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第291話 ティーチャーメイド

 王都学園との交流了承の知らせはルイにすぐに知らされ、その後あれよあれよと言う間に日程や段取りが決定された。

場所は広さ的にゆとりのある帝国大学が決定され、王都学園の生徒たちは特別手配された橿原丸に乗船してイレーネ島へとやってきた。


 ヘルツブルクで下船した彼らはそのまま列車に乗り、帝国大学前の駅で下車した。

大きな街路樹が植えられたなだらかな坂道を登り、大学の正門をくぐる。

大学内へと入った王都学園生は、まずその大きさ、広さに圧倒された。


 そして校舎自体も宮殿のように壮麗で大規模に建設されているので、自分たちの校舎との違いにも愕然とする。

今回はいち生徒としてやってきたルイもまた、自分たちの校舎との違いを思い知らされた。

彼の心の中には、この帝国大学の校舎以上のものに王都学園を改築しようという野望が浮かんでいた。


 そんな彼らは、帝国大学内の練兵場へと通される。

練兵場には既に訓練のための標的などが用意されており、彼らを迎え入れる準備が整っていた。

既に帝国大学の学生は練兵場に集合しており、彼らを迎え入れた。


「ようこそ、とは言ってもカールは久しぶり、だね」


「今の名前はルイだが……まぁカールで良いだろう」


「なんだか固くなったなぁ。ま、そんなことは置いておいて、今日から数日だがよろしく頼むな」


「あぁ。こちらこそよろしく頼む」


 簡単な挨拶の後に彼らがコミュニケーションを取っていると、帝国大学魔法科教授のメリルが練兵場にやってくる。

彼女がやってきたことを確認した生徒たちは、練兵場のテント下に用意された椅子に座る。

メリルはそのテントの下の演壇の上に立ち、マイクに向かって話し始めた。


「帝国大学の皆さん、おはようございます。王都学園の皆さんは、私を知っている人もいますかね。一応自己紹介をさせていただきます。私の名前はメリル=シュミット。今は帝国大学で魔法を教えていますが、かつては王都学園で魔法を教えていました。今日から数日ですが、よろしくお願いしますね」


「「「「よろしくお願いします」」」」


「良い返事です。では早速授業に入りましょうか……とは言っても今日皆さんに教えるのは私ではありません。今回皆さんに教えてくれるのは、帝国宮殿のメイドの皆さんです!」


 メリルの紹介と同時に、横に待機していたメイドたちが演壇の上に登った。

生徒たちからは、可愛いだの妻にしたいだの様々な声と拍手とともに迎え入れられた。

自分の時にはそんなことはなかったのに……と少しムッとしながらもメリルは話を続ける。


「……コホンッ、では今日からの流れを簡単に説明します。1日目、2日目は新型魔法の実践演習です。新型魔法については正直私よりも全然メイドの皆さんのほうが上手ですのでそちらの指導を受けてください。3日目は王都学園の学園内対抗戦を、帝国大学の生徒とともに行います。優勝者はエキシビジョンマッチに挑戦できますので、ぜひ優勝を狙ってみてください」


「エキシビジョンマッチ? 一体誰が相手なのかしら?」


「さぁ? 検討もつかないな」


(……あぁ、そういうことか)


 生徒たちがエキシビジョンマッチの相手は誰なのか議論している中、ルイは1人合点がいったように頷いた。

彼はかつての学園内対抗戦を観戦しており、その時の優勝ペアを知っていた。

それは俺とグレースのペアであった。


(……でも片方がルフレイさんだったとしてだ、姉さまは今ミトフェーラの宮殿で療養中のはず、誰が一体ペアを……?)


 ひとりで悩むルイだが、その答えは俺の隣に立っていた。


「あっちにいかなくてよかったのか? イズン」


「別に、あの子達で十分でしょう。それにあなたのペアは私だし、最後のお楽しみにとっておいたほうが良いわ」


「にしても俺と君とは……悪いが優勝者はどう頑張っても勝てないベアだろう」


「だからとは言って手を抜くのはNGよ? たまには頂を見せてあげることも大事だわ」


 イズンの本気なんて、俺でも絶対に太刀打ちできないのにな……。

すこし気の毒な気もするが、彼女の言う通りたまには自分たちが目指すべき場所を示してやることも必要だろうな。

そう思っていると、イズンは俺の肩をちょんちょんとつついてきた?


「? どうしたんだ?」


「あなたも練習するのよ。私が付き合ってあげるわ」


「いや、でも執務が……」


「執務ならグデーリアンに代わりにやっておてもらうようお願いしておいたわ。あなたも練習したとはいえ大した量やったわけじゃないし、失敗したら恥ずかしいでしょう」


 イズンはそう言って、俺の服の裾を引いてあるき出す。

その後俺は彼女によって、宮殿裏の庭園でみっちり新型魔法を叩き込まれた。

お陰で今まで使えるようになったものに加えて、さらに2つ使えるようになった。


 そうこうしているうちに練習の2日間は過ぎ去り、いよいよ対抗戦を明日に控えるのみとなった。

生徒たちは対抗戦に向けて最後の調整に入り、その練習は深夜まで続いた。

その裏では、生徒たちのチーム分けのくじ引きが行われていた。





 怒涛の練習の2日間が終わり、生徒たちはいよいよ対抗戦に望まんと意気込んでいた。

彼らの目標は勿論の事優勝すること、その上でエキシビジョンマッチにも勝とうと目論んでいる。

ルイもそれは同じであり、彼もまた密かに優勝を狙っていた。


 そのうえで何よりも大事であるのは、組むペアが誰であるかである。

ルイはどうにか良い人と組めますようにと祈りながら掲示されている名簿を見る。

その名簿に載っている自分の名前とペアを見たルイは愕然とした。


「さ、サイトカイン嬢か……これは……」


「あら陛下、ごきげんよう。どうやら私たち、同じベアのようですわね」


「あぁ、そうだ。共に頑張ろうじゃないか」


「お硬いこと。まぁ良いですわ。改めて、こちらこそよろしくお願いしますわ」


 ルイは、ニッコリと笑うサイトカインの娘を見て、少し複雑な気持ちを抱いていた。

自分が格下げした貴族の娘、それに反ルイ派の中心的人物の娘である彼女が自分に対して何らかの恨みでも持っているのではないかと心配しているのであった。

だがそんな事を気にしていては何も始まらないと、ルイは気持ちを切り替えて対抗戦に望むのであった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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