第17話 明日からどうする in 異世界
すいません、お待たせしました!
よろしくお願いします!(´ω`)
白金さんとリコルがご飯を作ってる間、俺とルフィスは今日の反省会を開いていた。
「ワイバーン……顔が怖いよな、顔が」
「です!目付きが鋭いですよね……はぁ、あと普通に強いです」
やはり、魔法耐性の強い敵はルフィスにとっては難関の様だな。まぁ、杖でワイバーンを倒せるビジョンもあまり見えてこないが……。魔法の威力や耐性を上げるペンダントを持っている筈なのに通じないのは、まだレベルや技術が足りないって事だろ。
「俺も気を抜けないしな……当然だけど。正面からの戦闘だったら勝てないだろうし」
「そういえば、早めにこのダンジョンも攻略するんですよね……」
サリファが余計な事をギルド内で言ってしまったらしいからな。それに加え、白金さんが単独でキングオークを倒した所もラータナとかいう冒険者に見られている。
それが広まってしまえば、更に面倒な事になるだろう。それを考えると早めに攻略して、他のダンジョンで鍛える方が良いのかも知れない。
「らしいよ。だから鍛えるのは一旦やめて、他のダンジョンへと向かう方が良いかもしれないね」
「なるほど、たしか伝承によると……昔の白金さんのパーティーのメンバーは全員で五人。白金さんと、ソフュールのダンジョンは攻略しましたし、このダンジョンを除けばあと二つは攻略しないといけないんですよね?」
そういう事だ。あと二つも攻略しなければならない。国から国への移動時間を考えると、うん。やっぱりすぐにでも旅立った方が良いかもしれない。
「二人共、料理が出来たわよ」
「完成しましたー!」
良い匂いが漂って来た。たぶん、また謎肉なんだろうが美味しいから気にしない。それと……そろそろリコルにも話しておかないとだな。
「白金さん、俺達も考えたけど……このダンジョンは早めに攻略して、次の国へ向かうのもありだと思う。移動時間も考えると1年という猶予が長いのか短いのか分からないし」
「……そうね、分かったわ。とりあえず情報を集めたらすぐにでも旅立ちましょう」
「次に向かうのは大国のどちらかですよね?私は顔を隠さねばなりませんね……」
ルフィスの顔は大国の貴族にはバレてる事もある……か。特に王族には知られてるし、生きてる事がバレるのも厄介だな。そこは気を付けていかないと……。
「それで……リコルにな話があるんだが」
「んん?何ですか、お兄ちゃん?」
リコルは理解してくれるだろうか?少し難しい話になってしまうけど。
「簡単に大事な事だけを言うからな?――俺と白金さんは……勇者だ」
「なっ!……お兄ちゃん、冗談が上手いんだね!ははは!面白いー」
「私はソフュール王国の王女ですよ!」
「お、お姉ちゃんまでー!?あははー変なのー!」
「「信じてない!?」」
か、簡単に言い過ぎたのか?俺とルフィスの言葉をまったく信じて無い所か、めちゃくちゃ笑われている。いきなり勇者と言ったのがいけなかったのかな?
「う、嘘じゃないんだぞ~リコル。本当なんだけど……?」
「嘘だよ~、だって……勇者様は凄いんだからこんな所に御付きの人も付けないで居る筈ないよ~、王女様ならもっとね!」
ド正論だな。女の子に論破されてしまった。
「リコル、信じなくても良いわ。でも、勇者が全員……勇者が居る国が良い国だとは思わないでおいて。私達は私達を喚んだ国を捨てて、今ここに居るの。後だしの情報で悪いとは思っているのだけど、私達の存在は大国にバレると厄介だわ。その事だけは覚えておいて」
「お姉ちゃん……分かった!」
「「分かったの!?」」
俺とルフィスの説明は要らなかったのか……?最初から白金さんに話して貰えば、普通に信じて貰えたんじゃ……やっぱり、一緒に料理を作ってるから信頼度に開きが出たのかな?
