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第16話 頑張れルフィス in 異世界

お待たせしました!よろしくお願いします!

(´ω`)

 


 白金さんとルフィスの後ろを俺とリコルがついて行く形で武器屋へと向かっていた。ギルドの方向と広場とはまた違って、職人の区域といった雰囲気がある。


 女性客は少なく、冒険者では無い女性客はもっと少ないだろう。ほとんどが冒険者か武器を作る工房の職人が闊歩する場所だ。



「なぁ、ルフィス。今から行く店って品揃えはいいの?」


「良いですよ!しかも、珍しく女の店主さんで……ご自身も武器の製作をなさってるみたいなんです」



 武器を作る人といえば、体格の良いおっさんとかそういうイメージだ。ルフィスも珍しく……と言ってるから俺のイメージもそこまで外れてはないだろう。


 ルフィスのその店に行った時のやりとりを聞いていると、いつの間にか目的のお店に着いたようだ。



「ここか……」


「そうですよ~あっ!?詩葉さん待ってくださいよ~」



 先に扉を開いて店に入っていった詩葉さんを追うように俺達も店に駆け込んだ。



「いらっしゃい!おや……あんたらは先日に来たね?もう、武器を駄目にでもしたかい?」



 俺達を出迎えてくれたのは体格の良いおば……お姉さんだ。鋭い眼光で睨み付ける姿は蛇の様で、つまり動けない俺はカエルなのかもしれない。



「見ない顔が二人だね?」


「えぇ、私達のパーティーメンバーよ。男の方が一縷君。女の子はリコル。今日は一縷君の槍が壊れたからそれを買いに来たわ」



 白金さんが説明をしてくれたお陰で何とか視線が逸れた。なぜ睨まれたのかは、だいたい分かるが……だとしたら感が良すぎる。絶対に普通の職人ではないんだろうな。



「なるほど……坊や、槍を持ってどれくらいだい?」



 召喚されて、ダンジョンに始めて入った時から考えると……1ヶ月もまだ経ってない。ようやく片目での戦闘に慣れてきたレベルだしな。



「1ヶ月も経ってないですね……」


「手、見せてみな」



 店主に言われるままに両手を前に出すと、それを見た店主が目を見開き驚きの声を上げた。……それも一瞬の事ですぐに落ち着いてはいたのだが。



「……槍を持ったこと無い、というか武器を扱ったことが無い人間が練習をすれば手の皮は破れる。だが、坊やの手は違う。いったいどんな無茶をすればこんなに(いた)むんだい?」



 改めて自分の手を見てみると、槍を扱う事で出来てしまう摩擦で皮がボロボロに手であった。だが、これは誰でも通る……より強い手になる為には仕方の無い事だと思っている。



「まぁ、急いで強くなろうとしていますし……多少は仕方ないかと思ってますよ」


「私も若い頃には色々と無茶をしたもんだがね……。とりあえず槍だね、右の方に置いてあるから勝手に見ておくれ!」



 店主に言われた通りに店の右側は槍が置かれていた。量産やまだ若い職人が作った安物の槍から、一級品だと思われる棚に飾られた槍まで色々と置いてある。確かに品揃えは良いみたいだな。


 とりあえず白金さんのオススメ1本、俺が選んだ1本、ルフィスの選んだ1本を持ち寄ってその中から選ぶ事になった。それぞれが色んな槍を探し始めた。



「うーん。選考基準は、頑丈さかな~?岩人間(ゴーレム)は無理だとしてもオーガ相手なら耐えられる硬さじゃないとな……」



 シンプルな槍、三又の槍、装飾の付いた槍など見ていくが“これ!”という物は未だ見つかっておらず、集合の声が掛かった為、何も持たずに白金さんの所へと集まった。



「武器は見つかったかしら?」


「俺が探した場所にはピンと来るモノは無かったかな……」


「私は見付けましたよ!コレです!」



 そう言ってルフィスが持ってきたのは、槍の先端から後ろまで全てが真っ黒に染まった槍だった。それを俺に使わせるのか?なんて思ったが、ルフィスにはルフィスなりの考えがあるのかもしれない。



