな。俺はあんまり得意じゃ無いけど、とりあえずリコルが楽しそうならそれで良いな。


 跳んだり回ったり色々としていたら時間なんてあっという間で、気付くと十分は少し前に過ぎていた。つまり、詩葉さんの正解であり、ルフィスと聖女が叩き起こされる事に決まった。流石に俺や詩葉さんに叩かれるのもアレなので、リコルに揺り起こして貰う事となった。



「さて、一縷君に何をして貰おうかしら?」


「ちょっと待った……何故に俺に的を絞っているのでしょうか? 重労働は嫌だよ?」



 こんな結果なら最初から提案しなければ良かったと軽く後悔しながら、詩葉さんに何をさせられるのだろうかと戦々恐々(せんせんきょうきょう)していたら、意外な事を頼まれた。



「私も……肩車してもらおうかしら?」


「……はい?」



 自分の耳を疑っている。このキリッとした詩葉さんが肩車を所望である……ちょっとよく分からないというか、イメージとかけ離れ過ぎていて理解が出来ないというか……。


 そうこうしているうちに、しゃがんでも無いのに俺の肩を掴んでちょっと塀の上に乗るくらいの感覚で一気に飛び乗って来た。ステータス補正が無かったらそのまま前のめりに押し倒されていたかもしれないが、衝撃に何とか耐えられた。



「高いわねぇ」



 そんな当たり前な感想を良いながら辺りをキョロキョロと見渡している。ここを閉ざす為に作った壁を取り壊せば遠くまで見えるかもしれないが、遮蔽物も特に無いならほとんど意味は無いだろうな。



「詩葉さん……太ももが……」


「……あ、当ててんのよ!」



 そんな、『言ってみたい台詞を言えた!』みたいな顔をしているが、違う。俺が言いたいのは当ててるなんて生易しい事ではなく、挟まれて顔が潰れそうという事だ。しかも詩葉さんは長ズボンだ……太ももの感触を味わっていない! 損しかない!



「ほら、歩くのよ一縷君!」


「わ、分かったから……もっと太もも離して……」



 普通に歩く感じで一歩二歩と踏み出して、ぐるぐると狭い範囲を行ったり来たりする。リコルと違って楽しくない……たぶん、詩葉さんがリコルのような反応をしないからだと思うけど。まぁ、詩葉さんがリコルと同じ反応をしたら、それはそれで引くけど。



「一縷君、もういいわよ。中々に有意義だったわ」


「そ、そう? ならいいけど……」



 有意義……だったのかな? 詩葉さんが満足ならそれでいいけど……。



「ルフィス、聖女、早く準備して朝ごはんも食べなさい。まったく……寝過ぎよ?」


「ごめんなさ……ふぁ~ぅ」


「目が覚めてから早く支度する事には慣れていますので、少々お待ち下さい~」



 まだ眠そうなルフィスと、やはり少しズレている聖女の準備が終わるのを待って……俺達は九階層の探索をし始めた。


 まだ弱いモンスターといえ、足元を掬われない様に慎重に戦いながら進む。すると、一時間もしない内に下へと進む坂を発見する事が出来た。中々に好調な滑り出しである。



 ◇◇◇



「では、いきますよ~」



 聖女が祈りのポーズを取る。俺の体に変化が起こる……力が溢れ出てくるような感覚。俺達は加護と呼んでいる、聖女の付与魔法だ。きっとルフィスも俺と同じ感覚を味わっているのだろう。


 十階層はボス部屋で、戦いの前に魔法をかけて貰おうと聖女に頼んでみたら二つ返事で気前よく了承して貰った。



「じゃあ、行こうか」


「そうですねっ! 今なら魔法を使わなくても大丈夫な気がしますよ!」



 十階層のボスは少し大きくなった狼とゴブリンの集団である。動きの早い狼に関しては、後ろに抜けられる事も考えて詩葉さんにリコルと聖女をお願いしておいた。



「行くぞルフィス! ひたすら叩きまくれっ!!」


「はいです! えいっ、えーーいっ!」



 俺は槍をひたすら振り回し、リコルは杖を振り回す。体力的にはめちゃくちゃ大変だったが、特に傷を負わなかったのは成長の証しと言っても良いだろう。宝箱は残念ながら出なかった。



