第2話 ダンジョンに行くよ in 異世界
よろしくお願いします!
「ふぁ~はぁ、良く眠れた。」
昨日は色々あって頭が疲れてたみたいだな。何かスッキリした気分だ。
「霧島様、朝食の用意が出来ていますがいかがなさりますか?」
ドア越しにそう聞かれ、すぐに準備をした。準備といっても寝癖を少しだけ直しただけだけど。
「お待たせしました、おはようございま……王女様!?」
「はい。おはようございます霧島様」
「……」
気まずいな。白金さんが居ないと何を話していいのか悪いのか判断がつかないな…
王女様は信用していいみたいだけどまだ名前しか知らないし。
「あ、あの、しら……僕と一緒にいた女の子はもう起きてますか?」
「はい、先ほど朝食に向かわれたのでもう起きてますよ」
「そうですか、わざわざお起こしに来ていただいてありがとうございます」
「いえ、そのくらいの事は」
「……」
会話が続かないのは俺が悪いんだろうか? 人には向き不向きがあるんだからこんな状況も仕方ないよな。
「霧島様、あの、もしですが、もし嫌なら勇者の役目を背負わなくてもかまいません。大国にも勇者様が居られる筈なので我が小国が無理をする必要はあまり無いと私は考えてます。お二人くらいなら魔王が討伐されるまで養う事くらい出来ますので。……出来れば我が小国の防衛には手を貸して頂きたいと思っていますが……」
この子は王族としての重圧に耐えられるのだろうか? とてもそうは見えないが。
「おれ……じゃなくって僕も、いきなりこんな所に連れて来られて正直に言うと戸惑ってます。勇者? 魔王? いやいや、って感じです。外に行けば魔物とか居たりするでしょうし、かといって王宮に閉じ籠って居ても周りの人を信用できないままだと思います。だから僕は死なない為に抗おうと思います。敵は容赦なく倒しますし味方なら守ります。今はまだ勇者としての力を使いこなせていませんが、予定としてはこんな感じでいくつもりです」
「そう……ですか。私は霧島様の決めた事ならそれを応援させて貰います。ですが、民を傷つけたりこの国に不利益を与える存在だと判断しましたら私は例え勇者様であろうとも戦います。私はこの国の民を守らなければなりません。それは昔に神ソフィアに誓いを捧げています。それだけは知っておいてください」
……考えを改め無いとな。この子の民を守る気持ちは本物のようだ。国民にしたら理想に近い国のトップなのではないだろうか。
「分かりました。とりあえず僕は出来る事をしていくつもりです」
「もし可能ならば、この国を……この大陸をよろしくお願いします」
多分、この子が居なかったら白金さんについていってこの国をさっさと出ていってたかもしれないな。もしもの話だけど。
「おはようございます」
「おはよう霧島君。シルフィス王女も」
「おはようございます。えぇ……っと、昨日は聞きそびれてしまったのですが、勇者様のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「白金よ」
「白金様ですね。本日のお二人のご予定は決めておられますか? よろしければお二人の力を見せて頂きたいのですが……」
「私達の予定はダンジョンに行くつもりだけど?」
そうなんだ……早速ダンジョンに行くんだ。聞いてないな……まぁ、どちらにせよついていくんだけどね。
「いきなりお二人でダンジョンはまだ早いと思うのですが……せめて、我が国の騎士を連れて行かれてはどうでしょう? いえ、その前にステータスの事や魔法についてなども説明させて頂きたいのですが……」
「ステータスについてなら昨日の内に偶然、偶々、自力で発見出来たから説明は要らないわ」
「そうなのですね……流石は勇者様です」