「格好いいからとりあえず持ってきましたよ!」


「分かるわ」



 駄目だった!この二人のセンスはちょっとだけイタい方向に突っ走ってるんだたった。あれ?という事はもしかすると……



「私が持ってきたのはこれよ!」


「見た目は……普通の槍ですね?」



 白金さんが持ってきたのは本当に普通の槍だ。前に俺が使ってたのよりは幾ばくかは頑丈そうな感じはするけど……。



「この槍……『骨螺槍(こつらそう)』と言うらしいわ。名前が格好良かったからとりあえず持ってきたわ」


「たしかに格好いいですね!一縷さん、これにしましょうよ!」



 名前で持ってきたという白金さんから槍を受け取った。……持ってみた感覚はそう悪くない。悔しい事に名前負けしてる訳では無く、本当に敵の骨ごと貫けそうな槍である。



「重さも長さも前の槍と、そう変わらないから良いかもしれない」


「値段も十分に許容範囲よ。この槍でいいかしら?」


「おっけーだ!今の実力ならこの槍くらいが合ってると思うし、大丈夫。……白金さんは武器を新調しなくていいの?」



 白金さんも、俺と同じで城から頂いて来た刀をずっと使っていた筈だ。俺たちほど戦闘をしていないが、武器も傷んでいるだろうに。


 すると白金さんは、別の街に行った時に新調すると言い俺の槍を持って行き、会計を済ませてしまった。まぁ、白金さんが良いならそれで構わないけれども。



 ◇◇◇



 槍を購入した俺達は帰りに街をぶらぶらと散歩しながら帰ることにした。街の人の様子、商い、会話までも非日常という事を改めて考えてしまう。


 勇者――なんて役割を半ば強制的にやらされている他のクラスメイト達の事もふと思い出すが……今の俺達にはどうしようもできないし、何か出来るわけでも無いから頑張ってとしか思えないかな。


 いずれダンジョン巡りの為に大国に足を運ぶ時、俺達が勇者とソフュール国の王女とはバレてもいけない……下手すると捕まえられて殺されかねない。


 という事は、関わらないのがやっぱり1番たろうな……。



「一縷さん、どうしたんですか?」


「いや、ちょっと他の転移者(大国の勇者)の事を考えてたんだけど……」


 リコルには俺達の正体をまだ明かしていないから言葉には気をつけないとな。リコルが口を滑らして誰かに話してしまう事を危惧してだ。



「お兄ちゃん、勇者様見たことあるの?私は無いんだぁ~」


「大国の二国に居るって話は聞いたことあるけど、俺も無いなぁー」



 クラスメイトと顔を合わせる所か、遅刻したから先に行ってしまったクラスメイトの顔も知らない。同じ中学の知り合いが居る可能性もあるが……酷い事になってない事を祈るくらいしか今は出来ないしな。


 リコルやルフィスと勇者についての話をしながら散歩もそこそこに宿へと戻ることにした。



「お帰りなさいませお客様。夕飯はもう少し後になりますので少々お待ち下さい」


「分かりました」



 夕食までは部屋で槍を触っている事にした。持つところの確認、長さの確認、先端の確認。やはり武器が変わるとちょっと落ち着かないな。早めにコイツに慣れるためにも明日の休みは素振りにでも使うかな……。


 しばらくしてルフィスが呼びに来て、皆で宿の食堂で夕食を頂いた。パンとスープとちょっとした肉だけだが、この宿の値段からすると妥当なメニューだろう。



「一縷君、明日の予定は何かある?」


「俺か?俺は――とりあえず槍の素振りをしようと思ってるけど?……何かする事ある?」


「うん……そうね、一縷君は槍の練習を優先してちょうだい。ただギルドに行こうと思っただけだから」


「今日も行ってたけど……明日も?」


「えぇ……どうやら、ギルドカードに記されてるランクを上げないと立ち入れない場所があるらしいのよ。流石にCランク以上は緊急クエストでも前に出されるから避けないといけないけどね……。だから、とりあえず簡単なクエストを探してくるわ。手持ちの素材によっては達成できそうなのもあるだろうしね」



 なるほど。いつまでもFランクじゃ信用が足りない事もあるって事か……。Dランクまで上げておけばとりあえずは大丈夫なのかな?