「では、素材を取っちゃうので少し待っててくださいね」


「リコル、魔石だけで良いわよ。他の素材はあまり売れないから」



 リコルが魔石を集めている間に休憩をさせて貰って、体力の回復を図った。リコルの手際が良いのか、すぐに終ってしまったのが少し残念だった……手際が良いのはとても良いことなんだけどな。



「さ、行きましょうか……次が問題のエリアね」


「だな……耐熱耐寒の指輪が必要な程の空間って考えると嫌になってくるけどな。暑いのも寒いのも嫌いなんだよな……」



 ボス部屋から坂を下りて進んでいくと、一つの扉があった。鉄の扉で頑丈そうだ。



「じゃあ、開ける……ぅぅぅうううわぁっつぅぅぅぅっ!! 熱い熱い!! あっつぅーー!!」


「だ、大丈夫一縷君!?」


「一縷さん!? 手が……」



 うわっ……皮膚が……あっ、意識したら痛みが……。



「すぐに回復させるわ…………これで大丈夫ね。取っ手が熱かったのかしら?」



 詩葉さんの回復魔法のお陰で俺の右手は元通りに治った。良かった……助かったぁ。



「風呂程度の熱いってレベルじゃない……熱々の鉄板を握った感じだった。普段と同じ感じで握ったから手をすぐに離す事が出来なかったな……まぁ、リコルとかじゃなくてまだ俺で良かったよ」


「なるほど、これが耐熱の指輪が必要な理由かしら? 持ってない者は後ろの転送ゲートから帰って下さいという事ね……ふん!」



 何をトチ狂ったのか、詩葉さんが取っ手を掴んでそのまま扉を開けた。早くと促されてとりあえず扉の奥に入ったが……強引過ぎやしないですかね。



「回復魔法で治るのだから……ルフィス、そんな心配そうな顔をしなくてもちゃんと時と場合は考えるわよ」


「ですが……水魔法で冷やしてみるとか布を何枚も手に巻いてから取っ手を持つとかあるじゃないですかぁ……」



 どっちの意見も分かるから何にも言えないけど、あの熱さを体験した分だけルフィスの意見に賛成である。取っ手を掴んだ瞬間、本当にヒヤッとしたからなぁ。詩葉さんらしいけど、心臓に悪いからやめて欲しいかな。



「暑いです~」


「詩葉姉、ルフィス姉……暑いよ~」



 確かに取っ手部分とはまた違った熱さだ。これは……駄目だな。この気温の中で戦闘なんてしてみれば熱中症というか、脱水症状待ったなしだ。


 ただ立っている今でさえ、額から発汗している。



「諦めよう。これは無理! 暑いの苦手だし……」


「そうね、理解が出来たわ。この国の冒険者は指輪を持ってないと生きていけなさそうね……一度、宿へと戻りましょう。それから、ラッカーラへと行く準備よ」


「ですね……」



 くそ、皇帝が指輪の買い占めなんかしなければラッカーラまで行く必要も無かったと言うのに……まったく。だが、無いものは仕方ない。出来るだけ早く帰ってこられる様に動かないとな。あと、さっさとここも出たい。


 戻る時の扉の取っ手に水魔法で冷やそうと試みたが、蒸発しない事に違和感を覚え、思いきって握ってみれば……全然熱くなかった。ヒヤヒヤさせやがって……いや、暑いけどさ。


 俺達はゲートを通り、一階層までやって来た。そのままダンジョンから出て、街へと向かった。どうやらついでに減った分の食料と、ラッカーラまでの食料を買い足しておくようだ。


 ダンジョンで手に入れた魔石をギルドに持って行く前に、とりあえず宿へと戻って来た。これから作戦会議である。まぁ……正確に言うのなら、詩葉さんの立てた予定を聞くだけだけど。