今度、俺もリコルと何かしてみよう……。
「じゃ、明日からは飛ばして行くわよ。もちろん倒しながら……ね!」
「あいよ!……じゃあ、いただきます」
料理を食した後は、効果があるかどうかも全く分からない雷魔法の練習をちょこっとだけして、その日は休む事になった。
◇◇◇
翌日、朝からワイバーン狩り……とは行かず、ルフィスの苦戦を見守っていた。
ルフィスも奇襲で、ワイバーンを飛ばさせない事は出来るがそこから時間が掛かってしまう。同じ場所に魔法を叩き込み、何とか機動力を奪うやり方だ。
勿論、毎回上手く行くとは限らず、ワイバーンに接近される事もあるが……その時は俺が足を消し去りルフィスがトドメの魔法を使っていた。今はとにかくルフィスの魔法の向上と俺の強化を優先していた。
「よし、そろそろ次に行かない?」
「どうせこの先も魔法が聞かないんでしょうね……お任せします~」
おっ、遂にルフィスがオークやオーガと戦っていた時の俺と同じ気持ちになって来た様だな。
たしか、あの時のルフィスは……とても生き生きしていた様に思う。俺はルフィスよりも年上だしな、そんな事はしないつもりだ。
「おっ、ルフィス……元気が無いじゃないか?大丈夫?ん?」
「一縷さん!分かっててやってますね!この、この!」
ちょっと煽っただけじゃないか……。そんなにポカポカ叩かないで欲しい。これくらいの仕返しは良いだろう?
「さ、行くなら行きましょう。リコル、一縷君は勇者だし、ルフィスは王女様だけど……今はただの冒険者だから昨日の話は大事な所だけ覚えておけばいいわ」
「うん!お兄ちゃんもお姉ちゃんも優しいから好き、私はそれだけはちゃんと知ってるから大丈夫!」
おぉ……リコル。なんて良い子なんだろ。
俺とルフィスはお互い頷き合って、もっと格好良い所を見せようと頑張る事を確認し合った。
それから一階層下りた34階層。
今までの流れから行くとワイバーンが二体いると思っていたが、ここにいたのは少し強化されたワイバーンが一体だった。
「二体よりは……マシなのか?でも、強い事には変わらないか……」
「うぅ……更に魔法が通じないとなると困りますね……」
俺的には二体居る方が厄介だったが、ルフィスにとってはどちらでもキツい事に変わりは無いようだ。
「この、階層でもやる事は変わらない……そう思っていたのに!!……危なっ!?」
『キュララララララララ!!』
ヤバイヤバイ……ヤバイ!!強化されているのは身体能力だけかと思っていたら知覚までもが強化されていたみたいだ。奇襲として接近していた途中で気付かれ、距離を取られた。
判断も早いし、動きも速い。お陰で今、始めて空中からの攻撃を受けていた。
「降下してきた時を狙うしかないが……思ったより怖いな。捕食者の気持ちが少し解った気がする……くそっ!!」
『キュオオオオオオオオオ!!』
突っ込んで来られると回避するので手一杯だ。反撃の余裕が無い……!!槍のリーチも活かせて無い。
「はぁ……こういう時の魔法なんだけどな。頼りすぎるのも良くないし、もう少しだけチャンスを作り出してみるか」
それで駄目だったら仕方ない……消滅魔法で羽を消し去ろうっと。
「まずは、あの降下してくる攻撃に立ち向かう、ギリギリ槍の届く範囲での回避だな」
『キュララララララララ!!』
くそっ……!まだ大幅に距離を取っているか……。観察が足りてないな。降りてくるタイミング、方向、速さ、情報から集めないと駄目か。
『キュオオオオオオオオオ!!』
来る!狙いは頭、速い――ここだ!!
