第12話 そんな共通点 in 異世界
すいません、予定よりすこし遅れました!
よろしくお願いします!
「21階層の敵は…って、またオークですか…」
「他にも居るわよ?」
「え?どこに?」
白金さんが上を指す。その方向を見上げて見ると大きいコウモリが逆さまに吊るされていた。鳥型か…槍だと突きが外れたら対処が遅れるから苦手なんだよな…。
「鳥にオーク…。うーん…なんか俺にとっては鬼門の気がする」
「逆に、魔法が主役の私には相性がいいかもしれませんね?」
「二人共、レベルも上がってるし…一縷君は槍術も上がったのでしょう?なら、とりあえずはあのオークで試してくればいいわ」
そうだな。俺もレベルは上がってるし、ステータスも伸びている。物理耐性のある敵はやりづらい…槍、辛いが、倒せない程では無いだろう。
「1匹…か。でも、肌の色が少し黒いな。19階層でも見た少し強いやつか…」
「一縷さん、大丈夫ですか?」
「お兄ちゃんが、頑張って!」
「あぁ、ふぅ…よし、よし。行くぞ。…よし、うん。」
「早く行きなさい…よ!!」
「ちょ、押さな…あっ…」
『ブゥオオオオオオ!!』
あ、ヤバイ。奇襲も何もなく、普通に見付かった。敵の武器は…斧。足はそこまで速くない。よし…削る!
「はぁぁぁ!!」
『ブモォォォォ!?』
俺は正面まで走り横跳びで斧を回避する。その隙をついて足へ一突き入れて距離を取る。
「よし、動きも見えるし俺の方が速い。オークの皮膚も普通に貫けそうだな。なら、少し耐久力のあるオークと変わらないな!」
槍の突きで足元を狙ったり、フェイントを入れて他の部分を突いたり削っていく。たまにオークからの反撃もくるが真っ直ぐ振り下ろすか横に薙ぐぐらいだから対処は難しく無い。落ち着いていれば軌道は読める。
「一縷さん、押してますね!」
「そうね、何より…考えながら動けてるのが良いわね。あのレベルのオークなら問題ないという事だしね」
「す、凄い。お姉ちゃん達も有名な冒険者だったりするの?」
「違うわよ」
「私達は少し前に冒険者登録したばかりの新人冒険者ですよ。ほら、ギルドカードにもFランクって書いてあるでしょ?」
「ほ、本当だ…。Fランクって普通、こんな所まで潜れない筈なのに…」
「普通じゃないってことよ。Fランクだけど貴女の無事は約束するから安心しなさい」
「うん、それは安心してる!お姉ちゃん達強いもん!」
「あら?どうやら、一縷さんの戦闘も終わったみたいですよ」
「ふぃ~。いい感じだったよ。体も動くし…レベルの恩恵って凄いって再度思ったね」
「危なげも無かったし…次はルフィスの番ね。どうする?鳥の方が耐久力は低いけどオークより魔法を当てるのが難しいわよ?」
「なら、まずはオークを。無事に倒せる様なら…鳥型のモンスターと戦ってみますね!」
21階層を歩いてオークを探す。鳥型のモンスターは真下を通っても攻撃してこないようだ。少し距離があるか、攻撃を仕掛けて無いからかはわからないが…来ないならこちらもスルー出来るからありがたい。
「居ましたね…。ふぅ…『火の砲弾』!!」
『ブモォォォォ…オォ…』
「や、やりました!一撃でしたよ!詩葉さん、一縷さん、見てくれました!?」
「えぇ。火魔法が上がっていたと言っていたわね。中々の威力よ…って、それは今自分で確かめたわね」
「はい!えへへ…嬉しいです!」
おかしい…。今、俺の耳は確かに『火の球』と聞こえていた。俺の知ってる…というか、イメージしてたファイアーボールと違い過ぎる。大きさはまだ許容範囲だが、速さと質量?が全然違う。不意打ちで攻撃されたら距離にもよるが…対処が難しそうだ。
「どのくらいの耐久力があれば今のを防げるんだ…?白金さん、俺の知ってる『火の球』と違うんだけど」
「一縷君の知ってる『火の砲弾』が分からないけど…ルフィスは火魔法のレベルが…」
「4になりましたよ!」
「という事だから、あの威力は当然よ?うーん…まぁ、一縷君なら燃えるけど死にはしないんじゃないかしら?」
「そうなんだ…。凄いな、ルフィス…」
「ありがとうございます!この調子でどんどん行きますよ!」
白金さんどころか、ルフィスとさえも喧嘩したら死にかねない事になってきたぞ…。怒らせないように気を付ける事と…レベルを上げるしか活路が無い!
