第10話 ダンジョンで拾ったよ in 異世界
ま、間に合った!
よろしくお願いします!
「お、行き止まりだ。白金さん、ここでいいんじゃないか?」
「そうね。じゃあここくらいでいいかしらね…土壁」
白金さんが通路の方に壁を作り、敵に見つからない様にした。これで安心して寝られるな。ちゃんと空気を確保するために上の方に隙間は作ってある。
「じゃあ、俺はテントを組み立てますね」
「よろしく、私とルフィスでご飯を作っておくわ。ルフィス、薪を出してそれに火を着けて」
「分かりました!」
各自、準備に取りかかる。俺は二人用のテントを組み立てていく。組み立てると言っても、地面に布を敷き、テントの型をしている鉄の部分を広げて布を被せて杭を地面に刺すくらいだ。風があるわけでもないし、そこまで頑丈に地面に縫い付ける必要もないから簡単だった。
「よし、後は俺の寝袋を隣に準備して……はい、完了!こっちは出来たぞ~」
「こっちはもうすぐ出来ますので座って待っててください!」
本当だ。なんだか良い香りが……。
「はいよ。あー……何か良い臭いがする。これモンスター来ちゃうんじゃないの?」
「来たとしても、この階層のモンスターはこの壁を壊せるレベルじゃないわよ。抜かりは無いわ」
それは良かった。香りに誘われたモンスターと一戦は勘弁したい所である。
「流石だね。宿より安全じゃない?」
「確かに!一縷さんの言った通りですよ、きっと」
「ここら辺のモンスターは壁を這ったりし無いからよ。モンスターによってはあの隙間から入ってくるわ」
隙間なんて天井との間に少しあるだけだ。
「うぇ……それって絶対足が沢山あるとかウネウネ動く系でしょ……」
「わ、私……虫は少し……」
「慣れよ。私も最初は苦手だったけど…慣れたわ。何百回って倒すと慣れるものよ」
「へ……それってもしや?」
「ルフィスにも何百回と倒して貰うからね!」
「一縷さ~ん、詩葉さんが良い笑顔で恐ろしい事言ってますよ~」
「大丈夫だルフィス、俺も苦手だから。辛い事は二人で半分って言うだろ?つまり、多少は楽になる筈だ」
「一縷君、それは精神的な話よ。一縷君も苦手なら何百回の更に倍よ?楽しい事は二人で二倍でしょ?」
「ぎゃあああ、一縷さん、どうしてくれるんですかぁ!」
「ふっ、完全に想像を越えていく結末だった」
「早く慣れればそれで終わるのだから頑張りなさい。ほら……ルフィス、お皿を取って。出来たわよ」
料理が完成したみたいだ。今日は1日動いてたしお腹がペコペコだ。
「何かの肉と何かの野菜を何かの調味料で炒めた肉野菜炒めよ」
「食材を明確に教えて頂きたいのですが!?」
「ふふっ、大丈夫よ。食べられるから……一応」
一応!?見た目は…普通に美味そうで、香りも食欲をそそる。……ごくり。食すか。まずは肉を…肉がダメならこの料理の全てがダメになる。
「こ、これは!?」
「どうしたんですか!?一縷さん」
「ふ、普通……だ!良かったというか、普通に美味い。食材が気になっていたけど、それはもういい」
「お口に合ったようで良かったわ。食材は言わない方が良さそうね。ルフィス、毒味も終わったし私達も食べましょう」
「はい!お腹がペコペコでした~」
ん?今なんか……毒味?そんな言葉が聞こえて来たけど……気のせいだよな?