「はぁぁぁぁぁあ!!」
『キュガァ!!?』
うし!!浅かったかもしれないが腹部へと槍の攻撃が通ったぞ。白金さんのお陰で基礎は出来てきている。後は、安全第一として観察し、攻略するだけだ。
見て、観察して、試して……このサイクルを繰り返す事でだんだんワイバーンの動きにも慣れて来ていた。
少しずつワイバーンにダメージを与えている事もあり、ワイバーンの動きもだいぶ遅くなっていた。そして――
「ここだぁ!!はっ!!」
『ギュラァァァァァァ…………』
「うしっ!はぁ……はぁ……時間掛かったな……ふぅ」
最後は降下してきた所を下から槍を貫通させ、ワイバーンの体力を削りきった。
「あれだな、飛んだワイバーンは厄介だわ……疲れるし」
「お疲れ様、一縷君」
「大丈夫ですか一縷さん?」
俺はルフィスに戦闘で感じた事、思った事を教えて情報の共有を図る。感覚的な事だから完璧に伝わる訳じゃないが、知っておいた方がいいだろうしな。
「……という事で時間が掛かった訳だ、すまん。そして、羽を先に攻撃する必要性を実感してきたよ」
「なるほど、だいぶ変わる訳ですね……ありがとうございます一縷さん!」
他のワイバーンが同じパターンの攻撃かどうか……それはまだ分からないが、同じだとしたらさっきよりは時短出来るはずだ。まぁ、次は飛ばれない方法を考えてから挑もう……。
次はルフィスの番で、離れての魔法を使うまではいつも通りだが……思ったよりダメージを与えていなかったみたいで、普通に飛んで襲ってきた。
「『炎火の砲弾』『水の砲弾』『風の砲弾』……ひぇぇ~助けて下さい!一縷さーん!」
「はぁ……『ロスト』。ルフィスも魔法の威力はある筈だが……まだ倒せるレベルでは無いって事か?」
俺から見ると三つの魔法を操れて凄いという感想しか出てこないが……。そこら辺は白金さんに聞かないと分からないな。
「そうね……ペンダントのお陰で威力は上がってるし、通用しない事は無いと思うわ。でも、まだ荒いのよ。威力は分散してしまってるし、狙いも私が求める基準にはまだ届いていないわね」
「そうなのか……俺には普通の魔法ってさっぱりだから感覚がよく分からないけど、ルフィスも自分でそう思うのか?」
「そう……ですね。さっき使った魔法も、握り拳で殴らないといけない所が少し握り具合が甘くて威力が出せなかった感じです~。狙いも同じ場所には当てられていませんでしたぁ……」
なるほど、ルフィスの説明で少し理解出来た。ルフィスも自分でそこまで理解しているのならまだ大丈夫かな?
◇◇◇
俺の時よりもだいぶ時間は掛かったがようやくルフィスも強化されているワイバーンを倒すことが出来た。魔力の関係上、休憩を挟みながらだから仕方ないが……その間は俺も練習出来たから問題は無い。
オーガの時は立場が逆で、俺が時間掛けていたから今度は俺が待ってあげる番だ。
ルフィスも倒せた事で一安心したのか、今は少しリラックスしている。たぶん、次はもっと効率良く倒せるだろう。――が、倒せたならどんどん下の階層へと行く予定だ。
ルフィスはキツいかも知れないが、常にギリギリで戦ってもらう。手伝いもするし、倒し方も白金さんに見せて貰うから頑張って欲しい。
「……あった。これで35層に行けるな。下りたら1度休憩にしようか」
「しましょう!しましょう!今の魔力じゃ心許ないですし……出来るだけ魔力回復薬は飲みたく無いですし……」
飲むとお腹空いて沢山食べちゃうもんな。女の子としては出来るだけ控えたいか。
「分かったわ。私とリコルで敵の種類とか探ってくるから休んでて」
「ありがとう白金さん。リコルもね」
「私はお姉ちゃんの後ろをついて行くだけですが……お任せしてください!」
白金さんとやる気が十分なリコルに任せて、俺とルフィスは階段を下りた場所で休む事にした。それから二人が探索してる間はひたすら休み、軽食も取っておいた。
