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第24話 帝国は何か……合わないな in 異世界

少し遅れましたが、出来立てホヤホヤです


よろしくお願いします!

 


 武器屋を出た俺とミミちゃんは、とりあえず大通りへと戻って来た。戻って来たのだが……。



「うーん、やっぱり人が多いな。そうだ、ミミちゃんのお母さんの特徴ってどんな感じかな? 服装とか、髪型とか」


「……ローブ、髪は長い」



 ローブ姿か。という事は一般的な主婦より何か魔法職に就いてる可能性があるけど……帝国の文化を知らないから分からないな。もしかすると、一般的な主婦も着ているかもしれないし……。



「ミミちゃん、迷子になったらどこかに来る様に言われたりしなかったかい?」


「……してない?」



 そうか……疑問系ですかい。今はミミちゃんを背負っているから、とりあえずこの高さから探して貰うしか無い……かな? 情報が少な過ぎるし。



「ミミちゃんは帝国の……この都市に住んでいるの?」


「……そう。でも馬車で来た」



 なら、そこまで今の居る場所に慣れている訳じゃないのだろうな。やっぱりギルドに行くしかないかな? うちの聖女もどっかに行っちまったしな……。


 さて、出発だ! と、意気込んだ時に背中からお腹が鳴った時の音が聞こえて来た。



「お腹空いた?」


「ん~!! ん! ん!」



 うっ……少しデリカシーに欠けていたか? めちゃくちゃ背中を叩かれている。痛くは無いんだけど。露店は沢山あるし、俺も朝から何も食べてないから……何か食べるかね。



「ごめんごめん。俺もお腹空いたしさ、一緒に何か食べようか?」


「…………ん」



 幅広い道の両脇にある露店を見ながら歩き、ミミちゃんが食べたいと言った物を購入した。食べながら視界に入る人の流れを見ていた。子供を探してキョロキョロしている人が居ないか確認をするために。



「……美味しい」


「美味しいね」



 残念ながら食べ終わるまでに見付ける事は出来なかった。一度背中から降ろしていたミミちゃんを今度は肩車して、また道を行く。



「そういえば……ギルドってどっちだろう?」


「…………にゅ!?」



 俺の不穏な呟きが聞こえたのか、ミミちゃんが心配そうな驚いた様な声をだして、小さな手で俺の頭を軽く叩いた。心配は無い、分からないなら聞けば良いだけだからな。



「あの、すいません道を聞きたい……」


「あぁん!?」



 ヒッ……すいません。凄いダミ声だった。普通の冒険者の人かと思ったが……ヤベー人に声かけちゃったよ! こえぇ……。


 俺は軽く頭を下げて離れた。あれは危険だな。というか、帝国ってあんな人ばっかりなのかな? 違うと信じたいけど武に力を入れている国らしいからなぁ。



「ミミちゃん、真っ直ぐ行こう! そしたらどっかに着くだろうしね! お母さんは見付けるから安心してね!」


「……うん」



 凄い心配させちゃってるけど、これでも過去に二回も実績が有るのだ。言うならばプロ。迷子のお母さん探しのプロと言って良いだろう。



「ミミちゃん、お兄ちゃんとお話でもしてよっか」


「…………お話する」



 俺とミミちゃんは帝国をさ迷いながらお母さんと聖女、それにギルド……色々なモノを探し始めた。



 ◇◇◇



 ギルドまでやって来た私は、寄せられる視線を全て無視してクエストの内容や勇者やダンジョンに関する情報を集めていた。ダンジョンでなら髪も結のだけど、今は結ばずそのままの状態になっている。一縷君が居ればもう少しくらいちゃんと整えるのだけど。



「クエストは……帝国だけあって前にいた所よりは難易度が高いわね。まぁ、それでも昔と比べたら低いのだけど」



 私が居た時代ならオーガなんて一人で倒せる冒険者は沢山居た。たしかにパーティーで連携して倒す事もあったが、そっちの方が珍しい。まぁ、魔王を封印してから百年、多少は平和だったという事かしら?


