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第19話 片付けよろしく in 異世界

今日は割と早めに書き終わりました。

え?X'masイブ?知れない子ですね



~前回までの一縷君サイドのあらすじ~

前回の一縷君達は、ダンジョンを何やかんやで攻略しました。

 


 白金さん達の部屋で、明日からの事についての話し合いが始まった。馬は運良く手に入れているし、食料の買い付けと大国のどちらから行くかについてが今の主な議題だ。



「……という訳でして、ここからなら帝国の方が近かった筈ですよ?」


「それでも、馬で一ヶ月と少しは掛かるんだよな?」


「食料は……そうね、ここで買って行くのは保存の効きそうな物を、後は街を転々としながら買い足して行きましょうか。それにしても帝国ね……昔からあまりいい噂を聞かなかったけど?」



 ルフィスは今よりも小さい頃、何回か大国に呼ばれて移動した事があるらしい。その時には王国も帝国へと来る為、三国の中間くらいにあるのだと推測していた。


 地図を見ていない為、正確な事ではないらしいが、白金さんが否定しないとい事は間違って無いのだと思う。



「今の時代も帝国はあまり……。とにかく、武力に力を入れていますので、戦力は他の国よりもありますね。……少々やり過ぎな所がありますし、勇者様達がどうなってるか心配です」


「在り方は変わってないのね。強ければ男女問わず地位は手に入るけど……他人の足を引っ張ったり、弱者にはとことん厳しい国なのよね」


「じゃあ、帝国だから……皇帝?その地位に居る人も強いの?」



 強さを売りにしてる国で、そのトップが弱いって事は無いだろうけど……上に立つ者は為政者だし、武力的な意味合いで強そうなイメージは無いけどな。



「どうでしょうか……?演武ですら見たことが無いですし、分からないですね……」


「まぁ、弱くは無いんじゃないかしら?」


「ま、それもそうだよな。ダンジョンってやっぱり、その皇帝の居る街に在るのかなぁ?」



 多分、居るだろうというのが俺の考えだ。勇者を育て上げる為にはやっぱりダンジョンが近くにあった方が便利には違いない。


 勇者が居る。それはつまり、厄介事が存在していると言い換えても良いだろう。最悪、姿を消して逃げる事は出来るが……魔法に頼りきりな作戦はあまりよろしく無いだろうな。



「でしょうね。話を戻すけど、明日は私とリコルで買い物に行くわ。必要な物は買っておくけど……二人はどうする?」


「私もついて行っても良いですか?する事も無いですし……」


「じゃあ、俺は先に預けていた馬を引き取りに行っておこうか?」



 買い物の方が時間は掛かるだろし、この街を見ながらゆっくりと行く予定だけど。



「じゃあ、コレ……引き取る時に必要な番号札よ。待ち合わせは、ギルドよりも広場辺りの方が良いかしらね?」


「分かった。リコルも買い物お願いね!」


「任せて!お兄ちゃんも変な事に巻き込まれないでね?」


「大丈夫ですよ、リコルちゃん。流石の一縷さんでも……大丈夫ですよね?……ね?」



 うぎゃああああああ!?大丈夫……だった!大丈夫だったのが、大丈夫じゃなくなった気がする!?



「白金さん!大丈夫かな!?俺的にヤバい気もするけど!」


「同意見……よ。でも、まだ何かが起こると決まった訳じゃないわ。とりあえず、離れていてね」



 酷いっ!?決まってないと言いながらも、白金さんの中じゃ確定しているじゃないか!いや、俺の中でも半ば確定事項な感じがしているけども!