「よく考えれば女の子の手料理を食べたの初めてだな。白金さん、ルフィス、ご馳走様でした。」
「いえ、殆ど詩葉さんが作りましたので」
「お粗末様でした。それで明日の予定だけど、安定してオークを倒せるまではここ十六階層から十九階層で特訓よ。明日は外へと戻るからその先……二十階層のボスはまた今度かしらね」
「了解」
「分かりました!」
オークを倒す時、ルフィスに周りの敵を倒して貰ってから戦っているからな…全員を一人で倒せる様にならないと怖くて先へは進めないな。魔法を使えば簡単に倒せるだろうけど、それに加えて槍も上手く扱えたらその分強い。だから今は槍を鍛えないとな。
「じゃあ、今から仕切りを作るからそれぞれ体を拭くなりトイレを済ませておいて」
「あ、火あるから水を温めたらさ、熱いタオルで体が拭けるな」
「そうね。…とりあえず、土で仕切りを作って、みんな出てきたらそのまま地面に戻すからタオルとか置き忘れ無いようにね」
白金さんが、通路の行き止まり側の壁の右に二つ左に一つ仕切りを作り出した。俺達は順番にお湯を温めて仕切りの中へ入っていった。
「宿では普通の水だったからなぁ……やっぱ、温かい方が気持ちがいいな」
俺は服を脱いで体を拭いていく。槍を振っているお陰か、少しずつ筋肉が付いてきた気がする。脇腹が少し赤くなっていた。10階のボス部屋でくらった攻撃だな。強く押すと痛いが気にならない程度で良かった。
「ふぅ!少しさっぱり。トイレも済ませておくか……」
この世界のトイレは基本的に汲み取り式の和式トイレだからな……洋式トイレを誰か作ってくれないかなぁ。
「……ふぅ。体が温かくなったら少し眠たくなってきた。もう寝ちゃうかな」
俺は仕切りから出て二人が出てくるまで火に薪を足しながら待っていた。やはり女の子だけあって俺よりもずいぶんと時間が掛かるみたいだな。先に出てきたのは白金さんの方だった。
「ふぁ~あ」
「眠そうね。今日はお疲れ様」
「今日は疲れたなぁ……。アドバイスありがとう白金さん。明日からもよろしく頼むよ」
「えぇ。ルフィスは私が待っておくから先に寝て良いわよ」
「そうか……それは助かるよ。じゃあ、お休み」
「お休みなさい、一縷君」
俺は寝袋に入って芋む……ミノムシの気分になりながら目を閉じて眠りについた。
◇◇◇
「うおっ……」
目が覚めると、目の前には壁があった。最初に居た位置から、だいぶ寝返ってしまったみたいだ。
寝袋がフカフカしているお陰か、地面を寝返ったにも関わらず体は痛くない。顔に付いている土を払って寝袋から出ると、白金さんが既に起きていた。
「おはよう」
「おはよう、一縷君……顔、洗ったら?水になっちゃうけど」
「ん、助かります」
どうやら顔の土は払いきれて無かったみたいだ。でも、どうせ顔は洗うつもりだったし丁度よかった。
「よし、シャッキリした」
「そう、なら準備運動でもしておいて。ルフィスを起こしてくるわ」
ルフィスが起きて来たが、どこか眠そうだ。ダンジョンで寝るなんて王女様が経験する事も無いし、寝付けなかったのかもしれない……。
「おはようルフィス。顔洗ったら?シャッキリするよ、シャッキリ」
「は…い……。そうしますね」
「大丈夫なの?ルフィスは」
「さぁ?朝が弱いだけじゃないかしら?……朝食は果物だけよ。はい」
「どうも…よし。ルフィスが眠りから覚醒したら出発?」
「そうね、この壁の向こうにオークが何体か居るからそれを処理してからね」
あ……居るんだ。壁が叩かれたりしていないという事は、バレてはいないという事かな?
