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第11話 色んな奴が居るよね in 異世界

お待たせしました!よろしくお願いします!

 

 朝、俺が泊まってる部屋を誰かがノックする音で目が覚めた。白金さんかと思ったが、どうやら宿の従業員さんらしい。


「お客様、お客様にお客様がお見えになってますよ?ん?お客様がお客様だからお客様がお見えになってる?ん?とりあえず、お客様がお見えになってますよ?」


 混乱しないでくれ…こっちまで混乱してくる。とりあえず、少し待ってて貰うように伝えてくれと伝えて…俺も顔を洗ったりと準備をしてから部屋を出で1階へと降りた。


「イチル!」


「こんにちは、朝からすいませんね。この子が早くとせがむものですから…」


「そ、そんな事言ってないもん!」


 俺のお客さんはどうやらサーナちゃんとそのお母さんだったようだ。そういえばダンジョンに潜る前にお礼に来るって話をしてたな…。


「おはようございます。おはようサーナ」


「イチル、今日は遊べるの?」


 白金さんからは今日は休みにしていいと言われてるから大丈夫だけど…一言くらい声は掛けておいた方がいいかな。


「大丈夫だと思うけど、ちょっと仲間に一言伝えて来るね?ちょっと待ってて」


「はーい」


 俺は2階の白金さんとルフィスの泊まってる部屋に行き、扉をノックした。


「白金さん、俺だけど」


「俺? 知らない人ですね……。ルフィス、宿ではたまにこういう事もあるから気を付けるのよ? 慣れてる人だと私達の友好関係を調べてから襲って来る強盗もいるんだから」


「は、はい。怖いですね……まさか、今扉の前に居るのも……」


「可能性は否定出来ないわね……」


「いや、俺だから! 一縷! 霧島一縷!」


「あ、一縷さんみたいですよ! すぐ開け……」


「待ちなさいルフィス。今、友好関係を調べてくると言ったばかりでしょ。名前を出せば油断するからね……現に貴女も開けようとしたでしょ?」


「ほ、本当です! ……名前も分かってて声も同じだからてっきり、本物の一縷さんかと!」


 いや、そこまで疑われるとちょっと困るんだけど…。下で待たせているし早くして欲しい。白金さんは絶対分かってる筈なんだけど…。


「白金さん、教材にするのはいいけど……とりあえず用件だけ。サーナちゃんとサーナちゃんのお母さんが会いに来たけどどうする? 二人は買い物に行く予定でしょ? 俺は遊びに行くつもりだけど」


「あぁ、たしか一縷君が助けた子供よね。お礼に来るって言ってたわね。そう……ね、お礼なら一縷君が貰っておくべきだわ。私達は予定通りに買い物に行くから行ってきて構わないわよ」


「分かった、じゃあ行ってくるな」


「ちょっと待ちなさい」


 白金さんが扉を開けて出てきた。うん。今後は最初からそうして貰いたいね。


「どうしたの?」


「ダンジョンで手に入れた素材の換金にも行って来るから、先に一縷君にはお金を渡しておくわ。お礼をしに来て貰ってるとはいえ必要でしょ?」


 確かに、もしかしたら何かをご馳走してくれたりするのかもしれないが…流石に全部出して貰うのは気が引ける。お金があればちょっとした飲み物代とかは俺が出せるから手持ちのお金が増えるのは助かるな。


「ありがとう。流石だね、白金さん」


「ま、まぁ……ね。これくらいは当然よ。一縷君に外で恥をかいてもらっても困るからよ。」


「じゃあ、行って来る」


「行ってらっしゃい。気を付けるのよ」


「何だか……お二人、新婚さんみたいですね?」


「「なっ!?」」


「ル、ルフィス!?いったい何を言っているのかしら?この私よ?闇を従えし者であるこの私が……し、新婚さんみたいなそんな甘ったるい空気を出している訳無いでしょ? あぁ、ルフィス……貴女は寝起きで少しボーッとしているのね?そうじゃなきゃ、いくらルフィスとはいえ、そんな事を言う筈が無いですもの。さぁ、早く顔を洗ってきなさい。そしたら貴女の武器を調達しにいくのだから。でもまぁ、確かに……私は良妻賢母になるかもしれないわね。一縷君、それだけは覚えておいて」