 くそぅ……今度リコルにはちゃんと教えておこう。台詞に気を付けないと、俺達の居た世界では冗談に出来ても、モンスターや魔法なんかが存在するこの世界では冗談が本当になりかねないという事を……な。



「分かった……俺が引き受けよう。はぁ、何が考えられるかな?」


「誰かに絡まれるのが王道だけど、何かに巻き込まれる事も考えられるわね。とりあえず、私達より先に広場に居なかったら探し回る事にするわ」



 是非見付けて、さっさと助けてくださいね?いや、本当に……。



「じゃあ、話し合いは終わりよ。明日、朝から動くけど……一縷君はお昼前には広場に居てね」


「了解した。じゃあ、みんなお休み~」


「お休みなさい!」


「お兄ちゃんお休み~」



 ――翌日、俺が皆より少し遅めに起きてそろそろ行動しようとした頃。ギルド職員なる者が来たと、宿の従業員が言いに来た。くそぅ!!



 ◇◇◇



「探しました。Fランク冒険者、キリシマイチル様ですね。ご同行お願いいたします。……パーティーメンバーの方は?」



 眼鏡を掛けた社長秘書の様な風貌の女の人が、俺達の借りている宿までわざわざ来たのだ。うーん……これは、よろしくない事が起きたのかも知れない。



「いや、その……いったい、何用ですか?」


「それは、ギルドでお話致します。私は連れて来る様に指示されただけですので……それで、他のパーティーの方は?」



 何かやらかしたか?……待てよ?いや、待たなくても思い当たる節は無い。無いはず。



「あー、他のメンバーは買い物に行ったんで居ないですね、はい。あと、僕も今から用事が有るので……」


「そうですか……では、あなただけでも構いません。さ、行きましょうか」



 不可避!?……全国、いや、全世界にチェーン展開しているギルドを相手に逃げるのは流石に良くないよなぁ。はぁ~、行くしかないのか。


 俺は装備を整えて、一応槍もマジックバックにしまった。部屋を綺麗にして宿屋に部屋の鍵を返すと、ギルド職員にギルドまで連行されていった。



 ギルドに入ると、今日も今日とて冒険者がクエストを漁ったり、飯を掻き込んでいたりと、いつも通りである。という事は、何かが起こったという事ではないのだろうな。とりあえず一安心。



「こちらです」



 そう言われ、ギルドの裏手にある訓練所を通り、別の入り口から建物へと入って行く。……連れられて来る以外に入って良い所では無い雰囲気だ。



「あの、そろそろ理由くらい教えて貰えますか?」


「それは、今から説明があると思います……この部屋です。ギルド長!例の冒険者をお連れしました」


「入れ!」



 ギルド長!?って事は、ここはギルドの職員用の部屋がある場所か?……そしてこの部屋はギルド長室で……。ホントに何で!?


 職員の方に続いてギルド長室へと入ると、来客と話し合う為の低めのテーブルとソファーや、資料棚や書類が積まれた机。なんだか汚い校長室みたいな感じだ。


 そして、窓の外を見ながら仁王立ちで立っている壮年の男。その男が振り返った。歳は三十代後半くらいだろうか。体格も良さそうだけど、どちらかと言うと頭の良さそうな見た目だ。



「ギルド長、キリシマイチル様をお連れ致しました」


「ご苦労。飲み物の準備を頼む……君がFランクのキリシマイチル君だね。とりあえずそこに座ってくれ。飲み物がすぐ来ると思うから、そしたら話そう」


「先に理由だけ教えて貰えますか?何故、連れてこられたのかを」



 力ずくでの連行じゃなかったし、ヤバい事では無いと思いたい。思いたいから、理由を早く教えてくれ!



「そうだね、理由は簡単だ。君達はパーティーを結成して……というか、冒険者に成り立てだった筈だ。なのにダンジョンの下層に居たという情報を耳にしたが……本当かね?」


「違いますと言ったら信じてくれ……ませんよね。ですから、睨まないでくださいます?」



 怖っ!びっくりした……ドラゴン並みに鋭くなったぞ。こえぇ~。サリファだろうか?それとも、キングオークを白金さんが倒した時に居た冒険者だろうか?


