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それから日付は経ち、連絡も何もなかった姉さんから、一通のチャットが送られてきた。
「面会許可、下りたよ。来てほしいな」
すぐさま私は姉さんが入院している病院まで駆けつけた。
面会時間は三十分だと、私は病棟の看護師から説明を受け、面会室にて姉さんと面会。
化粧をしていない姉さんは病衣を着ていて、その顔は精神的ストレスのせいか、やつれていた。
私は椅子に座る姉さんに軽く手を挙げてから、テーブルを挟んで彼女と向かい合った。
看護師が面会室を出て行き、二人きりになる私たち。
「…………」
「…………」
沈黙が続く。
先に沈黙を破ったのは、姉さんだった。
「……もしもあたしが死んだら、きみはどうなっちゃう?」
「悲しくて……心が砕けます」
「人の心ってね、案外丈夫なんだよ。砕けそうで、砕けない」
姉さんは自分のことを言うように、唇を噛みしめた。
「心なんて、砕けてしまえばいいのにね。
……中途半端に心が傷つくから、余計苦しむんだよ。そう、拷問のようにね」
「そう、ですね」
それだけしか言えない自分を恥じる私。
姉さんは乾いた咳を何度かしてから、先ほどの話に戻った。
「あたしってね、いつ死ぬか分からないんだ。というより、すでにあたしが呪い殺した人間から呪い殺されるの。
……今呪い殺されるかもしれないし、まだ呪い殺されないのかもしれない」
「やめてください。そんな縁起でもない」
なんだか悲しくなった私は、姉さんから目をそらした。
こんな重苦しい話をするために、私は面会しに来たわけではない。
ただ私は……姉さんを元気づけたかった。
それなのに、なぜこんな話になってしまうのだろう。
私はため息をついた。
するとそのとき、姉さんは激昂した。
「目をそらさないで、ため息をつかないでよ!
……あたし、何か悪いことをした?」
「……いえ。姉さんは何も悪いことをしていないです」
動揺しながらも、私は姉さんをなだめようとした。
しかし、姉さんの苛立ちはなくなるどころか、かえって悪化していった。
「嘘つき、嘘つき嘘つき嘘つき、嘘つき!」
姉さんは面会室のテーブルを何度か拳で叩くと、絶叫を上げた。
看護師がやってくる気配。
私は焦った。
愛を伝えたい。
この愛を――伝えたい!
私は椅子から立ち上がる。
姉さんの元まで駆け寄り――私は愛を込めて彼女を抱きしめた。
一瞬だけ、姉さんは抵抗したが、それもすぐに収まった。
看護師が駆けつけた頃には、姉さんは大人しくなっていた。
けれど看護師の判断で、面会はそれで打ち切られてしまった。
私は面会室から出て行く廃人のような姉さんを見て、こらえ切れず、わっと声を上げて泣いてしまった。