「でも、魔力を節約するとしたら…しばらくは『火弾撃』を主にして戦うしかなさそうです」
「その魔法も、威力は上がっているたろうし…十分だと思うわよ?」
「もう1度だけオークで試しておいていいですか?」
「じゃあ、探しに行こうか。俺も魔法使いたいなぁ…」
「お兄ちゃんは使えないの?」
「まぁ…ねぇ。だから、今は槍を頑張ってる所な訳だしね」
「お兄ちゃんも魔法が使えると良いね!私も小さい光を出す魔法しか使えないけど…って、お兄ちゃん…それどんな感情の顔なの?」
「ふふっ…面白い顔ね。嫉妬と羨望に抗ってる顔かしらね?」
「一縷さん…いつかは…その。ハンカチ使いますか?」
大丈夫。落ち着くんだ俺。リコルに嫉妬してもしょうがないだろ。この…何とも言えない気持ちはモンスターにぶつけてやればいい。
「さ、さぁ…行こうか…」
ルフィスがオークを先程よりは威力の低い魔法でもきっちりと倒していた。俺の魔法への嫉妬心が膨れ上がったのは言うまでも無い。
◇◇◇
「う~ん…無理!ちょ、助けて!ルフィス!助けてルフィス!」
「い、行きますよ!『火弾撃』!……大丈夫ですか?」
「あぁ、助かった。ちょっと位置取りが難しいな…」
俺達は一階層降りて22階層に来ていた。ここもオークが居るが上の階層と違い、複数だ。最低2体で行動していて、たまに3体の時もある。ルフィスは魔法で先制攻撃から気付かれた後の攻撃までしても余裕があるが…俺は近接戦闘の為、最初を失敗すると最後は助けて貰うはめになる。
「詩葉さん…アドバイスを下さいませ…」
「と、言われてもやる事自体は同じだしね…。経験を積んで、敵の動きが読める様になるとか…それこそ一縷君も言っていた位置取りくらいかしら?」
「マジですか…」
「槍一本で行くなら…一突きでどれだけの威力が出せるかよ。後は弾く叩くを上手く使う事。前に一縷君がふざけて槍を回してたりしていたけど…上手い人がやればそれも技になるわ。ま、あの時の一縷君のはおふざけだけどね!」
「やっぱり、基礎か。まぁ、何事もそうだよな。後は位置取り…っと。分かった。少し時間はかかるかもしれないけどやってみるよ」
「えぇ、修行だもの。次は助けを叫んでも助けないわよ?」
「お、おう!大丈夫…だよ?」
「詩葉さん…一縷さんは大丈夫じゃ無さそうですけど…」
「ふふっ…死ななければ大丈夫よ!次の曲がり角の先ね。しっかりよ!」
「おう!やってやるよ!」
張り切って進んだは良いが、オークが3体居た…。これは…無理だな。
「ルフィス!助けて!予定と違う!」
「一縷君は大丈夫よ、ルフィス」
「は、はい…」
「あああああああ!!」
オークの足を攻撃していく。足の速さは俺の方が速いから離れては追い付いた1体目のオークの足を攻撃する。また離れては攻撃していく。それでも耐久力のあるオークは倒れないし時間が掛かる。
「はぁ…くそ、走ってる俺の方がキツいんじゃないか?…はぁ、あぶねぇ!!」
横薙ぎの攻撃を寸の所で回避してまた下がる。1匹だ。まずは1匹を倒そう。数を減らせば多少は楽になるだろう…。
「はっ!はぁ!!」
『ブモォ!?』
なんとか届く、オークの顔に槍を叩きつけ怯んだ隙に隣をすり抜け1番ダメージを負ってるオークを狙って槍を構えて…
『ブモォォォォ…』
「……はいっ!!はぁ…はぁ…次だ!!」
同じ方法を繰り返した。怯ませ抜き去り少しずつ弱らせる。
『ブッオォォォ!!』
「ぐっ…うっ…らぁぁぁぁぁぁ!!せい!はっ!!」
斧を槍で防ぎステータスにモノを言わせ押し返した。あと…1匹!