「ギルドカードはまた渡しておいた方がいい?」


「そうね。預かっておいていいかしら?ルフィスも」


「分かりました!部屋にあるので後で渡しますね」



 俺も部屋……だな。後で渡しに行くか。とりあえず食事も終わったから部屋に戻ろうと提案して、俺達は各部屋に戻っていった。


 部屋に戻りカバンをゴソゴソしていると扉が叩かれた。扉を開くと白金さんがそこに居て、部屋に入って座り込んだ。



「……どうしたの?ギルドカードなら今持っていこうと思ってたけど……」


「ちょっと、話しておきたい事がね。リコルの事よ」



 リコルか……リコルの事というとやっぱりあれかな。パーティーに入ってもらうかどうかって話だろう。荷物を持ってくれたり素材を剥ぎ取ってくれるリコルの存在は凄く助かっている……が、仲間に入って貰うには俺達の素性を話さないといけないし、少なからず危険も付きまとう事になるだろう。


 白金さんが相談を持ち掛けて来たという事は……。



「白金さんはパーティーに入って欲しいって考えなんだよね?」


「えぇ。リコルが居てくれると助かるもの。親が居ないとはいえ、リコルの人生を私達に巻き込んでしまっていいのか……」


「……駄目だ、正解なんて考えても俺達には分からないって。リコル抜きでアレコレ考えるのも違うと思うし!聞こう、ちゃんと」


「確かにそうね……。結局はリコル次第だもんね、分かったわ今から話しましょう!」



 マジか?流石に今からとは思わなかったが……まぁ、早い方がいいのかな?


 白金さんが部屋に戻って、リコルとルフィスを連れて戻って来た。連れられて来たリコルは俺と白金さんとルフィスを前に座ったままキョトンとしている。



「リコル、貴女はこの先の予定はあるのかしら?」


「この先ですか?明日は特にありませんけど?」



 俺達が先の予定と聞かれたら明日の事よりもっと先の事を考えるだろう。でも、この世界――その中でもリコルの様にその日を生き抜かなければならない人達にとっては明後日以降の予定なんて考えてる余裕は無いのだろう。



「そうじゃないわ。明日、明後日、そのまた次の日……これから続いていく日の予定よ。何かやりたい事とかあるのかしら?」


「……分かんない。この先も荷物持ちの仕事で、もう少し大人になってもきっと荷物持ち……この先の事なんて分からないですよ」


「リコル、考えて欲しい事があるわ。すぐに答えを出さなくてもいい、だから……その……何というか……」



「――――俺達と一緒に来ないか?」



「えっ?……えぇ!?」



 白金さんが言いにくいなら俺が言ってあげよう。誘う事によってリコルに対して責任が生まれてしまうのなら俺が背負おう。まぁ、パーティーで背負うことにはなるのだろうが、それはそれこれはこれだ。



「俺達と一緒に旅をしよう。もちろん危険もあるし色んな厄介ごともあるだろう。けど、それでもリコルが俺達と居て楽しいと思ってくれているのなら――俺達と一緒に行こう!……こう言うのは卑怯かもだけど」


「リコルちゃん、私はリコルちゃんともっと一緒に居たいです!まだ、出会ってから短いですしお互い知らない事ばかりですけど……それでもリコルちゃんと一緒に旅をしたいと思いました!」


「まさか、一縷君に言われてしまうとは……素敵よ。リコル、貴女の人生ですもの貴女が決めて良いわ。でも、私達のパーティーは貴女を必要としてます。その事は分かっておいて欲しいわね」



「必要……ですか?わ、私が……」



 ――この時のリコルの驚いた様な嬉しい様な不思議な顔は翌日以降に笑い話として、いつまでも話される事になった。一晩中考えたらしいリコルは翌日、白金さんとギルドにギルドカード作りとパーティー加入の申請をしに向かい、正式に俺達のパーティー『星の祈り(ステラプリエール)』のメンバーとなった。



 ◇◇◇



「いち、にっ!!いち、に、さんっ!!」



 俺は宿の裏手にあるスペースを借りて、槍の素振りをしていた。前に使っていた槍の感覚を上書きするように、素振りを繰り返していた。


 イメージの相手はオーガだ。仮想オーガを相手に槍を振るう……避け、払い、叩いて、突く。繰り返し繰り返す。しばらく練習していたらルフィスがやって来た。



「一縷さん、私も隣で素振りをしてもよろしいですか?」


「もちろん。でも、結構振り回すから距離は取っといてくれな」



 ルフィスに注意を促した後、少しの休憩を挟んでまた仮想敵をイメージしての素振りをし始めた。黙々と、ひたすらに素振りをし続ける。


 ルフィスも頑張って杖を振り回しているが……どうしても“ポコポコ”という擬音語が似合う素振りに見えてしまう。



「はぁ……はぁ……ふぅ~。よし!」


「いや、頑張った感だしてるけど全然だからな?もっと頑張ろうぜ……」



 ルフィスが額の汗を拭うポーズをしてアピールしているが俺の10分の1も振っていないんじゃ無いだろうか。次からも魔法が有効とは限らないし、もう少しだけは強制的に頑張らせよう……。