「白金さん、ダンジョンに行くって言ったって準備も何も無いけど大丈夫なの?」
どのくらいの距離にあって、どのくらいの敵の強さで、どのくらい潜っているのか、それはまぁ良しとしよう。どうせついていくだけだし。でも流石に防具とかナイフくらいは欲しい。
「大丈夫よ。装備品はここに在るものをとりあえず借りましょう。あなたは自分の出来る事を知ることが今すべき事よ。ダンジョンはそれを試すいい場所だわ。行くしかないでしょ?」
「まぁ、試さないと分からない事も有るかも知れないからな。分かった、ダンジョンに行こう。あ、その前に朝ご飯頂きますね。いただきます」
「ちょ、ちょっとお待ち下さい。あ、朝食は食べて頂いて結構です。あの、ダンジョンはやはりまだ早いといいますか……最低限の知識と戦闘の訓練を受けて貰わないと……」
「いきなり勇者が死んだりして、その事が大国に知られたら目も当てられない、という事かしらね?」
「確かに大国から非難されれば、この国は窮地に追いやられるでしょう。国民の事を考えればその理由でお二人を止めます。数日後には勇者様にはパレードに参加して頂く予定もありまして国民の皆様も召喚された勇者様に期待しておりますから。けど、私は純粋にお二人に死んで欲しく無いのです。この国に来ていただいたお二人の事は国民と変わらないと私は思っています。どうか無茶はしないで欲しいのです」
「そう……シルフィス王女、貴女の気持ちは分かったわ。貴女は戦えるのかしら? いや、別に戦わなくてもいい。私達のお目付け役は貴女にお願いします。それ以外は受け付けない。その場合は勝手にダンジョンへ潜らせて貰いますので」
「なっ……いえ、分かりました。では、少々お待ち下さい。今日くらいなら私が居なくても大丈夫でしょうし、大臣達に伝えて参ります。その時に装備品も用意しますのでお待ち下さいませ」
王女様が準備の為に離れて行くのを見計らって、白金さんが話しかけてきた。
「霧島君。あなた抜きで話を進めたけどいいかしら?」
「うん? 俺の事は気にしないでいいよ。まだまだ分かんないことだらけだし、それに別に割り込む所は無かったしね。割り込めなかった訳じゃないよ? パレードの事は少し気になるけど」
「問題ないならいいわ。パレードは仕方ない事よ、ただ愛想を振り撒いとけば大丈夫だから気にしなくていいわ。……それであなたの能力使えそうなの?」
「俺のユニークスキルは消滅魔法だし、やっぱり消す事を中心にして使えそうな技をいくつか考えてきてる。片目の代償になるくらいの強さかそれ以上には思えるよ。後は魔力を伸ばすのと魔法自体が使えなかった時の為にどうするか考える事と片目に慣れる事かな」
「思ったよりは考えているのね。安心したわ。何か簡単でいいから見せて貰えるかしら?」
「『ミュート』」
「……」
本人は何か言ってるつもりなんだろうが全く聞こえない。こっちの声も届かない。ここら一帯の音を消滅させたからだ。解除するまで魔力は少しずつ減っていく……この減り具合ならまだまだ使えるけどこの辺でいいかな。
「なるほど……周囲の音を消したのね」
「そういう事。持続性のある消滅魔法だ。使ってる間は魔力が減り続ける仕様になってる。しかも声でのやり取りはできないし、いきなり音が消えたら誰しも不審に思うから使う場所は選ぶかな」
「殺す対象が寝ていたらほぼ無敵かもしれないわね。他には?」
「ここにさっきスープをこぼして出来たシミがあるだろ……『イレイス』」
「……消えたわね。実験が地味過ぎて微妙な能力としか思えないわね」
「ここまでは応用出来たらいいなぐらいの技で、本質は違う。この口を拭いた紙を見といてくれ……『ロスト』」
音も無く、まるで初めから存在していなかったように何も残らない。それが消滅。俺のユニークスキルの本質だ。
