第13話 宝箱だ in 異世界
よろしくお願いします!
「起きなさい、一縷君!」
「ん?ん~…おはよう」
「おはよう、早く寝袋から出るのよ?早くよ?」
何でそんなに、急かされないといけないのだろうか…いや、まぁ…理由は分かったが…。
「リコル、朝だぞ!リコル~」
「んぅ…?お兄ちゃん…?おはよぅ…えへへ…」
「ん、おはよう。寒くは無かった?」
「はい!お兄ちゃんと一緒なので温かかったです!」
それなら良かった。そろそろ起きないとまた白金さんに怒られちゃうからな…。よし、起きるか。
「あ、詩葉さん!一縷さんが起きてきましたよ?」
「ようやくね。リコル、何も変な事はされなかったかしら?特に…どこかしらを触られたとか、変な事を囁かれたとかは無いかしら?」
疑い過ぎではないだろうか?もう少しくらい、信用してくれてもいいんじゃない?そりゃ、ステータスにの称号に『幼女キラー』なんてモノがあるが俺から手を出した記憶は無い。言うなら、巻き込まれ幼女キラーなのに。
「えへへ…お兄ちゃんと一緒の寝袋は気持ち良かったですよ!」
「「「……」」」
「いや!絶対に誤解しているから!無罪!無罪を主張させて頂きます!」
「ギルティよ。一縷君」
「一縷さん…信じていましたのに…」
「いや、待って!リコルは言った。気持ち良かったと。確かに言ったが逆にそれしか言っていないんだぜ?はて、ルフィス。いったい…何を思って俺を責めようと…?」
「えっ?い、いやそれは…ははっ、ね?詩葉さん」
「さぁ、私もルフィスの意見を聞いておきたいわね?」
流石、白金さん。中々のやり手だ…。
「そ、それは…き、気持ちの…良い…事を…」
カァァ…っと一気にルフィスの顔が赤くなる。モジモジしだしたりして、こっちも少し照れてしまうというか恥ずかしくなるほどのウブな反応だ。
「リコル、何が気持ち良かったかをこの赤くなってるお姉ちゃんに言ってさしあげなさい!」
「あのね、私が先に寝ちゃったんだけど…夜中に1度目が覚めたらお兄ちゃんがギュウ~~ってしてくれていて、それが暖かくて、安心出来て、気持ち良かったの!」
「「「……」」」
「いや!寝ている間の事なら仕方ないとは思わないの!?」
「一縷君、やっぱり」
「やっぱりって何!?変な事言うのはやめてください白金さん!」
「い、一縷さん!」
「ル、ルフィス…その…ほら!ルフィスの思ってる事とは違った訳だしね?ね?まぁ、ここは1つ穏便に…」
「平手打ちです!平手打ちします!一縷さんの…ばかぁ!」
「ぶべらっ!?」
まぁ…ビンタで許して貰えるなら良いか…。ん?俺、悪いことしてない筈なんだけどなぁ…。
それから朝食が出来上がるまでの間、俺は地面に横になったままで待機した。
「ほら、一縷君も起きなさい」
「あ、はい。おぉ…今日も美味しそうだね!具材は聞かないけど」
「懸命な判断ね。急がなくても良いけど早く食べちゃってね、片付けもあるんだから」
「はいよ。頂きます」
「食材となる生命と神に感謝を」
「お姉ちゃん、ありがとう」
「うん、そうよね。リコル、あなたが1番正しいわ」
おっと、白金さんの中でリコルの株が上がったみたいだ。それもそうか、食材の感謝も大切だが、それを調理してくれた人にも感謝する事も大事な事だよな。当たり前だと思っちゃダメだな。
「そうだな、リコルが正しいかもな。ありがとう白金さん、頂きます」
「そうですね…。いつもありがとうございます、詩葉さん!い、頂きます!」
「ふふっ、律儀ね二人共。どうぞ、召し上がれ」
朝食を食べ終えて、詩葉さんとリコルが片付けをしてくれている間に俺とルフィスは外に繋がる壁に穴を開け、通路の様子を窺っていた。
「良かった…前の時みたいにモンスターが溜まっては居ないみたいだね」