 勇者に関する情報が少ない。パレードを行う事が知らせられているくらいだ。それも、もう終わっている話。という事は、城とダンジョンを往復してるだけというのは本当なのね。街中で会わないのならそれに越したことは無い。いくら面識が無いとはいえ、おそらく異世界人っぽいのはお互いに解ってしまうでしょうし。


 ルフィスの事がバレた所で問題らしい問題は――無い。私達を野良だと思い、国に取り込もうとするなら敵対すれば良い。邪魔だと排除しようとするなら……これも敵対すれば良いだけ。魔王の前に人と争うなんて愚かしいけど、足を引っ張る者なら()()()()



「二階の店で休憩しながら探ってみるか……」



 そういえば、魔王に関してまだ一縷君には言ってなかった事があったわね。


 魔王は――復活の度に姿を変える……らしい。百年前の姿は額に三つ目の瞳があり、全体的に色素が薄く不気味な雰囲気の男だった。だが、残された資料によると魔王は巨大な獣の姿だとされていた。この二つしかデータは無いが……魔王はランダムで姿を変えると思っていいと思う。


 一縷君の魔法が効きにくいタイプやそもそも魔法の効きにくいタイプでは無い事を祈るばかりだ。あと、知性無き獣だと憎悪によって荒らす事しかしない……それも厄介なのよね。



「すいません、ミルクを一つ」


「かしこまりました。すぐにお持ち致します」



 運ばれて来たミルクを口に含み、意外な美味しさに少し驚きながら聞こえて来る声に耳を傾けた。



 “道具屋のラーサちゃん可愛いよなぁ”

 “ムリムリ、オメーにゃ似合わねーよ!”


 “酒だ! 酒を持ってこーい”

 “リーダーまだ昼前だぜ? 飲み過ぎだ”


 “まーた、賭博でスッちまったぜ”

 “金ねーのによくやるよ”



 ……録な会話じゃないわね。どこも冒険者というのはこんなものではあるけども……。何か有益な情報を持ってる人は居ないのかしら?



「お嬢さん一人かい?」



 そう言いつつも、勝手に正面へと座ってくる。ステータスは……へぇ、情報集めに向いてるわね。街の情報屋って事かしら?



「私の情報は高いわよ?」


「……何故俺が情報屋だと?」



 ビンゴね。情報が転がり込むとはこういう事ね、運が良いわ。



「高いと、言ったでしょ? ギルドに居るから冒険者と仮定した。だが、見掛けない顔だしこの街に来たばかりと推測して声を掛けたのかしら?」


「正解だ。あんたに見惚れて近寄って来たとは考えなかったのかい?」



 まぁ、仮にそうだとしても相手が情報を持ってるなら、話を聞くくらいは我慢するつもりではいた。



「なら、もっと下卑た目をするのね。あなたの目線には警戒と興味が混じってたわよ?」


「はっはっは、こりゃ参ったねぇ。今後の参考にさせて貰うよ。俺の名前はリーム、それで……欲しい情報はあるかい? 取引は金か価値ある物」



 価値ある物か……素材から情報、宝石、何でも良いという事かしら? 便利ね。



「そうね……私は帝国に来たばかりなの。だから、帝国の情勢、ダンジョンはギルドで調べられるから……あと、勇者について」


「帝国の情勢か、それは別にタダで良いぜ? さっきのアドバイスで等価だ。だが……勇者に関しては少々高いぜ? 命懸けなんでな」



 この男のスキルを見るなら、暗殺者寄りのスキルを保有している。気配を薄くさせるスキルや足音を消すスキル、鍵開けスキルまで持っている。きっと危ない領域にまで足を踏み入れている情報屋なのでしょう。なら……遠慮なんて必要ないわよね。発動。



