第4話:トマトが空を飛び、鍬が恋をした
「――空飛ぶトマト要塞、発進しましたァッ!!」
村の中央広場で、空中を猛スピードで滑空する超巨大トマトが出現した。
「またか……また誰かの妄想か……!」
俺は額に手を当てて天を仰ぐ。
最近のファンタジアル村、想像暴走事件が日常茶飯事になっていた。
原因は明確──村人たちが“想像の力”に目覚めはじめているからだ。
「オレや……すまん!ワイや!トマト要塞、ワイのせいや!」
声を上げたのは、例の筋肉農民、アーノルド。
「どういうことだよアーノルド!なぜ空を飛ばした!!」
「想像したんや……“もっと効率的に収穫できたら”って! ほんで想像してもうたんや……空飛ぶ自動収穫トマトマシーンをな!!」
「結果、どう見ても兵器なんよコレ!収穫する気ないだろ!?」
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鍬、目覚める
さらに問題がもう一つ。
アーノルドの腰にぶら下がった鍬──
通称**“マッスルドリーム”が、空飛ぶトマト要塞を見てうっとりしている**のだ。
「……なんや、あれは……赤くて、丸くて、回転しとる……惚れてもうたんや……」
「喋った!?鍬が恋してる!?マッスルドリームお前感情あったのか!?」
「鍬にだって、恋する自由はあるんやで……」
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鍬、飛ぶ
次の瞬間、アーノルドが叫んだ。
「行け!マッスルドリーム!愛を掴み取るんや!!」
「鍬ァアアアアアアア!!!」(全員)
鍬が飛んだ。空を裂き、赤いトマト要塞へと突っ込んでいく。
……が。
「――やっぱ無理や!恋なんて儚いもんやな……」
鍬は真っ二つになって戻ってきた。
「鍬ああああああ!!!」
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だが、鍬は進化する
誠一「よし、俺の想像力で修復する!」
俺は想像した。**“恋の傷を乗り越えた、強くなった鍬”**を。
【進化完了:マッスルドリームMk-II ~ラブフォージド・バージョン~】
金属光沢の赤いボディに、翼がついていた。なんか羽ばたいていた。鍬なのに。
アーノルド「うおおおおおお!!!お前、愛で進化したんかぁあああ!!」
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愛の鍬、大地を耕す
マッスルドリームMk-IIは、その日からまた大地を耕しはじめた。
かつての恋を胸に秘め、無言で土を掘る。
飛びはしないが、力強く──しなやかに──愛を知った農具として生きている。
モフモフ「なんやねんこの回、情緒不安定やな……」
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そして村は、少しだけ豊かになった。
次回予告
想像力が現実になる世界で始まった“妄想訓練”は、なぜかギャグとトラブルだらけ。
村人たちの暴走に頭を抱える誠一の前に、
次に現れたのは――空飛ぶ目玉焼き!?
次回『モフモフと夢の中のマヨネーズ神』
「目玉焼きの敵は、マヨネーズやない……神や!」
妄想爆発!神、降臨!?
次回、モフモフ覚醒!?(※するかもしれない)