「白金さん、テンパると闇とか痛い事を言い出すよね……。後は早口でよく聞き取れなかったけど」


「い、一縷君! 早く行きなさいよ、待たせているのでしょ!?」


「わ、分かってるよ。行ってくるな」


「詩葉さん、私はちゃんと起きてますよ?詩葉さんでも照れたりするんですね……へへ。少し面白かったです~」


「良い度胸じゃない…ルフィス。覚えておくことね…」


「い、いやですね…冗談ですよ、冗談…」


「ふふっ…既に手遅れよ。私の記憶に刻まれてしまったのだから」


 そんな会話が後ろから聞こえてきた。ルフィス、白金さんをからかうとは…骨は拾ってやるよ。とりあえず、早く戻らないとな。



「すいません、お待たせしました。一言伝えて来たんで大丈夫です」


「イチル、何して遊ぶ?」


「うーん…俺もこの街に来たばっかりだから何があるのかわかんないんだよね。サーナは何かしたいことある?」


「うんとね、うーん…」


「それなら街を歩いて見ませんか?何かやっているかも知れませんし」


「そうですね。商業の国ですし、色々あるかもしれないですね。あ、自己紹介はまだでしたね。霧島一縷っていいます。歳は15で…一応冒険者です」


「サーナの母でライチといいます。歳は…一縷さんの10歳も上ですね…」


 25歳で5歳の子供がいる…これが普通なのかな?結婚とか早いのかね?というか、年齢に対しての返答って困るな…相手が歳上だとなおさら。


「あ、そうなんですね…。素敵な旦那さんなんでしょうねきっと!」


「えぇ、素敵な旦那"でした"」


 おぉう…地雷を回避したつもりが別の地雷を踏み抜いてしまった…。


「あ、えっと…その…すいません…」


 ライチさんがサーナの耳に手を当てて塞いだ。まだ教えたくない事だったのかもしれない。


「いえ、良いんですよ。あの人、冒険者をしていた頃は真面目に稼いで来てくれていたんですが…。自分の限界を感じたのか、日に日に(すさ)んでいってしまいまして…ついには他に女の人を作って出ていってしまったんです…」


 冒険者…だったのか。この世界って婚姻届けとか、それを受理する施設とかあるのかな?教会は見かけたからそこでするのかな?


「では、今はお一人でサーナちゃんを?」


「えぇ、色々と仕事をしながら…。この子にはお父さんは居なくなったとだけ伝えてあります。寂しいでしょうが…仕方ありませんからね」


 そうか…。色々あるもんだな。冒険者は収入も不安定だし危険も多い。俺は運良く? 強力なスキルを持っているし、白金さんという先生もいるから何とか生きているが…冒険者は常に死と隣り合わせだ。自分の限界を感じたらほとんどの人間は先に進めなくなってしまう。俺は成り立てのペーペーだが、同業者として同情は…出来ないな。