 どちらにしても、面倒な事をしてくれたな。ほんと。



「ま、冗談には冗談です。今日、お呼びした理由はただの調査ですよ」


「調査ですか……。先に言っておきますけど、言えない事や言わない事はありますよ」



 別にどうやって下層まで行けたのかは教えても良い。ただ、槍を振り回して突き進んだだけだからな。同じ事をすれば誰でも行けるだろうし。……だが、魔法の事や秘密にしなければならない事は口が裂けても言わない様にしないと。


 ……あぁ!?そうだ、そうだった!ステータスも変えとかないとだった!ギルドにも白金さんの様に、ステータスを覗ける者が居てもおかしく無い訳だし……くそ、気付くのが遅れた。


 これでも早めに気付けたと思うが、このギルド長や俺を連れてきた職員。それやギルド内にそういうスキルを持ってる人が居たとしたら……これはミスったな。


 俺は魔法を使って、一応ステータスの一部を見えなくした。誰かに見られていたとしても、それは見間違えって事でやり過ごそう。



「秘密にしたい事はそれで構わないよ、だが、Fランクというのはそもそもダンジョンには入らない。理由は分かるかな?」


「いえ、全く」



 Fランクで稼ぐとしたら、ダンジョンのゴブリン程度であれ倒した方が旨味がある。採取クエスト、お使いクエストみたいなのもあるがダンジョンへ入らない理由にはならないだろう。



「即答か……まぁ、そうだろうね。多分だが、君にはダンジョンに詳しい仲間か良い指導者が居たんじゃないかな?……でもね、冒険者になる様な連中には最初から指導者なんて居ないんだ。だから、まずは簡単なクエストを達成して人との繋がりを増やし、先輩冒険者に色々と教えて貰う」



 なるほど。俺には白金さんが居たから大丈夫だったが……恵まれ過ぎていたんだな。



「この頃には皆、Eランクには上がってるかな?ダンジョンは不思議が多くてね、現役に教えて貰うのが一番なんだよ。勿論、モンスターの知識は本で学べるけど、実際は違うからね。話は分かって貰えたかな?」



 確かにダンジョンには不思議も多い。現役では無いにしろ、白金さんが居なかったら……俺は無謀な挑戦をしてダンジョンの土にでもなっていたかも知れない。


 そう考えると、実力は抜きにしても端から見た時、Fランクの俺達は少し異様に映っていてもおかしくは無い。それどころか、ギルドにチクられても全く不思議じゃないくらいだ。



「話は分かりました。では、失礼します」


「あ、うん。まだだよ?帰ろうとしないでね?」



 ちっ、駄目だったか。



「それで、実際に君達はどの程度の強さなんだい?中層以下のモンスターとは戦ったんだろう?」



 白金さんが居ないとやっぱり不安だな……うっかり余計な事まで言ってしまいそうで。確か、どのランクでも緊急クエストには強制参加だったな。



「えっと、自分達で言うのもあれですけど……多分、Dランクくらいじゃないかと。本当の事言うと、パーティーメンバーの一人が強いだけで……僕とかは弱いんですよ。だから全然でして……」


「ふむ……」


「お話し中失礼します。お飲み物です」



 俺とギルド長は用意して貰った飲み物で喉を潤した。お茶か珈琲かと思ったらまさかのミルクである。美味しいから良いけど。



「君達はクエストを受けてはいないそうだね?それだとランクは上がらない事を知っていての行動かな?」


「えぇ、まぁ。街の人には悪いですが、今はダンジョンにさえ潜れればそれで十分なので」



 お使いクエストとかもやってみたい感じはあるけど、俺に出来るのは掃除と荷物持ちくらいだろうな。魔法を使っての作業とかは出来ないし、採取クエストも素材の知識から勉強しないといけないからな。



「ダンジョンに潜る理由を聞いても?」


「良いですよ。単純に、強くなる為と資金稼ぎですね。死にたくは無いので」



 死にたく無いからダンジョンに潜る。何か反対の事を言っている気もするが、強くなる為の効率を考えるとやっぱりダンジョンが一番だろうし。この街のダンジョンは攻略したから出発するんだけどな。