「どうするの?」
「私が倒してもいいけど……一縷君、見えてれば消せるのよね?壁に穴開けてパパっとやってくれないかしら?」
「それはいいけど……いいの?魔法を使っちゃって」
「良いわよ。いいけど…全身を消さずに頭とか心臓とか、急所だけを狙ってMPを消費した方がいいわ。理由は……自分で見て」
白金さんに言われた通り、目の高さの壁を一部消し去り奥の様子を見る。
「うげぇ!?オーク、オーク、オーク、ゴブリン、オーク。割合が逆じゃねーか?」
「ちょっと私にも見せて貰えるかしら?気配だけだと判りづらいのよね」
俺は白金さんの高さに合わせた穴を開けて上げる。
「なるほど。一縷君、これいける?ある程度やったら私が残りを倒しに行くけど?」
「とりあえずやってみるよ。残ったらお願い」
俺は壁から覗きながら右隣で同じように覗いている白金さんに言いながら早速始める事にした。
「ミュート」
広範囲…とりあえずオーク達が居る場所までは音を消した。ここからは素早くだ。異変に気付かれる前に手前から心臓部分を、後ろ姿のやつは頭を狙って消していく。
"ロスト"
"ロスト、ロスト"
"ロスト、ロスト、ロスト"
"ミュート解除"
「うし、とりあえず見える範囲は全滅させたぜ。魔力もまだ余裕があるし、レベルアップの恩恵はデカいな」
「お疲れ様。やはり便利ねその魔法」
「白金さんは回復魔法を貰ったんだよね?まだ使ってないみたいだけど……どんな事出来るの?」
「そうね……怪我の治療、病気の治癒、状態異常からの回復………悲しいは、出来るわね。あと1つ有るけど魔力が減るし気軽に使えないわね」
「おぉ……チートらしい能力。俺達は選べたからいいけど……他の人達はランダムでしょ?内気な人が戦闘スキルとかだと可哀想だな」
「その場合、普通に戦闘訓練させられるものね。心が潰れないといいけど……ま、今は知らない人達を心配している場合いじゃないわよ」
白金さんが再び穴から覗きながら壁の向こうを見ている。まさか……。
「あちゃー、曲がり角の先にも居たのかよ…て言うか一ヶ所に溜まり過ぎだろ」
通路の惨状を見た仲間のオーク達がフゴフゴ言いながら右往左往している。早くどこかに行ってくれればいいのに……。
「お二人共、お待たせ致しました!」
「ルフィス、大丈夫か?」
「え?何がですか?」
「や、さっき眠そうにしていたから昨夜は眠れなかったのかなって」
「あ……すいません。ちょっと朝が弱くてですね…動き出したら全然大丈夫なんですけど、起きたばかりは眠くて眠くて…ぐっすり眠ったんですけどね」
あ、そうなのね……。うん、いいんだよ。逆にダンジョンでもぐっすり眠れるなんて逞しいじゃん?うん…うん。
「ルフィス、ちょっと見てみなさい」
「あ、それならルフィス様に穴開けるよ」
「何が見れるんです……か?きゃああああああああ!」
「馬鹿!静かにしないと気付かれるだろ!?」
「だって……死体が一杯!オークの死体が!怖かったんですぅ!」
「一縷君、駄目みたいよ。向こうのオーク達に気付かれたみたいよ?」
うわぁ、仲間の死体を踏み越えてこっちに向かってくる。仲間なのに良いのかそれで……
ドォンドォンドォン!
両手でおもいっきり叩いてるオーク達…壁が壊されそうでこえぇ……。
「白金さん、壁…大丈夫?」
「さぁ?強度自体はそこまで高くしてないし…そのうち壊されるかもしれないわね。そしたらどうなるのかしら?ここには見目麗しい若き乙女が二人……」
「嫌ですぅ!嫌ですぅ!一縷さん、何とかしてくださいぃ!」
何が見目麗しいだ…何が乙女だ…。たしかに、オークはまだ結構居たけど…。一人は余裕綽々でいつでも剣を抜く準備をしていて、もう1人は涙目で顔がクシャクシャである。一人は乙女じゃなく、もう一人は今現在の見目が麗しくない。
「落ち着けルフィス、あの程度のオークなんて何とでもなる!」
俺はルフィスを落ち着かせる為に両肩に手を乗せてハッキリとした口調で言ってやった。
「い、一縷さん……!」
「……という事でお願いします!白金さん……いや、白金大先生!」
「一縷君…」
「わ、私のトキメキを返してくださいよ!離してください!……助けてください、詩葉さ~ん」
「け、計画通りだ。ルフィスも落ち着いたからな。うん」
「一縷君のやり方はスマートじゃないわね…。でも…まぁ、それで良いわ。私にプロポーズしているのだからそう簡単に…ルフィスとはいえ、他の女の子がトキメク様な事は控えて欲しいわ」
うぐ……そ、そういえば、白金さんの過去を聞いた時にうっかり言質を取られたんだよな…。一蓮托生とか言っちゃったやつ…もしかして、今後も何かと弄られるのでは…ないだろうか?