「そうですね、あの時は大変でしたからね…」
壁の向こうにオークやらゴブリンが溜まって居た時は倒すのも大変だったし、キツかった。特に血の臭いが充満して…。だが、そのお陰で『消臭』を思い付けたから悪くも無かった。が…オーガの階層で溜まられたら下手すりゃ俺だけがボコボコにされるから、本当に良かった。
それから少しして、片付けも終わった様子の白金さんとリコルも準備は万端みたいですぐに出発は出来るみたいだ。
「一縷君、ルフィス、今日はどうする予定かしら?」
「俺は…とりあえず昨日の復習ともっと確実にオーガを倒せる様になるまでこの階層で訓練したいかな?今のままじゃ2体以上は厳しそうだ」
「私も、もう少し魔法で上手く急所を突く特訓をしたいです!」
「分かったわ。じゃあ午前中はそれに費やして、午後に武器を入ってから下へ行ってみましょうか」
「よし!頑張るぞ、ルフィス!」
「はい!」
白金さんが壁を壊してくれたのでそのまま俺から特訓を始める事にした。ルフィスの魔法は効くけど槍で倒さないといけない俺の方がどうしても時間を割いてしまうから、俺から訓練のスタートだ。
◇◇◇
「足、足、目!足ぃ!!」
『ガァァァァァ!!』
「はいぃ!!せいっ!!はぁぁぁぁ!……よし」
後ろからの奇襲、それに徹底して弱点を狙っての攻撃。そうする事で昨日よりは早く倒せていると思う。
「一縷さん、そろそろ1度交代しませんか?」
「そう…だな。無理は禁物か、じゃあよろしくルフィス」
「はい!お任せください!私の火魔法で灼熱の本当の意味を知らしめてさしあげます!」
ん?ルフィスってそんな事を言う子だったっけ?隣で白金さんが満足げに頷いてるが…毒されてないか?毒されてるよな?
「ルフィス、知らしめなくていいから…とりあえず頑張って」
「知らしめなくていいのですか?なら…いつも通りに頑張ります!」
良かった、毒はまだ完全に回ってはいないようで…。白金さんの睨みは凄いけど量産するわけにはいかない!イタいから!まぁ、ルフィスにそっちの素質がありそうなのは何となくパーティー名を決める時に判っていたが…。
ルフィスと交代した俺は白金さんに戦闘のアドバイスを貰う事にしている。悪い所、良い所をちゃんと教えてくれるから助かっている。悪い所は教えてくれるが解決方法は教えてくれないのが白金式のやり方で、そこまでは甘やかさないみたいだ。
だから、白金さんからアドバイスを貰った後はひたすらシミュレーションを繰り返して次に戦う時の準備をしている。オーガのスピードには安全に対処も出来るようになってきた為、そろそろ奇襲じゃなくて正面から打ち倒してみようとも考えていた。
「『火の砲弾』!!」
俺が苦戦しているオーガも『火の玉』を2発程当てれば倒してしまうルフィスを見てると少し切ないが…あの威力だから仕方ないか。オークなら1発だしな。
「やっぱり良いなぁ~魔法って。『火の玉』何て初級の技だろ?なのにあの威力って凄いよなぁ」
「……ん?何を言ってるのかしら?『火の砲弾』は中級魔法よ?」
中級?いや、それは威力が凄いけどさ……。
「え?でも『火の玉』でしょ?」
「『火の砲弾』よ?」
「「え?」」
……どうやら俺は勘違いをしていたみたいだ。でも、ファイアーボールなんてただの火の玉…だと思っていたらそんな簡単な魔法では無かったみたいだ。
火という形を丸く留め、内包してある熱の温度を高め相手へを放出し、更にコントロールしないといけないみたいだ。
「意外と難しい事していたんだな…ルフィス」
「ま、でも中級よ。更に難しい魔法もあるわ……それを使うには練習が必要ね」
初級すらまだ使えないんだよな……俺。