「はぁ…はぁ…。」
『ブッオォォォ…ブモォォォ!!』
「はっ!う……せいやっ!!」
『ブォモオォォォ…ォォ…』
「はぁ…無理…疲れた…いや、しんどいって…これ…はぁ…鬼畜ツーサイドアップ…鬼畜黒髪…鬼畜美少女」
「あら?褒め言葉かしら?それとも…?」
「ひぃ!?」
「ひぃ?」
「あ、いえ…ナンデモナイデスヨ」
「まぁ、いいわ。とりあえずお疲れ様」
「いや、本当に…ちょっとヤバイですってコレは…」
「でも、倒せた。一縷君は無事。でしょ?」
「そんな首を傾げながら『でしょ?』なんて言われても…少し可愛いだけですよ」
「ダーメ…ね。少しが余計よ」
「ちぇ、ダメか。少し緩くしてもらおうと思ったのに…」
「ダメよ!私は期待する人には厳しく接するタイプなの。でも、好きな人には甘くするわ。さ、少し擦り剥いてる所を見せて」
「…ありがとう」
「リコルちゃん。あの、なんだかんだ言って甘々な詩葉さんも魅力的なんですよ」
「そうなんだ!お兄ちゃん大丈夫かな?」
「少し疲れて横になってるだけですから大丈夫ですよ。一縷さんも強いですから」
「ルフィス、交代だ。無理な。しばらくは無理な。若いけど限度ってのはあるから」
「分かりました。少し私に任せてください!階段目指して進みましょう」
ルフィスの後を何とか追っていくが…なんか楽々と倒しているな。なんだかな…いや、まぁ、ルフィスの戦い方とこの階層が合ってるだけなのは分かるけどさ…。
「ふふっ!さぁ、どんどん行きますよ!一縷さん、大丈夫ですか?」
「ルフィス…魔法が効きにくい相手が来る時を覚えておくがいい…くっはっはっはっ…はぁ…しんどい…」
「悪役は似合わないわよ」
「だな。止めさせて貰います」
順調に23階層へ降りる階段を見付けたから休憩を取ることにした。俺がこの階層に適応出来るまではもう少し付き合って貰う予定になっている。最低でも2体の時はちゃんと倒せる様にならないと怖くて降りられないからな。
「お昼にも丁度良いくらいかしら?今、準備するわ。リコル、手伝って貰えるかしら?」
「はい!お任せください」
お昼ご飯を食べながらもイメージトレーニングをする。食後の休憩をしたらまた出番だからな。
「一縷君。大丈夫よ、貴方は今成長中なの。焦る必要は無いわ…確実に一歩一歩でいいんだから」
「うん、ありがとう。槍を自分のモノにしてみせるよ…焦らずにね。うし!そろそろやりますか!槍だけに」
「ごめんなさい気分が少し…」
「寒気を通り越して!?」
それからだいぶ時間を掛けてしまった。夜くらいにはなってるかもしれないが…俺はまた少し強くなって下へと進みだした。
◇◇◇
「ぐ、くそっ…!!」
「ア、アニキ、逃げやしょう!?無理ですよ!」
「む、無謀だったんだ!俺達がこんな深くまで来るなんて!」
くそっ!ムカついた勢いでここまで来たが…。20後半の階層なら来たこともあるっつーのに!雑魚共が足手まといだ。
「黙れ!死にたく無いなら死ぬ気で敵を殺しやがれ!」
「くそ、がぁ…いてぇ!!」
「ちっ、雑魚が。おい、退くぞ!」
ここで盾代わりのコイツらを消費する必要もねーか。Cランクの俺様がこんな所で傷付く訳にもいかねーし、1度退くか。
『ブゴオォォォォォ…』
「……は?」
目の前に居た的から離れて角を曲がった時、唸り声を聞いただけで体が硬直した。
「アニキ、コイツは!?"この色"は!?」
『ボォォォォ!!!』
「ギャア!……。」
「なん…で?何故だ!コイツは!?お、おい。これは俺様でもまだ無理だ…ひ、退くぞ!」
「ア、アニキたす…がぁぁぁぁ!!………。」
「ひ、ひぃっ!く、来るな!!」
どうして?どうしてどうしてどうしてどうしてどうして?この俺様が、こんな所で。…くそ!くそっ!やってやる!!やってやるぞ!俺様もCランクだ。こ、この程度!!
