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27 アースドロップ

 こうして各々が休息を取り終え、一時間をに再び集合して森の中を進む。

 道中は聖女であるナツキちゃんの存在もあってか、魔物の姿を遠目に数匹見る程度でこちらへ襲いかかってくる事はなかった。

 

 大地の精霊、アースドロップの神殿。

 それは森を抜けた先にある広い湖の中央に存在していた。

 神話に出てくるような白い石で作られた彫刻のような柱と屋根。

 岸からは、人が一人で歩ける程度の幅の白い石の道が神殿へ向かって伸びていた。

 どうもこの場所だけ空気が違う。

 そう感じたのは私だけでは無いようで、他の団員達も周囲に目を配っている。


 風が吹いても鏡のような水面は一切波打つ事はなく、まるで鏡のようだ。

 

 そして、何かに、全方位から見られているような感じがした。


 

「あれが……」 


 ナツキちゃんの目は神殿を真っ直ぐ見つめている。

 聖女特有の何かなのかはわからないが、彼女も何かしら感じるものがあるようだ。

 そして引き寄せられるように、ナツキちゃんが一歩前に出た

 

 その時だ。


「わっ!」

「聖女様、下がって」


 ピエールが剣を抜きナツキちゃんの前へ出る。


 神殿の入り口に小さな光が灯っていた。

 それだけではなく、周囲の地面からフワフワと光が泡のように浮き上がると、入り口に現れた小さな光へと集まる。

 やがて濃い黄色の光の球体へと変化を遂げた。

 

 ここまで見れば私でも、あの光の正体が何なのか推測できる。


「あれが、アースドロップ」


 私が初めて見る精霊と呼ばれる存在。

 元の世界では完全にフィクションの存在で、仮に存在していたとしても生涯目にする事のないものだ。

 だがそんな不可思議なものを前にしても今の私は落ち着いていた。

 フルフルと小刻みに震えるアースドロップに警戒しつつも、周囲に気を配る余裕はある。

 今回は味方が多いと言う事もあるだろうが、もしかしたら青月の森での実践経験のおかげかもしれない。


 身構えていると、アースドロップが神殿の屋根の高さまで浮き上がる。

 それから眩い輝きを放ったかと思えば、周囲から「来ました!」と危険を知らせる声が聞こえてきた。


「うわ、何あれ」

 

 声のした方向以外の別の場所でもそれは姿を表し、私からそう離れていない場所でもそれは地面から姿を表した。

 土で出来たそれは辛うじて人の形をしていた。

 こちらへ一歩、動くたびに体から乾燥した土が地面に落ちている。

 

「土と泥で作ったゴーレムだ」

 

 ルキアス団長がそう言いながら手を翳すと、空中から複数の水の塊が現れた。

 そしてその水の塊は絞るように細長く形を変えると、そのまま風を斬るような速さでゴーレムに向かって飛んでいき、瞬く間に周辺のゴーレムを倒してしまった。

 しかしゴーレムは次から次へと倒した端から復活している。

 

「……これ、もしかして無限湧きってやつでは?」

「その通りだ」


 その様子を見て思わず呟けば、ルキアス団長は水属性魔法でゴーレムを無きものにしながらそう言った。

 

「僕達の任務は、このままゴーレムの相手をしてアースドロップを疲弊させることだ」

「な、なるほど」

「弱点は水属性の魔法だ」


 そう言ってルキアス団長は再びゴーレムの殲滅を開始した。

 周囲を見れば、確かに全員が水の魔法で対処している。

 精霊相手に消耗戦か……これは骨が折れそうだ。

 魔法は使えないが、だからと言って何もしない訳にもいかない。

 私は新調してもらった大剣の柄をそっと撫でてから、少し離れた場所にいるゴーレムに投擲した。

 剣はゴーレムの体の中心に突き刺さる。

 ……だが足は止まらない。


「あ、あれっ?」

「ウォーターショット!」


 その時、背後で声がしてゴーレムは水の塊に頭を吹き飛ばされた。

 振り返ればフェイラさんが「お礼は結構」とでも言うようにウインクをして、直ぐに別の場所へ攻撃に移る。

 私は剣を回収して大人しく身を引いた。

 相性が最悪だ、でもそこで諦めたりはしない。

 今度はゴーレムの足を狙う。

 思った通り足は大剣により切断され、そのままバランスを崩してゴーレムは地面に倒れた。

 しかし、直ぐに再生してまた歩き出してしまう。


「うーん」


 八方塞がりだ。

 その後も頭を吹っ飛ばしたり岩を投げたりしてみたものの、目覚ましい成果はない。

 押し潰しても斬っても再生してしまう。

 他の人は次々にゴーレムを倒しているのに、私は一体も倒せていない。


 ……いや、待てよ?


 何かが引っかかった私は、周囲をもう一度観察する。

 第二師団団員の放った魔法を受けたゴーレムはそのまま崩れて動かない。

 その代わりに新しいゴーレムが生まれている。


「あ、そうか」

 

 閃いた。

 手のひらに拳を打ちつけた私は、ルキアス団長の姿を探して側に駆け寄れば、私に気づいた団長は攻撃を止める事なく「どうした」とだけ聞いてきた。


「質問があるんですけど」


 戦いの真っ只中で場違いな発言だろう。

 だが団長はそれを怒るでもなく、一瞬こちらに視線を向け薄く口を開いた。


「……言ってみろ」

「ゴーレムは生物ですか」

「いや、あのゴーレムはアースドロップが魔力で動かしている人形だ」

「つまり生物ではなく『物』ですよね?」


 私が何を言いたいのか理解したのだろう、団長は攻撃の手を止めて私を見下ろした。

 

「……やってみろ」

 そう言ったルキアス団長の視線は、新たなゴーレムの軍勢へ向けられている。

 私は一歩踏み出した。

 浮かせていた剣を地面に突き刺し、手を前に翳して呼吸を整える。

 難しいことは考えなくていい。

 やることはいつものと同じだ。

 

「──浮かせて、投げる!」


 掛け声に合わせて、私は目の前に並んでいたゴーレムを宙に浮かせると、そのまま神殿の周りの湖へ放り投げた。

 高い水飛沫が上がる。

 叩きつけるように水面へ着水したゴーレムは……そのまま浮かび上がってこない。


「……うん」


 一つ頷く。

 攻略法を確信した私は宙に浮くアースドロップへ視線を向ける。

 その時、目が無いはずのアースドロップと視線が交差した気がした。

 カーン!と私の脳内でゴングが鳴る。

 湧き出るゴーレムと相対する私。

 

 ここからは私と精霊のタイマンが始まったのだ。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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