俺の気力、体力、魔力共にこれで大丈夫だが……ルフィスの魔力は分からん。魔力回復のスキルが有るとはいえ、まだまだ回復には時間が掛かるかも知れないな。
「大丈夫か~ルフィス?」
「はい!外傷も無いですし、体力もまだまだ残ってますんで魔力だけですね。一縷さんの方も大丈夫ですか?」
俺は体力さえ回復出来れば大丈夫だからな。後は掌が最近ボロボロだからそこを気にしなければ大丈夫だ。
もしかしたら……消滅魔法で傷を消す事も可能かもしれない。が、その時にせっかく鍛えて厚くなろうとしてる手の皮もリセットされそうで怖い。
その他にも、消すという概念を利用してどこまで出来るか試したいがリスクを考えると踏み出せずにいる。右目の代償だから色んな事は出来ると思うんだけどな、迂闊に消す事は……な。
「二人共、戻ったわ。さっそくだけど朗報と悲報……どちらから聞きたいかしら?勿論、二人にとっての朗報と悲報よ!」
うーん。こういう時はどっちから聞くべきかな?良い知らせで悲報を乗り越えるか、悪い知らせを聞いておいて朗報で何とか建て直すか……。よし、ルフィスに選ばせよう。
「ルフィス、どっちから聞く?」
「朗報からですかね~!ダンジョン内ですし、悲報の方が重要度は高そうなので後で聞きます~」
なるほど……俺も今度から朗報から聞くことにしよう。
「それで、白金さん。朗報は?」
「ワイバーンは居なかったわよ」
「わっ!本当ですかぁー!やりましたね」
あっ……。何となく悲報の方が分かってきたぞ。悲報って言うくらいだから厄介なんだろうな。
「一応聞くけど……悲報って?」
「一縷君は何となく分かったみたいね。ここに来て遂に、魔法しか使わない敵が出てきたわ。当然、魔法を使うゴブリンなんかとはレベルが違うわよ」
「う、詩葉さん……?もしかして魔法は……」
当然効きにくいと言った白金さんの言葉を聞いて、ルフィスはさっきの喜びとは真逆の反応をしている。ルフィスにとっては本当に朗報と悲報たったな。
「白金さん、そのモンスターってどんな感じ?実態は在るんだよね?」
「えぇ、魔法でしか倒せないって敵もこの世界には居るけど、この階層に居るのは魔法を操る『死体』ね」
アンデット……。ゾンビや骸骨、他にも魔法使いの成れの果て……そんなイメージのあるモンスターだ。
魔法を使うという事から、ワイトやリッチーとか呼ばれているタイプのモンスターかな?
これは……下手すると俺にとってもルフィスにとっても戦いづらいモンスターかも知れない。消滅魔法を多様する可能性もあるな。
「物理的な攻撃って通用するの?」
「するわ。骸骨タイプなら体の中にある魔石を奪う、もしくは攻撃したら動きは止まるわ。奪う方が魔石の価値も下がらなくてすむから、その方向性でお願いね。ゾンビタイプなら頭部を潰す事。いくら体に穴を開けようが、首が繋がってたら動くわ」
うぇ……それは不気味だな。虫系統のモンスターも苦手だし、ホラー系も得意じゃ無いんだけどなぁー。魔石と頭部の破壊か。動きは俊敏なイメージは無いけど一応、気を付けておくか。
「了解した。ルフィス、とりあえず俺から戦ってみるから」
「はい、お願いしますね!」
俺達は白金さんの言うモンスターを探しに歩き出した。
歩き出して五分も掛からない内に白金さんのレーダーに敵が引っ掛かった様だ。
「あれか……」
「ローブ着てますね。いかにも魔法使いって感じですね!」
簡単に言えば骸骨がボロボロのローブを着てゆっくり歩いていた。ゾンビじゃなく骨だけってのがまだ気味が悪くなくて良い。
「あれの心臓部辺りに魔石があるんだっけ?近付いて頭を槍で叩き潰すのもアリだな。でもまずは――『ロスト』」
全身を消し去ると、魔石だけが地面に落ちていた。厄介な事に魔法耐性がワイバーン並にあるみたいで魔力の消費が思ったより大きい。
「ちょっと厄介かもな……次は頭だけ消してみようかな?