 ◇◇



「……という事だから、移動だけで往復二週間くらいかしらね。聖女の付与魔法を馬に使うとしても……少し短縮出来るくらいでしょうし」


「なるほどね。それで、出発はいつにする? 思い立ったが吉日って言うけど……今日の内に出発しとく?」


「お昼を食べてからにしましょう~」



 まぁ、聖女の言う事にも一理はある。朝と暗くなる前は、検問所が混み合う。昼過ぎに行くのは悪くない考えだ。



「そうね。それまでは休憩にしておきましょうか。と言っても、時間があるわけじゃないけど」


「私は宿で休憩しておきますねっ」



 さて、俺はどうしようか……。リコルも聖女もお昼まではこの宿屋で休むみたいだし、俺一人で街を彷徨(うろつ)いたら迷子になる。でも、アレが欲しい――そう、本だ。また馬車での移動になるのなら本は買っておきたい。



「詩葉さん、ちょっと買い物に付き合ってくれない?」


「んー……まっ、良いわよ。何を買うのかしら?」



 俺が本が欲しいと言ったらルフィスやリコルはガッカリした様子で、ついて来る気を無くしたみたいだ。本は、簡単な絵本的なやつ、もしくは簡単な文字を覚えるやつを一冊とちゃんとした物語系を一冊ほど……なければ何でも良いと思っている。



「文字は……そういえば見慣れた文字なら読める様になっていたわね。了解よ、行きましょうか」


「まだ書くのは無理だけどな。読むくらいならそろそろ出来ないと一人で注文も出来ないからね」



 俺と詩葉さんで街に繰り出し、早々に本屋を見付けた。まぁ、詩葉さんが勘と経験で見付けてくれたんだけど。店に入ると、人は居なかった。店の規模もそれほど大きく無いし、やはり庶民的というか、貴族以外でわざわざ本を買う人は少ないのだろうな。



「いらっしゃいませ。旦那様に奥様、本日はどのような本をお求めで?」


「あるのなら読み書きの練習になりそうな本と何かオススメの本をお願いするわ」



 ここで旦那様や奥様呼びに突っ込んだら本を買う事なく帰宅しそうな感じがしたから黙っておく。なんだか、詩葉さんも機嫌が良いみたいだし……藪をつついて蛇を出す必要も無い。



「ございますとも。少々お待ちくだされ……」



 店主はインテリジェントな見た目をした初老の男性で本が好きそうというイメージがある。そんな人なら本のチョイスを任せても安心だな。


 一、二分程度で戻って来た店主は何冊かの本を抱えていた。



「まず、こちらは貴族の子息や子女に文字の読み書きを教える為の本でございます。そして、オススメするにしても絞り込めず……数冊ご用意致しましたのでご覧になってくだされ」


「ありがとうございます! どう? どれが良さそう?」


「文字の読み書きの本はとりあえず良さそうね。こっちは……うーん、直感でいいんじゃないかしら?」



 積み重ねられた数冊の本の表紙を一つ一つ見ていくと、したの方にあった本を見た時に詩葉さんが変な声を出した。



「うひゅっ!? 一縷君、その本だけはやめた方が良いわよ? うん、やめるべきね。良くないわ……良くないのよ? だから、ね?」


「すいません、この本にします。おいくらになりますか?」



 失策だね、詩葉さん? そんな反応されて買わない訳がない。えっとタイトルが……『ゆう……のでん……つ』。あっと……駄目だ。まだちゃんと読めないか。だが、オススメだし俺の直感もこれだと言っている。買わなきゃでしょ。



「あいよ、大銀貨七枚でどうかな?」


「……詩葉さん? ちょっと相場とか分からないんだけど?」



 詩葉さんがブツブツと何かを言っている。“いや、逆に……”とか“出来るだけ買って……”とか、詩葉さんの反応が意外過ぎて、この本は一体何なのだろうか? そう思い始めた。



「まぁ、大銀貨七枚なら俺の持ってる金で何とかなるし……大丈夫かな?」



 俺はギルドで下ろしておいたお金をポケットから取り出して、支払いを済ませる。本が二冊で大銀貨七枚なら、この世界基準なら全然安いだろう。何はともあれ、本ゲットである。



「あぁ、そうだ店主。この辺に硬い紙的なのを売っているお店とかありますか?」


「硬い紙かい? そうだね……うーん。画家さんが使うのも硬い紙とは言えないからねぇ……板なら木材を扱っているお店があるんだけどね」



 やはり硬い紙は無いのか……ギルドカード的な硬さの紙があればと思ったが、一般的に売ってはいないのかな? 板……まぁ、板でも綺麗な板なら代用出来るかな?