「俺は消滅魔法だけだからな。他の魔法を使ってみたいとは思うけどね」
「消滅魔法だけで十分だとは思うけどね。そうだ、一応オーガにも消滅魔法を使ってみなさいよ。消費の感覚は掴んでおいた方がいいだろうから」
確かに強力な魔法ではあるけど、派手さが何も無い。魔方陣から火が出るみたいな華やかさに密かに憧れていたりするのだ。
「あー、そういえば最初のゴブリン以外は使ってなかったな。次やってみるよ!」
「使えるけど使わないと、使えるのにいざって時に使えないのは別よ」
消滅魔法の方も、色々と試行錯誤していかないとな。
「だな、次はやってみるよ」
しばらくはルフィス無双が続きご満悦な表情で帰って来たルフィスと交代してまた俺が出る番となった。
「白金さん、1番近くはどこにいますかね?」
「ここを少し進んで右に曲がると居る筈よ」
白金さんのレーダーは正確だからな。
「了解」
言われた通りにに進み、曲がる前に1度確認を取る。
「少し離れてるな。よし…『ロスト』」
『ギィガァァァァァァ!!』
少し離れた所からオーガの叫び声が響いて来る。
「な、何の声ですか?」
「お、お兄ちゃん大丈夫なの!?」
「あぁ、ふむ…魔力も増えたから足を消し飛ばすくらいじゃそこまで消費もしないな。『ロスト』」
ちゃんと頭の一部を消し飛ばしてトドメを刺す。どうしても、急所を狙う方が魔力の消費は高くなるみたいだ。足を飛ばして槍でトドメを刺すか、心臓か頭を狙い打つかした方がいいだろうな。
「一縷君、どうだったかしら?」
「うん、全然手応えが無いというか…楽!!あんなに苦戦してるのが嘘みたいに楽!!」
「一縷さんのユニークスキルですね。強力なんですね…」
「お兄ちゃんも魔法使えたの!?何でいつもは槍で戦ってるの?」
「一縷君の使う魔法は強いのよ。でも、一縷君は"自ら"魔法が使えなくなった時の為に槍の訓練をし始めたのよ。凄いわよね」
「そうなの?お兄ちゃん凄いね!」
「お、おう。ありがとうリコル…頑張るよ…ハハハ」
牽制された!?俺が消滅魔法を使って楽出来ない様にリコルを使うとは…くっ、卑怯な。でも、自分で槍を使うって決めたから楽も出来ない!
「魔法のチェックも済んだわね。後は…槍よ?」
「あ、はい…」
俺には最終手段として消滅魔法があると確認出来たからかは分からないが、気持ちに多少の余裕が出来て相手の動きに対してより集中出来るようになった。その結果として、無事に正面からオーガを撃破する事も難しくは無くなった。
◇◇◇
俺達は今、23階層から24階層へと降りる階段付近でお昼休憩を取っていた。食べ終わったら遂に下へと降りる予定となっている。また難易度が上がる事にワクワクしているのか緊張しているのか自分でもよく分からない感情になっていた。
「ん?階段の下から走り上がってくる音がするな」
「そうね。他のパーティーの人かしら?」
音がどんどん近付いて来て、その足音を鳴らしていた人物が姿を現した。
「お…?君は!会いたかったよ!一縷!」
ローブで姿を隠している人物が階段から現れ、俺の名前を呼んだ。
「そのローブにその声…って、もしかしてサリファか!?」
「サリーで良いっての!でも、そうだよ。偶然だね一縷」
そういえば腕相撲の大会以来だな。と、言っても1日2日くらいしか経ってないけど。
「ちょっと良いかしら?」
「ん?もしかして一縷のパーティーの仲間?」
「えぇ、そうよ。それであなたは一縷君とはどういった関係かしら?」
「あぁ、それはだな…」
「負けたの!」
「はい?」
「私はこの男に負けて、衆人環視の中で恥ずかしい思いをしたの…」
おいおい…冗談じゃ無いよ…。いや、冗談じゃ無いよ!何を言ってんの!?何を言ってんの!?ただ、腕相撲で俺が勝っただけだよな!?
