31 平和でした、さっきまで。
さて、豊穣祭から一ヶ月が経った。
魔物の討伐に豊穣祭、と立て続けにいろいろなことが起きたものの、ここ最近はずっと平和な日々が続いており、ルキアス団長が私にクビを宣告してくる前に戻ったようだ。
多少の変化もあったが悪い事ではない。
まず最初に騎士団の人達と関わる機会が増えた。
フォールクローの街から戻る途中で声をかけられたのを皮切りに、第一師団・第二師団の面々とは模擬戦をしたり、私の乗馬の訓練に付き合ってもらったりした。
お陰様で今では一人で馬に乗れるようになったので万々歳である。
私は無事に惰眠を貪る生活に戻ったと言うわけだ。
……あぁ、でももう一つの変化があったな。
これは良いことか悪いことかの判断がしにくいんだけど、ルキアス団長と週一で顔を合わせることになった。
と、いうか週一でやってくるのだ、あの人。
最初はサボりのピエールをとっ捕まえに来たのかと思ったのだが、ピエールが不在の時もやってきて特に何をするでもなく私の近況を聞くと満足して帰っていく。
多忙な筈なのだが、必ず七日に一度はやってきて、ほんの数分会話をして去っていく。
いやマジで何がしたいのかが不明すぎる。
元々はルキアス団長の家でもあるので、別にやってくること自体に問題はない。
ピエールなんかひどい時、週七で来ているし。
でもヘルマンさんが用事でいない時もやって来て、戻るのを待たずに帰っていく。
そのことをヘルマンさんに伝えると、目を見開きそれからニッコリ笑って「そうかそうか」と何故か嬉しそうに言うのだ。
育ての親的には会えなくでもやって来るだけで嬉しいのかな。
親になったことがないので親の気持ちは分からないけど。
ここ最近では団長に勧められた絵本や児童向け小説なんかを寝る前に読む日々だ。
カウンセラーかな……もしくは家庭訪問かな?
まぁ、もう何でもいいけど。
正直今はそれどころじゃない。
とにかく私が言いたいのは、大きな出来事が起きた後に平和な日々が続いていたという事だ。
ナツキちゃんから学校の話を聞いて、アーサー王子との話を聞き出そうとしてはぐらかされる。
サボりに来たピエールとカードゲームに興じて、偶にやってくるレオナールさんがナタナエル副団長に連れて行かれるのを見送る。
直感的に何かを感じ取ったピエールが、ルキアス団長から逃げ去るのを呆れつつも見送る。
その後、本当にやってきたルキアス団長と少しだけお互いの話をする。
そんなありきたで、平和な日々を過ごしていた。
──そう、過ごしていた。
何故過去形なのか?
現在私は両手に魔力を封じる枷をつけられて声を出さないよう猿轡をされ、木箱に入れられているからだ。
揺れによってガラス瓶のぶつかる音、僅かな人の話し声が聞こえてくるが視界は真っ暗でそれ以上の情報はない。
膝を抱えるような姿勢で横になっている私は深々とため息をついた。
要するに、私は今、誘拐されている。
二部スタートになります。
ここまで読んでいただきありがとうございます。




