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つかみ取りたいの

作者: ヒルドイド

パソコンの練習がてら、ザザっと書き上げました。

誤字・脱字がありましたら、申し訳ございません。

 まさに『掃き溜めに鶴』

 場にそぐわない上等のバラみたいな男。同性にすら遠巻きに見られていた。


 25歳以上なら誰でも参加出来るお見合いパーティー。しかも今日は男性の年収制限がついてるエグゼクティブタイプじゃないから、スーツ姿じゃない男もけっこういる。

 そういう感じだから彼女もできないのよね~なんて思うけど口には出さない。

 アパレルメーカーの服ならともかく、どこのか分かんないようなのや、トレーナーの首元からシャツの襟出しちゃってる人には、申し訳ないけどお引き取り頂きたいのが本心。

 男よりは安いけど、一応女も会費払ってるの。


 友人に誘われて初めて参加したお見合いパーティー。

 男女差がある会費制だから、てっきり立食形式かと思ったら飲み物すらなかった。

 おかげで終わるころには口の中パサパサ。口臭だってきつくなっちゃうわ。

 そこで学んで以降、私の鞄にはタブレットが必ず入っている。


 今回は幼馴染の容子と一緒に来ていた。容子は前々から参加したがっていて、ようやく2人の休みとパーティの日程が合っての初参加。

 私はたぶん4回目? 今じゃ趣味にもなりつつある。

 気合の入った容子は、今日のためにわざわざインポートショップで買ったワンピースを着てきた。レトロなデザインで可愛くも大人っぽくも見える。

 でも今日は会費500円の誰でも参加なOKな残念パーティー。ワンピースがもったいない。お金も気合も化粧ももったいないよと話していた。


「そんなことないじゃん」

 容子の視線の先には、掃き溜めに鶴が立っていた。正確には、男がひとり腕を組み壁にもたれて立っていた。

 男だけじゃなくて女も掃き溜めにしてしまうぐらいの、綺麗な男の人。

 上等なスーツ。ストライプ柄じゃないのも好み。身長は180センチないぐらいかな。もう少し高ければ芸能界にだって入れそう。でもそんなに高くない方が私は好き。

 まだ始まってもいないのに、彼に女が2人話しかけていた。

「私たちも行く?」

 先を越されたくないみたいで容子が訊いてくる。

「大丈夫だよ、始まれば1対1で喋れるから」

 そう、必ず彼と話せる。

 私は、本当は容子じゃなくて自分に言い聞かせていた。

 今焦って彼に近づいても、みっともない印象を与えてしまう気がする。婚活に熱心な女だと思われたくない。好印象を持って貰うためにはさり気なく近づかないと。

 容子みたいにちゃんとした服着て来るんだった。メイクも手を抜かないで、付けまつげも付ければ良かった。


 彼を捕まえたい。


 見た目に自信があるわけでもない。性格は、まぁ普通に問題ない程度だと思いたい。家事も料理もソコソコ。仕事は一応正社員だけど、そんなのアピールポイントにはならない。

 まずは自己紹介からパーティーは始まった。会場には椅子が向い合せで円状に並べられており、1人ずつ椅子に女性が座り、向かい側の空いた椅子に男性が順番に回りながら座って、お互いに挨拶をするというもの。1人につき2分間。男女18人ずついるので、それだけで30分以上かかる。

 あらかじめ参加者には、今回参加している人のプロフィールシートが配られていた。番号・氏名・年齢と趣味特技の4項目が書かれている。

 始まるまでの短い時間と、彼が私の前に回ってくるまでの間に、私は彼と一緒になれる方法を考えていた。他の男のプロフィールなんてどうでもいい。上の空でテキトーな受け答えをする。

 興味のない男との2分は長いけど、彼が回ってくる2分間隔は早く感じた。


 いよいよ彼が私の前に座った。

「はじめまして」

「よろしくお願いします」

 椅子に腰かけながら、お互いに軽く会釈をした。

 彼の胸元の番号札は11番。私は6番。


 11 宮城 啓介 27歳 スノーボード

 6 塚田 江美 27歳 映画鑑賞


「宮城さん」

 小さく手招きをして彼の名前を呼んだ。

 口元に手を添えて内緒話をする仕草をすると、彼が上半身を傾けて顔を少し近づけてくれた。

「もし気に入った女性がいなかったら、私を指名してくれませんか?」

 隣の人に聞こえないように、小さな声で話す。

 彼は上目づかいに私を見た。

「どういうこと?」

「幼馴染と一緒に参加したんですけど、カップルになれれば高いディナー奢る約束してるんで負けたくないんです」

 最後に両手をあわせてお願いポーズをとった。他の人に怪しまれないように一瞬だけ。それに奢る話は嘘じゃない。ディナーじゃなくて飲み代だけど。

 彼の視線が私の胸の番号を通った後、手にしたプロフィールシートに移る。

「いいよ。それと、敬語はやめない? 同い年みたいだし」

 笑顔で提案され、ほっとした。

「うん。でも良い人がいたら無理しないでね」

「それはお互い様でしょ」

「あ、そっか」

 クスクス笑い合う。

 あっという間の2分で、彼は隣の席に行ってしまった。


 少しの休憩を挟んでフリータイムになると、彼は大勢の女に囲まれてしまい話せるチャンスなんてなかった。

 彼のところに行けない私を含む数人の女は、残りの男大勢と話をしなければならなかった。楽しかったけどね。容子は彼のところに頑張って行っていた。



「今回は稀にみる激戦でしたー。なんと1組のみ!」

 マイクの声が会場に響く。いよいよ司会の男性が、最後の投票で成立した唯一のカップルを発表する。

 もちろん私は11番を記入した。

 会場が暗くなり、ドラムロールみたいな音を司会の男性が口で言う。あまりにも下手なので、会場に小さい笑いが起こった。


「じゃじゃーん! 11番と6番、宮城啓介さんと塚田江美さんです。おめでとうございまーす!」

 照明が戻され、明るい会場で疎らな拍手がされた。手を叩いていない人が結構いる。

「え? 江美6番なの? なんで?」

 隣にいた容子に捲し立てられたけど、司会者から壇上に呼ばれてしまったので答えずに向かった。


 とりあえず第一段階は突破したなー。やるじゃん私。

 小さい階段を上って、壇上で彼と向き合った。

 お互いに笑顔で、まるで結婚式の新郎新婦のような気分だった。


 私は彼と結婚すると思う。

 そうなるように頑張るの。

お見合いパーティはなんちゃってです。

事実とは異なることも多々あると思いますが、フィクションということでご了承ください。

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