25話 こういうのって戦った後が一番面倒だよな
「いや~、凄かったな~。まじで何もんだあいつ」
スティールに力を与えた張本人、アーケは一人本拠地に戻り廊下を歩きながらケンヤの戦いを見て、呟いていた。
「見たところ魔法を無効化してたな。しかも有り得ない程の身体能力だったな。魔人化させた状態のあれを素手で倒すなんて、絶対ユニークスキルだなあれは」
「アーケ」
一人ぶつぶつと考えていると不意に後ろから声を掛けられた。
振り返るとそこには赤黒いロングの髪の毛に吊り上げられたどこか圧力を感じる目をした女性がいた。
「何か用かな、スーラ」
彼女はスーラ。アーケと同じ七罪悪魔の一人で役職は憤怒。
顔が何時も不機嫌に見えるがこれが素の顔で、初対面の人にはよく怖がられる。
「聞いたぞアーケ。任務を失敗したそうだな」
「あーそれね、それが思わぬ邪魔が入ってね」
「邪魔だと?」
「そうそう。僕が造った魔人が殺られちゃってね」
「何?お前の魔人を倒すほどの人間がいたのか?」
七罪悪魔は魔族の中であの男の次に地位の高い集団である。
その強さは魔族の中でも桁外れで、全員二つのユニークスキルを持っている。
アーケのユニークスキルは【精神汚染】と【悪魔使役】である。
【精神汚染】は相手の心に漬け込み相手の心に悪を芽生えさせ操る事が出来る。
アーケはこれを使いスティールを操ったのだ。
【悪魔使役】は手から黒い靄を出し包んだ相手を使役することが出来る。それは人だけではなく魔物にも有効な為、アーケは一人で何十万もの魔物を使役している。
しかし、効果はそれだけでなく使役した魔物に悪魔の力を与えることが出来る。
そうすれば普段の数倍の力を発揮することが出来る。
但し魔物相手ならば無条件で力を与えられるが、人間の場合相手の心の悪に漬け込む必要がある。
なので初めに【精神汚染】で相手の心を操る必要がある。
因みに使役した魔物は出し入れ可能なので、何時でも出すことが出来る。
「うん、僕も吃驚したよ。まさか僕の魔人が殺られるなんてね。あ、でもちゃんと回収したから安心してね。それじゃ」
そう言ってアーケは再び歩きだした。
歩く速度が少し速かったが、それはアーケがスーラの事が苦手だったからだ。スーラは真面目な性格で仲間にも厳しい。そんなスーラはアーケは苦手だった。
それを見送ったスーラはアーケが言っていた人間の事を考えていた。
「少し調べてみるか」
そう言ってスーラはアーケとは反対方向に歩きだした。
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あの後は色々と大変だった。
フィーの下に戻るとフィーは泣きながら俺に抱き付いてきた。
体があちこち痛いが俺はそれを我慢しフィーが泣き止むまでフィーを抱き締めた。
泣き止んだと思ったら今度は正座させられ、説教を受けた。
色々言われた気がするが体の痛みと正座の痺れが来てあまり話を聞いてなかった。
「もうあんなことしないで下さい!!」
最後にそう言いフィーはまた泣き出しそうになっていた。
余程心配を掛けたんだろう。俺は少し反省して分かったと言って二人で城に帰った。
城に帰るとアレックスが凄い勢いで出迎えられた。
フィーに抱き付き良かった良かったと泣きながら言っていた。普段は威厳のある感じなのにやっぱり娘が心配なんだろう。
フレイヤもそれを見て微笑んでいた。
アレックスに解放された後は今度はフレイヤが優しく抱き締めた。
いつもおっとりして何考えているか分からないがやっぱり心配だったんだろう。声が安心しきっていた。
そんな親子の涙の再開を見ていた俺はアレックス達にメチャクチャ感謝された。
「ケンヤ、今回は本当にありがとう」
「ケンヤさん、娘を助けて頂いてありがとうございます」
王様、王妃揃って俺に頭を下げる始末だ。
流石にこの事には俺は戸惑い顔を上げるように言った。
何か御礼をしたいと言われ、何がいいと言われたが正直今のところ欲しいものはない。
俺がそう言うとアレックスは
「だったらフィーを嫁に貰う気はないか?」
「え!?」
いきなり何言ってんだ!!
俺がそう思っていると
「あら、いいですね。ケンヤさん、どうか娘を貰って下さい」
フレイヤまで俺にそう言ってきた。
いやいや嫁って、こういうのはフィーの気持ちだって大事だろ。
そう思いフィーを見ると。
「け、ケンヤ様と結婚.......」
嬉しいのか顔を赤くしながら体をくねらせていた。
そういえばこの前告白されてたな。
断る筈ないか。
流石に今すぐ返答なんて無理なので、そういうのは学園を卒業してからにしたいと言って俺はこの話を打ち切った。
スティールの事については有りのまま事を話した。
魔族の事については驚かれた。
だが意外にも直ぐに信用してくれ遺体を確認するため直ぐに兵を闘技場に送った。
「にしても魔族か........」
「大変な事になりましたね」
アレックスは魔族と聞いてう~んとうねっていた。
フレイヤも顔を少し曇らせていた。
魔族についてはアレックスに調査して貰う事にして、俺は寮に帰った。
外は夜明けに近かったが、今日は学園を休んで一日休む事にした。
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一日休み次の日学園に登校するとクラスの奴等が何やら噂話をしていた。
「ねぇ、知ってる夜の闘技場の上に太陽が出てきたって」
「知ってる知ってる、近所の神父さんが見たらしいんだけど、神がお怒りだ!って言って驚いてたよ」
「でも闘技場が半壊してたんでしょ?誰かが戦ってたのかな?」
「でも誰が戦ってたんだろうね」
はい、俺です。
どうやら俺がスティールに打った大火炎弾が周囲の人に見られていたみたいだ。
まさかそんな噂になっているなんてな。
てか流石に神は言い過ぎだろ。
先程フィーから聞いたがあの後闘技場に兵士を送ったがスティールの遺体が無かったらしい。
あったのは血の跡と半壊した闘技場だけらしい。
何者かが持ち去ったと見るのが妥当なんだろうがいったい何の目的で持ち去ったのだろうか。
謎は深まるばかりだった。
「ケンヤ・コドウ」
そんなことを考えていると急にダクリー先生が声を掛けてきた。
「昨日は休んでいたがテスト勉強は順調か?」
その言葉に俺は重要なことを思い出した。
追試のこと忘れてた。
「ちゃんと合格しろよ」
そう言ってダクリー先生は去っていった。
俺はこの後、死ぬ気で勉強して何とか追試は受かった。
後日ステータスを見たら知力がC+になっていた。
ブグマ評価よろしくお願いいたします。




