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【一次選考通過!】異世界司令官〜【統帥】スキルで召喚されし無敵の帝国軍よ、誇り高き軍旗とともに前進せよ!〜  作者: あるてみす
第8章

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第395話 ミラの決意

投稿を押すのを忘れていました……すみません……

 ジョヴァンニが殺されたことで、再び空席となった教皇の座。

その座を速やかに埋めるべく、コンクラーベが開催される事は……なかった。

コンクラーベをするのに必要な、前教皇からの任命状が存在しないため、始めることが出来なかったのだ。


 だが、そのまま空位にするわけにもいかず、何らかの方法で教皇の選出を行わなければならなかった。

そこで推挙されたのは、前回のコンクラーベにしジョヴァンニに敗れた、ミラであった。

彼女であれば前前教皇が選挙に推薦していたこともあり、十分資格はあるとされたのだ。


 そしてその推挙にはまた、神聖同盟の思惑も重なっていた。

教会に対抗すうるために打ち立てられた神聖同盟であったが、その本来の敵は消え去ってしまった。

そこで神聖同盟は解消か、新たな姿に生まれ変わるかを選択せねばならなかった。


 結論を言うと、神聖同盟は新たな姿に変わって存続することを選んだ。

今までの教会の対立者ではなく、新しい時代の教会のあり様を選定、共有していく国家の連合となったのだ。

その中で、イレーネの神官を務めるミラは、各国にとって最高の教皇の選択肢とみなされた。


 そのため、彼女が新たな教皇の座につくことは確実視されていた。

後は彼女の意思次第であったが、今からその確認に行こうと思っている。

俺はヴェルヘルム通り……最近名前がついた、宮殿とイレーネ湾をつなぐとおりに面している大聖堂へと向かった。


 大聖堂の前にグロッサー770を止め、俺は扉を開ける。

すると中では、ちょうどミラが祈りを捧げているところであった。

俺は彼女のじゃまにならないよう、長椅子に腰掛けて彼女が祈り終わるのを待つ。


「……」


「……」


 ミラは何も言うことなく、じっと女神像の前から動かない。

俺もまたその背中をじっと見つめて、そのまま時間は過ぎていった。

するとその時、大聖堂の扉が誰かによって勢いよく開かれた。


「お姉ちゃん! 今日も遊ぼう!!」


 入ってきたのは、戦争地などから助け出された、親を失った子どもたちであった。

彼らにこれ以上不幸が降りかからないようにと、イレーネの兵士たちが俺に嘆願してき、こうして実現していた。

中にはヒト、獣人、魔族、エルフ……様々な種族の子供がいた。


「こーら、お祈り中は静かにしてっていつも言っているでしょう?」


「えー、でも、お姉ちゃんのお祈り、つまんないんだもーん」


「そう言わないで、ね。女神様に怒られちゃいますよ?」


「……はーい。って、お兄さん、誰?」


 子供のうちのひとりが、こちらを見てそう言った。

ミラも俺の方を見て、驚いたような表情を浮かべた。

彼女は子どもたちに断り、俺の方へとやってきた。


「……来ているなら、言ってくれればいいのに」


「いや、邪魔をしても悪いと思ったんでな。でも、思わぬ邪魔が入ったようであったが」


「いつものことよ。……あの子達、なんでか知らないけれども私に懐いているから」


「良いことじゃないか。聖職者が子供に慕われるのは、それは立派な聖職者だってことだよ。子供は純粋だからね」


 ミラはその言葉に、嬉しさ半分、悩み半分といった表情でこちらを見た。

彼女はまだ残っていた子どもたちの方を見て、今日は帰るように促した。

彼らも彼女の意思に従い、すごすごと大聖堂をでていった。


「……で、何のようかしら? ご主人様」


「その呼び方、どうにかならないのか……? そう呼ばれるのはメイドたちからだけで十分だ……」


「そう。じゃあ陛下、改めて何のよう?」


「何のよう……そうだな、少し大事な用事だ。まあミラも座れ、座って話をしようじゃないか」


 ミラは俺の隣りに座り、何も言うことはないが、何かを言いたそうにしていた。

……彼女も、ジョヴァンニが処刑されたという話は耳にしているはずだ。

なにか、彼女の中でも葛藤があるのだろうな。


「先日、前教皇のジョヴァンニが処刑された。全くと言っていいほど教皇にふさわしくない人物であるが、処刑はあまりにも残酷だ。……そしてミラ、君の父親でもある。お悔やみ申し上げる」


「良いのよ、これで。あの男を父親とも思っていないしね。……それに、これで男系直系のシルヴェルトリス家は滅亡したのよ。……彼が望んでいた、神官家としての跡取りも」


「そうか。だが親子の縁は切れないものだ。そうじゃないのか?」


「……さあ、どうでしょうね」


 ミラは明言を避けたが、明らかに彼女にはいつもと違う、寂しさの色が浮かんでいた。

今の彼女には理解できないかもしれないが……親を失う、ということは自分の心にぽっかり穴が空くようである。

地球の俺は……少なくともそう感じていた。


「そんな時に申し訳ないのだが、これから新しい教皇を決定しなければならない。今、神聖同盟に加入している全国家の元首たちから、ミラ、君が推薦されてる。……どうだ、受けてくれないか?」


「私を教皇に、ね。一度はコンクラーベで負けた身だけれど、良いのかしら?」


「ああ。全員が君を推挙しているんだ、自身を持ってくれれば良い」


「……そうね。そうなのかもしれないわね」


 ミラは答えを求めるように、女神像の方を向いた。

だが像は何も答えることなく、不動のままそこに佇んでいるだけであった。

彼女は視線を戻し、一息吐いてから言った。


「……分かったわ。では、私が、ミラ=ベトラルドールが、教皇の座を引き受けるわ」


「そうか、ありがとう。……信用をなくしている教会だが、その立て直しのために、全力で奔走することを期待しているよ」


「……何を言っているのかしら? 教会の立て直しには、陛下も協力するのよ。こういう時が来たときのために用意しておいた計画にも、陛下はバッチリ含まれているわよ」


「そ、そうか。まあ、俺にできることであれば何でも手伝おう」


 こうして、ミラが新たなる教皇となることが決定された。

彼女は用意していた、教会の再構築のために、これから奔走することになる。

そんな彼女が望む教会のあり方……それはまさに皇帝と教皇が一体となった、『国教会』であった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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