プロローグ 『想像力で世界救っちゃってすみません!』
俺の名前は田中誠一。32歳、独身。
市役所勤務の窓口担当で、特に夢もなければ、野望もない。唯一の趣味は、仕事中に脳内で「もし俺が魔王だったら」って考えるくらい。
……そう、俺の人生は、まあ、言ってしまえば“地味の極み”。
目立たず、頑張りすぎず、波風立てず、定時で帰る。まさに現代日本が生み出した平均の申し子。
そんな俺が、なぜ今――
牛とドラゴンのハイブリッド生物に追いかけられながら、謎の村人たちに「救世主様ァァァァ!!」って土下座されてるのか……。
話せば長くなるが、短くもなる。つまり――
寝て起きたら異世界だった。
目を開けたらそこは、布団じゃなくて藁。隣の同僚じゃなくて、知らんヒゲのおじさん。
そして開口一番、こう言われたのだ。
「おお……ついに“想像の使い手”が現れた……」
え、なにそれ。厨二?新手の宗教?寝ぼけてんの?って思ったけど、どうやら違うらしい。
この世界――「ファンタジアル村」では、**“想像したことが現実になる”**という超絶ファンタジーな法則が存在するという。
しかも、ここの住民たちは想像力がほぼ皆無。
だからうっかり「鍋が食べたい」って思っても、鍋じゃなくてナベアツが出てきちゃうレベルで不安定らしい。
で、俺。
この村では異常レベルの「想像力の持ち主」らしい。というか、ちょっと妄想しただけで現実化する。
「自動で草刈りする草刈り機……とかあったら便利だな〜」って思ったら、マジで草を自走で刈る謎マシンが登場。
しかもなぜか目がついてて喋る。
そしてそれを見た村人たちは、泣きながら言う。
「これぞ救世主の奇跡……!」
違う違う、俺はただサボりたかっただけなんだって。
こうして俺は、“想像力が現実になる世界”で、
想像(という名の妄想)で村を救う(かもしれない)男になった。
だが、安心してほしい。
この物語は感動の冒険譚ではない――
だいたいくだらない。
でも、なんか世界が救えそうな気もしてる。
たぶん。