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【一次選考通過!】異世界司令官〜【統帥】スキルで召喚されし無敵の帝国軍よ、誇り高き軍旗とともに前進せよ!〜  作者: あるてみす
第7章

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第369話 ミットフリートの黒金旗

おまたせしました

 オーデラ川を無事に越え、対岸に渡ったイレーネ軍。

南方の部隊もまた同様に渡河に成功し、ミットフリートは完全にイレーネ軍に囲まれた。

残ったミットフリートの防衛軍は、最後の反攻に打って出ようと画策していた。


「防衛隊長よ、現在の戦況はどうだ?」


「現状、敵軍がこのミットフリートの周りを包囲しており、我が国の敗北は刻一刻と近づいております。今回の反攻が失敗すれば、必ず我が国は敗北するでしょう」


「そうか。だがたとえこのミットフリートの街が破壊されようと、絶対に降伏をしてはならない! 我々は高潔なるエルフとして、降伏による辱めを受けるよりも死を選ぶべきだ! それはヴェストフリートを除き、この場に生き残っている全ての国王たちが賛成していることだ!」


「陛下……分かりました。現地の部隊にはそう伝えましょう。陛下は安全な場所に退避をお願いします」


 ミットフリートの防衛隊長は、国王たちの面前にて戦況の報告を行っていた。

だが国王たちはその絶望的な戦況を聞こうと、決して降伏をしようとはしなかった。

彼らは自国民を巻き込もうと、この街が破壊され尽くそうと戦闘を続けることを望んだのであった。


 それに反論できない防衛隊長は、渋々その命令を受け入れた。

だが彼は、今回の戦闘に巻き込まれて死んでいくであろう国民の命を憂いでいた。

その命は、彼が防衛隊長として最も守らなければならないものであった。


「我々は一体どこで間違ったのであろうか? 教皇を味方につけ、きっと女神様も我々に付いているはずだ。なのになぜ……」


「……陛下。恐れながら、あの教皇の背後に女神様が付いていることはないと思います。それに我々も教皇を単なる金稼ぎの手段程度にしか考えていなかった。神罰があったったのでしょう」


「神罰……あの教皇が偽物であったということか。よく考えればそうか、誠実なる教皇であれば自身の私服のために昇天符なんぞを売るわけがない。我々はその時点で判断を誤っていたのだな……」


「中途半端に欲を出したのが我々の敗北の原因でしょう。では私はこれにて失礼いたします。また来世でも、陛下にお仕えできるよう願っております」


 防衛隊長は部屋を辞し、自身の持ち場へと帰っていった。

その背中には、哀愁の色が浮かんでいた。





 最初の準備砲撃から4日後、午前4時のミットフリート王国周辺。

国家の、自身の生き残りを賭けてミットフリート防衛軍は最後の反攻作戦に打って出た。

まだ明けない夜の闇に紛れつつ、彼らは自身の陣地を出て進撃を開始した。


 だがその事実にイレーネ軍が気づいていないわけがなかった。

眠らずとも疲弊しない彼らの特徴を活かし、兵士たちは一晩中警戒に徹していた。

その結果が今まさに、敵の発見という形で役に立った。


「敵の陣営に動きあり……どうやら反攻に打って出るようです」


「そうか……では早急に奴らを迎え撃つ準備を進め給え」


「それに関しては既に完成しております。射程内に入り次第、敵兵はミンチ肉となることでしょう」


 渡河後に建設された3つの野営地の周辺には、敵への対処用に機関銃陣地が構築されていた。

基本的なM2ブローニングからミニガンまで集まったその機関銃陣地は、歩兵や軽装甲の目標の侵入を許さない。

そしてその奥には重装甲目標用の火砲が配置されており、戦車も撃破可能であった。


 夜闇に紛れて奇襲する敵兵を嘲笑うかのように、イレーネ軍の陣地後方からは照明弾が投射された。

放たれた照明弾は進撃する敵兵の上空で炸裂し、辺り一面を昼間のように照らしあげる。

そのため、敵兵の姿ははっきりと見えるようになってしまった。


「どうだ、よく見えるだろう? それでは好きな目標を狙い給え」


「攻撃始め!」


 照らしあげられた敵兵めがけ、配置された機関銃が一斉に火を吹いた。

その弾幕の雨に突進する敵兵はあえなく倒れ、辺りには死体の山がどんどんと築かれていく。

そして歩兵に随伴して進撃してきた戦車もまた、後方の火砲や歩兵の対戦車ミサイルで次々と撃破されていった。


 しばらくすると突進してきていた敵の姿はなくなり、死体の山だけがそこに残った。

最後に陣地周辺の鉄条網まで到達できた敵兵がM2ブローニングにより射殺され、全陣地に向けて突撃してきた敵兵は見事玉砕した。

迎撃を完了したイレーネ軍は、今度はその反撃に打って出た。


「いよいよ今日のうちに決着をつけるぞ! 全軍攻撃開始!」


『Aye Aye ser!』


『Ураааааааа!』


 陣地内に待機していた戦車部隊は進撃を開始、ミットフリートとの距離を縮めていった。

また機関銃を撃っていた兵士も兵装を転換、カービン銃や軽機関銃に持ち替えて戦車や装甲車に随伴して移動を開始した。

また同調するように南部からも攻勢を開始、ミットフリートの命はもはや風前の灯火であった。


「敵の要塞線を突破! どうやら先程の攻勢で兵は使い切ったようです!」


「そのまま敵の市街地へとなだれ込め! 一気に王城を占領するんだ!」


「了解! 城門の破壊は任せてください!」


 先行するM1150 ABV突撃啓開車が城門に突撃、木製のそれはいとも容易く崩れ去った。

そこからなだれるように戦車、装甲車、歩兵戦闘車がミットフリート王都のヴィンターホーフに侵入、同地の制圧を開始した。

ミットフリート側が兵を使い切っていたため制圧は驚くほど簡単に進み、歩兵戦闘車の部隊は王城まで侵入を開始した。


「進め! 進め! 勝利はこの先にあるのだ!」


「王城を占領せよ! そうすれば我々の勝利である!」


 兵士たちは室内を次々と占拠し、尖塔の攻略に移った。

そして一番高い尖塔を攻略し終えた兵士は、その上に掲げられていたミットフリートの国旗を捨て、イレーネ帝国の国旗にすり替えた。

今この瞬間、ミットフリートは陥落したのであった。





 イレーネ軍が王城に進撃を始めた頃。

王城の地下壕に避難した国王たちと防衛隊長との間で作戦会議が行われていた。

とは言ってももう戦える戦力は残されておらず、王城が陥落するのを待つだけであった。


「陛下、もう我が国は持ちません。すでに敵兵は城内の制圧を開始し始めました」


「……そうか、残念だ。防衛隊長、では下がり給え」


「分かりました。……陛下、今までありがとうございました」


「……もはや貴様が何をしようと止めはしない。好きしたまえ」


 そう言ったミットフリート国王は、手にワイングラスを持った。

その中にはワインがなみなみと注がれており、他の生き延びてきた王たちも同じくグラスを持った。

そして彼らは一息つくと、一気に中身を呷った。


「……陛下、おさらばです」


 ワインを呷った国王たちは顔を真っ青にし、泡を吹いて倒れた。

もうその時に意識はなく、既に絶命している状態であった。

防衛隊長は用意しておいた油を彼らの遺体の上に振りまき、そこに火をつけた。


「安らかに眠ってください。……では、私は私のやるべきことを行います」


 そう言った防衛隊長は、地下壕を出て上へと向かったのであった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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