「今日は…楽しみましょう!サーナちゃんの為にも」


「お母さん、聞こえないよぉ~」


「ごめん、ごめん。サーナ、今日は一縷さんと遊びましょう」


「うん!早く行こう!…イチル、えすこーと?して!」


「はいよ。では、お嬢様。お手を」


「へへー。見てお母さん!お嬢様だって!」


「良かったわね」


「お姉さまもお手を」


「まぁ!私もよろしいの?な~んて、おばさんをからかっちゃダメよ?さ、行きましょう」


 俺はサーナちゃんと手を繋いでライチさんと共に街の中心部へ向けて歩きだした。



 ◇◇◇


「今日も今日とて人が多いねぇ~」


「うん!お店も沢山だね!」


 人も多いし店も多い。買ってる人売ってる人見回ってるだけの人、様々だ。


「何か見付けたら教えてね?というか見える?」


「う~ん…見えない!」


「じゃあ、肩車する?おんぶする?」


「おんぶ!」


「あら、ごめんなさいね一縷さん。良かったわね、サーナ」


「よっこらせ!じゃあ、もっと進もうか」


「イチル!あれなに?イチル、こっちのは!?」


「あれは…輪投げかな?こっちのは…何て食べ物だろ?ライチさん、分かりますか?」


「これはチャヤップっていう食べ物ですよ。鳥の肉をパンで挟んで甘辛いタレをかけたやつで美味しいですよ」


 説明を聞くだけで分かる。絶対美味い。甘辛いタレを肉にかけるだけで既に美味い。後で食べようかな。


「おい!広場で腕相撲大会が始まるってよ!ジャン、お前は参加しないのか?受付始まってるぜ」


「もちろん出るぜ!今年こそ優勝してやる!」


「はえ~腕相撲大会か。さっきの男も筋肉が凄かったな」


「私の腕より太かったの!」


「それはそうよ。一縷さんは出場されませんの?」


「いや、いやいや!あの男の筋肉と俺の腕を見比べてくださいよ!」


「えー!イチル出なさいよ~」


「サーナ、さっきの男の人に俺が勝てると思う?」


「うぬぬ…」


「一縷さん、勝てば何か賞品があるかもしれませんし…とりあえず見にだけでも行ってみませんか?」


「そうですね。賞品かぁ…。せっかくですしチャヤップでも買って行きませんか?」


「イチルー出なさいよー」


 ペチペチと頭を叩いてくる。賞品次第かな。うん、賞金だったらありがたい。チャヤップを3つ買って広場の方へ歩きだした。チャヤップ代はライチさんが出してくれた。



「出場する方は受付を済ませて番号札を受け取って下さい!あと10分で締め切りまーす!今月も賞品は豪華ですよ!奮ってご参加下さい!」


「うっわ~…力自慢が集まったって感じだな。体格のいい男ばっかりだな…」


「えっと…一縷さん、あの看板に色々書いてありますよ。この大会は2ヶ月に1回は行われているようですね。参加自体は無料らしいです!」


「イチル!頑張って!」


「ちょっと待って、賞品は…賞品…お、おお!予選を突破したらその時点で大銀貨1枚か。しかも勝ち上がれば賞金も貰えるって!ちょっと参加してくる!サーナ、ちょっと降りてくれ」


「うん!」


 せめて予選は突破したい。俺はお小遣い制だけどこういう時に稼いだお金は懐にしまっても大丈夫だと思う。思いたい。



「すいません、参加したいのですが」


「はいよ。じゃあ、50番の札ね。お兄さん大丈夫かい?結構な強者が参加しているけどさ」


「まぁ、正直に言うと…予選を突破出来たらラッキーって感じですかね。有名な選手とか居ますか?」


「あぁ、ほらあっち、あの肌が焼けて黒い男。あいつは2ヶ月前の優勝者だ。あっちの金髪は有名なパーティーの奴だし。お!あいつは最近成長してると言われているパーティー『赤の三ツ星』の1人だぞ」


 赤の三ツ星…だと?最近聞いた。というか、昨日リコルを拾った時に聞いた名だ。


「ふぅん?中々に強そうな奴等が集まって来たじゃねーか。俺様の腕試しには丁度いいな」


 あいつ…か。青い髪に厳つい顔つきで歳はまだ若そうだ。今はCランクらしいがこれから伸びるだろう有望株…。ここに参加してる他の奴等に比べても遜色ないくらいには力がありそうだ。オークにも力で負けそうに無いのに何故に逃亡するはめになったんだ…?他のパーティーメンバーが弱いとか?


