第375話 関与の証拠を探せ!
今までロイドとマクシミリアンが逆になっていました。
正しくはゼーブリック王子がロイド、ヴェルデンブラント王子がマクシミリアンです。
まだ間違っている箇所があると思いますが、少しずつ直していくので見つけ次第報告してくださると助かります。
「なに、攻撃の要請?」
「はい。目標は王城東の塔だそうです。いかがしますか?」
「王城東の塔……確かロイドが幽閉されているところではなかったか?」
「そうだったはずです。もはやルクスタント軍はロイドを処理するつもりなのでしょうか」
旗艦ミズーリに入ってきた要請に、俺は少し困惑していた。
今回の反乱の元凶であるロイドを抹殺して反乱軍の意味を無くさせることが目的なのであろうが、あまり良い手には思えない。
むしろロイドに死に逃げされては困るのだ。
俺は、この反乱を主導しているであろうロイドを生きたまま捕らえようと考えていた。
そしてこの一連の戦争の終結後に控えている、裁判所の発足に合わせ、彼を裁くつもりでいた。
勿論罪状は……国家転覆罪、である。
だがそこで問題になってくるのは、ロイドの反乱がイレーネ帝国で起きたことではないということだ。
これをそのまま裁いてしまっては、ゼーブリック王国の裁判権を侵害することになる。
その問題は、現国王のオイラーから委任して貰う形を取ることで解決すると考えている。
……ようやく、これでグレースに何度も手をかけようとしたロイドを俺の手でさばくことができる。
だがその前に、少しだけ脅しをかけてみるのもありなのかもしれないな。
少し考えた末、俺は言った。
「艦長。目標とされている塔から少しだけ外してトマホークを当てることはできるか?」
「ええ。勿論可能です」
「ではいい感じに離れた位置にトマホークを着弾させてくれ。ロイドの肝を吹き飛ばしてやろう」
「了解です。ギリギリを狙っていきましょう」
ミズーリに搭載された装甲ボックスランチャーから、1発のトマホークが発射された。
放たれたトマホークは指定された場所へと正確に誘導され、ロイドがまだ幽閉されている塔のすぐ横に着弾した。
それにより横の壁は崩落し、その振動は塔までも伝わってきた。
塔の中で待機し、反乱軍により救い出されるという場面を作ろうとしていたロイドは、ひどく衝撃を受けた。
何よりもまだ王都まで反乱軍、ルクスタント軍ともに進撃できていない中でこれほどの精度の攻撃を受けたからである。
彼は鉄格子のはめられた小さな窓から外を見、トマホークの威力に恐れおののいた。
「何だ、何が起こったのだ?」
ロイドがそうやって下を眺めていると、塔の衛兵がロイドの安全確認のために上まで上がってきた。
彼らは一応王族である彼には敬意を持って接するが、その心のなかでは憎悪の心が渦巻いていた。
ただ、彼が反乱の首謀者であると決定づける証拠がないため、捕まえるわけにも行かず何も出来ないのであった。
「ご無事ですか?」
「ああ。見ての通り元気だ。安否を確認したらもう用はないだろう? さっさと下がり給え」
「……それでは失礼いたします。それと、絶対に逃げ出そうとしたりはしませぬよう。そうなった場合、我々は殿下を生死問わず止めなければなりませんので」
「オイラーの命令か……直系の王族でもない一端の貴族が王になったからと言って、正当なる王族にそのような態度を取るとは……いつか必ず……」
そう呟くロイドを冷ややかな目で見た衛兵は、そのまま入口の扉を締めた。
前に不審者の侵入があったため周りの衛兵は強化されており、皆新型の銃を携行していた。
そのため、彼が万が一逃げそうと即刻射殺される可能性が高い。
ロイドはロイドで、何度か脱出のチャンスはあったものの全て見逃していた。
彼は民の手に救い出されることを目的としているため、逃げ出すわけには行かないのだ。
そうすれば、彼は逃亡者のレッテルを貼られ、血筋だけでついてきている反乱軍からも支持がなされなくなる恐れがある。
「はあ。本当に反乱軍はこちらまで来ることができるのであろうか……」
ロイドは別の窓から外を眺め、ため息を付いた。
その目線の先では、とある街から黒い煙がもうもうと立ち上がっていた。
その先では、今回の反乱最大の攻防戦が起こっていたのであった。
◇
「進め! 進め! この先には反乱軍の首領がいるという情報を得た! 何としてでも捕らえるのだ!」
「首領は旧貴族、ピーター子爵だ! 巻きひげが特徴だ、絶対に逃すなよ!」
「多少の後続物の破壊は致し方ない、全軍前に進め!」
進撃するルクスタント軍を迎え撃つように、反乱軍は街の中にいくつものバリケードを築いていた。
曲がりくねって雑然とした中世ぶりの町並みは防御をするには最適で、まさにパリ=コミューンの時のパリ市民たちが如くの防衛を可能とした。
だが対抗するルクスタント軍もまた、最新兵器を取り揃えているのである。
ルクスタント軍の機甲部隊の主力を務めるⅤ号戦車は、そんなバリケードをいとも容易く突破していった。
積み上げられた土嚢から土がこぼれだし、その上をⅤ号戦車は突き進んでいく。
戦車の進撃を止めれるものはおらず、いかに剣や弓、魔法で対抗しようとも装甲を貫通することはなかった。
「ピーター様! もう手前までルクスタント軍が迫ってきています! 早く脱出を!」
「おのれルクスタント軍、それに新国王派の連中め……。これでは我々の旧体制が完全に崩壊するではないか。いや、我々は国を新体制に刷新するための膿出しとして使われただけか……」
「いたぞ! あれが敵の首領ピーター子爵だ! 生きたまま捕らえるんだ!」
「もうここまで……旧体制を守り抜ことこそが護国のためだと思っていたが、世界の流れはそうではないのかもしれんな」
ピーターは喉元に杖を突きつけ、自らに向かって魔法を放った。
その魔法によって彼の頭は吹き飛び、即死した。
彼を捕らえに来た兵士たちはそれを見て肩を落とした。
「死に逃げたか……仕方がない、辺りのものを押収次第引き上げるか」
「……これを見てくれ!」
「なんだ、もうなにか見つけたのか……ってこれは、ロイドの関与の証拠か?」
「そのようだな。……これでロイドを引っ捕らえる口実ができたぞ」
ロイドの反乱関与の証拠を見つけたルクスタント軍の兵士は、その情報をすぐに本隊へと持ち帰った。
最後まで読んでいただきありがとうございました!