『ガアアアアアアアアアアア!!』
「ひぃっ!む、無理だ。逃げ…ガハッ!!」
なんで?コイツが居るんだ…?くそっ、ツイてない。何なんだ!何で…。どうして30階層のボスであるコイツが…。"オークキング"であるこいつがこの階層に。ツイ…て…ない………。
◇◇◇
23階層にやって来た俺は絶望した。
「オーガ…だと…」
「これはほぼ決まりかしらね?恐らく次のボス部屋を越えるまでは物理攻撃に対して強いモンスターばかりね。ま、魔法攻撃は苦手だし、ルフィスにとっては良いのかもしれないけど」
20階層のボスとして出てきたから1度戦っているが、その時もルフィスの魔法を中心として倒したんだよな。
オークよりも筋肉質で槍が刺しづらく抜きにくい。その上オークより俊敏でパワーもある。つまり…
「ふっ、一縷、危うきに近寄らず…だな。」
「何言ってるの?とりあえずお手本を見せるから。オーガは確かに硬いし斬りづらいけど…早速1体居るわね。一縷君、槍を貸して貰えるかしら?」
「あ、うん。はい…」
「見てなさいよ。オーガにだってちゃんと弱点は有るわ」
白金さんがオーガに向かって走り出した。俺に見える速度って事は手抜きなんだろうな。走りながら槍を柄の方を両手で握って構え、オーガの右目に突き刺した。
『ガアアアアアアア!?』
「ふんっ!」
刺した槍をすぐ引き抜き、更に左目へと突き刺して視界を奪った。後は、顎の下から首の間の部分に槍を突き刺して貫通させた。
「ま、いくらオーガでも柔らかい部分はあるし、足の腱を切れば立てなくなる。上手くそこを突けば倒せるわ」
「白金さん…」
「ん?難しいかしら?でも、これくらいは頑張って貰わないと…」
「それ…絶対オークの時にも応用できたよねぇ!!オークの時は基礎的な事しか言ってくれなかったよねぇ!!」
今の様な説明をしてくれていればもっと楽に倒せる様になっていたかもしれないのに!