「分かりました、その木材を扱ってる所ってどこに在りますか?」


「それなら、この店を出て右に真っ直ぐ行けば分かると思うよ」



 俺は本をカバンにしまい、店主にお礼を言ってからまだブツブツ言っている詩葉さんの手を取って店から出ていった。


 店主の言う通りに進むと木材をとり扱ってるお店が見付かった。その店のご主人と交渉して正方形の薄くてそこそこ硬い木材を三枚、格安で買う事が出来た。これも一応は暇潰しの為の道具にするつもりである。



「よし、もう大丈夫だから戻ろうか……おーい、詩葉さん?」


「……はっ! ここは? あら? さっきまで本屋にいた筈だけど?」



 そんなに集中するほど、何を考えていたか気になるけど意識が帰って来たならそれでいい。早く宿に戻って昼飯にしなきゃ、ルフィスと聖女が怒り出すだろう。



「さ、戻ろうか」


「そ、そうね」



 何故か詩葉さんが先ほど繋いでいた手を見ているが、正常な状態なら手は繋がないよ? 案外……というか、普通に恥ずかしいからな。



 ◇◇◇



 昼飯を食べ終えた俺達は帝国を旅立った。入国時より出国時の方が検索の時間が長いんだな……なんて事を思い返しながらもラッカーラへ向けて進んでいる。


 ラッカーラへは一週間程度らしく、明るい内は移動で暗くなったら野営の準備や食事の準備、それに格闘の訓練の時間になる予定だ。



「一縷さん? それは何ですか?」



 詩葉さんとリコルは馬を操縦する為に、二人で操縦席に座っている。聖女は景色を見ている。そして、俺は一枚の板から十八枚程度の長方形の板をくり貫き、計五四枚のカードを作り出す。


 そう――俺が作っているのは、手作りのトランプである。移動中の暇潰しにはもってこいの代物だ。俺の魔法を使えば、カットするのは簡単な事だが……しまった。書くものが無い。ナイフで模様を書くにしても、薄い板だから壊さない様にする調節が難しいだろう。困った時は……詩葉さんにお任せだな。



「詩葉さん! 五四枚の板カードを作った。何か方法はないかね?」


「あら? そんな物いつの間に買っていたの? でも、ナイスよ! 後は任せておいて」



 流石詩葉さんだ。すぐに理解してくれて、任せろと言ってくれる。頼もしい限りだ。


 詩葉さんの指先から細い爪楊枝サイズの火が出て来て、それを使って模様を描いていく。凄い……器用というか、そんな事出来るのか? という感じの驚きを味わっている。


 黒のカードはそのまま焦がして表現し、赤のカードは模様の縁だけを焦がして表現していた。ジョーカーは眼帯を着けた男女を一枚ずつ……たぶん、俺と詩葉さんだな、細かい芸当である。それも凄いが、あまり時間も掛からないで完成した事が一番凄い様におもえた。



「はい、完成よ。リコル、操縦は良いから一縷君と後ろで遊んで来なさい」


「良いの!? やったぁ! お兄ちゃんそれ何!? どうやって遊ぶの?」


「今から使い方というか、遊び方を教えるからな。ルフィス、聖女、遊ぶぞ! 暇潰しの道具が完成した!」



 俺は簡単にカードの説明をしてから、とりあえずババ抜きからし始めた。飽きた頃に次の遊びを出していこうと考えている。そしたらまたババ抜きがしたくなり、永遠ループを予期してだ。