「驚いたわ……。もしあなたが今私にその魔法を使えば私は消えて無くなるのかしら?」
「片目の代償はそこまで都合良く無かったな。この魔法はまず消滅させる対象を目で視ることが前提条件だ。こっからは推測だけど、対象の強さで消費する魔力の量が変化する。ペラペラの紙と硬いネジだと消費に差があったし、情報不足だから確定ではないけど、人くらいになると今の魔力じゃ少し足りないと思う。だから、白金さん全ては消せない。出来て一部を消し去るくらいじゃないかな~と」
「たしか、霧島君の魔力は3000よね?」
「うん。だから普通の人をまるごと消すのには4000。少し鍛えた人を消すのには5000。強者と呼ばれる人達を消すなら10000じゃ足りないと思う。なんとなくの感覚で申し訳ないけど」
「いえ、十分よ。一部は消せるのよね?」
「まぁね。今の白金さんだと頭に穴を開けるのがギリギリ可能といったとこですかね?」
「……人相手じゃ十分過ぎるわよ、その能力」
「そう……だな。人相手ならやれるけど再生能力を持ったモンスター相手だと厳しいんじゃないかと思ってる」
「それで魔力を伸ばすのと魔法が使えない時の対処ね」
「しかもこの魔法、布を何枚も被られたらそれを1枚ずつ消していかないとダメなんで……それで防がれますね。肌が少しでも出てたら消せますけど」
「だいたいは分かったわ。これからは実戦で覚えていきましょう。戦いの動きとか剣の振り方は私が教えられるから安心して貰っていいわ。お互い死なない為に頑張りましょう」
「頼りにしてますよ白金さん。俺は死なない為には頑張りますけど魔王とかまだよく分かりませんし……」
とりあえずは俺の能力も教えたし、上手く掌で転がしてくれるだろう。
◇◇◇
朝食も食べ終えた頃、軽装の王女様と様々な装備品を持った騎士五名が現れた。
「お二人のサイズに合うものを用意しました。武器はこちらから選んでください」
俺に用意された軽装はサイズぴったりだった。問題はどの武器にするかだな。無難に剣か槍あたりかな?
「久しぶりだから無難に剣で行こうかしら」
「白金様は剣を扱えるのですか?」
「本物じゃないけど木刀で少し習っていた程度よ。あと槍も少しって所ね」
なるほど。今のは剣も槍もなんなら棍棒も弓も杖も使えるわ。という解釈もできるな。二度目なんだもんな。
「白金さん、どの武器がいいか分かんないんだけど?」
「そうね……。武器を扱ったことの無い初心者ならやっぱり槍かしら。狭い通路や懐に入られたら対処が難しいかもしれないけど少し距離を空けて突くだけなら簡単でしょ?」
「ふーむ……ふむ。じゃあ槍にします。そういえば、ダンジョンって誰でも入れるの? 何かしら資格的なのが必要なんじゃ?」
「それでしたら心配は要りませんわ。すでに許可証は発行しておりますのですぐにでも入れますよ」
あ、冒険者ギルドとか行かないんだ。行ってみたかったな……今度機会があったら行ってみよう。
「霧島君、食べたばかりだけど動けるかしら?」
「大丈夫。じゃあ、部屋で着替えて来るよ。集合場所はここでいいかな? 迷ったら嫌だし」
「私が迎えに行くから部屋に居ていいわよ。」
「そう? 助かる。じゃ、王女様、着替えて来ますね。」
「はい、お待ちしております。」
俺が部屋で着替えているとドアが開かれた。白金さんだ。ちなみに今からズボンを履こうとしていたのでパンツだ。
「ちょっと作戦会議と言うか話し合っておこうと思って。それで王女の事なんだけどあなたはどう思うかしら?」
「いや、白金さん。まだ着替えの途中なんだけど……」
「着替えながら話は出来るでしょ? というか何で着替えるのに一分以上かかってるのよ?」
「す、すいません……皮の鎧とか着たこと無かったし、見てました」