「一縷君。何故、オークの時は教えないで今回は教えたのか理由はちゃんと考えての発言かしら?」
理由…理由があるのか?オークの時とオーガでの違い。オークは…時間を掛ければ倒す事は出来る。槍も急所を狙わなくても刺さるからな。でも、オーガは硬い。急所を狙わないと時間を掛けるだけこちらがフリになる。
まさか…オークで基礎を学び、オーガでは急所を狙う訓練にするつもりだったのか?それなら俺に何も言う権利はないな。俺よりも俺の成長を考えてくれていたのか。申し訳ないな。
「ごめん、白金さん。まさかそんな理由があったなんて…。考えて無かったよ」
「?そ、そうよ。つまり、そういう事だから。自分で気付けたならそれでいいわ。私が見せた"やり方"をイメージトレーニングと反復練習で体に覚えさせなさい。"槍"だけにね!」
「あ、ホントだ。つまんない上に気分が…」
「わ、わ、落ち着いてください詩葉さん。悪いのは最初に言ったのは一縷さんで詩葉さんが考えた訳じゃないんですから!」
「く…く…。ふぅ、落ち着くのよ私。そう。一縷君が悪い。一縷君が悪いのよ」
「おし、じゃあ…今のイメージを忘れない様に俺から戦わせて貰うから。この階層は1体だけの様だし」
「ふぅ…。一縷君。私と一縷君じゃ、スピードも動きのキレも違うわ。だから私の動きを完全には真似出来ない…それは頭に入れておいて。先制攻撃が決まればとりあえず下がりなさい。最初は攻撃したら下がる。攻撃したら下がるで慣れる所からね」
「はいよ!焦らないし、油断しないし、少しずつ着実に…だね」
「えぇ、分かってるならいいわ。慣れたらその時に真正面から戦えばいいのだし」
「よし!白金さん、次のオーガは何処に!?」
「えーっと、こっちの方向だから…ここを真っ直ぐ行って左かしらね」
「了解!」
「詩葉さん…先程一縷さんは、納得されてましたけど…何でオークの時は教えなかったんですか?」
「私も気になります!」
「いや…その、ホントはオークだし見せる必要もないかなーって思っただけなんだけど…。何か勝手に理解して納得しちゃってたから…話を合わせただけよ?」
「詩葉さん…。詩葉さんも一縷さんも…何かがズレてますよね?」
「お兄ちゃんは何に納得したの?」
「ルフィス、反論出来ないからその話題は終わり。リコル、それは私が知りたいわ…」
何か3人で話してるけど少し離れたから聞き取れない…が、それよりも今はオーガだ。詩葉さんが教えてくれた、硬い筋肉を持とうが弱点を突けばいいだけ…という攻撃の仕方。
「相手の弱点を突く…突く事は槍の得意分野だな!おっ…居たな。背を向けたら…行く!!ぬわぁ!」
なんだ!?って鳥かよ!!コイツら襲ってこないんじゃ…って天井じゃなくて壁に留まってるのか!攻撃範囲内って事かよ!?
「くそ!せいっ!!…よし、上手く突き刺せれば強くはな…い…」
『グラアァァァァァァ!!!』
「くそ、アホ鳥め!…どうする!?って、意外と足速い!?」
俺はオーガの拳を横跳びで転がりながら回避して、すぐに立ち上がる。
「危ない…危ない…。まずは観察だ。回避と観察で隙や癖を見つけて…殴った地面が少し抉れてるな…パワーは凄いって事は分かったあと、案外足速くて顔が……怖いんですねぇぇぇぇ!石投げるんだ!ちょっとそれは無しだろ!危ねぇ!?」
オーガから距離を取った。仕切り直そう。やる事を整理しよう。突っ込む…正面からだと目は難しい…かな?通り抜けて足をかな?…いや、リーチを活かすべきだな。まずは片目。外しても顔にダメージ…そして退く。
「ふぅ…いける、いけるいける。よし!あああああ」
『グルァァァァ!!』
石は避けろ!速く…速く速く速く!!
