告白は突然に (side H)
初投稿。
中学に入学してもう5ヵ月とちょっと、夏の暑さもなくなって、涼しくなってきた9月の中旬。
中学校生活も部活も慣れてきていたとき。
日向は夕暮れの空を見上げながら、一人で学校の校門に向かって歩いていた。
部活が終わったあと、忘れていた本の返却を思い出して図書室に寄っていたため、帰りが遅くなってしまっていた。
いつも一緒に帰っている友達は、待っててくれると言っていたのを断って、先に帰って貰っていた。
一人で帰るのは久しぶりかもしれない、と思いながら日向は歩いてた。
ちょうど校門を出た時だった。
「……好きだ!」
いきなり放たれた言葉の意味を理解するのに、日向は少し時間がかかった。
一瞬、自分に言われた言葉じゃないのではないか、と辺りを見ましてみた。
時間が遅いせいか、日向以外には周りに人はいない。
視線を正面に向けると、同じクラスの新橋蘇芳君がいた。
頬を少し赤くして、じっと真っ直ぐこちらを睨んでいるのが見えた。
わたしと彼の距離は、2m。
「……新橋…君?」
お互い動こうとはせず、見つめ合うこと数秒。
わたしから出た声は、小さく彼を呼ぶ言葉だけだった。
告白されたのだ、と思った瞬間。
心臓がドキドキと高鳴り、頬が熱くなるのがわかった。
今のわたしの顔は真っ赤になっているだろう。
そんなことにも気付く余裕もなく、恥かしさと頭が混乱して何を言えばいいのかわからなかった。
何も言わないわたしを、じっと見ていた新橋君が近づいてきて手を掴んだ。
「えっ?」
そのまま、手を引かれた。
突然の行動に躓きそうになりながらも、手を引かれるままに歩き出した。
どこに行こうとしているのかもわからず、真っ直ぐ前を向く新橋君の後姿を困惑気味に見つめる事しかできなかった。
ふと、繋がれている手に目がいった。
しっかりと繋がれた、日向より少し大きな手。
手のひらから感じる手の熱さに、頬がさらに赤くなるのがわかった。
途端に日向は恥かしくなって顔を俯かせた。
少しして、ピタっと止まった新橋君の背中に当たりそうになりながらも日向も足を止めた。
ずっと下をむいていたから、ここがどこなのか一瞬わからなかった。
日向が新橋君に連れて来られた場所は、学校から少し離れた公園だった。
「その……よぅ。
――――返事、聞かせてくれねぇ?」
手は繋がれたまま、前を向く新橋君が小さな声でそう言った。
顔は見えないが、耳が赤くなっているのが見えた。
日向の頬に再び熱が集まる。
新橋君とはあまり喋ったことがなく、どうしていいのかわからなかった。
「え、あ、あの…とっ友達からでいいなら...」
初めての告白にてんぱって、日向はそう言ってしまっていた。
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その日、どうやって帰ってきたのかわからないくらいさっきの出来事で頭が一杯だった。
様子の変な日向を怪訝な顔で見つめている母に気付かず、日向は自分の部屋のベットに倒れこんだ。
脳裏に浮かぶのは、家に帰る前。
「ん、わかった。
それじゃぁ、明日な」
「あ、うん。また明日」
そう言って新橋君は走って帰って行った。
「明日からどうしよう…」
その呟きと一緒に、日向は目を閉じた。