また探し歩いてモンスターを見つけた。この階層は骸骨型の魔法使いモンスターみたいだな。見付けてすぐに頭を消し去った。
「う、動くのか!?」
「ぶ、不気味ですぅ~!」
頭部が無くて壁にぶつかったり、フラフラしたりと見えていない様子だが、たしかにまだ動いている。
「なるほど……頭部を潰したら後はらくに魔石を取れそうだけど、あれは怖いな」
「不思議で不気味ですね……一縷さん、ちょっと魔法をぶつけてみても良いですか?」
あの状態ならただの的みたいなモノだし、俺は了承して後はルフィスに任せた。
ルフィスが魔法をぶつけるが、一発では効果があまり無いようで……倒れはしたけどまた立ち上がってフラフラしている。
「このっ!!このっ!!」
更に魔法をぶつける事でようやく動かなくなった。連戦となると、ルフィスの魔力が危ういな。
「相手の動きが遅いしさ、これってルフィスの杖で殴る練習になるんじゃないか?」
「……なるほど、一縷君良いアイデアね。ルフィス、魔法はモンスターの攻撃を防ぐ時だけにしなさい……ここで杖の練習よ!」
「えっ、本当ですか!?……うーん、でもムカデよりはまだマシな様な気もしますぅ~」
頭さえ潰してしまえば魔法も使ってこないみたいだし、いい練習だいになるだろう。もしかしたら、動いてるだけだから練習にはならないかもしれない……。
「白金さん、あの骸骨って何属性の魔法を使うの?複数属性とか?」
「えぇ、あの骸骨なら多くて二種類ね。その種類までは分からないけど……まぁ、そこまでの脅威では無いわ」
魔法を放った後に回避すればいいし、動きも遅い。この階層は魔法を使うモンスターに慣れる為の場所なのかな。案外、親切設計なダンジョンなことで。
それに、魔法を使う時に出る魔方陣、あれに干渉出来るなら消せばいいし……試したい事が沢山あるな。ルフィスの練習の合間に俺も試したい事を全部やっておこう。
「そっか。魔法を使うモンスターに色々と試しておきたい事があるから、ちょっとこの階層で時間を取らせて欲しい」
「了解よ。ルフィスの杖もあるし、今日の終わりまではここに居ましょうか。明日は朝一から進んで、1番下まで行く事にしましょう」
白金さんからの了承も出た所で、俺達は探索を再開した。
◇◇◇
『…………』
「……今だ!『デリート』!」
骸骨魔法使いは喋らない。静かに魔方陣を出して、魔法を放って来る。
その魔方陣について面白い事が判明した。――魔方陣にも俺の消滅魔法が干渉出来る……という事だ。
最初は『ロスト』で魔方陣をを全て消し去っていたが、魔方陣の一部を『デリート』消すだけでも魔法は発動されなかった。魔方陣の一つ一つがとても緻密に設計されているから、少しでも異常があると発動しないのだと考えられる。
これに気付けたお陰で、魔法使いの事が怖くない存在となった。魔法の同時発動とかされたら流石に対処が大変になりそうだが、速く放てる者は居ても、滅多に同時発動出来る者は居ないだろう。
一部を消す方が魔法の消費も少なく済む為、まずは敵モンスターの魔方陣の効果を失わせて後は、槍で叩くだけで簡単に倒せている。……俺の場合は、だがな。
「ルフィス!今、攻撃に使おうとしたでしょ!?ズルは駄目よ!!」
「な、何で分かるのです!?ですけど、意外と近付いたら怖いんですよ~……」
眼球は無い筈なのに目が合った気がするしな、あのモンスター。やはり、ルフィスは苦戦していた。レベルも上がって、腕力も伸びてる筈だけど……元が華奢な女の子だからな。敵のレベルが高いとまだまだ難しいのだろう。
「えいっ、えいっ!えぃぃ!……や、やった!やりましたよ!」
何とか接近したルフィスが骸骨の頭を杖で何度も叩き、倒すことが出来た。動きの遅い敵で良かったとしか言えないな。
「お疲れ様。ルフィス、敵が遅いのならフルスイングした方が良くないか?その方が近くに居る時間も減るだろうし。とりあえず、どこでもいいからぶっ叩いて……倒してからまた叩いた方が良いと思うぞ」
