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レッド・シティ  作者: 最上優矢
第三章 私は姉さんを憎んだ

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深夜の相談

 その日の深夜、どうしても寝付けなかった私は布団から起き上がり、刑事さんに電話をかけた。


 刑事さんは電話に出るなり、舌打ち。


「せっかくですので、尋ねてから電話を切ろうと思うんですが、あなたは今何時だとお思いで?」

「姉さんと喧嘩をしたせいか、眠れないんです」

「わたくし、電話を切る前に……あなたにキレてもいいですか」

「それでは本題に入りますが、あなたが良ければ、私のモヤモヤを解消する手伝いをしてくれませんか。

 正直、私の相談相手があなたでなければ、これは意味がないんです」


 スピーカーから、盛大なため息が聞こえてきて、思わず私はスマートフォンを耳元から離した。


 まあいいでしょう、と刑事さんは相談相手になることを許してくれた。

 私は今日あった出来事を、刑事さんに説明。


「私にとって、愛することは憎むことでもあるんです。それは姉さんの場合でも、同じことでした。

 私はですね、刑事さん……姉さんを愛していながら憎んでしまう自分が、とてつもなく嫌いなんです」

「……アンビバレンス、ですか。そりゃまた初歩的な悩みですね」


 刑事さんはわずかに沈黙してから、「わたくしの場合ですと」とおもむろに話し出した。


「矛盾する感情を持って思い悩むこと自体、煩わしいので、その時々に抱いた感情を優先にしていますね」

「ということは、つまり――」

「愛しているときはひたすら愛して、憎しみを抱いているときは、とにかく憎むんです。

 ――そう割り切ることができれば、愛憎なんてもんは気にならずに済みますよ」


 私は一呼吸してから、刑事さんに「しかし、刑事さん」と疑問に思ったことを尋ねてみた。


「私は姉さんを愛しているんです。それなのに憎しみを持っていたら、それは本当に愛していると言えますか」


 刑事さんは、あのですね、と苛立ったように言葉を返した。


「あなたの“それ”は思い悩むことはあれども、さして異常というほどではないんです。

 ……分かりますか、この意味。ええ、分からないのなら、教えてあげましょうとも」

「はい、よろしくお願いします」


「……あなたが姉さんと呼ぶあの女こそ、狂った愛憎の持ち主なんです」

「姉さん、が」

「いえ、訂正します。あの女の愛憎は狂っているというより、病的そのものですね。

 あの女の愛憎は、彼女の過去に由来するものなんですが……とまあ、その話はまた別の機会にでも」


 刑事さんはおやすみなさい、とだけ言うと、私の返事を待たずして通話を終わらせてしまった。

 私は一層モヤモヤとしたが、もはやどうしようもないと諦め、再び布団で横になる。


 ただひたすら寝入るのを待ち、それでいつしか私は眠りに落ちていた。

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