「何を要求するのかしら? 高すぎると客が逃げるわよ?」


「おっと、怖い怖い。そうだな……お嬢さん、勇者が何人召喚されたか知っているか?」



 ここからは小声で話すみたい。盗聴のスキルが使われている気配は無いけど……まぁ、念には念をってヤツね。


 勇者の人数、帝国の人数を聞けばクラス人数から私達とその数を引けば王国の勇者の数も解りはするけど……ここで知ってる事を知られるのは良くないわね。



「いえ、大国と小国に召喚された事は知っているけど……詳細な人数までは知らないわ。でも、大規模な魔法を使っているのでしょう? 三十から四十くらいじゃないかしら?」


「ふむ……帝国には十六人が居る。王国にも同等の数が居ると考えれるが……小国が分からなくてな」



 なるほど、なら王国には十九名ね。クラスの人数が三七名だった筈だから、間違いは無いわね。



「そんなに勇者を呼ばなければいけないのかしら? 勇者一人だとしてもそれ相応の力があるのでしょう?」


「魔王を封印するならばそこまでの数は要らないと言われている。要はその先だ」



 ふむ……やはり、勇者を使って大陸の統一。延いては他の大陸への進出……って所かしら? でも、魔王を倒せば私達は帰る事になる筈なのに……どう考えているのかしら?



「これは伝承らしいけど、勇者は魔王を倒したら消えるらしいじゃない? そこの所はどう考えているのかしら?」


「帝国の話だが、その話は当然知っているみたいだ。それで、男の勇者に女を使って誘惑し、子を宿すという計画がある。そんな噂話が流れているらしい……勿論、城に勤めているこの世界の人間の間にだけだが」



 なら、王国も同じ様に考えて良いかもしれないわね。勇者の血を引き継ぐ子……か。男の勇者はまぁ、この際どうでもいいけど……女の勇者だって貴重な戦力だ。消えるという伝承はあるけど……あくまで噂と割りきって、この世界に留める策を練っているかもしれないわね。



「仮に勇者が消えなかったとしたら?」


「その時こそ、良くて結婚……最悪は奴隷として馬車馬(ばしゃうま)の如く使われるだろう。けして国から逃げない様に」



 この世界の人に限った話じゃないけど……人の欲は際限無いわね。魔王の封印が終われば、亜人の住む大陸にも攻め入るのでしょうね。ま、帰れる選択をすれば良いだけなのだから気にしなくても良いわね。



「国を救う英雄に酷い仕打ちね。まぁ、それは良いのだけど。次はそうね……何を聞こうかしら?」


「…………おう」



 ふふっ、悪いわね、魔法を掛けてしまって。聖女が催眠術に近い魔法を知っていたのが悪いのよ。だって、情報屋なんて現れたら使いたくなっちゃうじゃないの。


 その後もリームとの楽しい楽しいお喋りをして、帰って貰った。ダンジョンについても聞けたのは面倒が省けて助かったわね。さて、そろそろお昼だしどこかのお店に移動しましょうかね。



 ◇◇◇



 ただ真っ直ぐ歩いていたら、広場へと辿り着いた。昼時のこの時間は稼ぎ時なのか、露店のおっちゃんも一芸で日銭を稼いでる魔法使いも忙しさを見せていた。



「ミミちゃんのお母さんは魔法師団に属してるんだよね? 今日はお休みだったの?」


「…………うん。お買い物に来た」



 お喋りをしている内にミミちゃんの事もだんだん分かってきた。お父さんは騎士団でお母さんは魔法師団に属しているらしい。簡単に言うならば軍人さんだ。帝国は武力があるらしいし、きっとエリート的な存在なんだろうな。ミミちゃんも将来はエリート街道まっしぐらなのかもしれない。



「ミミちゃんもお父さんやお母さんみたいになりたいの?」


「…………笑わない?」



 ん? もしかして、違うのかな? でも、まぁ……人の将来の夢を笑ったりはしない。



「…………薬屋さん、なりたい」


「おっ、素敵じゃんか! 人の命を助けられるしさ、お勉強とか沢山しないといけないけどさ……お兄ちゃんは応援するよ!」



 人や国を守る軍人も立派だと思う、こんな世界なら特に。魔物も生息している訳だしな。それと同等に、薬屋さんや治癒師も立派だと思う。いつだって怪我や病気はするものだしな。



「…………お兄ちゃんも、治してあげる」


「ミミちゃんの作ってくれる薬なら、どんな怪我だって治っちゃうね!」



 今度は嬉しさからか、頭を叩かれたが……先ほど叩かれた時よりは優しく、痛さは無かった。



「うーん、広場に来たけど……お母さんっぽい人見える?」


「…………見えない」



 ここじゃ無いのかな? 俺は人通りの多い所を探しているが、もしミミちゃんのお母さんが裏路地とかを中心に探していたら出会えないぞ……? やっぱりギルド……いや、待てよ? 衛兵の詰所の方が都合が良いか!? よし、思い立ったら行動だ!