「あっ! 私の所に一縷さんのカードがあります!」


「おーい……だから、ババを持ってても言っちゃダメだと言っただろ?」


「良いなぁ! リコルのカードは無いの?」



 リコルは自分の絵が描かれているカードが欲しいのか? 板は……余ってるな。どうせ他の二人も同じ事を言い出すと思って、三枚をくり貫き、詩葉さんに渡した。完成はあっという間である。



「……すぐ出来た。はい、カバンと女の子の絵がリコル、杖と女の子がルフィス、何だこれ……よくある天使の輪が頭の上にある女の子が聖女の分か? 死んだのか、聖女よ……」



 詩葉さんの書いたカードを皆、気に入ったみたいだ。聖女も大喜びな様で、芸術とまで言い出した。喜んでるならいいけどさ……。


 とりあえずババ抜きの再開で、夕暮れになるまで時間を潰した。三人がド嵌まりしてくれて良かったよ。



 ◇◇◇



 旅は順調に進み、ようやくラッカーラ国であろう場所が見えてきた。何故か行列が出来ているが……やはり、皆も指輪を買い付けに来ているのかもしれない。この国でも売り切れだったらどうしよう……。



「うーん、商人の数が多いわね? ラッカーラは小国……普通ならこんな数は居ないと思うのだけど? お祭り……でもあるのかしら?」


「ラッカーラでこんな数の人が集まるお祭りなんて……私は聞いたことがありませんが」



 ルフィスが聞いたこと無いなら、もうお手上げだ。リコルも聖女も国を出ること無かったって話だしな。聖女は教会に居たんだし、情報くらいなら何か知っているかもしれないが……寝てるからいいや。



「俺が前に並んでる人に聞いてくるよ」



 長蛇の列の最後尾に並んで馬車が停まってから、前に並んでいる人に話を聞きに行く為、移動した。この人の荷物の量が多いし、きっと商人なんだろうな。



「すいません……何でこんなに並んでいるのですかね? 他の国から移動して来たんですが」


「何だ? 商人……じゃねーのな。ならいいか。どうやら、王国と帝国に現れた勇者が来てるらしいんだ。少人数らしいがな。その情報を掴んで急いで来たんだが……出遅れちまったな。」



 また勇者か! 王国と帝国に召喚されたクラスメイトか……誰かが会わせろとでも直訴したのか? それでこんな騒ぎになったと言うのが正解っぽいな。ラッカーラ王国……騒ぎに巻き込まれて可哀想だな。


 でも、お祭りか。勇者の事を考えなければ楽しい行事には違いない。俺は商人のおっちゃんにお礼を言って、戻って来た。



「お祭りだってよ。詩葉さん、ルフィス、リコル……ついでに行ってみようぜい!」


「やれやれ、まだダンジョン攻略しきれて無いのよ?」



 それはそうだが……お祭りだ。もしかしたら勇者同士で決闘とかするかもしれない。勇者が居る事を伝えたら、ルフィスが物凄い嫌な顔をした。



「この国にある耐熱耐寒の指輪が必要なんですよね? なんで、帝国に置いてないんですか~。買い占められたとか言ってましたけど……それにお祭りってなんですかぁ?」



 王国と帝国の勇者が居るという事は、お偉いさん……下手したらトップが居るかもしれない。そうなるとルフィスは嫌だろうな……それを察して急に愚痴るのも分かる。が、今は我慢しておくれ。重要な情報収集の機会でもあるからな。



「ダンジョン暑いし大変だったもんね……。でも、お祭り行きたいっ!」



 リコルの純粋さにやられたのか、ルフィスも渋々だが行くことに賛成してくれた。しばらくは暇である、トランプでもしていておくれ。大富豪……好きだろ?



