3話 シスコン
王都に向かう途中俺は記憶が無いのを理由に色々な事を聞いた。
まず貨幣だが、この世界には鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨があるらしい。
鉄貨100枚で銅貨1枚
銅貨100枚で銀貨1枚
銀貨100枚で金貨1枚
金貨100枚で白金貨1枚
となっている。
ちなみに白金貨は滅多に出回る事が無いくらい凄い物らしい。
種族についてはこの世界は大陸が1つだけしかなく人族、獣人族、エルフ族の3つが大陸を3つに分けているらしい。魔人はいないのか聞いたら昔の戦争で滅んだとされているようだ。
何故そんなこと聞いたのかと言われたが、適当に誤魔化しといた。
ちなみに国同志仲は今は悪く無いらしく行きたければ何時でも行けるらしい。最も、他の領内に行きたがる人はほとんどいないらしい。
エルフに獣人かー。いつか見てみたいな。
そんなことを考えていたらいつの間にかフォールの森を抜け王都に着いていたようだ。街の周りは壁で覆われていて、近くから見ると思わず首が上を向いてしまう程だった。
門の所に門番がいたが、フィーと一緒にいたから当然の如く通された。
「すげー..........」
門を通るとそこには広い通り道に沢山の人が商売や買い物、馬車が通ったりだととても賑わっていた。
その光景に俺は思わず言葉がでてしまった。
「ふふ、どおですかケンヤ様。我が国レクスの様子は」
俺の反応にフィーは少し得意気に言った。
「あー、凄いなここ。こんな賑やかさを見るのは初めてかもしれない」
「そうですか、そう言って貰えて嬉しいです。さあ、城に向かいましょう」
俺の言葉にフィーは嬉しそうにしながら、そのまま城に向かった。
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城に着き俺は王様の前に来ていた。
目の前には王様らしき男が偉そうに椅子に座っている。
「お前がケンヤか?フィーから話しは聞いている。オークデーモンを一撃で倒したらしいな」
そう言って王様は俺の事を観察し始めた。
こいつが王様か?
見たところ年齢が20代後半で茶髪をオールバックにした見た目王様らしくない感じだな。
「今お前俺が王様だってこと疑っているな?」
俺の視線に勘づいたのか国王が言ってきた。
「い、いえ、そんなことはない、です」
俺は慣れない敬語に苦戦しながら言った。
やっぱまだ慣れないな。
「敬語なんて言わなくていいぞ。そういうのは他国の商人か部下だけで充分だ」
王様は俺の敬語に嫌そうに言った。
どおやら王様は堅苦しいのは嫌いらしい。
「そうか、それじゃあ普段通りにさせて貰う」
「それでいいんだ。ところでお前は記憶がないらしいが他に行く宛はあるのか?」
俺が普段通りに話すと王様は嬉しそうにいいながら聞いた。
「いや、記憶が無いから行く宛はない」
「そうか、だったらケンヤ。お前家の国に住まないか?お前は家の娘を助けた命の恩人だ。お前が良ければ俺がお前を暮らせるように手配するが」
王様の提案に俺は内心、来た!!と思ったがここはぐっとこらえながら
「それは嬉しいがいいのか?素性の分からない奴を国において」
「いいんだよ。俺は強い奴が好きなんだ。強い奴は国に置いておく方が後先何かといいからな。何よりフィーがお前の事を気に入っている。あいつにも男友達がいた方がいいだろ?」
どおやら王様はフィーやこの国の事を考えての提案だったようだ。意外と考えているんだな。
俺が内心関心していると
「今お前俺の事を馬鹿にしてるだろ」
王様が俺をみてまた勘づいてきた。人の心でも読めるのか?
「まあいい。それでこれからだが、さっきお前には国に住まないかと言ったが住む前にテストをさせて貰う」
「テスト?」
「そうだ、正直フィーの話だけだとどうにも信じきれないんでな、今からお前にはこいつと模擬戦をして貰う。レックス来い」
そう言って王様が呼ぶとフィーに似た金髪の爽やかイケメンがでてきた。
「どうも、フィーの兄のレックスです。よろしく」
そう言ってレックスは俺に爽やかスマイルで言ってきた。
「今からレックスと模擬戦をして勝てばこの国に住む権利を与える。もし負ければこの話しは無かったことにする。どおする、ケンヤ?」
王様の言葉に俺は少し笑みを浮かべながら
「決まっているだろう。やるよ」
暮らせるようになるなら何でもやってやるよ。
「そうか。では訓練所まで移動するぞ」
そう言って俺達は訓練所まで移動した。
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訓練所に着くとそこにはフィーの姿があった。
「ケンヤ様聞きましたよ。お兄様と模擬戦をするらしいですね。頑張ってください」
フィーは俺に近寄ってきてエールを送ってくれた。
「あー、絶対勝ってくる」
そう言って俺はレックスが待っている所まで行った。
「ルールは互いに好きな武器を使い気絶か降参したほうが敗けとする、尚殺しはなしとする」
王様が自ら立会人になりルール説明をした。
「ねぇケンヤ君」
レックスが唐突に話し掛けてきた。
「僕の妹であるフィーはさ、超絶可愛いんだよ」
「.....はい?」
急なことに俺は変な声がでた。
「わかるだろ。あのサラサラとした髪に、つぶらかな瞳、思わず撫でたくなってしまいそうなあの顔、どれも堪らないよね」
レックスは堪らんとばかりに語りだした。
何急に言い出しているんだ?
「だからさー、他の男に近付けたくないんだよね。もしフィーがその気になってしまうと思うと僕は気が狂いそうになる」
次第にレックスの目が虚ろになっていき声のトーンが下がった。
何が言いたいか段々分かってきたぞ。
「だから君にはここで負けて貰わなくてはいけないんだよね。フィーがその気になる前に」
こいつかなりのシスコンか。
「君にはここで負けて貰う」
そう言ってレックスは持っていた槍を構えた。
「あのなー、そういうのはフィーの自由だろ。あんたが好き勝手言っていいことじゃない」
「違う、フィーは僕の妹だ」
こりゃあ、何言っても無駄みたいだな。
しょうがない、こういう奴は拳で黙らせるのが一番だよな。
「しゃあねぇ、だったらそんな口が聞けなくなるでボコしてやるから覚悟しろよ」
そう言って俺は拳を構えた。
こうして、俺とレックスの模擬戦が始まった。