「おじさん! その串二本買うからさ、衛兵の詰所がある場所を教えて貰えないっすか?」


「おう、良いぞ坊主! ほら、まずは串二本……熱いから気を付けろよ?」



 出来立ての何かしらの肉を焼いた、焼き鳥の様な串を購入した。匂いが良い……美味しそうである。



「衛兵の詰所はだな……あっちを見てみろ、あそこに真っ直ぐ伸びる道があるだろ? そこをすすんだら中央広場に出る。ここは南広場だな。そこの中央広場に行けば、ここよりも衛兵が彷徨(うろつ)いている筈だから分かる筈だ!」



 良かった、いい人だったな。もしかすると串を買ったからかもしれないけど……ま、まぁ! 情報は手に入れた訳だしオールオッケーだろう。行くか。


 人の流れに沿って進んでいく、言われた通りに真っ直ぐに進んでしばらくすると、またしても広場へと到着した。一から二キロメートルくらいは歩いたかな?



「衛兵さんは……居るな。ミミちゃん、もう少しだからね?」


「…………うん!」



 俺は衛兵さんに近付いて声を掛けようとした。結果的に、声は掛けられ無かった。



「……を……せ」



 小さく聞き取りづらかったが、怒りの込められた声がすぐ近くから聞こえた気がして、あわてて振り向きながら距離を取った。揺らしてしまってミミちゃんを驚かせてしまったけど、仕方ない。危険だと身体が反応した。


 振り向いた先に居たのは綺麗な防具で目、鼻、口以外を守っている男が居た。男……だよな? たぶん背丈とか立ち姿から見て男だと思う。歳は分からないが、動きは軽やかというか重々しく無い――その男が躊躇いも無く剣を抜いた。



「うっそだろ……街中で剣を抜くのってアリなのか!?」



 周りを見渡すと、歩いて居た人は距離を取るだけで別段、慌てている様子は無い。衛兵も少し離れて見ているだけだ……仕事しろよっつーか、止めろよ。


 そういうお国柄なのか知らないけども、流石に丸腰は危険過ぎる。俺もカバンから槍を取り出し、ミミちゃんを降ろした。


 鋭い目は間違いなくこちらを見ている。狙われる理由はありすぎて分からないが……ミミちゃんには悪いが、狙いが俺だけなら撤退も考えなければならない。


 一歩二歩と男が踏み出し……一気に詰めよって来た。



「くそっ……面倒なっ!!」



 ミミちゃんから離れる様に俺も前へ進み、対峙する。

 男が振った剣を回避して、槍の柄で脇腹を防具の上からおもいっきり突く。



「かはっ……き、貴様ぁ!!」


「ちっ、本当に誰だよ……狙いは俺か?」



 男が返事の変わりに剣を振るう。ミミちゃんを気にする様子は無いし、狙いは俺と見て良いだろう。動きを見るに回避は出来る、防具のお陰で守りは堅いが、動きは俺の方が早いだろう。引き付けながら逃げた方が早いか?