「おっちゃん、あいつの名前は知ってるか?」


「あいつはラーグ。赤の三ツ星のパーティーリーダーらしい。経験さえ積めば、すぐに上に行けるだろうって話題もあったな」


 ラーグ…。上に行けるだと?あんな無責任な奴に上のランクに行って貰っても困るのはギルド側だぞ。


「んー、坊主で参加者も最後みたいだし…少し早いけどここで止めて、予選の割り振りに入るかな。じゃ、お兄さん頑張んな」


「あ、はい!」


 おっちゃんが何処かへと走って行ったから、俺もサーナとライチさんの所に戻って来た。しばらくすると、前の方にある大きめのボードに5人組が10個の予選に別けられた表が張り出された。


「注目!今からルール説明をさせて頂きます。この広場に十ヶ所のテーブルを用意しました。選手の皆様は自分の番号札が書かれているテーブルへ集まり、勝負を始めてください。予選は総当たりで1番勝った者1人が予選を通過です。勝敗がつくまで腕相撲の勝負を行ってください。とりあえず1人が勝ち上がればそれでいいです。予選を通過いたしましたら、そこからは10人での勝ち上がり戦です。質問はありますか?……無いようですので早速開始です!!」


「イチル、イチルはどのテーブル?」


「えっと、50番だから…左の方だな」


 珍しく運が良い事におっちゃんに聞いた優勝候補とは別になれた。俺もレベルは上がってるし、神ソフィアからの恩恵で他より肉体的にも強くなってるみたいだけど…あの腕を見るとどうしても萎縮してしまう。でも、予選くらいは頑張りたい。


 俺が自分が戦うテーブルへ向かうと既に他の4人は集まっていた。短髪で顔に傷のある男。太っている男。スキンヘッドで顔に傷のある男。ローブ姿の者。二人の男は怖いし、1人はチャヤップを貪り食ってるし…。


「何だ、ひょろひょろな子供じゃねーか!ははっ、こりゃ1勝…ローブの奴も含めて2勝は確実だなぁ!」


「ふひっ、女の子が出てないのは残念だけど…賞金は貰って帰るか…ふひひ」


「せいぜい腕を折られない程度には頑丈である事を願うぼ…責任は己で取ってくれ」


 えぇ…なんか予選を突破出来たとしても賞金が大銀貨1枚だと割に合わない気がするなぁ。怖い。3人共怖かった。


「あ、えっと…ローブの…。頑張りましょうね、お互い」


「……」


 あ、うん。もういいよ…何だよこのグループ別け。


「じゃあ、まずは俺からだ。とりあえずお前らに敗けを認めさせれば良いわけだな?ひょろひょろの坊主は戦わなくてもいいぜ?敗けを認めてくれればなぁ!」


 短髪の男が挑発をしてくる。その挑発に乗ってやろうじゃ…


 俺が対戦相手になろうとした時にローブの人がテーブルについてしまった。…空気の読めない奴だな。


「ほぅ、そっちが来るか。まぁ、いいぜ?始めようか。おい、太ってるの合図を出せ」


「さ、指図するんじゃ無い…が、まぁいい。ふひ。は、始め!」


「うぉらぁぁぁ……がぁ!?」


 おぉぉぉぉ!俺だけじゃない。周りの参加はしてない観戦してる人達も声を上げた。まさか、こうも一瞬で決着が付くとは思ってもいなかった。しかも、ローブの勝利で。


「て、てめぇ!どういう手品だ!?スキルか?」


 そういえばスキルで腕力増し増しってありなのかな?まぁ、そんなスキルは持ってないけど。その人の力の一種だから有り…なのかな?


