53話 獣人とエルフ
11月24日 ナティアの口調を少し修正しました。
「さあ!皆!準備は良いかな!!」
大会の代表者である俺達は学園の転移門の前にいた。
これで大会の開催都市まで移動するためだ。
他の生徒は後から来るようで、俺達は一足先に行く。
ミルシーは代表ではないので俺達とは別行動だ。
その事にシルバはガッカリしていたがそれは仕方ないだろう。
「テンション高いですね。リーズ先輩」
「だって等々大会当日なんだよ!テンションも上がるよ!!」
そう言うもんだろうか。
まあ、大会が楽しみと言うのは俺も同じ何だけどな。
「さあ!それじゃあ行くよ!」
リーズは転移門を起動させた。
門の下に魔方陣が出てきて俺達は門を潜ると、そこには何処かの建物の中に繋がっていた。
「さあ着いたよ!今回の大会の開催地でお馴染みにの大陸の中心にある街【フォーカス】に!!」
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建物の外に出るとそこには大会の開催地あってか沢山の人が賑わっていた。
街の風景は王都に居たときと大差ないが決定的に違うものがある。
そこには俺達人族の他にエルフ族や獣人族がいた。
俺は初めて見るエルフや獣人に目を奪われていた。
おぉ、本物の毛も耳がいる。
俺はそんな獣人族やエルフ族をチラチラと見ながら大会の会場まで歩いた。
「そういえば去年は何処が優勝したんだ?」
俺はふと気になりアランに聞いた。
「去年優勝したのはエルフ族だ。俺達人族は後一歩の所で負けたんだ」
アランは悔しそうに言った。
そして俺の方を向いてにやっと笑った。
「だが今回はうちにはケンヤがいるんだ。お前がいるなら勝ったも同然だな」
そんな過度な期待されても困るんだけどな。
周りを見るとフィーやアイも当然と言った顔でこちらを見てくるし、シルバはうんうんと頷いていた。
いや、お前らな..........。
「ところが、そうも行かないんだよね」
聞いていたのかリーズが話に入ってきた。
「今年の獣人族とエルフ族の新入生で凄い子が入ったらしいんだよ」
凄い子?俺はリーズの話が気になり耳を傾けた。
「獣人族の方は一人で数百人の盗賊団を全滅させたっていうし、エルフ族の方は一人で数百に及ぶ魔物の大群を全滅させたらしいんだよね。今年の大会はそのスーパールーキー二人に夢中なんだよね」
リーズは面白くないのか不機嫌そうに言った。
にしても数百の盗賊に魔物か。
中々面白そうな奴等だな。
いったいどんな奴なんだろうか。
「ここが、大会の会場の闘技場だよ。ここで優勝を決める争いをするんだよ」
リーズが言った闘技場はうちの学園の闘技場の倍はある大きさで街の中心に建っていてシンボルの役割を果たしている。
「あれ?何あの人だかり?」
すると何やら会場の前で何やら人だかりができていた。
俺達は気になったので人だかりができている所に行ってみた。
「あら?また証拠にもなくやられに来たの?パシオン」
「あぁ?てめぇこそ去年優勝したぐらいで調子に乗るなよ今年は俺達が勝つんだからな。ナティア」
見てみると三十人位の学生服を着た獣人族とエルフ族が何やら言い合いをしていた。
こいつらまさか獣人とエルフの代表か?
