50話 アイとのデート?
アイのキャラ崩壊注意報
フィーとのデートが終わり数日が経ち、噂も程々に冷めて来たので、俺は今度はアイとデートしている。
だがデートだというのにアイの格好は私服というより完全に冒険者の格好をしている。
「なあアイ、これから何処行くんだ?」
「ここ」
アイは手に持っていた紙を見せた。
「これは、依頼書か?」
アイが持っていた依頼書を読むと、どうやら採取系の依頼のようで、洞窟に生殖する花を取ってきて欲しいと書いてある。
「ここの洞窟にある湖がとても綺麗らしい。だから、行きたい」
成る程、目的は報酬じゃなくてそっちの方か。
何かアイらしいな。
にしても報酬の方をよく見ると採取系の依頼にしてはバカに報酬額が高い。
「何か報酬額が高いな」
「この依頼の花の近くに住んでいる魔物が手強いらしい」
だから報酬額がこんなに高いのか。
しかし、丁度いいな。
俺のグローブの性能を試すのには打ってつけだな。
「面白そうだな。行ってみるか」
「うん」
こうして、俺とアイは二人で綺麗な湖があるという洞窟に向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ここがその洞窟か」
俺とアイは依頼の花がある洞窟に来た。
見た目は普通の洞窟だな。
「それじゃあ行くか、アイ」
「う、うん」
俺の言葉にアイは若干たじろぎながら言った。
どうかしたんだろうか。
俺は少し気になったが気にせずアイと共に洞窟へと入った。
「中は結構暗いな」
「う、うん」
俺は洞窟を歩きながら言った。
洞窟の中は俺が灯している明かり以外は真っ暗で少し洞窟周りの鉱石が光っているくらいだった。
たまに天井から落ちてくる水滴の音が洞窟中に響いて何かホラー感がある。
明かりを持ってきて正解だったな。
「..........なあ、どうかしたのかアイ?」
俺はこの洞窟に入ってから何故か若干震えているアイに言った。
終始俺の腕に抱き着いてきて離れようとしない。
「な、何でも、ない」
いや、何でもあるだろそれ。
何か生まれたての小鹿みたいだぞ。
「アイ、もしかして、暗いの怖いのか?」
俺の言葉にアイはビクッ!!と反応した。
あ、怖いんだな。
「そ、そう」
隠すのを諦めたのかアイはそう言った。
いや、何故ここ選んだ。
「何でここ選んだんだ?」
「ケンヤと、一緒に、湖、見たかった」
俺の問いにアイはそう答えた。
それを言われると何も言えないな。
アイはそこまでして俺と一緒に行きたかったのか。
だったらその気持ちに応えよう。
「アイちょっと腕離して」
「え?え、ちょっ!!」
俺がそう言ってアイが俺の腕から離れると俺はアイを背中におんぶした。
急な事にアイは吃驚していたが、問答無用だ。
「これなら怖くないだろ」
「う、うん。ありがとう」
俺がそう言うとアイは怖くなくなったんだろうが、今度は少し恥ずかしくなったのか顔を俺の背中に埋めて顔を隠している。
ピトッ!
