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異世界行っても喧嘩上等  作者: サザンテラス
41/73

41話 え?シルバさん、まじ?

 第十一階層へと降りた俺達は転移結晶で登録を済ませいざ帰ろうとしていた。  

 

「にしても十階層まで案外速く行けたな」


 登録を済ませたアランが俺達に言ってきた。


「確かにな、もっと掛かるもんだと思ってた」  

  

 一日で最高到達の三分の一まで来たんだからな。

 意外とあと二日くらいで行けたりしてな。


「だが、ここからが困難な道のりになるかもしれないな」


 俺達に釘を刺すようにシルバが言った。

 まあ、それも一理あるな。


「それもそうかもな。じゃあ今日は明日に備えてゆっくり休もう」

 

 そう言ってアランが転移結晶を発動させようとした時

 


 キャァァァァ!!



 その瞬間奥の通路から女性の叫び声が聞こえた。

 それを聞いた俺達は顔を見合わせ無言で頷きながら悲鳴がした方へと急いだ。






ーーーーーーーーーーー






 向かった先には一人の女性が三体のオークデーモン達に囲まれている光景があった。

 オークデーモン達に囲まれているその女性は恐怖からか一歩も動けずにいた。 

 襲われる一歩手前だな。


 このままでは間に合わないので、俺達は走りながらオークデーモン達に攻撃をした。


「火炎弾!」


「風斬波!」


「フレイムランス!」


 俺達の攻撃はそれぞれのオークデーモン達に直撃し、オークデーモンは地面に倒れふした。

 何とか間に合ったな。

 

「大丈夫ですか?」


 アランは助けた女性に声を掛けたが女性に反応はなかった。

 その女性は黒い髪に黒目とこの世界では珍しい容姿をしているが、顔は整った清楚な感じの顔をした美人な人だった。

 だがそんな美人な顔とは裏腹に格好はボロボロな布を合わせたようなもので、その格好はいかにもダンジョンの前で見た奴隷そのものだった。


「あのー、大丈夫ですか?」


 アランはその女性に何度か呼び掛けると、女性は意識が戻ったのか、はっ!!となってこちらを見回した。


「え、えっと貴方達は?そ、そうだ!オークデーモン達は!ってえぇ!!」


 そう言って女性は辺りをキョロキョロとして、死体となっているオークデーモンを見て驚いていた。  

 どうやらさっきの事は覚えていないようだ。


「安心してください。俺達は別に怪しいものではありませんよ。オークデーモンは俺達が倒しました」

  

 そう言ってアランはにっこりと笑った。

 女性はアランの笑顔を見たせいか、少し落ち着きを取り戻していた。

 こういう時のこいつの笑顔って便利だな。

 俺なんかがやったら更に怖がりそうだな。


「そうなんですか。助けて頂いてありがとうございました」


 女性は立ち上がりお礼を言いながらお辞儀をした。  


「気にしなくていいぞ」


「そうですよ。当然のことです」


 俺とアランはそう言った後、俺は女性の格好を見ながら言った。


「悪い、一応聞いておくが貴方は奴隷だよな?」


 俺の言葉に女性は顔を曇らせていたが、決心したのかおもむろに口を開いた。


「そうです。私は奴隷でした」


「でした?」


 俺はその女性の言葉に引っ掛かった。

 でしたってことはもう奴隷じゃないのか?


「よければ教えてくれないか?何であんたがここで襲われていたのかを」 

      

 女性は少し黙り込んだ。

 

「分かりました。お話しします」


 女性の話を纏めると、

 女性は奴隷商で冒険者達に買われ一緒に荷物係としてダンジョンに潜っていたらしい。


「荷物係って、見た感じ何も持っていなけどその冒険者に取られたのか?」


 見たところ彼女は手ぶらで何も持っていない。


「いえ、実は私【無限収納】っていうユニークスキルを持ってるんです」


 まさかのユニーク使いでした。

 しかも【無限収納】って便利だな。

 まさに荷物係にもってこいだな。



 そしてダンジョンに潜ってから最初は順調だったが、第十階層で会ったロックゴーレムに深手を負わされたらしく十一階層に降りた時に少し様子を見るといって少し進んだなら魔物達に囲まれ、逃げる手段として自分を囮にしてまた奥へと逃げたらしい。



「それで、そこに俺達が来て今に至ると」

 

「そういうことです」


 俺の言葉に女性は頷いた。

 

「だがそれとあんたが奴隷じゃないのと何の関係があるんだ?」


「通常奴隷は手に奴隷の紋章が刻まれるんです。それは自分の主には一切危害を加えてはならないというものです。危害を加えれば体に激痛が伴う仕組みです」


 ありがちな奴隷方法だな。


「これを解除するためには奴隷商に行って解除してもらうか、自分の主が命を落とすかです。そして私の手の甲には奴隷の紋章がありません。なので何処かで私の主が死んだということです」

 

 成る程、だから奴隷じゃなくなったのか。

 しかし、それだとこれからどうするんだ?