「なるほど……そうか。では、さらに細かく聞いていくから答えれる物だけ答えてくれ」


「分かりました」



 根掘り葉掘りとまでは行かないが、色々と聞かれた。俺らのパーティーの強い人についての事を聞かれたが、流石に何も言わなかった。ギルドとしては、強い人に興味があるのかも知れないがこっちには関係ない事だからな。



「それじゃあ最後に聞くけど、この街にはいつまで居るのかな?」


「……今日の昼までです!では、またいつか!」



 ギルドに冒険者の流出を止める権利までは無い筈だ。流出を防ぐ努力をするのはその街の勝手だけどね。



「おっと、それはちょっと困るかな?ギルドとしては君のお仲間が売ってくれた素材をもっと集めたいと思っていてね……オーガやオークの素材、それよりも明らかに下の階層の物と思われる魔石。この辺の冒険者よりも短期間にしては圧倒的に数が多い」


「お褒め頂き、ありがとうございます!では、さよう……どいて貰えますか?」


「いえ、私も一応は職員ですので。この街が潤う為にも是非素材の提供をお願いしたく思います」



 おっと……こういうのはありなのか?冒険者とは自由な者の筈だろうに。



「すいませんね、僕達もやる事がありますし……仕方ないですよね?たまたま通りすがりの冒険者ですし、この短期間がラッキー程度に思っててくださいませんかね?」


「そのラッキーを出来るだけ長くするのがギルド長としての仕事でね。あまり手荒な事はしたくないんだが……分かるだろ?」



 トップに立つと二面性でも出来るのか?本性が出てきたな。それにしても手荒な真似か……。狭い通路では槍は振り回しづらいし、出来れば外までな行きたいかな。争わないのが一番には違わないけど。



「Fランクに手荒な事ですか……強いのは僕の仲間であって、その人がこの街を去ったら意味が無いですよ?」


「勿論、そちらへも人を送っている。男である君が強いと思ったからギルドまで来て貰ったけどね……まぁ、今頃は大人しく来てくれているだろうさ」



 な、なんだと!?なら、解決じゃないか!白金さん、ヘルプミー!!



「聞きますけど、本当にうちのパーティーと争うつもりですか?ギルドを破壊するくらい暴れるかも知れませんよ?」


「戦闘員はたった三人。初心者二人、強い子もAランク数名で囲めば問題無い。建物も多少なら構わないさ」



 悪い顔だなぁ。悪い顔だよ。戦力もだいたいでの計算だしさ、相手の事をもっと知ってから争おうよ。そうだ!白金さんが来る前に出来る範囲で一掃するのも有りかもな!



「あの、貴女も冒険者をしてますか?それともただの職員さん?」


「私も一応はCランクの冒険者です……ベグャラ!?」



 マジックバックから槍を静かに取り出して振り抜いた。



「貴様!何て事を!自分が何をしたか……」


「宣戦布告して来たのはギルドだろう?」



 もしかしたら、ギルドの連絡網的な奴で指名手配されてしまうかも知れないが……ここで留まっておく理由も無い。他国にも入る事は簡単だしな。



「ギルドに歯向かうという意味を分かっているのか!?」


「知らない!そして、興味も無い!!ギルド長、あんたが、黙って俺らを見送るならこのギルドを破壊しなくて済むけど?」



 名案が閃いた!ギルドの何かしらの通信システムを壊してしまえば、復旧するまで他のギルドに知られる事も無いんじゃない!?



