21話 告白
どうする.........。
俺は今、人生で最大の難関に立ち塞がれている。
追試まで1週間ある。
問題数は1問一点の全部で100問ある。
内容は魔法の基礎や常識ばかりらしいが、俺は異世界人だ。
地球に魔法なんてものは一切ない。その俺からしたらこのテストはまるで意味わからない。
かといって問題全部覚えるのも無理がある。仮に一から勉強したとしても一人じゃ限度がある。
「どうするかー」
「どうかしたんですか?」
俺の言葉にフィーは反応して聞いてきた。
「いや、実はなーーーー」
俺はフィーに追試の事を話した。点数が六点については驚かれたが、前に俺が記憶喪失だと言ったことを思い出して一人で納得していた。
正直その設定すっかり忘れてたな。
「では、私が教えましょうか?」
「いいのか?」
「はい、私筆記試験は満点ですので」
満点って凄いな。
流石は王女さんってところか。
「それじゃあ、よろしく頼む」
「はい、お任せ下さい」
そう言ってフィーはにっこり笑った。
これなら追試も何とかなるか。
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放課後になり、俺は早速フィーに勉強を教えて貰うため図書室に来た。
図書室の中は広くどっかの図書館か?と思わせる程でとても静かなので勉強には打ってつけだ。
「それじゃあ、始めましょうか」
「あぁ、よろしく頼む」
そこからフィーとの勉強の時間が始まった。フィーの教え方は上手く勉強はすごく捗った。
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時は少し遡り、王城では奇妙な手紙が届いていた。
「国王様、何やらおかしな手紙が届きました」
「おかしな手紙?」
この国の王でありフィーの父親でもある、アレックス・レクスは兵士からその手紙を受け取った。
それは差出人の名前もなく、宛名の名前すらなく白い便箋に入れらただけだった。確かに少しおかしくある。
アレックスは便箋から手紙を出し読み始めた。すると段々顔が険しくなり手紙を持つ力が強くなった。
「おい、今すぐこの手紙をだした奴を調べろ。どんな手を使ってもいい」
「はっ!!」
アレックスの言葉に兵士は敬礼をして去っていった。
さて、もしこの手紙の書いてあることが本当なら大変な事になってきたな。
アレックスは再び手紙に目を通した。
“近々、フィーリア・レクスを貰いに参上する。”
どうしたもんかな.........。
王は一人考えを巡らせていた。
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そろそろ暗くなってきたので、フィーとの勉強は終わりになった。
フィーはまだ大丈夫というが、女の子を暗くまで残らせるわけにはいかないからな。ましては王女だ。下手に残って変な噂をたてわれたらフィーに悪い。
外は少し暗いので、俺はフィーを近くまで送ることにした。
外はまだ夏手前とはいえ少し肌寒さを感じた。
「ケンヤ様、その、手を、繋いでもいいですか?」
帰り道の途中フィーは少し恥ずかしそうにしながらそんなことを言われたので、俺は二つ返事で了解して手を繋いだ。
「ケンヤ様の手、暖かいですね」
「そうか?」
「はい、とっても暖かいです。でも....」
そう言ってフィーは俺に身を寄せてきた。
「こうすれば、もっと暖かいですね」
自分でやってて恥ずかしいのかフィーの顔は少し赤くなっている。俺も腕にフィーの大きな胸が当たってドキドキしている。
「そ、そうだな。でもいいのか?こんなところ人に見られたら」
「安心してください。この時間帯はあまり人は通りません」
そうですかい。しかし何か今日のフィーやけに積極的じゃないか?
人がいないからか?
「私だってアインさんには少し嫉妬してるですよ」
俺の考えを察したのか、フィーは唐突にそう言った。そう言えば中間試験の時はアイはずっと俺にくっついてたな。
これはその仕返しという奴か。
「私だってケンヤ様の事が、す、好きなんですからね」
自分で言ってて恥ずかしくなったのか、フィーは顔を赤くしながら顔を背けた。
顔を背ける時に髪が風で俺の方になびき、甘い匂いが伝わってくる。
俺もその告白を受け今顔を赤くして、言葉が出ずにいた。
アイの時はいきなりであのタイミングだったからいまいち実感が湧かなかったが、こういう場面で言われると死ぬほど恥ずかしいな。
暫く沈黙が続き、城の前まで着いた。
「そ、それではケンヤ様、また明日学園で」
「あ、あぁ」
フィーはそう言って城の中へ小走りで行った。
「あ、ケンヤ様!」
途中フィーは立ち止まり俺の方へ振り返った。
「勉強頑張りましょう」
先程の赤くしていた顔が嘘のような明るい笑みを浮かべ、城の中へ入っていった。
それはまるで闇夜を照らす月の如く明るく神々しく見えた。
急なフィーの笑顔に俺はそれに少し見惚れていた。
辺りは静寂が走り、風の音だけが聞こえた。
これから王様はアレックス呼びになります。
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