22話 誘拐
翌日も俺とフィーの勉強は続いた。
最初は昨日の事を思い出し俺は少しぎこちなかったが、フィーはいつも通りだったのでいつしか俺もいつも通りになった。
「それでは今日はここまでにしましょうか」
「そうだな」
外を見れば昨日の同じくらいに暗くなってきたので、今日の勉強はここまでにした。
「にしてもフィーの教え方は上手いな。お陰で次の追試まで間に合いそうだ」
「お役に立てて何よりです」
帰り道、俺はまたフィーを城まで送るため一緒に歩いていた。
「なあ、フィー、昨日の事なんだが........」
「別にいいですよ」
俺が何を言いたいか察しているのか、フィーは俺の言葉を遮った。
「今はまだ結論は出さなくていいですよ。その内私がケンヤ様を振り向かせてみせますから」
そう言ってフィーはにっこりと笑った。
どうやら、別に焦って答えをだす必要はないみたいだな。
城の前に着き、フィーと別れて寮に帰ろうとしたとき、
「ケンヤ・コドウさんですね」
近くにいた衛兵が俺に声を掛けてきた。
「国王様がお呼びです。一緒に来てください」
王様が?いったい何の用だろうか?
俺は衛兵に付いていき王様の所に行った。
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「よおケンヤ。どうだ、学園生活は?」
来て早々アレックスは域なり俺に言ってきた。
「それなりに楽しくやってるよ。それより何の用なんだ?」
「これを見てくれ」
アレックスから宛名や差出人がない便箋を受け取り中を読んだ。
“近々、フィーリア・レクスを貰いに参上する”
中の手紙にはそう書いてあった。
「何だこれ?」
「昨日それが城に届いた。犯人は未だ調査中だが、悪戯にしちゃあ趣味が悪すぎる」
「フィーはこの事を知っているのか?」
「いや、悪戯の可能性があるから確たる証拠が出るまで伏せておくつもりだ。勿論、フィーには内緒で警備を堅くするけどな」
フィーが狙われている。いったい誰に?何の目的がある?
「それを何で俺に話したんだ?」
「お前にもフィーを守って貰いたい。流石に学園に兵を送るなんて出来ないからな。学園にいる間はお前にフィーを守って欲しいんだ」
成る程そういうことか。ようするにフィーの護衛か。
「そういうことなら、任せろ。友達を守るのも友達の役目だ」
フィーはこの世界での最初の友達だ。
もしそんな奴が学園にでたら、俺がボコボコにしてやる。
「期待している。後、念のため聞いておくが犯人に心当たりはあるか?」
「いや、心当たりはないな」
「そうか、じゃあフィーが学園にいる間は任せる。何時犯人が来るか分からないからな」
「あぁ、ところで今フィーはどうしてるんだ?」
「フィーなら今頃自分の部屋に居るだろう。外には兵をおいてあるし、何か物音がしたら直ぐに気付くようになっている」
「そうか」
それなら大丈夫か?
しかし、相手はわざわざ城に手紙を届ける程の奴だ。余程自信があるんだろう。
そんな奴に兵士だけで大丈夫だろうか。
何か嫌な予感がしてきた。
「大変です!!国王様!!」
そんな予感を胸に一人の兵士が血相を変えて飛んできた。
「フィーリア様が、連れ去られました!!」
俺の中で一番恐れていた事態が起きた。
「なんだと!兵は何をしていた!!」
この事態にアレックスも平静を保てなかった。
「それが、フィーリア様の部屋の前にいた兵士は全員やられていました。それと、部屋の中にこんなものが」
そう言って兵士は白い便箋の手紙を出してきた。それはフィーの誘拐予告の物と同じだった。
アレックスは中身をみて、次第に怒りを露にしていった。
「くそ!何てこった!」
「おい、何が書いてあった」
俺の言葉にアレックスは無言で俺に手紙を差し出した。
“フィーリア・レクスは頂いた。返して欲しければ、ケンヤ・コドウを呼び今すぐ学園の闘技場に来い”
この手紙に俺は目を疑った。
何で俺を指名してるんだ?
「ケンヤ、お前本当に心当たりはないのか?」
アレックスに言われ俺は心当たりがないか考えた。
この場合だと、犯人は俺と面識があるみたいだ。そして、俺の事を良く思っていなくて尚且つフィーに気がある奴か.........あ!!。
「まさか....」
「何か知っているのかケンヤ!頼む、教えてくれ!!」
王様はフィーが誘拐されすっかり取り乱してしまったのか、俺の肩を掴んで聞いてきた。
「落ち着いてください、あなた」
そんなアレックスの様子をみて、一人の女性が声をかけた。
「そんなんじゃ、ケンヤさんも喋れるものも喋れませんよ」
美しい金髪に何処かほんわかした空気を漂わせているこの人はどことなくフィーに似ていた。
「初めましてケンヤさん。フィーの母親のフレイヤ・レクスです。何時もフィーがお世話になっています」
フレイヤは丁寧にお辞儀して挨拶した。
フィーの母親ってことは王妃様ってことか。
「フレイヤ、今はそんな場合じゃないだろ」
「いいえ、少なくとも犯人はケンヤさんを要求しています。そう簡単に殺される何て事はないでしょう」
フレイヤは冷静にアレックスに言った。
見た目に反して以外と思慮深いのだろうか。
「それよりケンヤさん、貴方何か心当たりはあるのですか?」
フレイヤに質問され、俺はその質問に答えた。
「多分犯人はスティールっていう学園の奴だ」
「学園の人間か?何でまたそいつがフィーやお前を狙うんだ?」
「分からんがそれしか思い付かない。兎に角俺は今から闘技場に行く。誰も連れてくるなよ」
犯人は俺を指名してるからな。
「一人で大丈夫なのか?」
「心配すんな。俺は喧嘩には強ぇんだ」
そう言って俺は部屋を出ようとした。
「ケンヤさん、娘をよろしくお願いします」
「任せろ」
後ろからフレイヤに言われ俺はそう言って今度こそ部屋を出た。
さて、誘拐犯にはお仕置きをしなくちゃな。おれは静かに怒りを燃やしながら闘技場へと向かった。
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