「舐めるなよ小僧!」



 ギルド長が窓を開けて、笛の様な物で合図を出した。もしかしたら、待機中の冒険者を集めて居るのかも知れない。早く外に出よ……そうだ、訓練所的なあそこなら割と広かった筈だ。



「集めるなら訓練所に集めろよ?自称Dランクの力を見せてやる」



 俺は扉を開いて、来た道を戻って訓練所へと移動した。



 ◇◇◇



 おうおう……おうおうおう!結構、集まってるな。金に釣られたんだろうなぁコイツ等は。


 今は、俺を取り囲む様に距離を取って対峙している。誰もが踏み出すタイミングを待っているのだろうか、動かない。冒険者を見回していると、見知った顔があった。



「おーい!サリファ、あと、キングオークにやられそうだった女の人~。二人のせいでこんな事になったけどー?」


「いや、その……ごめんイチル!こんな事になるとは思わなくて……単純にイチル達の凄さを使えたかっただなの!」


「わ、私も。他の冒険者の皆も聞いて!この人Fランクなのよ!?ギルド長に言われたからってこんなに取り囲む事無いんじゃないの!?」



「「「でも、報酬が良いし」」」



 うん。分かるぞ。俺もそっち側だったらとりあえず参加だけして報酬を貰うだろうし。それでこそ金に汚い冒険者だ、否定はしない。



「おーい!サリファ、お前もそっちなら戦う事になるけど?俺だってやられたくないし、冒険者相手なら普通に刺すぞ?」


「う、ううん。私は参加しないわ……怪我の手当ての為に待っておくわね。ごめんねイチル」



 良いけど、何人負傷者が出るのか俺にも分からないぞ?何かもう、この街のギルドを潰して経済を混乱に陥れようとまで思考が来ている。俺も少し変な方にテンションが上がっているのかも知れない。



「お前達!奴は一人だが、Fランクと思わず叩け!殺しはするなよ、コイツの仲間を引き込む為の交渉材料にするからな」


「もし、この戦いで冒険者人生が終わっても良い奴だけ掛かって来い!!嫁、恋人、家族、守りたい人が居る者は下がってろ!!俺にもやるべき事がある……これが最後の通告だ」



 少しだけ威圧感を出そうと意識してみた。今のでサリファの様に下がった者もいるが、逆に煽られたと感じてやる気になった者も居るようだ。それに関してはもう知らん!なるべく殺さない様に意識するが、絶対じゃない。許せとは言わない……が、恨むなよ。



「いけ!!ただの強がりだ、捕らえろ!!」


「「「おう」」」



 先行してくる一人を槍で迎え打ち、残りの動き出したら者は消滅魔法で足の一部に穴を開ける。



「「ぐぅぎぃやああああああ!!?」」


「なんだ!?」

「足から血が出てるぞ!?」

「おい、最初の奴も槍でやられてるぞ!!」



「……っせい!!来ないならこっちから行くぞ!?」



 今の初手で逃げ出す者は見逃そう。賢明な者と今後も生き残りそうだから。



「怯むな!!纏めてかかれ!!」



「し、しゃあ!!」

「行くぞ!!」

「殺す気でかかれ!!」



 オーガ二体に囲まれた時より対処はし易く思える。やる事は変わらない。足を攻撃して機動力を奪うだけ……オーガより耐久性が圧倒的に低い人間だからそれで大抵は戦意を失う。それに、この強さはBランクにも満たない冒険者達だろう。



「おい、アイツ強くないか!?」

「Fランクの強さじゃねーぞ!」

「があああ、足が!足がぁぁぁぁぁ」

「痛ぇ!痛ぇぞくそがぁ!!」



 謎の足からの出血。それに、発展途上だがダンジョンの対オーク、対オーガで鍛えた槍の技術でその場に集まった冒険者を倒していく。まだ、誰も死んではいない筈だが……消滅魔法で足に穴を開けた奴は早めに処置しないとヤバいかもな。



「お前らは警告を無視して残った!が、今引くなら特別に見のがす。五秒で決めろ!」



「お、俺はごめんだ!割りに合わねぇ!」

「俺もだ!」

「ギルド長はなんて者に喧嘩を売りやがったんだ!」

「パーティーでアイツが一番じゃないんだろ!?ヤベーぞ!」

「おい、アイツを引きずってでも連れて帰るぞ。早く処置してやらねーと」



「お、おい!まてお前ら……くそっ、こうなったら。おい!ダンマルは居るか!?」


「ここに居るが?」



 ん……?おっ、アイツは見たことがあるぞ。確か、キングオークと戦っていた女の人のパーティーのリーダーだった様な。Aランクだったっけ?