「……」


「無視してんじゃねぇ!」


「お、落ち着け…よ!ふひ。敗者は、交代…だ」


「んだと、くそデブ!!」


 そのまま続けてローブは戦うみたいだ。うわぁ、あの太ってる人の顔を近くで見るのってキツいな…。このままあのローブが倒してくれないかなぁ。


「だ、誰か…合図…しろ」


「…始め!」


「ぬおぉおおお……ぶひぃ!?」


 太ってる男の腕が勢いよく倒された結果、太ってる男はその体を転がしながら近くに居た観客の方まで行ってしまい…先程とは別の意味で声が上がった。サーナ達の居る方じゃなくて、それだけは良かった。


「ふん、ただの偶然で勝ってる訳では無さそうだな。スキルでも何でも構わないが…俺に勝てると思うなよ。ひょろひょろの坊主、お前が合図を出せ」


「あ、はい。分かりました。…では、始め!」


「ふん…うぎゃあああああ」


 スキンヘッドが1番情けない声を出していたな。…後は俺だけか。もう、こいつの勝ちでいいんじゃないだろうか…。赤の三ツ星のメンバーを見れただけでここに来た価値は出た訳だし。


「イチル、頑張れー」


「イチルさん、無理はしないようにしてください」


 戦わない選択は無いか。俺はテーブルに向かいローブと対面する。その時始めてローブが声を発した。


「お前には応援が来ているのだな?家族か?」


「いや…先日、迷子になっているのを助けた子供とその母親だ。今日はお礼に来てくれて、街を歩いてここに辿り着いたって感じかな」


「そうか。悪いがこちらも金を集めててな」


「なら、普通に冒険者で稼げばいいだろ?強そうなんだし…」


「冒険者はやっている。が、1人では限界がある。だからこういう賞金が出るのは参加してる」


 声を低く出してる女か、少し声が高い男か分からんぞ…。でも、お金が必要なのかな?なら、別に負けてもいいんだけど。


「そっか。なら…」


「勝負で手を抜くなよ。舐められるのは嫌いだ」


「…すまん。じゃあ、始めようか」


 俺とローブはお互いの手を握る。細い。ひょろひょろの俺の手より少し細い。ルフィスとかに近い感じだ。


 俺とローブは合図なんて無しでいきなり勝負を開始した。


「うっおおおおおおおお」


「くっ…む…」


 観客から俺が耐えれている事への驚きの声が聞こえる。サーナからは凄い凄いと聞こえてくる。…というかお互いに動いてない。単純な力で俺と同じって事はこいつは結構レベルも高いんじゃないか?


「う…動かねぇ…」


「何だ、お前は!ぐぅぅ…」


 持久戦に入った。先にバテたら負け、先に気を緩めたら負け。つまり…先に勝負を仕掛けて押し切ったら…勝つ!



「イチル~、勝ちなさいよ~」



「うっ…おおおおおおおおおお!」


「なっ!?…くっ…くぅぅぅ…うっ…」


「はぁ…はぁ…はぁ…手は…抜かなかったぜ」


「あぁ、まさか負けるとは思ってなかった…。お前、名前は?」


「一縷だ。お前は?」


「んん、サリファよ。サリーでいいわ。」


 やっぱり女の子だったか。名前を告げるとまた中性的な声に戻した。何か変えないといけない理由でもあるんだろうか?