「詩葉さん、祭りでの動き方に関しての話をしておこう。黒髪ってだけで捕まえられるのは嫌だしな」


「そうねぇ……帝国と王国。私は、確実にトップがいると思うわ。そこは注意していかないといけないわね……でも、心配し過ぎよ。ギルドで暴れた時の様にいざとなったら自分達を優先、それさえ考えておけば大丈夫よ」



 会議終了。でも、そうだな。捕らえられるくらいなら王でも倒そう……倒さないまでも逃げよう。簡単な事だ。あっ、まだ会議する事あったわ。



「勇者の情報収集はどうする?」


「強さを見られればラッキーね。特に興味も無いし」



 そ、そうですか……ドライだなぁ。でも、詩葉さんらしくて何か笑えてくる。



「了解、どうせ暇なんだから一緒にトランプに混ざろうぜ」


「……そうね。魔法はありかしら?」



 うん、不正は駄目だよ? 詩葉さん。



 ◇◇◇



 や、宿が埋まっている……だと? 宿を探す前に検問の所でそう告げられた。マジかよ。もう、お祭りとか良いわ……指輪買って帰ろう……。



「幸い、指輪はどこの道具屋にでもあるらしいし……最悪、どこかで馬車を停めてそこで寝ればいいじゃない。寒い季節って訳じゃないんだし」


「盗難には気を付けないとな……俺が見張りをするよ」



 小国に……その一番の街に人が密集してしまったのだ。絶対に不埒な者は居るだろう。宿が無い以上、仕方ない。今から少し寝させて貰うか。



「じゃあ、道具の事とかは任せとくね。聖女じゃないけど俺も寝させて貰うから……というか、いつまで寝てるんだこいつは」


「うぅ~……むにゃむにゃ……」



 まぁ、下手に動かないだけマシか。そんな事を思いながら、俺も横になる。何もしないで寝る……なんか幸せである。後は任せたぞ皆。



「では、指輪だけでも先に買っておきましょうか。ルフィス、フードは取っちゃ駄目よ?」


「分かってますよぉ……」



 いざ来たら少し憂鬱そうなルフィスの声を最後に、俺は眠りに着いた。



 ◇◇◇



 ラッカーラ城の一室。この城の主を抜きに、二人の男が複数の護衛を付けて会談していた。



「いよいよ明日からですな。どうですか? そちらの勇者は」


「ふっ、こちらには逆らえん傀儡よ。ダンジョンに潜らせておるわ」



 最初に話し掛けた男はジークス=エルミック、エルミック王国の国王。そして、返答した男はボルトン帝国の皇帝ガルーラ=ボルトンである。


 場はその二人以外に発言は許されておらず、物音一つ無い。この祭りの主な用事はこの会談。ついでにお互いの勇者の戦力の調査である。今の段階でどれ程強くなっているかを競わせる為に集まっていた。


 勇者の事情はお構い無しに戦わせるつもりでいる。勇者には模擬戦などと耳障りの良い台詞を伝え、他の国に召喚される勇者に会えるという事を前面に押し出して連れて来ていた。


 ここで負ける事があれば、それは名誉の損傷。お互い、戦力レベルの高い者を連れて来ており、本気度が伺えた。



「して……小国の話だが、耳には挟んでおろう?」


「勿論。お互いやってる事は同じでしょうに。それで、何故に王女を? まだ利用価値は残っていたと思うのですが?」



 ジークス王はボルトン帝国の意思としてシルフィス王女を暗殺したと思っていた。それは正しい。正確に言うのなら、もし召喚に成功していたのなら殺す様に予め伝えておいたのである。徹底した策略を張り巡らせるのがガルーラ皇帝のやり口であった。



「ふんっ……聞いたであろう? 勇者の召喚に成功していた事を。デカイ顔をされても煩わしいだけの事。むしろ居ない方が都合が良い」


「ふふふ……相変わらず大胆な策略、恐れ入る」



 二人の会談は日を跨ぐ少し前まで続いた。今後の予定。それに、魔王を討伐した後の世界の平定の為の事。お互い、いつか裏切る事を知っていながら笑顔で会話を続けていた。


 酷く不気味な空気がその部屋を支配していた。お互いに世界を手に入れる算段を付けながら、最後は握手をしてその会談は終わりをみせた。





誤字脱字その他諸々ありましたら報告お願いします!(´ω`)


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