表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レッド・シティ  作者: 最上優矢
第一章 私は姉さんを選んだ
5/11

1-4

 私は話題を変えることにした。


「前の職場なんて、忘れましょう。心機一転です!

 ――とまあ、私の職場なんですけど、良かったらコンビニのバイトでもしませんか?」

「……インフォメーションの受付の仕事をクビになって、ようやく分かったんだ。あたしは接客業務、向いてない」

「そんなことないですよ。職場の環境が悪かっただけではないでしょうか。だって姉さんは悪くないんですから」


 姉さんを励ますために言った言葉だったが、姉さんは違う捉え方をしたようで、彼女は私を眼光鋭く射すくめる。


 ギクリとする私。


「……きみはあたしの何を知ってるの? なんにも知らないくせして、勝手にあたしを善人に仕立て上げないでよ」

「それは……申し訳ないです」

「うるさい。頭を下げるな、謝るな!」


 酔いが回ってきて怒りが出やすくなっているのか、それともそれまでの鬱憤を溜め込むのが限界になったのか、不意に姉さんは怒りをぶちまけ始めた。


「あたしは許されなくていい、そうやって“あなたたち”があたしを許さないんだったら、あたしも“あなたたち”を許さない……謝罪しようと、泣きすがろうと、土下座をしようと、命を代償にしようと、何がなんでもあたしは許さない。

 この世すべての善があたしに牙を向くんだったら、あたしはこの世すべての悪で、“あなたたち”に立ち向かう」


「……姉さん」


 姉さんの鬼気迫る表情に、ついに私はあとの言葉を続けることができなかった。


 肩で息をする姉さん。

 かと思えば、急に姉さんはタガが外れたように笑い出した。


 私は度肝を抜かれ、思わず少しだけ腰を浮かせた。


 姉さんの狂気ともいえる笑いは、それからピタリと止んだ。

 できるだけ姉さんを刺激しないよう、廃人のような表情の姉さんに私は「とにかく元気を出してくださいよ」と彼女の手を握りしめた。


 そのときだった。


 私が姉さんの手を握りしめた瞬間――姉さんは甲高い悲鳴を上げ、恐怖と驚きに満ちた表情で手を引っこめた。

 それにはさすがの二人のバーテンダーも、血相を変えて仲介に入った。


 今ので酔いが醒めたのだろう、そのときには姉さんはいつもの姉さんに戻っていた。


「ごめんなさい、なんでもありません。手を握られて、思わず驚いたんです」


 そう気まずそうに笑いを浮かべていたが、やはり姉さんの顔色は悪かった。

 もちろん、私の顔色はさらに青ざめていたことだろう。


 なんとなくここで話をする気も失せたのだろう、それからすぐに姉さんは「チェック」と言い、私の分まで会計を済ませた。


 私はなんとも言えないまま、姉さんとともにショットバー「レイン」から出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