「火魔法『火弾撃(マルチバレット)』」


「……なっ!? ぐっ……いってぇ!!」



 回避が間に合わなくて服の腕の部分は焼け、腕に痛みと軽度の火傷を負った。頑丈な身体で良かったわ……マジで。まだ、戦えない訳じゃない。状況を把握しろ。



「正面に……いや、移動して挟み撃ちか。ミミちゃんは……魔法を放った奴の後ろ……ん?」



 ミミちゃんの反応が……今、魔法を放った奴のローブ引っ張って何かを訴えている。


 …………帝国って人を疑ってかかる国なのか? はぁ……悪いとは言わないが、俺の感性には合わないなぁ。やだやだ、火傷までしたし……はぁ。ため息しか出ねぇよ。



「ミミちゃん! 今度は迷子になるなよっ! あと、夢を叶える為に頑張れよ!」


「まっ……お、お兄ちゃん!!」



 ミミちゃん! 大きな声も出せるじゃないか、その調子で頑張れよ! お兄ちゃんはもう逃げます。


 人混みに向かって走りだし、人が避けた事で出来た道を追い付かれなくなるまで走っていく。帝国の人のタイプも分かった点は良かったかね。



 ◇◇



 腕の怪我は持ち合わせていた布で覆い、そのまましばらく走って……今は歩きに変えて息を整えている。何か違和感を感じ顔を横に向けると……いつの間にか、のんびりとした顔をした聖女が隣を歩いていた。



「まったく~一縷さんは~すぐに居なくなるのですから~」


「俺かよ!? いや、もう……合流出来たからいいか。そうだ、コレ……聖女の装備品」



 マジックバックから黒のローブと黒の杖を取り出して渡した。選んだのはミミちゃんだけど……どうだろうか?



「わぁ~ありがとうございます。良いデザインですね~杖もこのくらいの長さの方が“ぽい”でしょう~」


「そうかい、なら良かった。どうする? お昼ご……」



 おっとヤバい……聖女と一緒に昼飯とか俺の金が無くなる。あっ……ちょっと遅い? あれ? 聖女の目、輝いてない?



「さ、行きますよっ! 一縷さんが迷子のせいでお腹空いたのですから」


「はいはい、引っ張らなくても行きますよ~っと。その前に杖はしまっておくぞ」

 


 俺は聖女に引っ張られながら道をあるく。ふと気付いた。こいつ……一人で飯屋を探してたな? って。



 ◇◇◇



「一縷さん! ここにしましょう。はい、ここに決定ですね」


「いや、ここで良いんだけど……もっと慎みを持とう? 良いのか? 飯に執着しても……」



『私は自由なんです!』……そんな事を言われてしまったら言い返せないな。俺に聖女の制御は無理っぽいぞ?



「あら? 奇遇ね一縷君。それにしても聖女のその服……」



 飯屋を目の前に、詩葉さんが合流した。たしかに、ギルドに出向いていた筈だ……情報収集は終わったのだろうか? 聖女の服……駄目だったか?



「良い……良いじゃないの! 聖女という白のイメージが強い子にあえての黒。そのセンス……恐れ入ったわ。これは一縷君が?」


「まぁ、買いに行ったのは俺だが……選んでくれたのはミミちゃんって女の子でね。黒い杖も選んでくれたよ?」



 まぁ、唐突な別れになってしまったけど……これも一期一会ってやつですかね。



「……女の子?」


「あっ、うん……その事についても話すから……とりあえず中に……あっ、その前に腕の火傷を回復して貰えない? 少しピリピリするし」



 詩葉さんに魔法を掛けて貰う。暖かい光が腕を癒していく。ものの数秒で完治した。傷痕一つ残らずに……凄いな。



「一縷君、その怪我は?」


「これは……」


「一縷さーん、詩葉さーん!」



 呼ばれてみれば仲良く手を繋いで、小走りで駆け寄ってくるルフィスとリコルの姿があった。俺は詩葉さんに後で一緒に話すと言って二人を待った



「……せ、聖女様!? お、驚きました……でも、よくお似合いですよ!」


「聖女様、可愛い!」


「ありがとうございます~。では、皆さんが揃った事ですし~中で話しましょう~」



 いう事は最もなんだが……聖女が言うとなんか締まらないなぁ。そう思いつつも、お店に入って、隅のテーブル席へと座った。



「じゃあ、何か食べたい物を注文してちょうだい? 聖女、一人分よ」


「うぅ……残念ですが、分かりました~」



 店員さんに注文して、俺達は情報の擦り合わせをし始めた。



「じゃあ、俺から行こうか」



 武器屋で聞いた指輪の事、街中で剣を抜かれた事を詳細に伝えた。



「なるほど……確か両親は帝国の駒なのよね? なら、何か防具にマークがあったとか考えられるわね。無闇に武器を振り回すのは避けた方が良さそうね。それに指輪の件は私も少し聞いたわ、次は私が話しましょうか」