「じゃ、サリー、予選突破おめでとう。頑張れよ」


「は?え?どういう事だ?勝者はお前だろ?」


「お前こそ何言ってるんだよ。説明聞いてたのか?1番勝った者が予選を突破だ。俺は1勝、お前は3勝。な?」


「いや、でも…。」


「それに、俺はこれからサーナとライチさんと色々巡りたいからな。後は任せたぞ」


 俺はサリーに背を向けて、サーナとライチさんが居る所に戻って来た。


「イチル、凄い!勝った!」


「ありがとう。さ、次はどこに行きたい?」


「イチルさん?予選突破は…?」


「あぁ、それはもういいですよ。3人で街を巡った方が賞金より価値がありますからね。」


「そういう事なら…。では、そろそろお昼にしませんか?」


「そうですね」


「イチル、おんぶ!おんぶ!」


「はいよ~落ちるなよ~」


 お昼を食べて、街を見て回って、サーナにプレゼントを買ったりして暗くなるまで楽しんだ。


「今日はありがとうございました」


「いえ、こちらこそ。サーナ…寝ちゃいましたけど、とても喜んでいて…本当にありがとうございました」


「僕も楽しかったんで。良い気分転換になりました」


「冒険者ですものね…頑張ってください。ですが…死なないようにお願いしますね。この子も哀しむので」


「えぇ、死にはしませんよ。何がなんでもです!」


「ふふっ。では、私達はこれで…。街を出る時はそっとお願いしますね。この子は哀しむでしょうが…」


「…分かりました。では、さようなら」


「えぇ。また会えましたらその時はお願いしますね」


 俺は二人と別れて宿へと戻って来た。今日1日歩き回って少し疲れたけど、精神的にはだいぶリフレッシュ出来た。明日からもまた頑張れそう。頑張らないとな。



 ◇◇◇


 俺達は今日からまたダンジョンに潜る。今回は2日じゃ物足りないという白金さんの意見によって、食料を多目に買い込んで居れるだけ居る予定になった。


「お、ルフィスその杖…」


「はい!昨日買っていただいた物です!これで、敵が近付いて来ても叩けますよ!」


 そう言ってルフィスはポカポカと叩く真似をするがまだ叩き方が可愛い。これが白金さんになると、可愛く無くなる…むしろ恐怖を感じるレベルだ。


「一縷くん、昨日は何をしていたのかしら?ほら、一応だけど…変な事に巻き込まれて無いか調べる必要があるじゃない?」


「昨日は…主な事といえば、腕相撲大会に出たくらいかな?」


「腕相撲大会…ですか?一縷さんが出場?」


「ルフィスの言いたい事も分かるよ?俺だって、周りが鍛えてる人達ばかりで怖かったもん。…あ、そこで見たぞ。赤の三ツ星ってパーティーのリーダー」


「私達も昨日、ギルドで見たわよ?そのパーティーの話を聞くと、リーダーの男がそこそこで後の二人はレベルが下がるって話だわ」


「リーダーはラーグとか言って、青い髪に力もありそうで、確かに強そうな感じだった。…ほら、丁度あんな感じ…の…ていうかあれじゃね?」



「おい…おいおいおい!お前、生きてたのかよ!俺らのパーティーの斥候は死んじまったっていうのによぉ!どうやって生き延びた!?」


「いえ、その…冒険者の人に助けて貰って…」


 リコルだ。変な奴には捕まるなって言っのに…ま、あいつらから絡まれたらしょうがないか…。


「ったくよ!昨日の腕相撲大会じゃ、変なローブの奴に負けるしよぉ…あー、イライラすんなぁ…」


「あ、兄貴、昨日のローブは絶対にスキルの力だけですぜ。戦ったら兄貴の圧勝に決まってますぜ」


「そうだよなぁ?…お前、今から俺らの荷物持ちやれよ。今度は置いてったりしねーからよ。がはははは」


「む、無理…です。それにこの前の時のお金だってまだ…」


「あぁん?この俺に何か文句でもあんのかよ?」



「あるわ。その子から離れて貰えるかしら?」



「んだ?誰だてめぇは?」


「誰でもいいでしょ?今日、この子を雇ったのは私達よ。引いて貰えるかしら?」


 おかしい…。ちょっと前まで隣に居たはずなのにもうあんな所に…。


「へぇ、可愛い女じゃねーか。お前なら、いくら弱くても俺のパーティーに入れてやってもいいぜ?」


「お断りよ。私には既に自分のパーティーがあるもの」


「お姉ちゃん…、あ、お兄ちゃんも!」


「おー、リコル。今日は俺等がちゃんと守ってあげるからな~。無理して下の階に降りて危険な目に合うなんて情けない事は無いから安心しろな」


「うん!」


「あんだと…てめぇ…。まさか、こいつを助けたって冒険者は…」


「私達よ。とりあえずこの子は私達が雇ったから引きなさい」


「ちっ、クソが!この俺をイラつかせた事を覚えておけ!行くぞお前ら」


「「は、はい」」

 