「ハ、ハハ…ソウダナー」
「詩葉さん…か、壁が!」
「一縷君、壁が崩れたら目に付くオークを片っ端から急所を狙って消し飛ばして。残ったやつは私がやるわ。ルフィスは下がって一応魔法の用意を、一縷君の魔力が無くなりそうならフォローを」
「了解!」
「分かりました!」
流石に切り替えが早い。壁にヒビが入り出した……もうすぐか。
「3…2…1……一縷君!」
「任せろ!」
ロストを連発しオークとオークに紛れていたゴブリンを潰していく。白金さんの方に行った奴らは無視だ。
「ルフィス、援護を頼む!」
「分かりました!」
ルフィスも加え、オーク達を殲滅していく。壁が崩れてから一分も経たずに血溜まりとオーク達の死体の山が完成した。
「うぅ…酷い臭いですぅ。」
「臭い…おっ!いけるかも?……『消臭』…どうかな?…というか白金さん、何でこんなにオークが?集まり過ぎじゃない?」
「ふぅ…ありがたいわ一縷君、今の魔法は今後も使えそうね。…恐らく、ここがそういうポイントだったんじゃないかしら?モンスターがポップしやすい場所。そう考えるとあの量も納得が行くわ」
「臭いが消えました!凄いです!」
そういうスポットって…もっと広い空間であったりとかするんじゃないのか…?こんな行き止まりに…誰だこんな設計したやつは。
「階層毎にランダムだし…気付く方法も無いから今回は運が無かったという事ね。とりあえずお疲れ様、二人共。」
「こんだけ倒したらレベルも上がってると思うし、良いんだけど…もうオークはお腹がいっぱいかな…」
「私もです~…」
「今のは魔法だからまだ先へは行かないわ。でも、槍でも危なげなく倒せるなら20階層のボス部屋まで行きたいわね」
「よし、ルフィス。今日は20階層のボス部屋を目指そう。そしたらそこを突破してすぐ帰れるし」
「そうですね!頑張って行きましょう」
「やる気が出たならそれで良いわ。じゃ、片付けしたら行きましょうか」
◇◇◇
俺達は早々に十六階層を後にして下へと進んで行った。十七階層ではオークとゴブリンの代わりに狼が現れて、難易度が少し上がったがこちらから行かなくても狼だけが先に来てくれる為、対処はそこまで難しくは無かった。ここも俺とルフィスはそこまで苦労せずに突破する事が出来た。レベルアップのお陰か、力も増してるみたいだし相手の動きもよく見える。
「ルフィス、調子は良さそうだな」
「一縷さんの方も良さそうですね!」
「では、下に行きましょうか。二人共、油断はしないように」
「「は、はい…」」
更に下へと進んだ。十八階層はオークが複数で行動している階層だった。ルフィスは遠くから魔法で一体ずつ倒していく。足の遅いオークだから三体居ようがそれで十分みたいだ。
俺は背後から近寄り、一体を仕留める。その後にもう一体のオークを少しの攻防の末に討伐していった。二体の時はこれでいけるが三体になると少し時間が掛かってしまう。
「すまん、もう少し三体のグループで訓練していいか?まだ位置取りとか戦闘の流れとかがな…」
「私も…三体の時は少し危ないので…もう少し」
午前中は十八階層で戦闘を繰り返した。一体を倒した後の動き、二体を相手にしてどう動くかを白金さんにアドバイスを貰いながらやっていった。
「一縷君、後ろを取られないで!挟まれそうになったら距離を取って。二体が離れてるのは逆にチャンスになるわ!」
「はいよ!せいやぁ!!」
『ブオオオオオ!!』
「足よ!複数の敵に会ったら動きを止めなさい」
「了解です!」
それから何とか回避をしながら足を狙い、動きが止まった所でトドメを刺した。
「ふぅ…。今ので結構掴めたと思う。ありがとう白金さん」
「ふん。勘違いしないでよね、貴方のためじゃないんだから」
