20話 悪魔の囁き
街案内から翌日クラス替えが行われた。
朝、校舎の前に試験の結果が貼られていた。
俺は全勝したので勿論Aクラスだ。
他にもフィーやアラン、シルバにアイもAクラス入りを果たした。
戦績が俺に敗れただけで全員9勝1敗なのだから当然と言えば当然だ。
結果発表の表を見ていたらスティールがBクラスとなっていた。
この事に周りの人は落胆しているだろう。唯でさえ期待されていたのだ。スティールの評価はだだ下がりだ。
因みにスティールはこの結果に納得がいかないのか今日は学園に来ていない。
結果も見終わったので俺はAクラスに入るとフィーとアイがいた。
「ケンヤ様、また一緒のクラスですね」
「よろしく」
「おう、またよろしくな」
三人で一緒のクラスになれた事を喜んでいると、
「おっす!ケンヤ、また一緒のクラスだな」
アランが後ろから俺の肩を組ながら言ってきた。
「これからよろしく頼むぞ」
その後ろからシルバも相変わらずの少し厳つい顔で言ってきた。
やっぱり少し厳ついよな。これで友達いるのだろうか。
俺の言えた事じゃないけどな。
皆で少しの間雑談をして授業になった。
「これから筆記試験の答案を返す。簡単な問題なだけあって例外はいるが全員かなりよく出来ていた」
ダグリー先生が筆記試験の答案を返してきた。
俺は答案を受け取り点数を見た。
「ろ、六点.......」
正直この点数は酷い。
因みに平均70点だ。高すぎじゃね?
俺の点数の低さがよく分かる。
「教師やっててこんな点数初めてみたぞ」
ダグリー先生にも呆れられた。
まあ、点数は兎も角実技試験で結果を残したんだ。別にいいか。
「因みに赤点は来週補習で追試をやる。内容はこのテストと同じ問題だからせめて平均点とれるまでしっかり覚えておけ」
まじかい。補習あるのかよ。
しかも1週間でこの問題全部暗記しなきゃいけないのか。
「もしその追試で平均点いかなかったら?」
「永遠に追試だ」
嘘だろ、永遠に追試かよ.......。
この時俺は既に諦めかけていた。
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「クソ!クソ!何でこの俺が!!」
スティールは一人、自宅の自分の部屋で一人暴れていた。
理由は中間試験の結果である。
「何でこの俺がBクラスなんだ!!しかも寄りによってあの男がAクラスに!」
あの男とは自分を完膚なきまでに叩き潰したケンヤ・コドウの事である。
あの男は俺を周囲に恥をかかせた挙げ句、フィーリア様に俺を近付けないように何らかの魔法を掛けた。
あの男さえいなければ俺はこんなことにはならなかった。
スティールの中にはケンヤへの憎悪ばかりが募っていった。
「彼奴さえ!!彼奴さえいなければ!!」
“だったら始末すればいい”
スティールの訴えに応えるように、スティールのいる部屋の何処からか声が聞こえた。
「だ、誰だ!」
スティールは声の主を探そうと周りをきょろきょろと見回したが誰もいない。
「ここだよここ」
すると、突如としてスティールの目の前に頭に角が生えた人間が宙に浮きながら現れた。
「やっほ~」
その男は手をヒラヒラと振っていた。
スティールはこの男を見て酷く混乱していた。
「な、何だお前は!!」
「僕は魔族、七罪悪魔の一人、【怠惰のアーケ】よろしくね」
アーケの自己紹介にスティールは更に混乱した。
「ま、魔族だと!馬鹿な!!魔族はとうの昔に滅んだ筈だ!!」
「いや、目の前に実際にいるじゃん」
アーケは自分を指差して言った。
「だから、魔族は滅んだ筈だろう!!」
スティールは理解出来ないのか混乱したままそう叫んだ。
「まあ、そんなことより君、力が欲しくないかい?」
このままでは何を言っても無駄だと思ったのか、アーケは話題をすり替えるように言った。
「ち、力だと」
「そう、力があれば君をこんな目に合わせたあの男を、ケンヤ・コドウを殺すことが出来る」
「ケンヤ・コドウを......」
「上手くいけば、あの王女様も手に入るかもしれない」
「フィーリア様を............」
アーケの言葉を聞き、スティールの心は揺れ始めた。
まるでアーケに誘導されるかのように。
段々とスティールの目の色が変わっていった。
「どう?力が欲しいかい?」
「欲しい!力が欲しい!」
目の色が完全に変わりスティールは声を荒げながら言った。
「では君にこの力を授けよう」
そう言ってアーケは手から黒い靄の様なものをだしスティールを包んだ。
「さーて、これから楽しみだな」
黒い靄がスティールを包むのを見て、アーケは不適に笑った。
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