 ラーグは悪態を吐きながらダンジョンへ入っていった。


「リコル。荷物持ち頼めるかしら?」


「は、はい!喜んで」


「白金さん、大丈夫なの?あいつら絶対根に持ってるって。リコルかルフィス辺りが狙われるぞ?」


「何で私が狙われる内に入ってないのかしら?」


「し、白金さんなら撃退も容易だから外しただけ!他意は…無い…です」


「でも、そうね…。ルフィスが連れ去られ、一縷君が腹いせにボコボコにされ、私が駆けつけた時には二人共…。特にルフィスなんかは…」


「な、何ですか!やめてくださいよ、怖いじゃないですか!」


「早くダンジョンを攻略して街を出ましょうか…?いや、でも最初の内に鍛えておきたいし…。そもそも、私達が出ていく必要もないわね。…でも、リコルだって街にいたら危ない訳だし」


「白金さん、物騒な事考えてない?」


「まぁ…ダンジョンなら証拠も残らないかなって考えているわ」


「詩葉さん…私は賛成ですよ!」


「手を出してきたら…な?こっちから仕掛けるのはダメだぞ。用心はしておくけど」



「いや、私が言うのもあれだけど…1人くらい止めるモノじゃ無いかしら?」


「そうか?身に危険が迫ろうとしているなら用心しておいて、来たら返り討ちが普通だろ?今回は予想出来るからまだマシだけど、愉快犯みたいな奴に突発的に襲われるのが1番怖い」


「私達のパーティーって…いや、下手に甘い考えよりはマシね」


「白金さんのお陰だよ…っと。リコル、雇われるのうちのパーティーで大丈夫?」


「はい、頑張るので雇ってください」


「今回は長い時間潜る事になるけど大丈夫かしら?」


「はい。自分の分の食べ物は一応ありますんで…」


 そう言ってリコルは、背負っているカバンから硬そうなパンを取り出して見せてきた。あれだけじゃ成長期には足りないだろう。


「白金さん、俺の分の…」


「大丈夫よ。心配しなくても少し多目に買ってあるから」


「良かった。じゃあ行こうか。リコル、荷物お願いね。白金さんの傍から離れちゃダメだからね」


「はい!お任せください!」


 俺達はダンジョンに入り最初は、ゴブリンや狼モンスターでルフィスが使う杖の叩き方や振り方の練習ていた。慣れたら下へ下へと降りていった。ゴブリンの頭を叩いたり殴り飛ばしたりして、及第点を白金さんに貰ってからは、魔法に切り替えて一気に20階層の前に白金さんがサクッと倒したボス部屋までやってきた。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん達凄い!もうここまで来ちゃった!」


「まぁ、途中は飛ばしてきたからね」


「さ、次の敵はこの前見たでしょ。オーガとその周辺にゴブリンや狼達よ。どう戦う?」


「前回の白金さんはサクッと倒したから参考にならないんだよなぁ。ルフィスはどう思う?」


「そうですね…。オーガは硬そうな体をですし…私が魔法で牽制しますから一縷さんがその間に周辺の敵を倒す…ってのはどうでしょうか?」


 白金さんは剣で普通に斬っていたが、筋肉質だったから突くのはいいけど抜けなそうだな…ルフィスの案が良いかもしれないのかな?