 詩葉さんは聖女が俺に使おうとして不発に終わった催眠を情報屋の男に使ったらしい……詩葉さんの強さでその魔法は凶悪過ぎるな。それで、勇者の事やダンジョンの事を聞き出したみたいだ。情報だけでいうなら一番の量を手に入れて来ていて、素直に尊敬する。



「帝国のダンジョンは特殊エリアがあるのですね……どうするんですか? 指輪は買い占められてしまったのですよね?」


「とりあえず、どの程度なのか体感しない事には分からないわね……我慢出来る程度ならするけど、無理なら仕方ないから行きましょう。往復だけで二週間らしいけど、飛ばせば短縮できる筈よ」



 詩葉さんの情報では最初の十階は普通。十一階層から二十階層までは暑いエリア、次は寒い、また暑くてまた寒いエリアらしい。寒暖差もそうだが、エリアによってタイプの違うモンスターが厄介らしかった。



「それに勇者か……クラスの名簿とか急いでいてちゃんと見てなかったら覚えて無いな。ダンジョンで鉢合わせたら面倒そうだから避けるとしても、封鎖を上手く回避して進まないとな」



 帝国の勇者は全員、ブレスレットを嵌めているからすぐ判るという情報も詩葉さんが聞き出した物だ。身体強化が上がるアイテムだとか何とか噂があるらしい。



「お待たせ致しました~」


「ふぅ、祈りの時間がちょうど終わりました~ピッタシピッタシです~」



 料理を前にするものじゃないのか……? いや、もう細かい事は気にしなくていいか。



「私達も食べましょうか。いただきます……この後の予定だけど、馬を取りに行って……ダンジョンに出来るだけ近い宿を取るわ。ダンジョンは明日からね、弱い敵なら飛ばして進むからそのつもりでね」


「了解だ。最近、素振りばっかりだったからな……雷魔法も使えるか試しておかないと」



 昼食を食べ終えた俺達は、詩葉さんが馬車を取ってくるのを店の前で待っていた。



「今更だけどルフィス、ローブを深く被ってるけど視界は平気か?」


「上空は見えませんけど……正面なら問題ないですよ? それに、ダンジョンでは外しても良いそうですし!」



 ダンジョンの壁を走るモンスターも居るからなぁ、上が見えないのは不利過ぎるな。



「聖女は、加護? を、掛けるってどうするんだ?」


「実際に~掛けてみせましょうか~?」



 聖女がいつものお祈りポーズを取る。数秒後……俺の身体の内側から力が湧き出す感じがしてきた。これが……加護ってやつか? 凄いな。



「今なら凄く速く走れそう」


「はい~、身体の力が湧き出す魔法です。そう長く掛かる訳ではありませんが~、稼げると思うのですよ~」



 たしかに、コレなら冒険者は喜ぶだろうな。意外と稼げるんじゃないか? ようやく見習いから卒業出来そうだな。



「リコルは、今回もサポートよろしくね!」


「はい! 荷物や素材の採集は私にお任せですっ!」



 皆のやる気や調子を確かめて、その後も色々と帝国の街について話していたら詩葉さんが戻って来た。馬車に乗って、ダンジョンがある西側へと出発する。街中は少し危ないから運転は引き続き詩葉さんで、三十分と少し経ってようやく、今日泊まる宿へと辿り着いた。


 宿は馬車を泊める場所も俺達が泊まれる部屋も空いていたので、詩葉さんがとりあえず三日分を頼んでいた。



「さて……部屋に来たけどやること無いぞ? 街に遊びに行くのも何か違うというか、怖いし……どうしようかな?」



 こんな時に本みたいな時間が潰せる物が欲しいと切に思う。買いに行くとしても一人じゃ迷子になるか、厄介事に巻き込まれるかだからな……もう、自分で分かるレベルだ。


 うん、こんな時は素振りだな。素振りと雷魔法の練習。明日からダンジョンだし、前のダンジョンでの経験とイメージ力を掛け合わせて仮想モンスターを発現させよう。俺なら可能な筈だ!



