49話 その人本物です
「ケンヤ様!!次はあれに行きましょう!!」
俺はフィーに手を引っ張られながら次の屋台へと急いだ。
「そんなに焦らなくても屋台は逃げないぞ」
俺はそんな事を言ったが実際俺自身かなり楽しんでいる。
ここ最近ダンジョンやパーティー勧誘で色々と疲れていたからたまにはこういうのも悪くない。
それからも俺とフィーは色んな屋台を巡り、気付けば二人ともお腹が空き何か食べる事にした。
「フィーはどれがいい?」
「私は..............これにしますね」
フィーが指差したのはパスタのような麺にミートソースみたいな肉が入ったソースが乗った物だ。ミートソーススパゲッティーみたいなやつだな。
「じゃあ、俺はこれにする」
俺はパンにハンバーグみたいな肉やチーズ、野菜を挟んだ、ハンバーガーみたいなやつにした。
それぞれを買って、俺達は近くにあったベンチに座り買って来た物を食べた。
「美味しいですね!」
「確かに旨いな」
俺が食べたハンバーガー擬きは地球のとは違いパンが少し固いが味はかなり旨い。
選んで正解だったな。
フィーのもパスタの麺と肉のソースが絡まって凄い旨そうだな。
俺は少しフィーのパスタ擬きに目をやっていると、フィーが俺の視線に気付いたのか
「一口食べますか?」
そう言ってフィーは持っていたフォークでパスタ擬きをクルクルと回して俺の口許まで持ってきた。
「どうぞケンヤ様、あーんです」
俺はフィーのあーんに少し恥ずかしがりながらも折角持ってきた貰ったので俺は口を開けフィーのパスタ擬きを食べた。
「ふふ、どうですか?」
「確かにこれも旨いな」
若干麺が柔らかいが味は地球のと大して変わりはなかった。
折角やって貰ったので今度は俺がお返しと言わんばかりに持っていたハンバーガー擬きをフィーの口に持っていき
「ほら、お返しに」
俺がそう言うとフィーは少し恥ずかしそうにしながら口を開き俺のハンバーガー擬きにかぶりついた。
「これも、美味しいですね」
「だろ」
俺はそう言ってまたハンバーガー擬きを一口食べた。
うん、やっぱり旨いな。
「あ、ケンヤ様。お口にソースが」
そう言ってフィーは俺の頬に手をやりソースを拭った。
ソースを拭う際に顔が近づき俺は少しドキっとした。
「はい、取れました」
ソースをペロッと舐めフィーはニッコリと笑った。
本当ドキドキさせられるな。
俺はそう思いながらもフィーの顔を見ると、フィーの顔にも俺のハンバーガー擬きのソースが付いていた。
さっきあげた時に付いたんだろうか。
「フィー、お前にもソースが付いてるぞ」
俺はそう言うとフィーの顔の頬に手をやりソースを拭った。
さっきとは構図が逆な状態だな。
拭う際にまた顔が近付きフィーの顔は若干赤くなっていた。
「あ、ありがとうございます.......」
恥ずかしくなったのか声が段々小さくなっていた。
これでおあいこだな。
俺がそう思い微笑むと、フィーも何かつられたように微笑みしばらくお互いに笑いあった。
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昼食も食べ終わり、俺達はお祭り巡りを続けた。
「そういえばフィー、今日は有名な劇団が来るんだっけ?」
「はい、時間ではもうそろそろ始まりますね。よかったら見に行きませんか?」
この世界の劇か。
中々面白そうだな。
「そうだな。行ってみるか」
「はい」
そんなわけで俺達は劇を見に行くことにした。
劇をする場所に着くとそこには既に結構な人数な人がいた。
舞台の前には幾つか席があったがそれだけでは足りず後ろ方にも人がいた。
やはり有名だけあって人気がある。
俺とフィーは何故か丁度空いていた最前列の席へと座り劇の始まりを待った。
「楽しみですね、ケンヤ様」
「だな」
フィーは劇を今か今かと始まるのを楽しみにしていた。