「分かった、その案で行こう!」


「一縷さん、牽制するなんて言いましたけど…早く倒して、こちらに加勢して下さいよ?私が耐えきれないかもしれないんですから!」


「分かった。白金さん…魔法は…?」


「勿論ダメよ。これはトレーニングですもの。それ以外だったら躊躇わずに使っていいのよ」


 それ以外ねぇ…。青髪のラーグの顔がチラつくけど頭を振って、思考から追いやった。


「了解です。リコルは白金さんの近くね。ルフィスはオーガの顔とか足とか狙って。俺は急いで周りの敵を倒していく。みんな準備はいい?」


「うん!」


「はい、大丈夫です!」


「みんな、頑張るのよ?」


「お姉ちゃんは戦わないの?」


「私は強いからいいのよ。今はこの二人の修行だから」


 俺達はボス部屋の扉を押して中に入っていった。



 ◇◇◇



「頑張ったわね二人共。お疲れ様」


「お兄ちゃんもお姉ちゃんもカッコ良かった!」


「へへ…もう無理…疲れた…」


「私もです…。イテテ…擦りむいちゃいました…流石に無傷とはいきませんね」


 俺達は何とかオーガを倒せた。作戦通りに俺が周囲の敵をなるべく速く倒して、その間にルフィスは魔法でオーガを引き付けてくれた。俺は周りを倒し終わった後にオーガの足を狙って攻撃して止めはルフィスの魔法で決めた。オーガからの攻撃を回避する際に飛んできた石や地面で擦って少し怪我をしたが…大怪我は無かったし良い方じゃないかと思う。


「オーガの角のドロップ品が出ているわね。後は…ゴブリンとかの弱いモンスターの魔石と、それよりはだいぶマシなオーガの魔石くらいかしら」


「とりあえず下に降りるわよ。そしたらどこかで場所を確保して休憩しましょ」


「魔石は私が拾っておきますね!」


 リコルに魔石を集めて貰っている間に傷薬と包帯で軽い処置をして貰う。


「一縷君もルフィスも前回と今回でレベルも結構上がったんじゃないかしら?と、言ってもレベルは上がりにくくなる頃だと思うけど」


「そうだな。確認しておくか」


「私もそうします」


「「ステータス」」



 ━━━━━━━━━

 イチル キリシマ Lv30


 HP 1100/1170

 MP 8800/8800


 STR 105

 VIT 92

 DEX 97

 AGI 110

 INT 73

 LUK 59


 スキル

 魔力制御 Lv1

 槍術 Lv3


 ユニークスキル

『消滅魔法』


 称号

『消滅の勇者』

『救う者』

『幼女キラー』

 ━━━━━━━━━


 お、順調にレベルは上がってるな。上限ってあるんだろうか?槍のレベルも上がってる!なんか、努力が認められてるみたいで嬉しくなってくるな。


 HPもこの擦り傷で70も減ってる事を考えると、疲れた時とかにうっかり攻撃が当たってしまうのが怖いな。疲れとHPは関係無いけど疲れたら回避も疎かになってHPが減る確率も増えるし、体力作りもしないとな。


 魔法…と言っても消滅魔法しかないが、今は使ってないから魔力制御は上がってないわな。でも、MPが増えるのは安心出来るな。




 ━━━━━━━━━

 シルフィス ソフュール Lv26


 HP 580/630

 MP 200/1300


 STR 63

 VIT 69

 DEX 70

 AGI 71

 INT 62

 LUK 70


 スキル

 魔力制御 Lv4

 火魔法 Lv4

 光魔法 Lv3

 水魔法 Lv2

 杖術 Lv1

 ユニークスキル



 称号

『孤独な王女』

 ━━━━━━━━━━



「やりました!火魔法のレベルが上がってますよ!これで更に威力は上がります!あと、杖術スキルも取得出来てます」


「俺も槍術が1つ上がってたよ」


「二人共は順調に成長出来ているわね。その調子でガンガン行くわよ」


「「はい!」」


 俺達は魔石を拾ってくれたリコルと、共に下の階に降りて休憩を取った。俺達が休憩している間に白金さんが下調べをしてくれた結果、この階層からは物理に強い敵が出てくる事が予想されるみたいだ。俺よりルフィスが活躍しそうだな。


「もう少ししたら行きましょうか」


「ルフィス、魔力回復薬は?」


「飲みましたから大丈夫ですよ!」


「リコルも荷物よろしくね」


「任せてください!スキルのお陰でまだまだ持てますよ!」


 それから少しして、俺達は21階層から修行と探索を開始した。



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(´ω`)

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