「なるほど。おもいっきりですね!やぁ!はっ!とりゃあ~」
ブンブン振り回すのは良いが……何か力が抜けるなぁ~。せっかくのチャンス階層なんだし、ここでやれる事はやっておかないとな。
「白金さん、ルフィスに杖で倒して貰う為にさ……俺が敵のモンスターの魔法を無効化して、その間に倒すのってどうかな?それなら俺は魔法の練習も出来るし、ルフィスは杖の練習が出来ると思うんだけど……」
少しだけ白金さんが思案顔を見せたが、すぐに頷いてみせた。
「コンビネーションの練習にもなるし、それで行きましょう。ルフィス、貴女は魔法を気にせず突っ込みなさい」
「敵の魔法は俺が無効化するから……任せろ!」
「わ、分かりました!やってやりますよ!私だってやる時はやるんですから!」
「頑張ってねお姉ちゃん!なるべく魔石は綺麗なままでお願いしたいけど……」
これまでルフィスは何度も魔石に攻撃してトドメを刺していた為、勿体ない事をしていた。頭を攻撃し終わったら魔石を掴んで取り出せと言っても、『不気味です』の一言で杖で叩き潰していた。
「お、お願いしますよ一縷さん!」
「お前は何も考えずに突っ込め。それだけで大丈夫だから!……ほら、さっそく居たぞ」
少し離れた所からこちらへと歩いてくる骸骨が一体。まだ範囲内ではないのか、魔法を使ってこない。
「行け!ルフィス!」
「は、はい!やぁぁぁぁぁあ!」
覇気の無い可愛らしい声をあげながら突っ込んでいく。骸骨も魔法の準備に入るが……させない。
「『デリート』!!……ぶっ叩け!ルフィス!」
「はぁぁぁぁぁ……えいっ!!」
うわぁ……。
骸骨の顔の正面に杖がめり込んででしょうそのまま首が吹き飛んだ。死んでる骨だから良いが、生きてる人にやっちゃダメな威力だな……。でも、ルフィスもおもいっきりやればそこそこの威力は出せるみたいで良かった。
「ルフィス!そのまま魔石を取り出せ!」
「は、はい!ごめんなさいね、ごめんなさいね……取った!取りましたよ!」
魔石を掲げながらこちらへと走ってくるルフィス。そうとう嬉しい様だ。――後ろから歩いてきた新しい骸骨にも気づかない程に。
「……『ロスト』。お疲れ様、ルフィス。今の調子でどんどん行こうぜ!」
「はい!頑張りますよー!」
ま、このくらいのフォローはどうって事ないな。ルフィスにはこのままの調子でいって欲しいし、ここで変に躓くよりはいいだろう。
白金さんからもルフィスに対して何も言わないし、俺と同じ意見だと思っていいのかな?
それから俺達は骸骨を狩りに狩りまくった。
◇◇◇◇◇◇
骸骨魔法使いを倒してから1日経った。たぶん、外は夜だろうが俺達は気にせず昼間から戦闘を最小限にして走って来た――ここ、39階層の下り階段まで。
35階層から四階層分、敵はリッチーやこの階層ではデュラハン等が居たが悪いけど瞬殺させて貰った。昨日の晩に話し合った結果、さっさとここを離れて次のダンジョンでまた鍛えればいいという結論になったからだ。
「よし、ここを下りれば最後のボス……というか、白金さんのパーティーメンバーが居るんだよな」
「えぇ、ここに誰が居るかは分からないけど……早く解き放ってあげないとね」
俺達は階段を下りて、その先にある扉を開いて部屋へと入っていった。
その部屋はソフュール王国のダンジョンと同じで、その部屋の主以外は何もない。
『な……汝、何を……求め……参ったか?』
「ダルケン……そう。貴方がここに居たのね」
ダルケン。白金さんがそう名前を呼んだ瞬間、ゾンビの様になってしまったこの部屋の主の動きが止まる。やはり、完全に意識が無くなってる訳ではないんだな。
「ダルケンは私のパーティーの盾職だったわ。いつも皆の前に立って引っ張っていってくれていたわ。いくら魔法を放たれてもその自慢の盾と腕力で防いでみせていた。『剛盾のダルケン』それが彼の二つ名だったわ……」
