73話 魔力暴食
年内最後の投稿
「【大賢者】イグルス・マレーリア..........」
「ほっほっほ。悪いが渡すわけにはいかんのぅ。魔族共」
突如現れたイグルスにサタナスは忌々しそうにその名を口にした。
イグルス・マレーリア。かつて魔族達の先祖である魔王を倒した勇者のパーティーにいた一人とされる伝説の魔法使い。
何故されると言うのかというと、誰もその事実を知らないからだ。魔族との戦いは遥か昔に起こった出来事。誰もイグルスが勇者パーティーにいた何て証明出来るわけがない。
だがその強さは本物で、イグルスは大陸最強の魔法使いと恐れられ、勇者パーティーにいたという話もこの強さなら頷ける。
そんなイグルス・マレーリアが何故ここにいる?スーラは一人思考を巡らせていた。
「貴様.....何故ここにいる」
「ほっほ。わしの勘がここにいた方がいいと叫んでな。そうしたら案の定じゃったわ」
軽く笑うイグルスにサタナスは苛立ちを隠せずにいた。だが直ぐにその顔は得意気な顔に変わりフッと笑った。
「いいのか?今頃上では我が部下達が人族共の虐殺が行われてるぞ」
「なあに、心配ご無用じゃ。上は上の者が何とかするじゃろ。うちの優秀な生徒達もいることじゃしな。それに..........」
イグルスは隣で禍々しく光を放つ【邪の魂】を見た。何かを思い出させるのかその顔は何処か悲痛で少し歪んでいた。
「これだけは絶対にやれんからの」
「ふん、時代に取り残された亡霊が。だがまあいい、正直貴様が来ることは想定内だ。スーラ」
「あぁ、【スキル封印】」
スーラがそう言ったのと同時にイグルスの体が少し光った。
「んぅ?これは.......」
その事にイグルスは驚き自分の体を見回した。 特に体に異常はない。
異常はないのにイグルスは何かに気付いたのか目を見開いた。
「ははは!!気付いたか。そう、スーラの【スキル封印】は相手のスキルを使わなくさせる事が出来る。貴様のお得意な【魔法創造】で造り出した魔法は全て無意味だ!!」
高笑いするサタナスにイグルスは黙ったままこちらを見つめた。
「舐めるなよ小童が。その程度で勝ったつもりでおるのか」
「ふっ、そちらこそ舐めるでない。魔法の使えない魔法使い等恐るに足らず!死んであの世に行くがいい!!」
魔族の長サタナスと最強の魔法使いイグルスが今、ぶつかり合おうとしていた。
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くそ、何だこいつは。予想以上の化け物か。
シルバは刀を杖代わりにしながら立っていると目の前で平然と立っているゼブを見た。
シルバは苦しそうにしているが実は戦いはまだ始まってはいない。下手をすればまだその土俵すら入ってすらいないかもしれない。
「くそ!」
シルバは自らを奮い立たせて刀を構えた。
それと対象にゼブはのほほんと平然と立っている。
「風斬波!!」
シルバの刀から放たれた風邪の刃は真っ直ぐゼブの方へと向かって行くが、ゼブは攻撃が来るな否や口をありえないほど大きく開けた。
「【暴食】」
その瞬間風の刃はゼブの口のなかに入り、ゼブはそれをもぐもぐと噛み締めながら呑み込んだ。
またか!!シルバは悔しそうな顔をしながら行った。
【魔力暴食】。それがゼブのスキルの一つだ。効果はお察しの通り魔力を食べることだ。どんな魔力も食べてしまうためこいつに魔法は一切効かない。しかもそれだけではない。こいつは相手が放った魔法だけでなく相手の体内にある魔力まで食べる事が出来るのだ。そのせいで先程までシルバは先程まで吸われ掛けたが、一撃目は何とか耐えた。
「ふぅ、中々うまいな。お前の魔法」
「そうか」
「もっと食わしてくれよ」
「よかろう。精々パンクしないようにな!ジェットウィンド!!」
シルバは風を噴射させ一気にゼブとの間合いを詰める。遠距離が駄目なら近距離だ!
シルバはゼブ目掛けて刀を振るおうとしたが、ゼブは相変わらずのほほんとしたまま手を前に出してきた。
「近距離は面倒だ。【体内貯蓄 10%】バースト」
すると手から超圧縮された魔力の塊をシルバへと放った。
「ぐぁぁ!!」
シルバは魔力の塊に直撃し後ろに大きく吹っ飛んでいった。
口から吐血しながら地面を転がりシルバは膝を着きながらゼブを見た。
な、何だ今のは.........。
「今のはおいらのもう一つのスキル【体内貯蓄】。食った魔力を体内に貯める事により超高密度の魔力を放つ事が出来る」
何だと....くそ、何というスキルだ。
シルバは苦痛に悶えながら再び立つが既に肋骨が何本か逝ってるんだろう。立つのが精一杯だ。
「もうお前の魔力は食い飽きたな。もう死んでいいや」
そう言ってゼブは口を大きく開けてシルバの魔力を食う体勢を取った。
くそ、体よ動け。このままでは殺される。
シルバは必死に体を動かそうとするが、既にゼブはもう食う体勢を整えていた。
「じゃあな。【ぼうし「待ってください!!」」
突然の声にゼブは【魔力暴食】を止めると、ゼブの前に一人のローブを被った魔族が止めにはいった。
「何だ?お前」
「この者は私にお任せ下さい」
そう言って魔族はローブを脱ぎ去った。
その正体にシルバは目を見開いて驚いた。
「ミル....シー」
そこには角や翼が生えたミルシーの姿があった。
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