 それから夕方までは休憩を挟みつつルフィスと素振りを頑張った。頑張ったけど……少し頑張り過ぎたかも知れない。



「ダメですぅ~もう腕があがりませんよぉ~うぇ~ん」



 俺は1つ気付いた事がある。ルフィスは……どうやら疲れた時に甘えん坊というか、少し幼児退行するみたいだ。ダンジョン内でも1日の終わりには少しだけ白金さんに甘えていた様な気がする。


 可愛らしいというか、これが年相応なのかも知れないけど……少し驚くし、どうしていいか対応に困るな。とりあえず部屋に戻るか?



「ルフィス、歩けるか?」


「無理ですぅ~足も上がりませんよぉ~」


「はぁ……とりあえず汚れるから部屋に戻ろう。部屋までだぞ?ほら」



 俺はルフィスの前で背中を向けてしゃがんだ。すると、ルフィスがヌメッとした動きで背中から肩に手を回して……俺が立ち上がるとそのままくっついた様に背中に張り付いた。



「えへへ~楽々でっすねぇ~」



「あら……随分と上機嫌ね?一縷君、ルフィス?」



 おぉ……う。うんうん。分かる。笑ってる、口だけだけど。何て器用なんだろう。



「あたっ!?い、一縷さん!何で落としたんですか!?」


「すまん、ルフィス!でも、世の中には仕方ない事もあるって話だ」


「ふぅ……冗談よ。疲れるまで練習してたんでしょ?一縷君、背負ってあげて」


「お兄ちゃん、お姉ちゃん!見て、ギルドカード!」


 ルフィスを背負い直して部屋に戻ろうとしたら、白金さんの後ろからギルドカードを掲げたリコルが綺麗な赤髪を揺らしながら飛び出して来た。


 特に注目して欲しいのか、パーティー名が記入されてる部分を指差しながら()()ねている。



「これからもよろしくな、リコル」


「うん!」



 俺達は部屋へと戻り、明日のダンジョン攻略に向けてしっかりと休息を取ることにした。



 ◇◇◇



「そいっ!せいっ!はぁぁぁぁ!!」



 ダンジョンも順調に攻略していき、今は20階層の後半でオーガと戦っていた。練習していた新しい槍の調子を確めていた。


 ――良い。実に良い。頑丈さもあるし、矛先の刺さりやすさも前の槍よりだいぶ良い。



「白金さん、ルフィス、もう大丈夫。感覚は前より良いから下に潜っても大丈夫だよ」


「そう。なら一気に31階層まで下りるわよ。一縷君、お願いね……リコルもしっかりついてくるのよ?」


「お任せあれ!」


「頑張ります!」



 リコルも以前より遥かにヤル気があるようで、休憩を挟みながら潜って行ってたがしっかりとついて来れていた。


 30階層のキングオーク、キングオーガを魔法でピチュンして俺達は先に進んだ。……残念な事に今回は宝箱の出現は無かったな。



「さ、ここからがスタートよ。二人共、気を抜かない様に頼むわよ!」


「おっす!」


「はい!!」



 俺とルフィスは並んで戦闘を歩いて周囲の警戒に当たる。この階層からは、また敵の種類が変わると考えれるからである。魔法に耐性が有るか無いかで俺達の動きも変わってくるからな。



「敵が近付いて来るわよ!気を付けて!」



 俺とルフィスは正面に気を配り警戒しておく。……ん?来な……い?



「上よ!!」



 “カサ……カサカサ……”



「「……!!?」」


「ム、ムカデだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「む、虫ですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」



「「ぎゃあああああああ!!」」



 俺とルフィスはダッシュした。ダッシュで加速に加速を重ねて白金さんの後ろへと逃げ隠れた。ムカデだ。ただのムカデでは無く、勿論のダンジョンサイズというか、全長は1メートル以上はあったと思う。それがユラユラでカサカサしながら天井を這っているのだ。



「はぁ……ムカデを虫と言って良いのかはうろ覚えだけど、私も苦手なのよね……一縷君は自分で消しなさいよ――『断風(だんぷう)』」



 白金さんの魔法で天井を(うごめ)いていたムカデがバラバラとなって落ちてきた。



「うぇ……。最悪だこの階層は」


「そう?確かに敵の種類としてはアレだけど――喜びなさいよ、敵は魔法に強くて物理には弱いわよ!!」



 ん?んん??マジか……マ!ジ!か!


