第二話 いつもの打ち合わせ
眠たいだるいベッドに帰りたい…そんな気持ちを嘘のように吹き飛ばしてしまった優夜のフレンチトーストも残すところあと二枚となっていた。
「今日の仕事って何だっけ…人攫い?暗殺?」
「なんでどっちも物騒な話なんだよ!人探しだよ、ヒ・ト・サ・ガ・シ!」
「基本が人助けがウチの流儀でしょ。まぁ『基本』だけどねぇ」
「分かってて言ったんだよ、そんなにでかい声で言わなくても分かる。ユカちゃんが驚いちゃうでしょ!」
「…もう意味わかんねぇよ」
「で、本題の人探しはだぁれ?そもそも依頼主は『元の世界』の方?」
「『元の世界』の住人から『アチラ側』での人探し」
「ん?依頼主ってのは魔術師かなんかなのか?まぁそうじゃねぇと異世界越えて関わることなんてないか」
「さぁ?詳しくは聞かせてもらえなかったけれど、報酬がよくてねぇ」
「何百万とかくれんのか?」
「どうして君はそうすぐ金に話を持っていきたがるのさ?桜華は金の亡者なんかじゃないよ!」
「うるせぇな、んなこと言ってねぇだろう!?報酬がいいって言われたらそう思っただけで…」
「ケンカしない!」
「それで話を続けるけどいいですか?」
「「はい」」
桜華がどこから持ってきたのか書類に目を通し始める頃には、二人とも床に正座で優夜が二つ、治樹が三つのたんこぶが額に雪だるまのように積みあがっていた。
「今回の報酬は『第二世代前後』の精霊琥珀みたいなの」
報酬を聞いた二人の顔と纏っていた雰囲気が一気に引き締まる。精霊琥珀よりも、その時代区分は彼らにとって…そして桜華にとって大きな意味を成すものだったからだ。
少しずつ進めていますので、気長にお待ちください。