「よし、ダンマル奴を倒してくれ。今回、用意した報酬は全てお前にやろう」


「ギルド長、あまり言いたくは無いが……割りに合わない。諦めろ」



 おぉ……なんか、そこまで評価されると逆に照れ臭いな。



「なっ……!?貴様!Aランクだろうがっ!見ろ、報酬はここにある!これでも足りないと言うのか!?」


「……これは、アイツと戦うという報酬だ。終わったら別に請求する」



 うへぇ、結局は金かよ。Aランクならどのギルドでもやっていけるだろうに。無傷は難しいだろうなぁ。



「ほら、報酬だ」


「確かに。ラータナ!この金で負傷者の治療をしろ!治癒士や教会にも行ってこい!」


「は、はい!リーダー……本当に戦うんですか?」



 ダンマルと呼ばれている男は金を渡した後から俺から目を離さない。そうだ思い出した、キングオークと戦っていたのはラータナさんだ。そのラータナさんからの問いかけには『面白そうだ』の一言を返していた。格好良いな。



「俺が言うのも変ですけど、本当に戦うんですか?俺はこの街を出ようとしていただけなんですけど」


「……俺達が聞いた話は冒険者としてのルールを犯している者を、見せしめとして懲らしめる……という話だったのだが?」



 嘘じゃん!この冒険者達、嘘で集められてるじゃん!えぇ、何か一気に申し訳なさが出てきたなぁ……。俺をボコボコにする為に集まったと思っていたから、こっちもやる気になっていたのに。



「そっちはお金が手に入った。俺は街から出ていく。お互い、これ以上何もしない方が良いのでは?」


「うむ……だがっ!!」



 剣と槍。お互いの武器がぶつかり合って甲高い音を響かせた。



「なっ……何のつもりですか?」


「君との戦いには興味がある。今のも低ランクの冒険者なら反応した時には斬られてる後なのだが……な」



 戦闘狂かよっ!お互いにここは退いて、バイバイで良かったじゃんか。くそ、今の一太刀だけで強いって感じがひしひしと伝わって来る。



「おぉ、良いぞ!!ダンマル、手足の一、二本は構わん!」



 くっそ、ギルド長めっ!後で一発だけ殴ろう。



「ふむ……なら作戦も幾つか増やせるか」


「ん?距離を取る……おまっ、まさか!?」



「火魔法『火弾撃(マルチバレット)』」



 くそっ……いきなり火を消滅魔法させるのは流石にマズイぞ!?