 やっとか、やっと長くキツい期間を乗り越えてこういった階層に!虫なんてどうでももう良いぞ!!俺の槍の成長具合を見せてやる……



「白金さん、ルフィス、とりあえず俺から行かせて貰って良いか?試したい!!」


「やれやれ……まぁ、いいわ。頑張ってね」


「い、いいい一縷さんんん、私は遠慮しますぅぅぅぅ……」



 今まで上の階層では相当な無双っぷりを発揮して来られたルフィスさんには、是非ともこの階層でも戦って貰おう。



「くっふっふ!ルフィス、頑張りたまえよ!勿論、この階層でも交互に行くぞ。苦手は出来るだけ無くさないとな!」


「詩葉さーん、一縷さんが悪い顔してますよぉ!助けてくださいぃぃ」


「ルフィス……悪いわね、言い方はともかく一縷君の言ってる方が正しいわね。敵の強さは階層が下がる方が強くはなって行くけれど、フォローもするわ。頑張りなさい」



 白金さんからの一言でルフィスの表情は暗くなって行った。魔法が効きにくい敵に加えて、敵の種類が苦手なタイプだものな。



「さて、行きます……か!」



 探索をしながらムカデを見つけては倒して、見つけては倒してを繰り返した。最初は魔法を使って見たが、効きにくいというのは本当の様で消滅魔法の消費魔力も大きかった。


 だが、オーガや下手すればオークより槍が通りやすく今の俺にとっては厄介な敵とは言えないレベルだった。


 ルフィスに交代したが、白金さんの様にスパスパと魔法で倒すことが出来ずに苦戦を()いられていた。



「『火の砲弾(ファイアーボール)』『火の砲弾』『火の砲弾』……さ、3発も撃ってるのにまだ動くんですかぁ!?ひぃぃぃぃぃ!!」


 ご覧の有り様でおそらく下に潜ってムカデが増えた場合は対処出来ないだろうな。まぁ、俺がオーガとかに苦戦をしていた時とは全然違うから何とも言えないが……とりあえず魔法のレベル上げに徹するしか無いのかな?


 それからは、ルフィスの魔力をギリギリまで使えば俺と交代して、回復したら交代するやり方で少しずつ進んで行った。このままの状態で下の階層へと潜るのは危険という判断で、もう少しだけルフィスを成長させてから潜る事になった。



「ルフィス、気持ち悪いのは分かるけどさ……やっぱりその杖で頭を潰した方が早いと思うんだよね」


「む、無理です!近付きたく無いですよ!イヤイヤイヤです!!」


「でも、魔法にも限度はあるでしょ?一縷君も上では槍を頑張ったのだから、ルフィスも杖を振るいなさい!」


「お、お姉ちゃん!頑張って!私も応援してるから……」



 相当に嫌なのか絶対に首を縦に振らないルフィスになってしまった。確かにムカデもキモい。俺も黒いアイツだったらルフィスと同じく嫌だと言っていたに違いない。


 気持ちは痛いほど分かるが、せっかく杖を練習するチャンスでもあるから頑張って欲しい気持ちの方が勝っている。



「ルフィス、いざと……いや、危ないと判断したら逃げて良いから頑張らないか?俺が消してあげるからさ。やらないと強くなれないのは道理だと思うし、慣れる為にもまずは踏み出さないといけないだろ?」


「大丈夫よ、ルフィス。貴女がムカデを倒せる様になるまでは時間を掛けても良いわ。それまでちゃんと待っててあげるから」


「一縷さん……詩葉さん……。や、やってみます!まだ怖いですけど、立ち向かう事から始めますけど、私は頑張りま……え?」



 “カサカサ……カサカサカサカサ”