「これからどうするんだ?」   


「正直分かりません。奴隷じゃなくなったのは良いんですけど、生憎行く宛がありません」


 女性は悲しそうに言った。

 うーん、助けた手前このまま放っておくわけにもいかないしな。

 どうするべきか。


「だったら家の学園に来るか?」

  

 アランが女性にそう言った。


「学園って、もしかしてレクス魔法学園ですか!?」


「そうそう、俺達そこの生徒なんだ」


「え、えぇ!!」


 そういえば学園は一種族につき一校しかない超絶エリート校だったな。

 そりゃあ、驚かれるわな。 


「でも、私なんかが入れるわけないし」


「安心しろ。そこは俺が王様に掛け合ってみよう」

 

 フィーの件で色々恩を売ってあるし大丈夫だろう。少しの無理も通してくれるだろう。

 

「お、王様に!!だ、大丈夫なんですか!!お、脅しは駄目ですよ!!」


 王様と聞いて吃驚したのか女性は声を挙げた。

 てか、脅しって...............。

 見た目で判断しないで貰いたい。

 まあ、言われ慣れてるんだけどな。

  

「学園行きは確定としてそれまでがどうするかだな」


「学園行きは確定なんですね」


 女性は既に諦めたのか項垂れていた。

 

「今夏期休暇中だからそれまでどうするかだな」

  

 確かに今は夏期休暇中だから学園に入るにしてもそれを過ぎるのを待たなければいけない。


「で、でしたら皆さんのダンジョンの攻略に参加させて貰えませんか?」


 女性はおずおずと手を挙げた言った。

 え?参加?

 あんな目にあっといて平気なのか?

 

「あんな目にあったのに大丈夫なのか?」


 アランも俺と同じ事を思ったのか彼女に聞いた。


「はい!大丈夫です!ですからお願いします!!」


 女性はそう言って頭を下げた。

 なんともまあ、強い精神力だな。 

 ここまで言われたら何か無下に断りにくいな。

 俺とアランは顔を見合わせてしょうがないと言った感じで女性を見た。


「分かった。そこまで言うなら一緒に行くか」


 アランがそう言うと女性は顔を上げて嬉しそうにしていた。

 

「はい!ありがとうございます!」


「自己紹介がまだだったな。俺はアラン。よろしくな」


「俺はケンヤ。よろしく」


「私はミルシーです。これからよろしくお願いします」


 かくして新たな仲間が増えた訳なんだが、そういえばシルバはどうしたんだ?

 さっきから一言も喋ってないぞ。

 見るとシルバはミルシーを見て何やら惚けていた。


「どうしたんだ?シルバ」


 俺が声を掛けてもシルバは反応しなかった。


「.............美しい」


 シルバはミルシーを見てボソッと言った。

 へ?おい、待て今何て言った!? 

 今美しいって言ったのか!?言ったよな!?


「お、おいシルバ。お前今何て」


「へ?あ、い、いや、何でもない気にするな」


 シルバはあたふたしながら言った。

 こんなシルバ初めてだな。何か新鮮だ。

 にしてもまじかよ、これってあれだよな。

 惚れたって事だよな。


「お、俺はシルバだ。よろしく頼む」


「はい、よろしくお願いします」


 にっこりと笑うミルシーにシルバは気恥ずかしいのか視線を反らした。

 少し挙動不審なシルバにアランは疑問に思っていたが特にばれていないようだ。

 この事に気が付いてるのはまだ俺だけみたいだな。

 これは密かに応援してやるべきだろうか。


 


 この後俺達は一緒に地上に戻り、ミルシーには宿に泊まって貰う事にして、俺達は解散した。

 流石に一人で行かせるのもあれなのでミルシーを宿まで送るのに俺はシルバを指名してみた。

 一応本人は了承したが明らかに緊張して動きが固くなっていた。

 あいつ意外とピュアだな。

 

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