「いや、その台詞を言うならもっと感情込めてくれない?いや、ネタだっていうのは分かってるけどさ」
「とりあえず、奇襲で一体。後は足から潰していくのよ。」
「おう。次はルフィスだな!」
「はい!お願いしますね、詩葉さん」
「はいはい。行くわよ」
ルフィスの動きにも白金さんがアドバイスをすると徐々に良くなって行き、ルフィスも満足したところで下に降りる事にした。
「十九階層に降りてきたけど、一旦お昼休憩にしましょうか」
「そうだね…少し休憩したいかな」
「私もです…魔力も回復させたいですし…」
「お昼は…干し肉と果物だけど、ルフィスは干し肉もいける?」
「干し肉は苦手です…」
「でも、エネルギーになるから少しは食べておきなさいね。見張りは私がしておくからゆっくり休みなさい」
「ルフィス…武器持ってなくて不安じゃないの?」
「そうですね…前なら魔法補助用でさほど強度はありませんが杖を持っていたんですけど…置いてきちゃいましたからね。杖くらいは身に付けておきたいとは思いますよ」
「慌ただしく夜逃げしてきたもんね。街に戻ったら買いに行こうよ。杖の扱いも白金さんに教えて貰ったらさ、近寄ってきた敵にも対処出来るしさ」
「でも、お金が…」
「それなら大丈夫だ、頭を地面に着けてでも白金さんにお願いしてみるからさ。必要経費で落としてもらおう。」
「良いんでしょうか?…ありがたいですけど」
「良いよ良いよ。よし、休憩は終わり。この後も頑張れば白金さんも気前が良くなると思うし、頑張ろうぜ」
「はい!頑張りましょう!」
「白金さん、休憩終わったよ」
「そう。この階層は…オークは単独で行動しているみたいだけどさっきよりは強いわよ」
「分かった。最初はルフィスと二人でやってみるよ。一人でも行けそうならしばらく一人でやってみる」
「じゃ、行きましょうか。1番近そうなのは左よ」
左の道を進んでいき曲がり角の前で止まり確認をする。
「曲がった先の通路には居ないみたい…真っ直ぐ行ってみる?曲がる?」
「曲がってみますか?」
「曲がった先にまたすぐ左に曲がる所があるから…そこまで行ってみよう」
真っ直ぐの道と曲がってからの真っ直ぐの道に敵が居ない事を確認して、次の曲がり角まで移動する。曲がり角から顔を覗かせると…ビンゴだ。一体のオークが彷徨いている。
「一体居たぞ。武器は剣。見た目はさっきまでの茶色の肌のオークよりちょっと色が黒っぽい」
「キングオークが真っ黒だから、黒っぽい程強いと思っていいわ。気を付けてね」
「了解。ルフィス、魔法の準備を頼む」
「分かりました!……いつでもいけます!」
「じゃあ、三秒後に頼むぞ。1…2…3!!」
「行け!『火弾撃!!』」
ルフィスの魔法を合図に走り出した。ルフィスの魔法が着弾したが倒れる気配は無い。耐久力も他のオークより強いみたいだ。
『ブモオオオオオ!!』
「あぶねぇっ!!」
足音で分かったのか振り向きながら剣を振ってきた。何とか踏み止まり間合いに入らずにすんだ。勢いは削がれてしまったがすぐに切り替えて急所と足を狙い、攻撃をしていく。
「反応速度も速いな。…ルフィス!」
「援護します!」
ルフィスからの魔法が当たらない様にオークとの立ち位置を替える。オークの攻撃を槍で弾いていると、オークの背中に魔法が着弾した。
『ブモオオオオオ!!』
「せいやぁああああ!!」
グシャっとオークに槍を突き刺した感触を味わって槍から手を離して距離を取った。最後の気力を振り絞られても困るからな。
ゆっくりとオークが倒れて、槍も背中の方へと抜けていった。
「ふぅ…一人じゃ少し時間が掛かりそうだけど、丁度いい相手かもな。ルフィス、白金さん、終わりましたよ」
「結構、耐久力ありましたね…」