「まぁいいわ。それで? 王女をどう思うの?」
俺はズボンを履きながら考えた。王女か……。国民の事を思ういい子だとは思う。王女の事だけ見れば何も問題はないだろうな。
問題は今の段階で思い付くのが二つ。なぜ王の姿が無いのか、なぜ王女がダンジョンに行く事を周りの人間は止めないのか。可能性を考えると、あの王女様を亡き者にしたい人間がいるのか、それとも居ても居なくても問題ないのか……。神ソフィアもこの子だけを特別視してたわけだし身内にも敵と呼べる存在があるのかもしれないな……。
「王女自体に問題はない様に思えるけど」
「そうね。ステータスを覗き見ても操られてはいないみたいだったわ」
そんな事していたのね……。
「じゃあ、王女様は信用出来るって事でいいのか?」
「そうね。大丈夫だとは思う。けど、私は警戒しておくわ。あなたは普通にしてて大丈夫よ」
「分かった。そうだ、白金さん。遠くを見れる道具か魔法って無い? 俺の魔法は視認できればそれで使えるから遠くを見れる何かしらが欲しい」
「そうね……。たしか、遠くを見るスキルはあったはずよ。多分、双眼鏡の様な物もこの世界にはあったはずだけど……」
「そうなのか、とりあえず何かしらの方法があるなら今すぐじゃなくてもいいや。……遅くなってもあれだし、そろそろ行こうか」
「そうね」
俺達が王女様の所へ戻ると顔を覆い隠せそうなフードの付いたローブが三人分用意されていた。
「私は顔が知れてますし、その私と一緒にダンジョンとなったら勇者様達にもちょっかいを出す者が現れるかもしれないので一応の保険でローブです。お二人は眼帯をなさっているので私も用意しました」
いや、眼帯は要らなくないか? 目立つだろ三人ともローブで眼帯だったら……。
「王女様はマスクとかの方が似合うと思いますよ? 目元だけのやつとか」
「あら? 霧島様はそう思われますか? 分かりました。片目あたりを隠すマスクにしますね!」
いや、それだとあんまり変わんないんだけど。あぁ……メイドさんが取りに行っちゃったよ。
「霧島君のおかげでみんなお揃いね。特徴的でいいと思うわ」
いや、ほらね、ローブのフード部分を被る人と被らない人に別れればいいと思う訳でして……そんな無表情じゃなくてもいいじゃんか。
「そうですね、勇者様とお揃いで私も感激です。パーティーらしさも出て案外良いかもしれませんね。パーティー名はどうしましょうか? 『片目の守護者』なんてどうでしょう?」
クソだせぇ……。
「却下ね。ダサすぎるわ。そうね……『†漆黒の闇勇者†』こんな感じかしら?」
イテェ……王女様の方がマシなレベルだぞ……。
「霧島君。何かしら? 王女様と私のパーティー名に不満でも?」
「そうですよ霧島様。私のは白金様のに遠く及びませんがいいパーティー名だと思ってます!」
そうか、冗談とかじゃないんだ……。
「そこまで言うなら霧島君の案を聞きましょうか」
「いや、待ってくれ。俺は何も言ってないぞ!?」
「目は口ほどに物を言うのよ」
うーん……正直パーティー名は何でもいいんだけど。
「白金さん。スフィアってどんな意味があるんだっけ?」
「たしか……球体とか天体……星かしら?」
星か……スフィアは俺達に願いを託して。王女様はスフィアに祈って……うん。そんな大層な名前にしたい訳じゃないけど。
「……『星の祈り』とか、どうだろうか? 少し綺麗過ぎるというか大袈裟な感じになっちゃったけど」
「ステラプリエール……ラテン語とフランス語が混じってるけど……気に入ったわ」
「はい! 私も素敵だと思います!」
どうやら二人の琴線に触れたようで良かった。白金さんが意外と痛い子だとは思わなかったけど…でもまぁ、一度この世界に来て魔法に触れてたならあり得なくもないのかな?