「貫けぇぇぇぇ!!」
『ガァ!?ギガァァァァァァァ』
よし、離れろ、離れろ!よし、よしよし一撃は入れた。感触は硬く無かったし目元を突けただろう。
『ギャア!ギャア!ギィガァァァァァァァ』
「暴れてる。…けど、これはチャンスだな。左から攻めるか…狙うは足!」
目の痛みからか、地面を殴ったり地団駄を踏みながら暴れているオーガの隙を狙い、足の腱を突き刺す。…うし!ヒット&エスケープを徹底だ。
「よし、ラストは…いや、敵の目が死んでない…気がする。焦るな。今、俺が有利だ。確実性を追求して倒す」
俺はオーガが弱り確実に倒せる様になってから頭を潰した。なぶり殺したみたいになってしまうが、モンスターは確実に倒すまで油断は出来ない。
勝手にモンスターの住処に入っといてこんな事言うのもあれだが、出会って戦えば、生きるか死ぬかの勝負になる。逃げる事もあるが殆どは生きるか死ぬかだ。だから、戦えば生き残る為に確実に殺す手段を選ぶ…。
「あぁ、もっと上手く自分を騙せれば…楽なのに。でも、生きないと…父さん、母さんの分も俺は…生きないと…な」
「一縷君…大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫だ。どうにもまだ覚悟というか倒す度に考えてしまって」
「そう…。でも、忘れるべきではないわ。私はもう失ってしまったけど…覚悟する事は大事よ。気持ちが揺れたら隙になるわ…でも、倒す事を何とも思わなくなれば…それは覚悟を忘れたらとほぼ同義。ま、その話はまたいつかしましょう」
「そうだな」
「一縷さ~ん、詩葉さ~ん。大丈夫ですか~?」
「あぁ、とりあえずは!あと…」
「きゃあ!鳥が!助けて詩葉さん!ちょ、ちょっと!」
「鳥が居るからって言おうとしたけど…遅かったか」
「全く…ルフィス!杖で叩きなさい!」
「ひぃ~!」
ポカポカと杖で叩いているがあまり効果は無いみたいだ。
「しょうがないわね…」
シュッと消えてパッと敵を倒して見せる白金さん…。相変わらず速いな…まだ見えないや。
「ふぃ~助かりました詩葉さん。杖の調子が悪いみたいで」
「悪いのは貴女の頭よ」
「いてっ…へへ。一縷さん、交代しますか?」
「いや、今は絶好調なんだぜ。交代はまだ先かな!」
この階層は1体で行動している為、練習にはもってこいだった。ルフィスは相変わらず相性の良さでさくさくと倒しているが俺はやはり時間が掛かってしまう。それでも確実に倒していった。弱点を突く事を意識して体を動かし槍を動かした。
「この下はあれだろうな…2体くらいずつ出るんだろうな…」
「そうですね。私もオーガが2体だとけっこう危ないかも知れません…。もっと早く発動出来る様にならないとですね」
「二人共、そろそろ今日は終わりにするわよ!さっきリコルといい場所を見付けてきたから」
「はい!行き止まりがありましたよ」
「今日はおしまいか…はぁ~…きょうも疲れたぁ~」
「お疲れ様です!素材や魔石もこんなに集まりましたよ」
リコルが見せてくれたカバンの中にはコロコロと魔石があったり、角や斧の鉄の所が入っていた。この量は普通のカバンだと辛いだろうな。
「ありがとうリコル。戦闘に集中できるし、助かるよ」
「えへへ。お役に立てて何よりです!」
「リコル、悪いけど料理も手伝って貰えるかしら?」
「はい!」
「二人は休んでていいわよ。明日の為にちゃんと疲れを取りなさいね」
「「ありがとうございます~」」
行き止まりに着くと白金さんが土の壁で空間を確保する。これがあるから落ち着けるんだよな。
晩御飯を作って貰っている間はルフィスと今日の反省会だ。と、言ってもルフィスが反省する所はほとんど無いから俺の反省会だけどな。
グツグツと音がなって美味しそうな匂いが漂ってきた。
「あ~お腹が空く匂いですなぁ~」
「ですね~、お腹ペコペコです~」
「今日は……をハーブと煮込んだ料理よ」
「ん?え?何だって?」
「…肉をハーブと煮込んだのよ。ね、リコル」
「えぇ…はい。味は美味しいです…よ?」
あの、あのハキハキと返事をしていたリコルがこの反応である。肉と言ったが何の肉とは言わなかったな。恐らく、牛、豚、鳥じゃない事は確かだな。ここは知るべきか…いや、知らない方が幸せかもしれない…な。
「どうぞ」
「ん~、美味しそうですぅ。頂きまーす!」
どうだ?咀嚼しているが…どうだ?