「あ!!ナティアにパシオン!!」
「あらリーズ」
「相変わらず小さいなお前」
「パシオンが大きいだけだよ!!」
どうやら二人はリーズの知り合いのようだ。
リーズは二人と親しげに話している。
「知り合いなんですか?」
「うん、まあね。一年生の頃に大会で会ってね。以来顔馴染みなんだよね」
俺はリーズの話を聞いて二人を見た。
パシオンは虎の獣人なのか黄色い耳と髪に頬に黒の縦模様がある図体がデカイ男だ。
ナティアはエルフの特徴である尖った耳に青色の髪をした何処かお嬢様気質な綺麗な人だ。
「リーズ、悪いけど今年も大会は私達エルフが貰うわ。何たってこっちには切り札がいるんだから。こっちに来なさい、リオン」
「それならこっちにもいるぜ。来いレオーネ」
「それならこっちにもいるんだからね。ケンヤ君」
いや、何故俺。
呼ばれたから仕方ないので俺はリーズの隣に立った。
「紹介するわ。この子はリオン。知っていると思いますけどけど数百の魔物を倒したうちの切り札よ」
リオンと呼ばれた男は緑髪に眼鏡をかけた知的な雰囲気を出した男だった。
リオンはリーズを見るな否やリーズの前に立ち跪いた。
「これはどうも美しいお嬢さん。僕はリオン・ハーベスト。以後よろしくお願いします」
そう言ってリーズの手を取った。
急な事にリーズが驚いていたら、ナティアがリオンを止めに入った。
「リオン!!もう、直ぐ可愛い女の子に手を出す癖は止めなさい!!」
「しかし会長。目の前に美しい女性がいたら即座に声を掛けるのが僕の信条でして」
「いいから離れなさい!!」
「..........仕方ありませんね」
そう言ってリオンは渋々リーズから離れた。
リーズは少し恥ずかしそうにしていたがそこはまあいい。
にしても驚いたな。出会って第一声がナンパとはな。
「ははは!!そんなんじゃうちのレオーネには勝てないな!何たってレオーネは数百人の盗賊を一人で倒したんだからな!!」
パシオンはそう言ってレオーネの背中を叩いた。
レオーネは茶色の耳と髪に鋭い目付きで今にもこちらに喧嘩を売ってきそうだな。
「おいてめぇ!!何こっち睨んでんだよ!!」
いや、売ってきたな。
レオーネはずかずかと俺の方に歩み寄って行くと不意にレオーネの後ろから誰かが走ってきた。
「やめて!レオ!!」
ドゴォン!!
走ってきた彼女はレオーネにそう言ってレオーネの頭を殴った。
レオーネは頭を殴られ地面に顔が埋まっていた。
「いってぇなココ!!何すんだよ!」
「いきなり人に殴りかかっちゃ駄目!!」
ココと呼ばれたその少女は焦げ茶色の髪に熊耳をした小柄な子だ。
俺はそんな小柄な子がレオーネの頭を殴り飛ばす程の怪力を持っていることに驚いた。
あの見た目でその怪力って.........。
「最初に睨んで来たのはあいつだぞ!!」
いや睨んでねぇよ。
これが普通だ。
「それでも無闇に殴っちゃ駄目!!」
お前が言うなよ。
俺は二人の会話を聞いてそう思ったが、俺は不意にあることに気付いた。
あいつ、あんな殴られ方をしたのに傷一つない。
見るとレオーネは何処にも傷がなくピンピンしていた。
やっぱり只者じゃないな。
「ふふ、後輩の躾も出来ないようじゃ優勝は私達だね。何せケンヤ君は闘争のダンジョン【ポレモスの跡地】の第八十階層を........単独で攻略したんだから!!」
おい、話を盛るな話を。
一人じゃねぇよ。アラン達もいたわ。
「何!?」
「何ですって!?」
その事に二人は驚いていた。
リオンとレオーネも俺を興味深そうに見ていた。
「そいつは良いことを聞いたな。正直そのキザ野郎だけじゃ物足りねぇと思ってたところだ」
レオーネは完全に殺る気な目で見てきた。
うわ、何かアランやシルバ以上にヤバイ戦闘狂だなこいつ。
「やれやれ。野蛮な事だな」
リオンはレオーネを見て肩を竦めていた。
「あんだとぉ!!」
「レオ!!」
レオーネはリオンに突っ掛かろうとしていたがココの一言で思い留まった。
「まあいい。決着は大会で決めるか。行くぞお前ら」
「それもそうね。行きましょうか皆さん」
そう言ってパシオンとナティアはそれぞれ反対方向に歩き他の人達もそれに続いた。
レオーネはリオンを睨んでいたがリオンは特に気にすることなく平然と歩いていった。
リオンにレオーネか。
見た感じ確かに二人は強いな。
俺は地球で何回も喧嘩してきたから、相手の強さが見ただけである程度分かる。
この大会、面白くなりそうだな。
ブックマーク、評価よろしくお願いします。