「ルフィス、援護ありがとう。今の俺達には丁度いいかもよ?一体だけならやりようがありそうだし」
「なら、少しここで時間を割くのかしら?」
「そうしようと思う。白金さん、またアドバイス頼んだ」
「お願いしますね、詩葉さん!」
「えぇ、死ぬ気で強くなって貰うわよ!」
白金さんの案内でオークを探して戦って行った。やはり最初は二人で戦って、耐久力やパワーやスピードを確認していき、自分と比較しながら攻略法を見付けていく。
「パワーと耐久力はオーク、速さ何かは俺。…やっぱり、回避しながらの急所狙いかな?」
「私はただ魔法を当てるんじゃなくて、もっと顔や足を狙って行かないと耐えられて近寄られますからね…」
「分析は終わったかしら?次は一人ずつ行って貰うから。ルフィスは特に気を引き締めなさい、近寄られたら終わりと思ってね」
「はい!」
「じゃあ…案内お願いね、白金さん」
「こっちよ」
◇◇◇
『ブモオオオオオ…オオ…』
「や、やりました!やりましたよ!ちゃんと、自分の描いた通りに勝てました!」
俺もルフィスも何体も挑戦して、ようやく無傷で倒しきれた。ルフィスの場合は一定の距離に近付かれたら白金さんの助けが入るから実際に傷を負ったのは俺だけだが。
「おめでとうルフィス。下に降りたら休憩しよっか」
「一縷さんも一回殴られた様ですけど腕は大丈夫なのですか?」
「うん、思ったほどは痛くないよ。殴られた時に少しの痛みと痺れたくらい」
「さ、階段はこっちよ。ついてきて」
白金の後ろをついていき、二十階層に降りた。ここはボス階層だから敵は居ないし休めるな。
「さ、二人共…反省会よ。」
「今回は…まぁ、殴られちゃったけど…それ以外は良かったと思う」
「私はやっぱり、魔法以外が全然駄目ですね…」
「そうね…。一縷君も槍の扱いが良くなってきたわ。きたけど…その分、回避より勢いで倒しきる傾向が出て来てると思うわよ。回避は回避、攻撃する時との切り替えを忘れない様にね。」
「あ…言われてみたら…そうかもしれない。了解した、気合いを入れ直すよ」
「ルフィスは…街に帰ったら杖か、短剣辺りを探してみましょうか」
「い、良いんですか?…一縷さん!」
「俺から言う必要も無かったみたいだね。必要経費で落として貰おうと、帰ったら白金さんに頼もうと思ってたけど」
「私もまさか、こんなに早く進むとは思っていなかったから。今回は私のミスよ。ごめんねルフィス」
「い、いえ…そんなこと無いですよ。えへへ」
「誰か居るの…?」
俺達は薄暗い通路の奥に向けて警戒をする。聞こえてくる声は幼くか細い。
「幼い?何でこんな所に?」
「一縷君…」
「一縷さん…」
「なぜ俺の名前を呟くのかは全く全然分からないけど…。あの!ゆっくり姿を見せてもらっていいかい?」
一歩一歩近付いてくる気配はある。足音が殆どしない事から裸足だと思われる。少しずつ姿が見えてきた。身長は十歳にも満たないくらいで赤く長い髪がボサボサになって顔も土で汚れている。
「あ…あ…の、た、助けて…くだ…さい。お願い…します…」
「止まって。とりあえず話を聞かせて欲しい。僕達は君に警戒をしているというのは先に言っておくよ。背後から君の仲間が…なんて事もあり得るからね」
「そんな人居ない!居ない…居ないの、置いていかれた…の。うぅ…」
「考える必要の無い質問をするからすぐ答えてくれ。名前は?」
「リコル」
「歳は?」
「八歳」
「お家は?」
「無い…」
「両親は?」
「居ない……」
「ダンジョンに居る理由は?」
「荷物持ちのお仕事」
「君を雇った人達は?」
「階段の上のおっきいモンスターに負けそうになって逃げ行ったの。私もここまで逃げたの」
「それはいつから?」
「わかんないけど、一日くらい前」
「ちょっと待ってね…。ね、どう思う?」