「よし、空いてる場所を借りてやるか」



 移動した俺は、槍を振るう。たまに魔法を発動させるが、イメージ上の広範囲高威力とかけ離れ過ぎて調子が狂うが、現状……それしか無理だし、そのイメージで修正をする。悲しい修正とはこの事である。



 休憩がてら、宿の食堂で軽い食べ物と飲み物を買って、また練習へと戻る。死なない為には多少ハードでも足りないくらいだろう。この街では特に信用に値する人を選ばなければならないみたいだしな。



「はっ……はっ! はい! そぉれっ!!」


「精が出るわね、一縷君」



 近くの壁に寄りかかって、斜に構えてる詩葉さんだ。格好いいとは思うけど、やはりちょっと痛いな。



「どうしたの? 詩葉さん」


「今さっき、工房にダルケンから貰った一縷君の装備を出してきたわ。素材が丈夫な物だから調節や整備に少し時間が掛かるらしいけど」



 大きな街についたらそうするって言ってたな……たしか。今の装備はただの軽装だ。モンスターの攻撃が当たったら簡単に引き裂かれる。魔法も防が無いのはさっき体験したけど。



「ありがとう、詩葉さん! そうだ……練習に少し付き合ってくれない?」


「ほぅ、この私と……ね。良いわ、すぐに武器を持ってくるから待ってなさい」



 また変なスイッチを押してしまったか……と諦めて、せっかくのチャンスだから周囲の被害は最小限に抑える事を踏まえて、徹底的に挑む事にした。



「お待たせ! さ、やるわよ!」



 いつもはクールな詩葉さんがやる気を見せている。先制攻撃はいただこう。



「じゃあ、範囲とかのルールだけど……」



 俺はまだ戦いませんよ、という雰囲気を醸し出しながら詩葉さんに近付き、射程圏内に入った所で発動させる。



「雷魔法『弱電撃(スパーク)』!」


「……甘い!」



 あの距離を避けるのかよ!? やべっ……。



「ぐはっ……!?」


「大丈夫よ、安心して? 怪我なら私が治せるから。どんどん……いきましょ?」



 自分から誘っておいてこう思うのもアレだが……鬼だな。うん、鬼。


 俺は槍を手に詩葉さんに挑んだ――まぁ、結果は一方的にボロボロになるという予定調和である。少し自信が付いていただけに悔しい。



 ◇



「痛いっす……対人の格闘戦はまだ習ってないですよ。そうだ……今度から近距離での格闘術を教えて貰っても良いですか? 槍は……その、ダンジョンで鍛えますから」


「そうね、技を知ってるだけでも人型に対して有利になるし……良いわよ。でも、厳しくいからね?」



 詩葉さんはいつでも厳しい……なんて思ったが口には出さない。災いの元となるからな。



「良いこと思い付いたわ! 護身術として、合気道に近い技術を他のメンバーにも覚えて貰いましょうか。街で絡まれても少しは時間が稼げる様にはなるでしょうし……あっ、でも状況を判断して行動する事をちゃんと教えて込まないといけないわね。下手に力を付けると失敗しやすいものね……」



 すまん皆。俺の頼みが飛び火した……でも自分の為だと割り切っておくれ。ほら、皆一緒に訓練なら……楽しいかもしれないじゃん?



「あっ、一縷君はガチのヤツだから……死ぬ気で覚えてね?」



 おいおい……その台詞と共に今日イチの笑顔は、ドSっぷりが出てますよ! 詩葉さん!



 空が暗くなり、皆で晩御飯を食べた後は各部屋で朝まで疲れを取る為に眠りに着いた。明日からはお試しで潜るが、ダンジョンだ。気を抜ける時は少なくなるだろう……死なない為に、死ぬ気になろう。


 そして、朝を迎えた。





誤字脱字がありましたら報告お願いします!


もうすぐ(何話先かは分からない)、18話と繋がりそうですね!

(何だっけ?と、PVを稼ごうとする作者の悪知恵)

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