空虚2
ふと、人の動く気配で目が覚めた。隣へ手を伸ばし、そこにあるはずのぬくもりを探したが、そこにはほんのりと温かな痕跡だけが残っている。段々と消えていく熱を指先で感じながら、ゆっくりと重い瞼を開いた。
――ああ、またか。
窓の方を向くと、あの人がベランダに立っていた。月明かりに照らされ、一人静かに夜の街を眺めるその姿は、どことなく寂しく、切ない。あの人はときどきこうやって夜に目を覚ますと、何をするでもなく外の景色をぼんやりと眺めている。
その後ろ姿を見るたび私はあの人との間の壁を感じるのだ。あの人の心には私では埋められない大きな穴があって、その穴はまるでどこまでも続いているかのように深く暗い。あの人から滲む孤独の色はいつまでも消えない。こんなにも近くにいるのに、あの人は内に秘めるものを私には見せようとせず、いつも柔らかく微笑んで隠してしまう。底に触れることができないまま、もどかしさと寂しさが募っていく。
ベッドからそっと起き上がり、あの人の元へ近づいていった。私には理解できなくても、埋めることができなくても、少しでも孤独を分け合いたい。
振り返ったあの人の冷えた体をそっと抱きしめた。