1話 プロローグ
俺は今日も日課のログインボーナス受け取りとデイリーミッションを消化する作業を仕事帰りの電車の中で行っていた。
念願のプログラマーになれたのだが毎日の激務でなかなか自分の時間が取れない毎日だ。
ふとスマホを見ると見慣れないアプリがインストールされているのが確認できた。
赤いバッテンの付いたアイコンでアプリ名は「絶対に押すな!」だ。
どうせ誰かがいたずらで入れたジョークアプリだろう。
押すなと言われたら一般人は押すに決まっている。
しかし俺はプロだからそんな怪しいアプリは即削除だ!
アンインストールボタンを押す直前ふとある事を思い出す。
そういえば最近携帯アプリを使って異世界に行ったり魔物と戦ったりするゲームをやったな……はっ! もしかして俺は選ばれた人間だったのか!
遂に俺の時代が来た!!!
俺は世界を救う選ばれた英雄のメンバーになれると確信してアプリのボタンを押した。
――ボタンを押した瞬間、俺の存在は世界から消え去った――
「あのさ~普通押すなって書いてあるボタン押しちゃう~?」
どうやら俺は死んでしまって目の前の神様っぽい爺さんに説教されている最中らしい。
「間違えてあの消滅アプリを全世界の人に配信しちゃったのはワシだけどさ~3分で削除したしボタン押しちゃったの君だけだよ~まったく今時小学生でもあんなボタン押さないよ〜」
「おめーが元凶なのかよ、だいたい何であんなボタン押したら死ぬアプリなんて作ったんだよ」
「んーと、趣味?」
「趣味で人が死ぬアプリとか作んなよ!」
「だって急に閃いちゃったんだもん」
「だもんじゃねーよ!ジジイがかわいく言っても誰も得しねーよ!」
爺さんはなにやらぶつぶつ言ってるようだが俺はこんな場所早くおさらばしたいので会話を続ける。
「そんな事より早く俺を元の世界に戻してくれ。」
「それがじゃな元の世界に戻すのは手続きがいろいろと、めんど……出来ないんじゃ」
「今たしかに面倒って言ったよね?出来るって事だよね?なら早く戻せ!さあ戻せ!」
俺は爺さんの鼻先10センチくらいまで近付いて肩に両手を置いてガクガクと揺さぶり始めた。
「けどさ〜本当に戻しちゃっていいの〜?」
「……なに?」
「君さ〜元の世界で凄く大変な毎日送ってるでしょ~異世界にいって心機一転して、新しい人生送るのもありじゃない? 」
確かに今の俺は毎日残業でくたくただ。転職を考えた事も何回かある。さて、どうしたものか……
「さすがに何も持たずに知らない異世界に行くのも大変じゃろうし何か1つだけ持っていっていいぞい。特殊能力、最強の武器なんでもござれじゃ。最強チート能力持って転生したらあっちの美少女にモテモテ間違いなしじゃぞ」
「まあ、それなら行ってもいいかな……」
「よしっ」
何か爺さんが小さくガッツポーズをしたようだが見なかったことにした。てかそんなに元の世界に戻す手続きとやらが面倒だったのかよ!
「本当に何でも好きな物を持っていっていいんだな?」
「おう、神様的にはオールオッケーじゃ」
「言ったな? なら爺さんあんたを持っていく。異世界に神様を持っていけば怖いもの無しの最強チートキャラだしな」
俺は不安な異世界生活での勝利を確信した。
「ワシはそれでも構わんがワシはホモじゃぞ?」
「チェンジで!」
「なんじゃつれないのう」
ほほを紅く染めながらもじもじする爺さんにピキッっとなったが神様相手に面倒ごとを起こすのも気が引けるためなんとか抑える。
いくら最強だからってお尻まで最強になるのは求めてねーよ……何で俺の担当は美人の女神様じゃなかったんだ……
「ほれほれ、わしもこう見えて忙しいんじゃ、さっさと決めてくれ」
神様はもう飽きたのか、寝転びながら雑誌を読み始めたのだ。
「武器だともし無くしたら大変だし……かと言って能力が強くても強い武器がないとな……」
ん、ちょっと待てよ、いくら最強能力があってモテモテになったとしても美少女の年齢までは決まってないんじゃないか? 神様がその気になったらセクシー路線のヒロインになる可能性もある。俺は出来れば幼女と友達になりたいんだが……
「なあ爺さん、その……武器とかじゃなくてシチュエーションとかの指定でもいいか?例えば美少女の奴隷に転生したい……とか?」
「あーそれは無理じゃ」
「何だよ、何でもいいとか言ったくせに出来ない事もあるんじゃないか」
「いや、倫理的に」
「……あっ……はい……」
流石にそれを言われたら文句言えねーよ……
「まあ異世界に行った直後に幼女に助けてもらうとかならギリ大丈夫じゃぞ」
ふむ、まあその辺が落としどころだろう。
「じゃあそれでいいぜ」
「本当にそんなのでいいのか? 何なら最強の英雄にすることだってできるんじゃぞ?」
「いや、俺の異世界生活は幼女と出会う事で始まらないといけないんだ!」
「そこまで行くと逆に清々しいのう。ほれこのゲートをくぐり抜ければ異世界じゃ」
神様が指をパチンと鳴らした瞬間、何もない空間からゲートのような物が現れ禍々しいオーラを放ちだした。
俺は覚悟を決めてゲートに歩み寄る。
ゲートに手を触れる直前に神様から声がかかった。
「最後にもう1つ」
「なんだい? まだ何かおまけでもくれるのかい?」
「いいや、お前さんどうやら魔法使いの才能があるようじゃの」
「どういう事だ?」
「なんか元いた世界で魔法の修行でもしてたんじゃないかの? 10年くらい厳しい修行をしないと手に入らない魔力をお前さんから感じるぞい…もしかしてお前さんd」
「さ、さーてそろそろ俺は行くからな! アバヨ爺さん」
「あー待てまだ話は……行ってしまったわい。まあいい新しい世界でうまくいくよう祈っておるぞ」