「ひゃ!!」
天井から落ちてきたであろう水滴が、アイの首筋に当たりアイは可愛らしい声を出しながら体をビクッ!!とさせた。
「う~、ケンヤ~」
アイはまた怖くなったのか情けない声を出しながら俺の体をぎゅっと抱き締めた。
アイがぎゅっと抱き締めた事によりアイの胸が俺の体に押し付けられ、俺は違う意味でドキドキしてきた。
「と、取り合えず行くぞ」
「う、うん」
俺はドキドキしつつも今だ少し震えているアイを背負いながら先に進んだ。
「そういえば、アイは何で暗いの駄目なんだ?」
俺は今更ながらアイに聞いた。
「暗いのというより、怖いの全般駄目。昔お母さんに怖い話聞かされてそれ以来怖くなった」
そんなエピソードがあったのか。
でも何か理由が可愛らしいな。
俺はそう思いクスクスと笑った。
「?どうかした?」
「いや、何か理由が可愛らしいなって思ってな」
俺の言葉にアイは若干不機嫌になった。
「むぅ、何か屈辱的」
「わぁ!!」
悔しがるアイを見て俺は少しイタズラしたくなり突然大きな声を出した。
「ひぃぃ!!」
俺の声にアイはビクッ!!と反応してこれまた可愛らしい声を出した。
「ははは、悪い、冗談だ」
「むぅ、ケンヤの、馬鹿」
俺の冗談にアイは怒ったのか顔をプイッと背けた。
俺は何度か謝ったがそれでもアイは許してくれずへそを曲げている。
「じゃあ、どうしたら許してくれるんだ」
俺がそう聞くと、アイはこちらを向き唇を俺の顔に向け
チュッ
頬にキスをした。
「これで許してあげる」
アイはそう言ってにっこりと笑った。
逆に俺は突然のアイのキスに顔を赤くし顔を背けた。
「お返し」
俺の反応見てアイはそう言った。
これはしてやられたな。
ーーーーーーーーーーーーーー
しばらく洞窟の先に進むと何やら声が聞こえてきた。
「お、おいこの声って」
「魔物」
少し落ち着いてきたのかアイは冷静にそう言った。
やっぱり魔物か。
アイを背負ったままだけど大丈夫だろうか。 アイはこんなだから戦えないだろうが、一匹だけなら蹴りで何とかなるだろう。
最悪アイを下ろしてから戦おう。
そう思いまた先に進んでいくと俺の考えが無駄なのが分かってきた。
洞窟を進んでいくにつれて、魔物の声がどんどん増えていく。
この事にアイは若干恐怖しているのか俺の体を持つ力が強くなった。
これはアイを下ろしたら大変な事になりそうだな。
しかし魔物の声がどんどん近付いてくるが問題の魔物がまだ姿を現していない。
いったい何処にいるんだろうか?
俺がそんな事を思っていると、アイが俺の肩を叩き上を指差した。
「ケンヤ、上、上」
声を震わせながら言うアイの言葉に俺は上を向くと、そこにはおぞましい光景があった。
数十はいるだろうコウモリのような魔物の群れは赤い目を光らせながらこちらを見ていた。
俺は一匹のコウモリと目が合いお互いにしばらく固まっていると
ピィィィィ!!
高い声を出して翼を広げて飛び立つと他のコウモリ達も一斉に飛び出しこちらに向かってきた。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁぁ!!」
その瞬間俺とアイは叫びながらコウモリの群れから逃げた。
いやあれは駄目だって!何かやだ!
しかしアイを背負ったままで足場の悪い洞窟を走るのはやはり難しく、コウモリ達に追い付かれそうになった。
「くそ、ファイアーボール!」
俺は予めジェミニグローブに溜め込んどいた魔力を使ってどでかいファイアーボールを出した。
ファイアーボールは無数のコウモリ達を呑み込んだが直ぐに新しいコウモリ達が来た。
何匹いるんだよ!
「いやぁぁ!!来ないでぇぇ!!」
あまりの怖さにアイはキャラが崩壊したかのように絶叫している。
「いやぁ!雷!雷!雷!雷!雷!雷!」
等々何かが壊れたのかアイは俺の背中に乗ったまま魔法を連発し始めた。
洞窟内には雷音が響きコウモリ達を一掃していった。
やがてコウモリ達は全滅しもう何も来なくなったが
「雷!雷!雷!雷!雷!雷!雷!雷!雷!雷!」
アイの暴走は止まることはなかった。
もう魔物の悲鳴も聞こえなくなり洞窟には雷音だけが響き渡った。
「アイ!落ち着け!もう魔物はいない!」
流石にこのままでは洞窟が崩れてしまうので俺はアイを宥めた。
「へ?本当?......よかった」
俺の言葉を聞いてアイはホッとしたのか俺の背中にへたりこんできた。
あんなアイ初めて見たな。
次からはもう下手に脅かすのはやめよう。
「大丈夫か?」
「もう、無理」
俺の言葉にアイは完全にぐったりしていた。
これから先大丈夫だろうか。
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