「それなら良かった。じゃあ、パーティー『星の祈り』結成という事でさっそく行こうかダンジョンに」
◇◇◇
俺達はダンジョン前にまで行く馬車に乗って街の風景を楽しんでいた。
「"昔とちがうわね"。道も整ってるし家も綺麗だわ」
「ありがとうございます。言い伝えになりますが、私の祖父のそのまた祖父の時代に魔王が暴れてたらしく。その時に今回の様に勇者様をお呼びしたらしいのです」
白金さんの表情が少し強張ったな。白金さんが一度目に来たときの話かもしれない。
「その時にこの国にも立ち寄って頂いたみたいなんですけど……道が歪んでて歩きづらいとか、建物がボロボロだとかの評価を受けまして……それ以来らしいです、街を綺麗にする活動がなされたのは。まぁ、綺麗な方が良いのでその勇者様には感謝ですね」
白金さんが一度目に来たのは俺たちが居た世界で三年前だから中学一年生になったばかりだろうか、思春期だから言いたいことは言っちゃうよな。その時もクラス単位で召喚されたのだろうか? もしかしたら一人かもしれない……どちらにせよまだ幼いのによく生き残れたと思う。
それからしばらくすると道路には剣や斧、ローブ姿に重装備の人、冒険者らしき人たちが沢山いた。ダンジョン帰りの人も居れば今からという人も居るだろう。俺も男だから冒険っていう言葉には魅力を感じるしワクワクする。だから白金さん、隣で三秒で五人とか言わないで欲しい。何の事か分からないけど多分、ダメなやつそうだし。
「おうじょ……こほん。シルフィスさんはダンジョンに入ったことあるんですか?」
「一応はありますよ。魔法の練習がてら嗜み程度にですが」
「魔法ですか……まだ見たこと無いんですよね、後で見せて貰えますか?」
「はい、もちろん! 任せてください。そういえばお二人はステータスを見れたのですよね? そこのスキル欄に魔法が載っていればすぐにでも使えるはずですよ!」
えっ……。俺ユニークスキル以外は何も無かったんだけど……すぐにとはいかないけど使えるんだよね? 魔法使えるんだよね?
「霧島君。ちなみにだけどスキル欄に魔法が載って無かったら才能が無いわけだから覚えるのに相当な時間かかるらしいわよ? 何ヵ月、何年かは知らないけど」
親切に教えると見せ掛けた、俺のスキル欄を知ってて精神を壊す行為はやめて欲しい。ユニークスキル無かったら終わってたな
「勇者様には持っていれば大成は間違いないと言われている、ユニークスキルがあると思うのですが……お二人もありますか?」
「あるわよ」
「僕にもあります」
「そうですか、こういった情報は大国から教えられるので……私だけでは調べる術も無くてですね……あるなら良かったです。あ、そろそろダンジョン前ですね。薬一式と食べ物は持ってきていますので今渡しておきますね」
あ、凄い。肩掛けのカバンの中から同じサイズのカバンが二つと薬とお弁当が出てきた。マジックバックってやつかな。
「凄いですね。軽さもありますし、どのくらい入るんですか?」
「これはそこまで容量の大きい物じゃないので見た目の三倍くらいですかね」
こんなに軽いのにそんなに入るって便利だな。
「では、さっき渡した許可証を受付に見せたらもう入れますので。注意点としてはむやみに他の冒険者に接触はしない。あと、はぐれない、パーティーで力を合わせる、魔力切れはおこさない。気絶してしまいますので。まぁ、このくらいですね。では、行きましょうか」
俺達は受付に許可証を見せてダンジョンへ入っていった。しばらくは下り坂を下りて行った。五分くらいは歩いただろうか迷路のような場所へとたどり着いた。通路の幅は人が三人くらいで槍を振り回しても余裕がある程だ。地下だから暗いのかなと思ったが全然見える。見えなかったら俺はホントに使えない男になってたな。
「ここはどのくらい広いんだ?」
「このダンジョンはだいたい一階層あたり、五キロメートル四方ですね。確認されているのが最下層の四十階です。未だにボスが倒されていないので正確には三九階層ですが……」
その最下層のボスを倒さないと昔の勇者……白金さんの当時の装備品が手に入らないわけだな。俺が一番足引っ張りそうだし早くこの槍にも慣れないとな。
「結構広いし深いんですね……。モンスターって強いんですか? 槍何突きくらいですかね?」