「水魔法『水壁(ウォーターウォール)』!!……一縷さん、大丈夫……って、良く見れば酷い惨状ですぅ!」



 ルフィス!白金さんもリコルも無事か。良かった……白金さんが居るから大丈夫だとは思っていたが、会うまでは心配だったからな。



「助かった、危ない所だったよ。そっちは何か変な事は無かった?」


「ギルドに来てくれと職員さんと冒険者の方に言われて……今、着いた所なのですけどぉ~……どういう事ですか、一縷さん?」


「はぁ……やっぱり、巻き込まれたのね?何があったか、説明してくれるのよね?ギルドのロビーも怪我人がたくさん居たわよ?」



 知らされて無いのか。見るだけなら俺が暴れてる感が出てるな……。ちゃんと説明しないと。



「えっと、ダンマルさん?ちょっと説明する時間を貰っても良いですかね?ここにいる四人でパーティーを組んでますので……」



「ダンマル!チャンスだ……あの四人共捕らえ……」


「少し黙れ。イチルと言ったな、待つから説明すると良い」



 かっけぇ……。対応の一つ一つが格好良いな。っと、説明しないとだな。


 俺がギルドに呼ばれてから今に至るまでの経緯、それに対して俺が思った事を説明した。最悪、この建物を壊して逃げようとした事までちゃんと説明しておいた。



「なるほど。手に入れた素材を気にせず換金した事が迂闊だったわね……ごめんなさい一縷君」


「どうせお金は必要だったんだし、これは俺達じゃなくてギルド……あそこに居るギルド長が悪い」


「私が一縷さんの立場だとしても、流石にここまでは出来ないですよ?あっ、これは褒め言葉ですからね?」



 そうするしか無かったのだが、暴れた事に対してのお叱りが無いこのパーティーはどこかおかしいが、過ごし易くてとても楽しい。



「ダンマルさん、お待たせしました!やっぱり、ギルド長が悪いというのがパーティーの結論ですね」


「そうか、なら続きをしようか」


「ちょっと良い?一縷君、貴方はギルドの受付に行って通信手段の破壊をお願い。通信手段だけよ?この人の相手とギルド長は私が相手するわ」



 うーん。まぁ、いいか。白金さんの方がダンマルさん的にも経験になるだろうし。



「分かった。でも、ダンマルさんは良い人だから殺さないでね?ギルド長はどうでも良いけど」


「了解よ。今のAランクっての見てみたかったのよね。あと……ギルド長だか知らないけど、面白く無いわね」



「……いや、こちらからお相手をお願いしたい。あと、殺気はもう少し抑えてくれないだろうか。私のパーティーメンバーの若い子にはキツい様だ」



 えっ、殺気!?いつものちょい怒り状態だと思ったけど、出てるんだ……殺気ってやつ。



「そう。貴方は平気そうね……ワイバーンより準備運動になるかしら?」



 また格好付けてる白金さんを最後に、俺はギルドの中へと入って……笑顔で受付の方に通信システムの場所を教えて貰った。嘘だと困るし、一応は他の職員さんにも聞いたが全員同じ答えだった。


 ギルド長が悪い事を何度も伝えながらその機械を壊し、ギルドで治療を受けている人にもギルド長が悪いと伝えてから訓練所へと戻った。


 ダンマルさんは片膝が地面について、ギルド長は気絶しているのか、地に伏せていた。



「終わったよ」


「こっちもよ」


「どうしますか?騒ぎが大きくなる前に移動しますか?」



 ルフィスの提案に乗ることにした。衛兵さんまで来たら、流石に面倒な事が増えてしまうからな。



「ダンマルさん、サリファって女の冒険者がソロでやってるらしいので、良かったらパーティーに誘ってあげてください!では、また」


「貴方はまだ伸びるわよ。じゃあ、後始末よろしく」


「お願いしますね!待ってくださ~い」


「お兄ちゃん、頑張ってね」



「あ、あぁ……」



 ダンマルさんに全てを任せた俺達は馬を引き取りに向かい、そこから近い街の出口から帝国へとむけて出発をした 。


 ギルドの建物を破壊しなかっただけ、あのギルド長にはありがたく思って欲しいかな。



 ダルタス国のこの大きな街で知り合った人、成長出来たこと、初めて体験する事、とても楽しい事が多かった分、本当にあのギルド長にはガッカリだ。


 この街には一ヶ月も居なかったな……今思えば長いようで短い時間だった。帝国に行くまでは街を転々として行くみたいだし、今日からは、移動中に槍の訓練をしないといけないな。



「さ、しばらくはテント生活よ。夜は見張りもあるから、とりあえず一縷君は今の内に寝ておいて」


「了解した」



 馬の操縦は白金さんしか出来ないし、俺と白金さんは逆の生活になりそうだな。人数は少ないが、ルフィスとリコルには無理をさせたくは無い。だから、俺と白金さんで頑張らないとな。



 人の住む村や街は、俺が寝ている昼間にちょくちょく通り過ぎていたらしい。だが、食料補給の為に次の街へと立ち寄ったのは、街を出てから一週間くらい経った今日が最初となった。





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(´ω`)

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