4話 やり過ぎた
「ハハハ、どおした!!そんなものか!!」
模擬戦が始まりレックスは開始直後に俺に接近し槍で突いてきた。
そこから槍の猛攻で俺は防戦一方と周りからはみえているだろう。
しかしそれは断じて違う。
俺はただ様子見をしていただけで別に苦戦なんてしていない。正直相手が遅すぎて俺が驚いているくらいだ。
「さっきの威勢はどこいった?」
レックスは俺が避けるので精一杯だと思い込み顔が勝ち誇っていた。
何だろう段々イライラしてきた。
様子見もこれくらいでいいだろうと思い俺は立ち止まり
ガシィ!!
レックスの槍を片手で受け止めた。
「な、くそ!!離せ!!」
片手で受け止められて驚きながらもレックスは手から引っこ抜こうとするがびくともしない。
「おいテメー」
槍を持つ手に少し力を入れながら俺は言った。
「さっきから人が様子見しているだけってのに何調子のってんだよ」
槍にヒビが入り、無意識にめんち切りを発動させた。
「へ、あ、いや、その」
俺のめんち切りにレックスは怯えていた。
「シメるぞゴラァァ!!」
俺は手に思いきり力を入れ、槍の先端を粉々に砕いた。
「ひっ!!」
フィーの前だからかレックスは大きく怯えることなく小さく悲鳴をあげながら後ずさった。
「悪かったな、ちゃんと攻撃しなくて。今からやってやるからちゃんと受け止めろよ」
そう言って俺は拳に力を入れ、構えた。
「ま、ちょ、待ってくれ!!」
レックスの言葉を無視し俺はレックスの腹を殴った。
「ぐはぁ!!」
レックスは腹を抱えながら膝から崩れ落ちてそのまま倒れようとしたが、俺はレックスの胸ぐらを掴みレックスを支えた。
「何倒れようとしてんだよ、喧嘩はまだ終わってないだろう」
そう言って俺はもう片方の手でレックスをタコ殴りにした。
「ぶぉ...ちょ....やめ..こう....さん..」
「聞こえねーなー」
レックスが降参を認めたが俺はまだレックスを殴ろうとしたが
「そこまでだ」
王様が俺を止めに入った。
「もうお前の勝ちだろう。やりすぎだ」
俺は王様の言葉に少し不満そうにしながらもレックスを離した。
そして同時に俺は精神魔法(物理)を発動させた。
俺の目は赤く光りレックスを見つめた。
「いいか、これからはフィーの好きにしてやれよ」
「...は...い..」
そう言ってレックスは気を失った。
ふぅ、何だろう今思い返したら
............................................やり過ぎたーーー!!
何だよさっきの俺、やってること只の不良じゃないか!!
これが喧嘩上等のスキルにも書いてあった言葉遣いや言動が悪くなるやつか!!
周りの人達完全に俺を見て引いてるよ!!
あんなんした後じゃ何言っても何もわかってもらえないだろーなー。
そうだ!フィーは!!
そう思いフィーの方に顔を向けると
「ケンヤ様...」
やっぱり駄目かー!!くそう、折角友達ができたと思ったのに。
「ふ、フィー、これはだな」
俺を内心絶望しながらも何とか話しをしようとしたら
「かっこよかったです!!」
「.......へ?」
予想外の言葉に俺は変な声がでた。
「凄かったですケンヤ様!!あのどうしようもないお兄様をボコボコにするなんて、正直スカッとしました!!」
あれ、フィーってレックスの事そんな風に思ってたのか。てか気付いていたんだな。レックスのシスコン。
「えっと、フィーは怖くなかったのか?」
「何がですか?」
「いや、どうしようもないとはいえお前の兄をあんなふうにして」
「その事ですか」
俺の疑問にフィーは納得した様子で
「確かにあの時のケンヤ様は少し怖かったですが、今回はお兄様には良い薬になりましたし、ケンヤ様の事ですから何か理由があるのでしょ?」
流石王の娘だけあって中々勘が鋭い。
「それは俺も思ったぜ」
横から王様が言ってきた。
「ケンヤお前さん、戦いになると性格が変わるのか?」
王の言葉に俺は驚いた。やっぱり心の中が読めるだろ。
「その顔は当たりだな」
俺の反応を見て王はニヤッとしながら言った。
「そうだな、正確には性格ではなく言葉遣いが変わるんだ。俺はユニーク使いなんだ」
俺の言葉に王とフィーは納得した顔をした。
「やっぱりか」
「そうとしか思えませんでした」
どうやら二人は既に勘付いていたらしい。絶対心の中を読めるだろ。
「にしてもお前の強さには驚いたな。想像していた以上だった」
「まーまだ本気じゃなかったけどな」
王の言葉に俺は得意気に言った。
まあ、まだ全力で殴ってなかっしな。
「そうだろうな。あの模擬戦でお前から魔力を一切感じなかったからな」
王は当然みたいな顔で言った。
え?魔力を纏うって何?
「え!!ケンヤ様魔力を一切浸かっていなかったのですか!!」
流石に気付いていなかったのかフィーは驚いていた。
いやだから魔力を纏うって何?
「あー、普通は体に魔力を纏い身体能力を高めて戦うもんだ。魔力を纏うのとそうでないのとは格段に違うからな。レックスだってしっかり魔力を纏っていたにも関わらずお前は普段の身体能力だけであれだけの事をした。本当お前なにもんだ?」
王は俺を見ながら不思議そうに言った。
てか、魔力纏うとそうなるのか。知らなかった。
「それより、模擬戦に勝ったんだからこの国に住む権利をくれるだよな?」
俺は早速その事を言うと
「あ?あー、そうだなお前にこの国に住めるようにしておく......と言いたい所なんだが」
王が少し言いづらそうにしながら
「実はここら辺にお前が住めるような場所は既に埋まってて無かったんだよな。だからケンヤ」
「学園に通ってみる気はないか?」
来たぁぁぁぁ!!
王の言葉に俺は内心喜んだ。
「学園か?」
俺は内心飛び上がりながらも平静を装いながら聞いた。
「そうだ、少し前に入学試験が終わっちまったがそこなら寮に住めるしお前と同年代な奴がたくさんいるから楽しく過ごせるんじゃないか?」
「それはいいですね!そうしましょうよケンヤ様!私もそこに通っているんですよ」
どうやらフィーもそこに通っているらしい。
返事は勿論決まっている。
「面白そうだな。行こう」
「そうか、なら急いで手続きをしよう」
そう言って王は学園の手続きをするため去っていった。
「これから学園でまた会えますね」
「そうだな」
これから楽しくなりそうだ。