「ぎゃあああああああああああ!!?」


「落ちて来たのか!?落ち着けルフィス!」


「やだやだやだやだやだやだやだやだやああああ!!」



 くそっ、そんなに動き回られると狙いが……肩に上手いことぶら下がって……うぇ、アレは可哀想……。



「やだぁぁぁぁ!!このこのこのぉぉぉぉ!!」


「おっ……良いぞ!ルフィスそのまま杖で叩いて弾き飛ばせ!」



 がむしゃらに振り回したルフィスの杖が上手いこと当たったのか、肩から弾かれたムカデが地面で弱っていた。白金さんがルフィスへそのまま叩く様に指示を出したら、半狂乱のままだがルフィスはムカデの頭部を杖でおもいっきり叩き潰した。


 動かなくなったムカデだが、恐怖やら色んな感情で暴走気味のルフィスはムカデを叩き続けた。



「はぁ……はぁ……はぁ……うぇぇぇぇぇぇ」


「ほら、よしよし……良く頑張った。良く頑張ったぞ」


「お姉ちゃん……大丈夫?」



 一通り暴れたルフィスだが、落ち着いた今度は吐き出してしまった。気持ちは分かるからとりあえず背中を擦ってあげている。相当に気持ち悪かっただろうな……。



「はぁ……ず、ずびばぜん……うぇ」


「いいからほら、吐いた吐いた!全部出しちゃえな?」


「1度休憩にしましょうかね。ルフィス、とりあえず座りなさいな」



 ルフィスを座らせて俺達もついでに休憩を取ることになった。俺と白金さんの話し合いでこの階層……というかムカデは飛ばす事に決めた。勿論、完全に飛ばす訳では無く別の敵で魔法を強化したら戻ってくる予定となった。


 苦手な物をそのままにしておかない教育方針だからな……うちのパーティーは。



 ◇◇◇



 ルフィスの気分が戻ってから俺達はとりあえず下へ下へと潜って行った。1つ下の階層はやはり、ムカデが出て来た。数が増える事でルフィスの恐怖心を煽ってしまう事もあったが、そこも俺の槍と魔法で進んで行き、更に下へと潜って行った。


 33階層。探索してこの階層の敵がムカデでは無い事にすぐに気づく事が出来た。出来たのだが、この階層に居た敵は――飛竜。


 白金さんが言うには、飛竜……ワイバーンと呼ばれる奴等は龍に非ず。と、言うことらしい。ワイバーンはダンジョンにしか生息せず、龍種はダンジョンに存在しない。外の世界の何処かには居るらしいが、会うには危険な場所を通らないといけないらしい。



「つまり、龍モドキだけど強いってこと?」


「えぇ、厄介ではあるわね。飛ぶし力もある。息吹(ブレス)を吐かない事だけは助かるけど、それを抜きにしてもダンジョンの中では強い部類ね」


「魔法が効きにくいんですか……?」


「魔法は効きにくいし、皮膚も硬いわ。そろそろ私も準備運動がてら少し戦いましょうか……ね」



 どうやら、白金さんもそろそろ動くらしい。なら、先に戦って貰ってワイバーンがどれ程の強さなのか確めさせて貰おうかな。



「早速居たわね。行くわよっ!!」



 1匹、飛んでる訳では無く、地面に足をつけているワイバーンを見つけた白金さんは突進して行った。そこからの動きは速く、全てが見えた訳では無いが……既に倒れているワイバーンの体躯を見るからに、羽を潰してから首を裂いたようだ。


 先に飛ばれない様に片翼でも潰して、金切り声を上げる喉を潰す……それでも生きていればひたすら回避と突撃かな?とりあえず見えた範囲で立てられた、というか真似できそうな動きは以上だな。


 実際に戦ってみないと、俺と白金さんではステータスに違いがあるし分からないな。でも、翼だけは先に攻撃するのを忘れない様にしなければ……。



「二人共、今ので分かったかしら?」


「俺は自分なりに考えは出来たけど……ルフィスの為に魔法での倒しかたも教えてあげたら?」


「そうです、魔法での倒しかたを見せてください!お願いします詩葉さん!」



 仕方ないと言いつつもやってくれる白金さんに感謝して、俺達は次のワイバーンを探しに歩いた。しばらくすると、休んでいるのか羽を閉じて地面にうつ伏せになっているワイバーンを発見した。