『その……声、まさ……か……詩……葉?』
「えぇ、待たせてごめんなさい。今、楽にしてあげるからね。『聖なる光よ邪気を払いその身を浄化せよ。浄化の光』」
光がダルケンを包んでその体を綺麗にしていく。浄化されたその姿は歴戦の戦士、屈強な男の姿そのものだった。
『詩葉、良かった。もう一度会えて……本当に良かった』
「私もよ。ダルケン、待たせてしまってごめんなさい」
『無事ならそれでいいさ。……おい坊主!』
お、俺か!?いきなり話を振られるとは思ってなかった。
「な、何でしょうか?」
『俺はもう詩葉を守ってやれない。その役目、お前に任せたい……が、お前にその覚悟はあるか?』
……今の俺は詩葉さんに守られている立場だ。ダルケンさんの様な頼り甲斐のある見た目でも無い。だが……
「……守ってみせます。ダルケンさん、今の俺は貴方の様な安心出来る男では無いかも知れません。ですが、成ってみせます!詩葉さんを、ルフィスをリコルを!危険から守れる様なそんな男に!この槍にこの拳に……何より、自分自身に誓います」
『……くく、はははっ!詩葉、こいつは良い男になるぞ!……手、離すなよ?お嬢ちゃん達もな!』
「まったく、お節介なのは変わらないわね……」
豪快に笑っている……愉快で頼りになる雰囲気のある人だ。本当に頼りになる人なんだろうけど。俺も、こんな男になりたいもんだな。
『……っと、そろそろだな。詩葉、俺が預かってるのはお前の防具だ。あと、そっちの男にも俺の使っていた防具を譲ろう。サイズが合わねーかもしれねぇが……それは何とかしてくれ。……じゃあな、今度こそ魔王を倒してくれな』
「えぇ、ありがとうダルケン。もう、休んでね」
「ダルケンさん、俺が……俺やパーティーメンバーが白金さんを支えるから、任せてくれ」
『あぁ……信じてるぜ』
最後にそう残して――ダルケンさんは消えていった。
◇◇◇
ダルケンさんが消えたその場所に、白金さんの防具らしき物とダルケンさんの使っていたであろう防具一式が置かれていた。今は軽装しかしてないし、防具はありがたい。大切に使わせてもらおう。
「このサイズじゃ……一縷君には少し大きいわね。どこかの街で調整して貰わないとね」
「白金さんの防具はどう?確か、三年前のサイズだよな?」
三年前もあれば背丈も変わってるだろうしな。
「大丈夫よ。素材が特別でね。伸縮性があるし、少し大きめに服を作ってたのよ。着てみないと分からないけど……たぶん、丁度良い筈よ」
「伝承にある勇者様の装備……どんな性能なのでしょうか?」
確かにそれは気になるな。ローブとか凄そうだし。
「そうね……リコルが身に付けてるローブの最上級の性能かしら?流石に言い過ぎかも知れないけど、良い物であることは間違いないわ。魔法耐性もあるしね」
「ほー、この防具も似たような感じ?」
白金さんが頷いた。ダルケンさんの装備だしそれはそうか……。
おっ……一階層に戻るワープ的なのが出てきたな。
「戻ったらどうするの?とりあえずは宿に?」
「そうね。いつもの宿に戻って明日からの予定をたてましょうか」
「賛成です!」
「私も!」
俺達はワープを潜り抜け、一階層から外に出た。予想通りに外は夜で静まり返っている。
街中を進み、いつも利用している宿まで帰って来た。今回のダンジョンアタックも中々の過酷さだったが、その分強くなれたし、最後の方はちゃんとでは無いけれど攻略も出来た。
面倒事に巻き込まれない様に明日からの事をこれから話し合わないとな。
「じゃあ、とりあえず部屋で汗を拭いてから集合で良いかしら?こっちの準備が出来たら呼びに行くわ」
「了解。じゃあ、俺が寝てしまわない内に呼びに来てくれ」
それから十分後、白金さんが呼びに来て……明日からの事について話し合いが始まった。
ご覧いただき、ありがとうございます!
ダンジョンを攻略しましたし、次はクラスメイトの話になるかもです。




