二人の従者へ圧視線
大変遅くなって申し訳ありません。
一ヶ月以上ぶりの投稿ですが、よろしくお願い致しますm(__)m
草原に風が吹き抜ける。王妹殿下の頭上にも。そして、王妹殿下に付く二人の従者の頭上にも。
風に揺れる木の葉が一際大きな音を出したその頃。
「……それにしても」
冷静さを取り戻したアンリは独り言のように、前を向いたまま、ぽつりと呟いた。
「俺の後ろから、圧をすごく感じるんだが」
一見無表情、しかし、背中を冷や汗が伝うアンリである。
「……んー、矢印が刺さってくる感じがするねぇ」
ディーも一見笑顔だが、よく見ると、口の端がヒクリと引き攣っている。
「……後ろ、見たくないんだが」
「見たら確実にダメージ受けるからねぇ」
「主に心にな」
「痛いよねぇ、刺さるよねぇ」
ディーの言葉に深く同意を示すアンリ。深々と頷いてみせる。
ディーはアンリを見て、無邪気に微笑んだ。
「このまま無視しよっか!」
「そうだ……いや、駄目だろう。無視をしては」
「一瞬、賛成しかけたクセにッ!」
アンリはディーへの無視を決め込み、前方の王妹殿下に注意を向ける。
王妹殿下達に何ら変化はない。彼女達は本当は動いていないのではないか、と疑いたくなる程である。
アンリは続いて後方に、恐る恐る注意を向ける。顔を動かさないよう最大限努めつつ。
距離は今のアンリと王妹殿下達くらいに離れた、アンリ達の後方。
そこに、青と緑の背景に異常に浮く薄桃色のメイド服を纏った、ニメートル級の筋骨隆々たる大男が、木陰に身を潜めながら、アンリ達に「困ったなぁ」という目線を送っていた。
「桃色……」
アンリは脱力して、額を木に打った。
「ついに見てしまったね、サムを」
「クッ……! 強烈だな、今日も」
アンリ達の後方にいるメイド服の大男は、王妹殿下が住まう屋敷で庭師を勤める、サムという名の、立派なアンリ達の同僚である。
彼に女装の趣味はない。なので、女性になる努力を一切していない。化粧はもちろん、髪型だって茶色い地毛のままだ。
ならば何故、メイド服姿なのか。
それはサムという男が、恋する乙女の想いを無下にしない、懐深きマッチョだからである。
彼に想いを寄せる少女は、特殊な愛の表現方法を有していた。裁縫の得意な彼女は、サムを思うと熱に浮されたかのように服を作る作る。それはもう生物を超えた早さで。彼にピッタリのメイド服を。
何故かは分からない。ただ、寸分の狂いなく作り上げる技術と、惜しみなく使用される材料からは確かな愛が感じられる。
そんな彼女の名はイーリー。ついたあだ名は「メイド服で愛を語る女」。
そして、イーリーの愛に、ただ、右手の親指を一度だけ上げ、黙ってメイド服に袖を通す。それが漢の中の漢、サムなのであった。
余談だが、巷ではイーリーの確信犯という説もまことしやかに噂されている。
さて、サムという必殺の衝撃からようやく立ち直ったアンリは、再びサムに視線を向けた。
庭師であるサムが何故ここにいるのか。アンリは確信といっていいくらい、予測がついていた。
アンリの横にいる、この、金髪のサボり魔を連れ帰るために決まっている。
しかし、サムはアンリ達に近づこうとせず、遠くから困惑の視線を向けていた。
何故なのか。
それは、サムが目で語ってくれた。
「わぁ……、隠れんぼごっこなんてして、二人はホントに仲良しさんだなぁ。自分がお邪魔したら悪いかなぁ」
「いや仲良くないから! 隠れんぼなんてしてないから! 速攻で差し上げますから!」
目には目で語るアンリ。
良い漢は目だけで語り合えるのだ。
アンリはサムに目線で切実に訴えた後、実に鮮やかな手際で事を済ませた。
音にしてみれば、たった三音。
ディーに向き合うと、「ドスッ」と、鋭く鳩尾に拳を打ち込み。
「ウッ」とディーが呻くのを聞き届けながら、彼の体を担ぎ上げ。
そして、サムの下へ「ペイッ」と、放り投げた。
サムは見事ディーをキャッチし、小脇に抱えるとアンリに向かって親指を立てた。
アンリもサムに向かって、親指をビシッと立てる。
無事に事を成した漢達の心の会話であった。
約一ヶ月ぶりの投稿なのに、内容の三分の一が脇役の説明……。
「……いや、どうでもいいわッ!」
と、我ながら思ってしまいました。
でも書きたかったんだもん、マッチョ。
自問自答の日々です。