第287話 新型魔法演習
各地の巡行を終えたルイは、早速政務へと取り掛かった。
まず行われたのは、王都の空き地に強制的に邸宅を造成させる、いわば天下普請であった。
これは彼の考えている一種の参勤交代制度の始まりであり、目的は各貴族の財力を削ることと、いつでもルイの監視下におけるようにすることにあった。
そして建造物の規模や装飾はその家の爵位によってあらかじめ決められており、その基準を満たす設計図を提出しなければならなかった。
ただし辺境伯のみは例外であり、普請の義務は負わなかった。
そうして建築が始まった邸宅であったが、それはルイの狙い通り貴族の財力を削ぐこととなる。
だがその分の出費を賄うために貴族が各領地で増税を行う可能性もあった。
そのためルイは対策として、増税に際してはあらかじめ中央に届け出るよう仕組みを変更した。
届け出が受理されない限り増税は行えず、また無理な増税が起こることの防止にもつながった。
そしてルイの変更内容はまだまだ多岐にわたった。
先の巡行にてサイトカインのような問題ありとされた貴族は爵位を下げられ、また好感をもった貴族の爵位は挙げられた。
この急な爵位の変動は、貴族の間での対立を生み出す。
この変動は財務卿と軍務卿の爵位にも及んだ。
彼らは共に宮中公に叙され、最高位の貴族へと昇格した。
特にグレースの反乱以降子爵まで格下げされた財務卿にとって、この昇格は返り咲きとも言えるものであった。
「よろしいのですか陛下。私がこのような爵位をいただきまして……」
「構わん。朕はその名に恥じぬ働きをすることを期待する」
「はっ。謹んでお受けいたします」
宮中公として名実ともに国の中心に返り咲いた財務卿は、早速改革に着手していた。
まずはグダグダになっていたスタンピードでの戦傷者への見舞金の拠出を行った。
これはルイたっての願いであった。
「陛下、失礼いたします」
「なんだ軍務卿」
「先ほど魔導書の写本がイレーネ島より届きましたのでご覧に入れたいと思いまして」
「了解した。すぐに行こう」
ルイは玉座を立ち上がり、届いた魔導書の視察へと向かった。
彼の向かった王城の大広間には、数多の魔導書が乱雑に置かれていた。
届いた魔導書は数があまりにも多すぎ、短時間では整理しきることが出来なかったのだ。
「あっ、国王陛下! 申し訳ございません。あまりにも数が多すぎて……」
「よい。それよりもここにある魔導書の一覧のようなものはあるか?」
「はい。こちらに」
「うむ……なるほど、ではこの『応用魔法・初級』というのを持ってきてくれ」
「わかりました。今すぐ」
魔導書の整理をしていた使用人は、その山の中から目的の本を探し出した。
彼はその本をルイに渡し、受け取った彼は本を開く。
本の中には原版から翻訳されている以外は内容は全く一緒であった。
「……軍務卿よ、朕は間違っていたのかもしれない」
「何がでしょうか陛下?」
「この魔法だ。サイトカイン子爵の言っていたことはあながち間違いではないかもしれないぞ」
「……少し見せていただいともよろしいでしょうか?」
軍務卿はルイから魔導書を受け取り、中身をよく読む。
そこには威力や魔法の発動方法などの様々な事に関する基礎知識が書かれていたが、どれもこの時代の魔法理論にとっては革新的な内容ばかりであった。
だが同時にそれはあまりにも革新的な内容であり、従来の魔法理論では対応できないものであった。
そのためこれを普及させるには根底からの改革が必要であり、またそのための教育機関の設立が必要であった。
もとより王都学院の制度に疑問を持っていたルイは、これを口実に改革を断行することにした。
「財務卿、軍務卿。朕はかねてよりの望みであった学園の改革に着手するぞ。まずは朕の母校であった帝国大学との連携を行いたい。すぐに書面を作成せよ」
「はっ。すぐに」
その後、財務卿の作成した書類は、イレーネ島の宮殿執務室へと届くことになる。
◇
――時間は少し遡る。
イレーネ島の帝国宮殿では、翻訳された魔導書を参考に訓練が行われていた。
ただ指導できる人間はおらず、代わりになんとイズンが直接の教鞭を振るうこととなった。
彼女はまずは宮殿内のメイドたちに、新しい魔法の技術を教えることとしていた。
「どうだい、上手くいっているか?」
「あらルフレイ。心配しなくても大丈夫よ、上手くいっているわ」
「そうか、それは良かった」
「変な先入観がないからこそ柔軟に理解が出来ているのね。ほら、見せてあげなさい」
イズンは中庭で練習しているメイドたちに手を振って合図を送る。
合図と共に彼女らは杖を構え、イズンが再び合図を送るときを待つ。
イズンは準備が終わったことを確認すると、あげていた手をおろして合図を送った。
「「「「灼熱を放つ魔法!!」」」」
彼女らがそう唱えると同時に、杖の先端から強烈な炎が放たれた。
放たれた魔法はまっすぐに突き進み、置かれていた的に命中する。
それと同時に彼女らは次々に魔法を放ち始めた。
「水流を生み出す魔法!」
「光の矢を放つ魔法!」
「暗黒を生み出す魔法!」
「光を力に変換する魔法!」
メイドたちは休む暇もなく魔法を放ち続け、置かれていた的はいつしか粉々に破壊されていた。
そしてこれを見て感じたが、やはり魔法の威力は従来使われていたものよりも断然上のようだ。
今まで教えられてきたものがなんであったのか、疑問が持たれるほどであった。
「良くこんな短時間でここまで育成できたな」
「その理由は彼女たちが素直だったからに尽きるわ。良いメイドを持ったわね」
「本当だよな。あぁ、それと耳に入れておきたいことがあったんだ。じつは――」
「――分かったわ。その時になったら私も立ち会いましょう」
俺はイズンにそれだけを耳打ちした後、再びメイドたちの練習へと目を向ける。
だが俺とイズンの顔は、少しこわばっていた。
◇
ガタン、ゴトン……ガタン、ゴトン……
工廠をゆっくりと出発する、濃緑色の列車。
25両もの長大編成で出発したこの列車は、島の北方に建設された列車庫へと向かう。
その列車には――RT-23大陸間弾道ミサイルが搭載されていた。
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