「一縷君…少しは自重というモノが出来ないのかしら?そろそろちゃんと怒るわよ?」
「サリファ、頼む。フザケテいい状況じゃないんだ。え?何故かって?俺が死ぬからだ」
「え…?あ、ゴメン…。私、そんな状況とは知らないで…何やらかしたの?」
「幼女抱きつき事件だ」
「女の敵じゃないの!?一縷!」
「それも、誤解だと解けたばかりなんだ…つまり、俺の立場は危ない」
「そ、そうなの。ゴメンね…それで、ホントは腕相撲大会で負けただけなの!まぁ、その時に知り合っただけよ」
「一縷君?」
「本当だよ。結構良い勝負だったんだ。俺と、良い勝負だった」
「ま、負けちゃったんだけどね…腕力には自身があったのよ?結局、あの大会で負けたのは一縷にだけよ」
「優勝したのか!?おめでとう!凄いじゃんか」
「へへ、ありがとう」
「まぁ、貴女の事は分かったわ。女なのに声を変えてる事も顔を見せない事もとりあえずは聞かないわ」
「そ、そう。それは助かるわね。では、名前くらいは言っておくわ。私はサリファ。ただのサリファよ!サリーで良いわ」
「ただのサリファ…ね。私は詩葉よ」
「わ、私はルフィスです。ただのルフィスです」
「そ、そう…ただの…いえ、何でも無いわ。それで…下に行くつもりなら気を付けてね?」
「何かあったのか?」
「ついさっき28階層で死体が見つかったの。3人分の死体が出たと少し騒ぎになったわ」
「物騒ね。とは言ってもそれってそこまで騒ぐ事なのかしら?ダンジョンならそういう事も無くは無いわよね?」
「騒ぎになっていた理由なんだけど…赤の三ツ星ってパーティーを知ってるかしら?」
俺達は知ってる。リコルが被害にあったからだ。だから無言で頷き、続きの話を促した。
「そのパーティーってCランクが居るから最悪はそのCランクの人だけでも逃げられた筈なの。なのに、逃げれずに死んだ…という事が騒ぎになったのね」
「なるほど」
「えっと、どういう事?強い敵に囲まれたって事?」
「それでも、28階層程度ならCランクなら対処……最悪は走って逃げられる事は可能だと思うわ」
「そうそう。詳しいね。一縷くんのパーティーもランクは高いのかな?」
「いや、俺達はFランクだ」
「F……?Fランク!?冒険者に成り立てじゃないの!!ここ、23階層でしょ!?」
まぁ、普通の反応だが今はそんな事どうでも良い情報だろう。
「サリファはどのくらいなんだ?」
「私は一応Cランクだけど…一縷も知っての通り、ソロで活動しているから潜っても29階層までしか行かないけど…それよりFランクって…」
「それで!今は急いでるみたいだったけど…どうしたんだ?」
「あぁ!そうだったわ。その、死体があった場所にいくつかのパーティーも集まってきて皆で原因を探す事になったんだけど、ギルドに報告もしといた方が良いって事になって…ソロの私が戻る事にしたのよ…ねぇ、Fランクでここまで来たの…?」
「そ、そうか!引き留めて悪かったな。原因か早く解明出来ると良いな!俺達が降りる前には。じゃ、じゃあ…また会えたらな」
俺達はサリファに背を向けて階段を降りていった。特に答えに詰まる質問でも無いが面倒臭さが勝ってしまったから仕方がない。
