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異世界行っても喧嘩上等  作者: サザンテラス
45/73

45話 異世界の定番物

「あー、くそ、折角いいところだったのによ。邪魔すんじゃねぇよ、スーラ」


 頭をボリボリと掻きながら男は不機嫌そうに言った。

 すると後ろからスーっとスーラが姿を現した。


「そういうな、グリア。重要な会議の前に勝手に何処かにふらつくお前が悪い」 


 スーラがグリアと呼んだ男は、スーラと同じく【七罪悪魔(セブンクライムズ)】の一人である。

 役職は強欲で気性は荒いが意外と律儀な所がある。


 スーラはグリアと呼ばれた男の傷を負った体を見て顔をしかめた。

 

「それに、このままいけばやられていたかもしれないぞ」


「あ?何言ってんだ?あんな奴等にやられるわけ.....っと」


 そう言ってグリアは体をスーラの方に向けようとしたとき、若干体がふらつき手で頭を抑えた。


「まじかよ、結構防御魔法を掛けた筈なんだげどな」


「それほどあの人族達が強かったということだ。それにまだあの男が攻撃してなかったしな」


「あの男?」


「お前が最初に吹き飛ばした男だ」


「あー、あいつか」


 そう言ってグリアはケンヤの事を思い返した。

 あいつはあの場で唯一グリアの攻撃を諸に受けた男だった。

 それなのにケンヤは諸に受けた後直ぐに立ち上がり状況を見回していた。

 結構強力な奴をぶちこんだんだけどな。


「確かにあれは凄ぇな。俺の魔法を諸に受けてピンピンしてたな」

 

「あの男は他の三人と比べて特に強い男だ。お前でも一対一でやれば勝てるかどうか分からんぞ」


「へぇ~、てめぇがそこまで言うとわな」


 スーラはそこまで人を褒めることはしない。

 褒めすぎるのも相手の為にならないと思っていて、それはグリア達【七罪悪魔(セブンクライムズ)】もよく知っている事だ。

 しかもその相手が人族だ。

 そんなスーラがそこまで勧める人族にグリアは段々興味が湧いてきていた。

  

「ていうか何でてめぇがあの男の事を知ってんだ?」


「アーケがあの男のせいで任務が失敗したと聞いてな、色々と調べてみたんだ」


「成る程それでかーって、ちょっと待て」


 スーラの話を聞いてグリアが若干慌てたように言った。


「あいつがアーケの任務を邪魔したってことは、あいつは魔族の存在を知ってんのか!?」


「多分な」


「おいおい、いいのかよ。そんな奴ほったらかしにしといてよ。もし国中にバレたら俺達の計画は終わりだぞ」


 グリアは少々慌てたながら言ったが、スーラは冷静に言った。

 

「アーケの事だから言わなきゃバレないとでも思っていたんだろうが、私の目は誤魔化せない。本来なら始末するところだが少しあの男に興味があってな。それに案ずるな。もしものために手は打ってある」


「手って...........あー、そういうことか」


 スーラの物言いにグリアは若干考え込み何か思い当たる事があったのか納得した。


「そういうことだ。それより速く行くぞ。もう会議まで時間がない」


「へいへい」


 グリアはけだるそうに言って、スーラと共にダンジョンを後にした。






ーーーーーーーーーーーーーー





 俺達はあの魔族の男が空けたであろう穴に落とされ、落下していた。


「おいおい、どうなったんだ!?ダンジョンにこんな底が見えない落とし穴何てあったか!!」


 アランは未だ底が見えない落とし穴に悪態ついていた。


「だが、案ずるな。底が見えれば魔法でどうにかなるだろ。今は黙って落ちるしかあるまい」


 シルバが冷静に腕を組ながらそう言った。

 いや、冷静すぎじゃない?


「あのー」


 そんな中ミルシーが手を上げて何か言いづらそうにしていた。


「私ユニーク使いなので魔法でどうにか出来ないんですけど」

 

「あ、俺も」


 ミルシーの話を聞いて俺も手を上げた。

 ユニーク使いはスキルを持つのと代わりに魔法適性が壊滅的にない。

 だからアランやシルバの様に魔法でどうにか出来ない。

 まあ、あいつらなら何か考えてあるだろう。



「.............」


「.............」


 アランとシルバが黙り込み、互いに顔を見合わせた。

 あれ?まさか考えてない。


「お前ら早く掴まれ!!」


「早くしないと死ぬぞ!!」


 すると、アランとシルバは急に慌てだし、俺とミルシーに掴まるように言った。

 俺とミルシーは慌てて体を動かし、俺はアランにミルシーはシルバに掴まった。

 しばらくすると地面が見えてきてアランとシルバは手を地面に向け、炎と風をだし落下速度を軽減させた。


 やがて地面手前には落下速度は失われていき、綺麗に地面に着地した。


「し、死ぬかと思いました」 


 ミルシーは緊張が解けたのかヘロヘロと地面にお尻をつけた。


「あそこで気付かなかったら死んでたな」


 俺は塞がれた天井を見ながらいった。

 よく生きてたな、俺。


「ていうか今思えば何なんだよあいつ。俺達の魔法喰らって平然としてるなんて化けもんかよ!」 


「あれが魔族の力か」


 アランとシルバは悔しそうに言った。

 それも無理はない。自分が培ってきたものが平然と耐えられてしまったんだ。

 精神的にきついものがある。

 何か言ってやるべきだろうか。


「だーくそ!!次は絶対倒す!!」


「今度は遅れはとらない」


 いや、その必要はなかったな。

 悔しそうにしていたアランとシルバは次は勝つ!!と相手に対して燃えていた。

 そういえばお前らはそういう奴だったよな。

 ミルシーもそれを見て微笑んでいた。


「にしてもここは何階層だ?随分落ちた感じがしたが」

  

 アランが辺りを見渡しながら言った。

 確かに落とされてから地面に着くまで結構時間が掛かったな。


「てかおい、お前ら、あれ」


 辺りを見渡していたアランが何を見つけたのか何かを指差した。 

 俺達はその指差された方を見ると、俺達は言葉を失った。


「こ、これって」


「ボス部屋の扉だな」


 ミルシーとシルバが目の前にあるボス部屋を見てそう言った。

 まさかのボス部屋の前に落ちるって、運がいいのか悪いのか分からないな。


「どうする?行くか?」


 俺はそう聞くとアラン達は考え込んでいた。


「う~ん、ここが何階層か分からないから危険は犯したくないが」


「行かなければ地上に出られんしな」


「行くしかないですよね」


 どうやら意見は決まったな。

 因みに俺も行った方が良いと思っていたから文句はない。

 

「それじゃあ、行くぞ」


 アランはそう言って扉を開けた。

 扉はゆっくり開き俺達は武器を構え息を飲んだ。

 中にいたのは黒い鱗に黒い翼を持ったゲームでお馴染みのあの魔物だった。


 ギャアォォォォ!!


 高々と威嚇の咆哮を挙げるその姿は俺達の武器を持つ手を強く握らせる。


「ドラゴンかよ」


 俺は高々と咆哮をあげるドラゴンを見て一人そう呟いた。

 ここにきて異世界の定番物かよ。

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