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【一次選考通過!】異世界司令官〜【統帥】スキルで召喚されし無敵の帝国軍よ、誇り高き軍旗とともに前進せよ!〜  作者: あるてみす
第8章

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第393話 堕とされた教皇

 戦争のさなか、どの国からも存在が忘れかけられていたハインリヒ聖王国。

今だに教皇の座に座り続けるジョヴァンニであったが、彼はまだ復権を諦めてはいなかった。

もはや支えるものもいなくなった教皇の椅子に座り、彼は深く考え込んでいた。


 彼の周りにいた教会軍たちは、戦争に駆り出されるか逃げ出したかで、もはや誰も残っていなかった。

薄暗く換気の行き届いていない大聖堂は、神聖さなど忘れしまったかのようであった。

そんな大聖堂に、突然の来訪者があった。


 ドタドタドタ……バタン!


「なんだ……騒々しい……」


「教皇ジョヴァンニ。貴方を拘束させてもらう」


「……ルクスタント軍か。誰に向けてその銃口を向けているのか分かっているのか!」


「悪魔に向けてだと、十分に理解している。陛下もそのようにお考えだ」


 ジョヴァンニは抵抗することもなく、ルクスタント軍の捕虜となった。

手足を縛られ、目隠しと猿轡を付けられた彼は、まるで荷物かのように無造作に馬車の荷台に転がされた。

それを止めるものは誰もおらず、彼の身柄はそのままルクスタントへと運ばれていった。





 ルクスタント王国の北方には、地面が真っ赤に染まっている丘があった。

そこは植物は一切生えておらず、『死の丘』と呼ばれることさえあった。

これはかつての戦争にて放棄された兵器たちを構成していた鉄が、長い年月をかけて酸化し、土壌に染み込んでいった結果である。


 そこには、赤く塗られた大きな鉄製の十字架が横倒しにして置いてあった。

そしてその死の丘には、ジョヴァンニを乗せた馬車がやってきた。

また、ルイの乗る豪華な馬車などの馬車も続々と到着した。


 ジョヴァンニは無様に馬車から転がされて降ろされ、そこで目隠しと猿轡を外された。

獣人である彼の鼻には、土壌が発する微弱な、しかし嫌な匂いが抜けていった。

彼が顔をしかめておると、ルクスタントの兵士たちが、彼の手足を縛る縄を持って十字架の方へと引きずっていった。


「! な、何をする気だ!」


「教皇ジョヴァンニ1世、貴方はこれより十字架にかけられる。罪は、神に逆らったことだ」


「ふざけるな、聖職者たる、ましてや教皇たる私を――」


「黙れ」


 静かにそう呟いたのは、馬車から降りてきたルイであった。

その姿を見たジョヴァンニは、彼に向かって何かを言おうと口を開く。

だが何も話させないとばかりに、ルイは持っていた軍刀でジョヴァンニの頬を強く叩いた。


「……っつ!」


「教皇ジョヴァンニ1世。貴方はここに、三冠王国盟主たるルイ=ルクスタントの名のもとに、その聖なる職を剥奪する。もはや貴様は教皇ではない、一般の人間であるのだ」


「それだけの権力が、若造、貴様のどこにあるというのだ?」


「それは、神聖同盟のもたらす、神の恩寵に起因するものである。我々王とは、聖職者をも越えた存在であるのだ」


 ルイの言葉に、ジョヴァンニは愕然として声も出なかった。

彼はそのまま十字架まで引きずられ、そこでまずは手の拘束を外された。

自由になった手で逃げようともがくが、その甲斐なく兵士に取り押さえられ、金属の十字架にとり付けられた横木に押し当てられた。


「ま、まて……」


 コンッ!


「あ、あ……ああああああああああああああああ!!!!!!!!」


 ジョヴァンニの腕の骨の間に太い釘が打ち付けられ、彼はあまりの痛さに絶叫した。

だがそれでも兵士たちは釘を打つ手を止めず、ついに両腕が横木に固定された。

次に彼らは足の方に移動し、右足の甲が上になるように重ね合わせたあと、両足の甲を貫くように釘をもう一本打ち込んだ。


 これでジョヴァンニの体は完全に十字架に固定された。

もう動けず何も出来ないことを悟った彼は、泣きわめくこともせず静かに空を仰いでいた。

そんな彼の着ている服には、魔物から絞って精錬されていない状態の、酷く臭いのする油が染み込まされた。


 その状態で兵士たちは、ゆっくりと十字架を垂直に起こした。

ゆっくりとジョヴァンニの体が上へと持ち上げられ、自身の体重に耐えきれず肩が脱臼した。

十字架は完全に死の丘に対して直立するように刺され、その上には太陽が輝いていた。


 ジョヴァンニは、下に集まっている群衆をじっと眺めた。

彼はそれらに対して文句を言おうとしたが、もはやそれだけの力もなく、諦めた。

そんな彼の姿を、下にいる者たちは笑って眺めていた。


「では、神に背いたもの、ジョヴァンニの死刑をこれより執行する。執行人、前へ」


 ルイの指示により、槍を持った2人の兵士が、それぞれ左右より接近した。

彼らは片方が白色の槍を、もう片方は黒色の槍を持っていた。

白色の槍は神の裁きを、黒色の槍は罪とこれから向かう地獄の辛さを表していた。


 槍をぐっと構えた死刑執行人は、息を揃えてジョヴァンニめがけて槍をついた。

ついた槍はわざと急所を外すようにされ、肩を突き抜けて槍がジョヴァンニの体に固定された。

その痛みにジョヴァンニは絶叫し、ショックのあまりガクンと気絶した。


 その状態のジョヴァンニの周りに、次々と油を染み込ませた枯れ木が積み上げられた。

足までを覆うように枯れ木を設置した後、死刑執行人は彼に刺さっている槍をひねった。

その痛みで彼は意識を取り戻し、反射的に下を見た。


「よし、火をつけよ」


「はっ、点火します!」


 ……ボッ!


「あ、熱い、熱いいいいいいいい!!!!」


 油を染み込ませているためすぐに火が回り、その火はジョヴァンニの服に引火した。

一瞬で火だるまと化した彼は、身動きが取れないにも関わらず逃げようと体をくねらせた。

それにより更に激痛が走り、反射的に体を動かしてまだ激痛が走り……の繰り返しを彼は演じた。


 その光景を目にしたルイは、そっと目をそらした。

火の中のジョヴァンニが、彼の方を恐ろしい形相で見つめているように見えたからだ。

他の見物客も、喜びと恐ろしいさが半分半分、という表情であった。


 その後15分ほど経って、ようやく彼は息を引き取った。

後には炭化した彼の灰と、火にさらされて変色した十字架だけが残された。

この事実は、すぐに神聖イレーネ帝国へと送られ、そこからミズーリへと転送されたのであった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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