「Fランクって、普通は降りられても9階層の筈なんだけど…」
◇◇◇
「それにしても赤の三ツ星ってあの男だよなぁ」
「そうね。Cランクはあったのでしょ?なら、本当に最悪だけど仲間を置いてでも自分は逃げられた筈なのよね」
「四方を囲まれたのではないですか?」
「考えづらいわね。一縷君やルフィスみたいにまだ、ダンジョン初心者なら話は分かるけどCランクならそんなヘマはしないわ」
「じゃあ、何か特別な状況にあったって事か?強いモンスターが出たとか?」
「ダンジョン関連の事は、それは無いとハッキリと答えられないのよね。何が起きても不思議ではあるけどあり得ない事は無いもの」
「28階層って言ってたっけ、まだ先の階層だから早めに解決してくれると助かるな」
「まぁ、他の冒険者が何とかしてくれるでしょ。私達は私達のする事をしないと」
「そうですね!次からは魔法でも苦戦しそうですし、MPの枯渇を気にしなければならなくなりますからね」
「いずれはもっと下まで行かないといけないんだし、1つずつ頑張ろうぜ」
「私も!精一杯お手伝い頑張ります!」
「リコル、頼りにしているわね」
「はい!」
24階層は予想通りと言って良い程で、やはりオーガが複数となっていた。この流れで行くと次の階層はちょっと強くなってるオーガが単体で居るだろう。
「さ、気合い入れて行かないとな!先に言っておくよ、悪いけど倒すのに時間が掛かるから」
「1体を2回倒すより時間が掛かるものね。分かっているわ、ルフィスの魔力の回復もあるからそこは気にせず戦いなさい」
「了解。じゃ、早速やりますか…槍だ…」
「一縷君」
「あ、はい。行ってきますね」
しまった。またやらかす所だった。大人しく倒しに行くか…。
「とは、言っても…どうするかな、奇襲の一撃で1体にダメージを与えないとキツイかな」
頭の中でシミュレーションを何度か繰り返す。足だ。とにかく足を潰す。片足潰してすぐにもう片足。これで1対1を2回に出来る…ばす。そうすれば後は上と同じ事をするだけだ。
1対2を1回で倒せるならそれもいいけど安全じゃないからな…。
「よし、行くか」
俺はこちらを向いてない内に走り出して、左のオーガに向けて槍を構える。
『ガァァギィエァァァァ!?』
『グラァァァァ!!』
「おし、第一段階達成」
右に居た斧を持っているオーガに気づかれたが少しその場から離れてるおびき寄せる。
「行くぞ」
1対1なら負ける事は無い。後は正確に的確に急所を狙う。
『ガァッ!?グルゥラァ!!』
斧の振り下ろしを右足を軸に回転して回避し、そのままの勢いで槍を心臓に向けて突き刺す。
『ガッ!?グゥアア……』
すぐに槍を引いて置き去りにし、最初に足を突き刺したオーガにトドメを刺しにいった。対複数オーガ戦は今までの経験が上手く活かしきれて完勝に終えられた。
「やった…。おぉ!やれた!やれるじゃん!」
「お疲れ様。今のは…良かったわよ」
「一縷さん、今のは私でも見てて分かる程に優勢でしたよ!」
「お兄ちゃん凄~い!」
今の感覚を忘れない内に更に練習を重ねておきたい。どこかでこの流れが止まるまでは勢いを大事にしておきたい。流れが止まった後もすぐに感覚を調整出来るようにする為にも!