そんなフィーを見ていると自然と俺の顔が緩む。
しばらくすると劇の幕が上がり劇が始まった。
劇の内容は盗賊に拐われた姫が王国の騎士が助け出すという何ともありがちな話だが、フィーや俺を含め客の皆は食い入るように見ていた。
「姫!!助けに参りました!!」
「騎士様!!」
「ちっ!もう嗅ぎ付けたのか!野郎共あいつを殺せ!!」
盗賊の頭は部下にそう命じ騎士を殺しに掛かるが、騎士は盗賊など諸ともせず次々と薙ぎ倒していった。
「さあ!もう逃げ場はないぞ!」
「くそ!!」
全ての部下が薙ぎ倒され盗賊頭が追い詰められると、突然舞台から降りてフィーの腕を掴んだ。
「え?えぇ!?」
突然の事にフィーは動揺し、流されるままに舞台へと上がった。
「こいつの命が惜しけりゃ動くんじゃねぇ!!」
「なっ!!卑怯な!!」
おいおいこんな展開あるのかよ。
あの盗賊本物の姫を人質にしちゃったよ。
「うるせぇ!!こいつが死なせたくなかったら変な真似はするなよ!!」
盗賊の頭は首もとにナイフを当て騎士を脅した。
盗賊の人、その人本物の姫ですよ。
「不味い!このままでは彼女の身が危ない。そこの君、手を貸してくれ」
そう言って騎士は俺を見た。
え?俺?
俺は突然の事に戸惑っていた。
「さあ!舞台に上がってきてくれ!!」
騎士にそう言われ周りの観客の人にも行くように言われ俺はよく分からないまま舞台に上がった。
「いいか、私があの盗賊のナイフを弾く。君はその隙に彼女を救い出してくれ」
騎士の人にそう言うと盗賊の方に顔を向けた。
観客の人達からも、一発殴ってやれ!!や頑張って!!等声援を送ってくれている。
ここは盗賊に一発殴った方がいいんだろうか。
「では行くぞ」
騎士の人はポケットからナイフを出し盗賊の方へと投げた。
ナイフは見事盗賊のナイフに命中し盗賊のナイフが床に落ちた。
「今だ!行くんだ!」
騎士の合図と同時に俺は飛び出した。
「フィーに何すんだよ!」
盗賊の頭に一発殴り、フィーを盗賊から引き剥がし自分の肩に抱き寄せた。
「ぐぼぁ!!」
盗賊の頭は後ろに吹っ飛び気絶した。
この事に騎士の人や観客の人達は予想外のようで唖然としていた。
あれ?殴っちゃ不味かった?
「ありがとう。君のお陰で盗賊団を倒すことが出来た」
やはりそこはプロなのか、騎士の人は直ぐに演技に戻った。
「さあ、ここは私に任せて君達は帰るといい」
騎士の人にそう言われ、俺達は舞台を降りて席に座った。
そこからはまた劇が始まり姫と騎士が結ばれ幸せになりましたという所で終わった。
後々になって聞けばこの劇団は最前列の席に座った二人組は舞台に上がらせる事があるらしい。
だからあそこだけ席が空いていたのか。
この劇は何回かやったことがあるが盗賊を殴る人は見たことないらしい。
殴る流れかと思った。
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「中々面白かったですね」
「でも、もう舞台には立ちたくないな」
舞台が終わり夕方になり、俺とフィーは夕焼けの道を歩いていた。
あんな思いはもう二度と御免だ。
結構恥ずかしいし。
「でも、ケンヤ様カッコよかったですよ」
フィーは舞台の時の俺を思い出したのかクスクスと笑った。
「俺よりあの騎士の方がカッコよかったと思うけどな」
「そんなことありませんよ」
そう言ってフィーは俺の腕に抱き付いて来た。
「私にとってケンヤ様は私の騎士様です」
そう言ってフィーの顔は少し赤くなっていた。
夕焼けのせいかもしれないが俺にはこれが夕焼けのせいじゃない事が分かる。
「フィー、今日は来てよかったな」
「そうですね」
人通りの少なくなった夕方の道を俺とフィーは腕を組ながら歩いた。
今日は楽しかったな。
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