「槍……ですか? そうですね、一階層とかまだ上の階層なら頭か心臓に一突きでいけると思いますよ? 流石にそれ以下の階層ですと頭や心臓に当てるのが難しくなっていきますし、難易度は上がるかと……」
「なるほど、とりあえず弱い敵で槍の扱い方を学ばないとですね。これでも反復練習は嫌いじゃないんですよ」
槍を突いて見せてみたが苦笑いされてしまった……まぁ、そうですよね。
「そろそろ気を引き締めなさい。雑魚敵でも死ぬときは死ぬわよ」
……はい。そうだよな、ここはダンジョン。モンスターが生息する場。宝物やモンスターの素材を求めて冒険者が日々命を散らす場所。ふぅ……よし! いける。
「槍の構えを教えるわ。基本のやつね。とりあえず左肩を前で横を向いて、足は肩幅より少し広めに。そう。少し肩を落として左手は下から支える様に、右手はしっかり握って、突く時は右手を捻りながら真っ直ぐ。やってみて」
言われたとおりの型で何度か突いてみる。ダメだな……どうしてもぶれてしまって真っ直ぐとは言えない。
「最初はそれの練習ね。好きなんでしょ? 反復練習は。槍は突くだけじゃなくて叩く事もメインの攻撃の仕方よ。長さという利点を活かすように考えて使うことね。基本が出来るようになったら応用は自分で好きにやるといいわ。基本が出来てからね」
「分かった。なるべく早く使いこなせる様になってみせる」
動いてない、ただの型の練習でぶれてるからなぁ。敵と戦いながらと考えると……いや、初日だし今から頑張っていこう。
「白金様、今日は一階層で戦いの訓練ですか?」
「そうね、私も剣の感覚を取り戻したいし、最初はこの層でいろいろ試させてもらうわ」
「分かりました。私もダンジョンは久しぶりなので身体を動かさないと、と思っておりました。では、モンスターを探しましょう」
「この先を右に行ったらいるわ。霧島君、行けるかしら?」
「行ってくる」
俺は槍を構えて走り出した。ちなみに槍は使わない、使うのは消滅魔法の方だ。
右に曲がると、茶色で一メートルくらいの人型のモンスターがいた。相手も走ってきた俺に気付き、睨み付けてくる。
「『ロスト』」
右腕を消し飛ばした。ステータスを確認するが、魔力はあまり消費されてないようだ。血が吹き出し、モンスターが悲鳴をあげている…悪いが実験台になってもらうぞ。
「『ロスト』」
次は右足だ。これも右腕を消した時と同じだな。右の手足を失い、血を出しすぎたせいか、虫の息だ。
「『ロスト』」
頭を消した。腕や足と比べると明らかに魔力を消費される。急所って考えると心臓も同じだけ魔力を消費するかもしれないな。
「霧島様、いきなり走り出すと危ないですよ。白金様が大丈夫と仰るので歩いて来ましたが」
「すいません。でも、大丈夫でしたよ。茶色の人型のモンスターが一匹だけでした」
「あ、ゴブリンでしたか。一匹ならそれほど危険ではありせんね」
「霧島君。どうだったかしら?」
「これくらいならそんなに消耗しないよ。腕や足より頭や心臓の方が出る量が多かったくらいかな」
こんな感じのニュアンスで伝わっただろうか? そもそも俺が消滅魔法の説明してるって気付いてるんだよな?俺の一人相撲なら恥ずかしいんだが……。
「血ですか? 霧島様は反り血を浴びてない様ですが……」
「えぇ、まぁ離れて槍で刺しただけですから。少し血の量に驚いただけです」
「まぁ、この辺の敵じゃあまり練習にはならないわ。今日はチュートリアルみたいなものだと思いなさい」
「ちゅーとりある? 何でしょうかそれは…」
「お試しというか、初歩的な事の説明みたいな感じですかね?」
「そうなんですね。では私も霧島様に魔法をお見せしますね」
お、普通の魔法ってどんなのがあるんだろうか。楽しみだな。
「奥から一匹来るわよ」
「霧島様、見ててくださいね。魔法には詠唱があるんですよ。弱い魔法なら短いですよ、『穿て火の矢よ』ほら、これだけで魔方陣が現れ、魔法で出来た火の矢が飛び出ます。ゴブリンくらいならこれで十分ですね」
「穿て! 火の矢。…………じゃあ行きますか」
「霧島様…頑張って下さい……」
「恥ずかしいわね」
くそ! 出来ると思ったんだよ! なんだよ魔力あって詠唱してんだから出来ろよ! ……はぁ。槍がんばろ。