それからまたすぐに今の感覚を大事にする為にオーガを探しだしたが、その流れ、勢いはすぐに止まってしまう事になった。その原因が…。
「た、宝箱!?」
「宝箱ね」
「初めて見ました!」
「お宝なの!?」
違和感しかない。こんなダンジョンの中に赤色がメイン色で外枠枠の部分は黄色の箱だ。大きさは男の俺の片腕で抱きかかえられるか、両手で持つか悩むくらいの大きさだ。女の人なら迷わずパーティーの男に持ち上げさせるだろうな。
「し、白金さん!宝箱の説明を!」
「そ、そうです!詩葉さん罠が!罠とかあるんじゃないですか?」
「落ち着きなさいよ。ちょっと待ちなさい……うん、罠は無いわね。後、赤色の箱は装備品か装飾品よ」
「赤色の箱って…他にも色違いの箱があるの?」
「えぇ、ランク的な話をすると、ボスを倒した時に出現する事がある真っ白な箱が1番良い品が手に入るわね。まぁ、その人によって良い品かどうかは分からないけどね。そして、次が金の箱…これはイメージしやすいと思うけど中には金や宝石の財宝系ね。ダンジョンの宝箱で冒険者に喜ばれるのはこれよ。出現は同じくボス系を倒すか隠し通路の先にあったりするわ」
白い箱に金の箱。夢がある。しかもダンジョンの隠し通路なんて見つけた時は凄くワクワクするだろうな。
「そして、これは個人の意見が別れるからあれだけど…赤の箱は今言った通りに装備品か装飾品。アタリハズレの幅が広くてこんな感じに出現するわ。1度出現したら開けられるまではそのままの状態であるわ。そして、青い箱…これは薬関係ね。これも毒消しが欲しいのに麻痺消しが出る…って話をよく聞くわ」
「たしかに、それはハズレだな。自分の求めてる物が出るか出ないかは運次第って事ね」
「えぇ、それに箱の大きさも関係あるのはあるけど…宛にならない事もあるのよ…金の箱の例えだけど、財宝なら大きい箱の方が良いじゃない?でも、開けたら金貨が1枚だけ、逆に小さい箱でガッカリしたけど開けてみたら価値の高い宝石が入ってた…なんて事もあるわ」
「じゃあ、あまり宛にせずに宝箱を見付けられただけ幸運って思わないとね…」
「ところが…」
「え?まだ何かあるのか?」
「えぇ、さっきルフィスが罠って言ってたでしょ?」
「あぁ、そう言えば…あるの?」
「あるのよ。一縷君も宝箱と罠で思い当たる事ってあるんじゃない?」
あるな。大いにある。例のアレだろうな。
「それの他にも毒ガス、矢、痺れ、モンスターを呼び寄せる匂いを放つ物まであるわね」
「それって…宝箱の中身は?」
「ちゃんと有るわよ。巧く罠を解除できれば問題は何も無いわ」
「そうか、1つを除いてちゃんと解除出来れば問題はないんだな…それを聞けて安心した」
「一縷さん、詩葉さん、早速開けましょうよ!」
「だな、誰が開ける?俺は運悪いから辞退するけど」
「誰が開けても同じだと思うわよ?ルフィス開ける?」
「え?でも、初宝箱ですし…リ、リコルちゃん!開けて良いわよ!」
「えぇ!?そんな、責任重大な事…出来ませんよ!」
「リコル、気にしなくて大丈夫よ。どうせ良くても剣とかイヤリング程度よ」
「ま、宝箱ならその内にまた見つかるだろ?リコル、開けて大丈夫だぞ」
「わ、分かりました…では…」
ギィ…っと箱が軋む音を立てながら開かれてその中に入っていたのは…
「これは……ローブ?」
「フード付きマントかしら?でも…」
「これは…リコルちゃんサイズですね」
「お、お役に立てなくて申し訳ありません…」
「そんな事ないぞ!綺麗な赤のマントだし、赤い髪のリコルと似合うんじゃないか?」
「そ、そうですよ!リコルちゃん、着てみてください」
「その前にちょっと見せて貰えないかしら?……なるほど」
「何か付与でもされてた?」
「一縷君、鋭いわね。と、言ってもちょっとしたオマケ程度のものだけどね。リコルせっかくだから着なさい」
「わ、分かりました。では、ありがたく着させて貰います…どうでしょうか?」
「似合ってるよリコル!」
「はい、サイズもピッタリですし良かったですね!」
「少し体が軽く感じるでしょ?それがマントに付与されている効果よ。荷物を持ってくれているリコルに丁度良かったわね」