 白金さんがルフィスでも使えるレベルの魔法で攻撃してくれるらしく、まずは火の魔法で翼に穴を開け、次に水の魔法で喉を切り裂き、最後にまた火の魔法を使っていた。



「要はさっきと同じ事よ。翼、喉、トドメ。ルフィス、貴女は翼にダメージを与えるのに失敗したら逃げなさい。あと奇襲は絶対に。いいわね?」


「わ、分かりました……これまで以上に気を引き締めていかないとですね!」


「だな。とりあえず接近から翼を攻撃するまでが1番の勝負って事だな」


「私はあっさり倒して見せたけど、強い事に間違いは無いの。油断だけは絶対にしないでね。今までの経験を活かせば倒せない事は無い!それだけは断言してあげるわ!」



 俺とルフィスは互いに頑張ろうと励ましあって探索を開始した。白金さんからのお墨付きを頂けたのなら勝てない筈は無い。敵はワイバーン……顔も厳ついしデカいから少し恐怖心はあるが、負ける事は死と思って死ぬ気で挑まないとな。


 俺がそう気合いを入れ直していると、白金さんのレーダーに引っ掛かった様だ。



「一縷君、まずは……」


「うん、消滅魔法を試してみるよ。ちょっと待ってて!」



 俺が一人で先行すると1匹のワイバーンと目が合った。


『キュアアアア……』

「『ロスト』!!」



 仲間にでも知らせるのかと思わせる声をかき消す様にワイバーンの全てを消し去った。……やはり、ムカデよりも更に消費は大きい様だ。今の俺のMPならまだまだ余裕はあるし、ピンチの時なら迷わずに使っても良さそうだ。



「うん!やっぱり、こうやって1度でも倒しておくと心に余裕が生まれるな。油断に繋がらない様には気を付けないとだけど」


「……大丈夫そうね?」



 俺は問題無いとだけ言って、次のワイバーンを見付けるまでは倒すイメージを繰り返す事にした。しばらく歩いてようやく1匹が見付かり、ルフィスから譲って貰いワイバーンへと挑む事になった。



「まずは奇襲……まずは奇襲……行くぞっ!!」



 ワイバーンが俺の居る方向と逆を向いた瞬間に走り出す。最近は音を立てずに走る事も上手くなってきたと思う。走った勢いのまま、左の翼に槍を突き刺し、そのまま振り切る事で翼を裂いた。


『キュアアアアアア……』


「せいやっ!!」



 少し叫ばれたが槍を喉に突き刺して(ねじ)る。捻りながら引き抜いて、だめ押しのダメージとして胴体へと突き刺した。


 血が吹き出して少々グロテスクだが――うん。それ程じゃない。それが俺の思った率直な感想であるし、自分に力がちゃんと付いている様でなんだか嬉しくなった瞬間だった。



 ◇◇◇



「うん、ルフィスも無事になんとか……ギリギリ倒せたわね。とりあえず今日の拠点を作りに行きましょうか」


「だな。とりあえずは……もう休もう」


「ふひぃ~疲れましたぁ~」


「お兄ちゃんもお姉ちゃんもお疲れ様!今日も凄かったね!」



 リコルに褒められたりしながら今日も通路の行き止まりを見付けてそこに拠点を作った。


 明日からの予定としては、この階層でしばらくはワイバーンと戦う事になるみたいだ。つまりは……



「いつも通りだね」


「ですねぇ~」


「えっと、言い忘れてたけど……今回で1番下まで行くからね?」



 お?まぁ、その覚悟はしていたけど……なんだか少し焦っている雰囲気が出てる。焦る?白金さんが?



「何か、ヤバい事でも……おきた?」


「うん……あの時にあったローブの女……サリファにギルドで会ったのよ」



 まぁ、冒険者だしな。それにサリファは先にキングオークの件を伝えに戻っていた筈だからな……。なんでそんなに顔が沈んでいるんだ?



「別に悪い事じゃないんだけど……サリファがFランクなのに下の階層まで潜ってたのをそこそこの声で言ってしまってね……。その場は逃げ出したのだけど、少し目立ってしまったかも知れないのよ」


「あ~……なるほど、それで早めに攻略してさっさと立ち去ろう……と?」



 そう言う事だと白金さんは頷いて、考えといてと言われた。言われたが、白金さんが出ると言うならそれについていくだけだからな。実際は考える事なんて何もなかったな。多分、ルフィスもリコルも同じ考えだろう。二人共、深く考えてる様子とか無いもんな。


「そんな事より、今日のご飯です!」



 全くもってその通りである。たまにはルフィスもちゃんとした事を言うな……と感心して、今日はもう休みの態勢に入った。


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