「ん?どうしたんですか一縷さん?美味しいですよ?」
「よし、頂きます!……んまーい!」
「よし、私達も食べましょうかリコル」
「はい!…美味しかったですね!」
「そうね!案外いけるものね」
作った本人達がこの反応だからなぁ…うん。聞くのは止めておこう。美味しいからいいじゃないか。うん、そうだな。
それから前と同じく仕切りを作って貰い、体を拭く。本当は風呂に入りたいが…無いものはしょうがないから慣れるしかないな。
「うーん。テントだとギリギリかしらね?」
「どうしたの?」
「リコルは小さいし、私もルフィスもそこまで背は高くないからテントには入るけど…意外とギュウギュウなのよね」
「わ、私はテントに入れて頂かなくていいですよ!お姉ちゃんのお陰でここは安全ですからね。大丈夫ですよ!」
「リコル、寝袋使っていいぞ。俺はどこでも寝れるしな」
「そ、そんな…悪いですよ!お兄ちゃんは疲れてるんですから、ちゃんと寝てください!」
「うーん…これは押し問答の予感…。寝袋…リコルと二人組なら入れるか?」
「「「!?」」」
「一縷君?それはどういう事かしら?つまり、リコルと二人で寝袋に入ると言うのかしら?いや、確かに年齢差を考えれば問題らしい問題も起こる筈は無いと思うし。思うけどそれとこれとは別問題よ?私がいくら闇の申し子だとしてもそんな混沌は認めないわ?認めないのよ?そんなにリコルと添い寝がしたいと言うの?不潔よ、破廉恥よ、不純異性交遊よ!」
「一縷さんは…年下の子が?はっ!そういえば私も年齢的には1つ下…。あれ?もしかして私も守備範囲?あれ?でも一縷さんは詩葉さんと仲が良くて…あれれ?でも、一縷さんは年下が好き?あぅ~…」
「お兄ちゃんと一緒なら安心です!えへへ。」
「お…。見たか?聞いたか?リコルの純粋さを。くっ、成長をしたら心の純粋さが失われる…。なんだかなぁ…」
「ちょっと!一縷君、どういう事かしら?」
「自分の心に聞いてくだせい…。リコル、もう寝ようか。明日も頑張るぞ~」
「「おー!」」
「え…ちょっと一縷君?ダメよ!手出しちゃダメよ!そこは信じてるわよ。時と場所と…人は選びなさいよ!」
「やっぱり一縷さんは年下の…甘えたりする子の方がいいのでしょうか?それともしっかり系?元気系かもしれませんね。いったい…あいたっ!」
「いつまで変な事言ってるの?もう寝るわよ」
「え?あれ?たしか…一縷さんが私と添い寝するって話が…」
「私も人の事を言えないけど貴女も大概ね…。あと、一縷君は年下好きじゃないわ。一縷君は年下を見ると全て妹にしか思えないのよ。だからリコル"も"妹扱いねあれは。うん。それなら納得だわ。うーん、これでようやく府に落ちてスッキリして寝られるわ」
「まぁ、年下と言っても流石にリコルちゃん"は"妹の様にしか思えないでしょうね。年齢差がありますから。私もなんか眠くなってきましたね、じゃあテントに行きますか」
「そうね。ルフィスとは少し話さないといけないみたいね。ふふふ」
「あら?何ですかね?って、そこまで怖い顔しないでください!おふざけですから。ホントです!冗談ですよ…にぎゃあああ!?」
「アイツ等…まぁいいか。リコル狭くないか?」
「はい!温かいです。本当の家族がいるならこんな…温もりが…ある…ん…ですか…ね…すー。すー。」
リコルは孤児だったな。両親の温もりを知らないのだろうかな?まぁ、俺も今は薄れてしまっているけど…な。
白金さんも両親を亡くし、ルフィスも…だ。俺達に変な共通点があったな。なら…せめて俺達くらいは、本当に家族の様な温かみのある関係が築けたらいいな。
そんな事を考えてたら、いつの間にか俺も眠りに落ちていた。
誤字脱字がありましたら報告お願いします!
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