「家も両親も居ない…ストリートチルドレンって事かしらね。荷物持ちで日銭を稼いで、盗みをしていないだけマトモね。運が悪かったとしか言えないわ」
「えっと、リコルちゃん?普段はどんな生活をしているのかな?」
「荷物持ちで日銭を稼いで、ご飯を買って、裏路地で寝て…朝になったらまた荷物持ち」
「そう…なの。白金さん、どうすれば…」
「基本的に、ダンジョンでは他のパーティーとは不干渉よ。触らぬ神に祟り無し…よ」
「ひぃう…う、うわぁぁぁぁぁぁん」
「あ、あ、ち、違うのよ…一縷君!何とかしてよ!」
「何とかって…泣かせたのは白金さんじゃ…」
「違うの!でも、今回は上までなら連れていって上げると言おうと思ったの」
「なんだ…そう言うことなら。白金さん、果物を1つ貰える?」
「食べ物で釣るのね。流石…手慣れてるわね」
「手慣れてるとか言うなし…。ほら、リコル。これ食べていいよ。」
「うぐっ…ひ…い、いの?」
「うん。君を地上までは連れて行く。だから、まずはこれ食べて元気、元気…な?」
「うん…!ありがとう、お兄ちゃん!」
リコルがムシャムシャと果物を食べている。やはりお腹が空いていたのか。
「あ、ありがとう」
「こっちのお姉ちゃんにも」
「あ、ありがとうございます」
「いいわよ。あなたを地上までは連れて行くけど、もしあなたが嘘を吐いていた場合は全力で対処します。」
「う、嘘じゃないもん。」
「あなたをここに置いていった人達の事は覚えている?」
「えっと…Cランクの『赤の三ツ星』って言ってた気がする…」
「そう…分かったわ。遅れずについてきなさいよ。」
「さ、行こうリコル。危ないから離れちゃ駄目だよ」
「うん!」
「良かったですね、リコルちゃん!」
ダンジョンって平気で雇った子供を置いていくんだな。常識から何から違うのは分かっていたが…こう目の前にすると…な。
俺達はボス部屋へと入った。そこで待ち構えていたのは、2メートルを越える人型の鬼。オーガってやつらしいが…今回は白金さんがサクッと倒して終了した。
「ごめんよ、次に来るときはちゃんと俺とルフィスが相手するあらな」
「お姉ちゃん強い!あの3人とは全然違うの!」
「それはどうも。一縷君、角とか剥ぎ取ったら帰るわよ」
「はいよ!」
素材を剥ぎ取って、次へ進む扉を開くと1階層へと帰るゲートがあった。
「リコル、これで帰れるからな。」
「うん、本当にありがとうございました!」
俺達はゲートに足を踏み入れて1階層へと戻って…1日ぶりに外へと帰って来た。
「ん~!もう夕方だったのか」
「良かったよぉ…良かったよぉ…」
「今度から変なパーティーには捕まっちゃ駄目だぞ。」
「うん!ありがとう。またね!」
俺達は走って帰っていくリコルを見送った。
「白金さん、あんな小さな子がどうやって荷物持ちするんですか?」
「子供で荷物持ちの仕事をする子は力に補正がかかるスキルを持っているものよ。あと、マジックバックならそこまで重たくは無いしね」
「でも、マジックバックを預けて逃げられたらどうするの?」
「そういう事も考えられるから、荷物持ちは女の子が多いのよ。男なら知り合いでも無い限り、子供でもあまり人気は無いわね」
「なるほど、それでストリートチルドレンの女の子の仕事なのか」
また一つこの世界の暗い部分をしってしまったな。
「さ、帰りましょう。宿を取って、明日は休みにするわ。ルフィスの杖を買いに行かないといけないからね。私がついていくから一縷君は休みでいいわ」
「了解だ。ふぅ、休みだぁ!」
俺達は宿に帰って疲れを取るように眠りについた。
誤字脱字がありましたら報告お願いします!
評価や感想、レビューにブクマもお待ちしております!
(´ω`)