一階層をぐるぐる探索すると一匹のゴブリンに何回も遭遇する。俺も槍で心臓を突いたがグニュっとした。慣れないとな……。白金さんなんて出会い頭にモンスターの頭と胴体を切り離してる。剣筋は早くて見えない。滅茶苦茶強いじゃん。
「白金様は剣の扱いが上手いですね。驚きました」
「次からは私達だけでダンジョンに潜っていいかしら」
「白金様なら油断も何も無いでしょうし、かまいません。ですがもしよろしければ………たまに私も連れてきてくださいね?」
「いつでもいいわ。パーティーですもの」
「あ、ありがとうございます!」
「素敵な話してるとこ悪いんだけどさ、ゴブリンの死体と吹き出た血の中央で話すのやめない? それと、ずっと思ってたけど死体放置してていいの?」
「大丈夫ですよ。死体はそのうち消えますので。本当なら倒したモンスターの素材を剥ぎ取ったり、魔石を回収するんですがゴブリンですんで……気にしなくて大丈夫です」
そうなんだ。消えるんだ…凄いなダンジョンの仕組みって。
その後も槍の練習の合間に消滅魔法も使っていく。だんだん手慣れてきたな。槍はまだまだ下手っぴだが、消滅魔法の方は中々だ。なにより詠唱が無いのが大きい。現象を思い浮かべて一言となえるだけだ。さすがユニークスキルってとこだ。
「ふぅ……霧島君。王女様。そろそろ今日は帰りましょうか。戦闘にも少しは慣れたみたいだし。霧島君はレベルも上がってるはずだわ」
そういえばだいぶゴブリンを倒したもんな。ええっと、指を前に持った来て下にスクロールするように……ステータス。
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イチル キリシマ Lv3
HP 360/360
MP 2000/3400
STR 69
VIT 67
DEX 73
AGI 90
INT 56
LUK 41
スキル
魔力制御 Lv1
槍術 Lv1
ユニークスキル
『消滅魔法』
称号 『消滅の勇者』
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レベルが二つ上がっていた。HPが300から360。MPが3000から3400。一レベル毎にHPが30。MPが200上がっているな。レベルの上限が分からないけどMPの上がり幅が大きくて助かったな。その他のステータスも伸びてるし、槍術も手に入っている。ひと安心だ。だがやはり、ロストは他の技より消費が大きかったな。
「少し伸びてました。槍術のスキルも手に入ってましたよ!」
「おめでとうございます、霧島様。この調子で頑張っていきましょう」
「では、そろそろ帰りましょう」
俺達は地上に戻り馬車で王城の近くまで来て城までは歩いて帰った。初めての冒険でわくわくしたし緊張もしたけど、こうやって無事に帰ってこれてホッとした。
「それでは今日はゆっくりと休んでください。お風呂も用意してありますのでご自由にお使いくださいね。では、今日はありがとうございました」
王女様と別れて白金さんと俺の部屋に集まった。今日の事とこれからの予定を話すためだ。もちろん文字でのやり取りだ。
"槍はまだまだね。初日だからスキル取れただけで全然凄いとおもうけど。それと、消滅魔法を使ってみた感想はどうかしら?"
"槍のレベルって反復練習でもあがるの? 消滅魔法は使い勝手の良い魔法だと思ったよ。魔力切れを起こさない様に、敵の強さを判断出来るよう色々経験を積まないととは思ってる"
"反復練習でも上がりはするけど、やはり実戦が一番ね。消滅魔法は相手の一部分でも消せたらそれだけで優位に立てるわ。今後の課題は戦いの訓練ね。"
"今日が初戦闘だったんだよな。今さら心臓がばくばくしてる。"
"戦いも慣れよ。頑張って早く私の左目になりなさい"
"御意に"
最後のは痛い奴だな。白金さんが満足そうだから良しとするけど……
「『ロスト』」
文字を書いた紙を消滅させた。残しておくメリットが無いからな。
「では、そのうちパレードがあるでしょうし、それまでは王城の中庭とかで訓練ね。では、また明日」
「了解した。おやすみなさい」
こうして、俺の異世界二日目の初ダンジョンは無事終わった。
この日はゴブリンとの戦闘で槍を突き刺した事を思い出して中々寝付けなかった。早く慣れるといいなぁ。
誤字脱字の報告よろしくお願いします!
評価や感想もお待ちしております(´ω`)