たしかに、そう考えるとアタリの宝箱だったかな。
「えへへ、ありがとうございます!」
「お、宝箱が消えていく…というか地面と一体化している様な変な消え方だな」
「という事は地面から出てくるのでしょうか…?」
「さぁね?消えるのはこうして見れるけど、現れる時を見たって話は聞いたことが無いわね」
「ダンジョンの不思議だな。よし、修行に戻ろうか」
俺はオーガに対して先程の様に仕掛け、第一段階は上手く行くがその後、少し手こずったがそれでもちゃんと倒せた。数回繰り返して、今は休憩の為にルフィスと交代をしているがその間も白金さんからのアドバイスとイメージトレーニングは忘れずにしておく。
「ルフィスも何とか倒しきれてるな」
「そうね。魔力の残量さえ気を付けていれば大丈夫そうね」
片方のオーガの足に『火弾撃』で攻撃して、もう片方のこちらへと向かってくるオーガには『火の砲弾』で倒していた。最初の足止めしたオーガのトドメは魔力消費の少ない魔法を使っていたので一応、ルフィスが考えた最小限の魔力で倒せているんだろう。
最小限で倒せてるのはまだまだ余裕があるって事だし、ルフィスの方は特に問題も無さそうだな。
「物理に強い敵多すぎないですかねぇ…物理に弱い敵っていないの?」
「ちゃんといるから安心していいわよ。今、この相手に鍛えておけばその時はきっと楽よ。オーガくらいは1人で倒せる様になったのだから」
「最初は怖かったけどね…というか、今でも怖いし。特に顔がね」
「それは私も最初は同じ事を思っていたし、ゴブリンやオークなんて最悪だったわね」
「まぁ、その2種類は臭いもあるからね。白金さんは今でも苦手な敵っているの?」
「んー、基本的には苦手とか言ってられないんだけど…見た目でいうならやはり芋虫とか巨大ミミズとかの虫系統かしらね。なるべく遠距離から魔法で倒すようにしてるわ」
「あー、虫ね。俺も苦手だな…虫は俺も魔法を使わせて欲しいかも。近付くのはちょっと勇気が足りない」
「その時はいいわよ。無理強いはしないわ。あ、ルフィスもそろそろ魔力が減ってきたわね。一縷君、いけるかしら?」
「あぁ、休まったよ。大丈夫だ」
ルフィスと交代してルフィスが魔力を回復させている間は俺の修行ターンで、アドバイスとイメトレの成果は少し出せた結果になったと思う。これならもう少ししたら更に下へと潜ることも出来るかもしれない程のレベルだと思っている。
だが、この時の俺とルフィスは知らなかった。いや、そういう意味では白金さんも知らないと言っても仕方なかったのかもしれない。リコルも特に疑問を抱かなかったが為に誰もこの異常性に気がついていなかった。
他のパーティーを知らなかった事、教えてくれてる人が2度目の勇者の白金さんであった事、ソロで行動のしてる人の戦い方を知らなかった事、勇者として強いステータスを持っていた事などの色々な要素が重なってしまった結果、けして普通ではない行動をしている事に気がついていなかった。
普通の冒険者はパーティーで行動を取り、パーティーで戦う。Cランクパーティーがオーガ1体に対しても最低3人でパーティーで戦わないと怪我をすると言われている。Cランク1人でオーガと戦うならば、罠をいくつも張って弱らせてからじゃないと戦いにすらならない。
つまり、オーガを1人で倒せる者は最低でもCランク、さらに複数を倒せるならBランク相当になるという事だ。無知が故の行動で当然の様に俺もルフィスもこの異常性に気付かず、このくらいなら当然だと思って1人でオーガ達と戦い続けていた。
「よし、最初よりもオーガにも慣れてきたし、白金さんに近付ける為にも頑張りますか!」
俺とルフィスはこの階層のオーガ達を無理なく倒せる様になったのはそれから数時間後の事で、次の25階層へと降りる階段もオーガを探している最中に偶然見つけたから今日の内にそのまま下の階層へ降りる事に決めたのだった。
誤字脱字がありましたら報告お願いします!
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