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【一次選考通過!】異世界司令官〜【統帥】スキルで召喚されし無敵の帝国軍よ、誇り高き軍旗とともに前進せよ!〜  作者: あるてみす
第7章

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第279話 結婚式の準備

 凱旋式が終わり、俺は晴れてイレーネ島へと帰還した。

パレード等は特に行わず、俺は帝国宮殿の執務室の椅子にゆったりと腰掛ける。

するといつもの聞き慣れた扉を叩く音が聞こえてきた。


 コンコン


「どうぞ」


「御主人様、失礼します」


 扉が開く音とともに、紅茶を持ったオリビアが部屋へと入ってくる。

彼女は机の上に紅茶を置き、同時に紙をすっとおいた。

俺は紅茶の入ったカップを口へと運ぶ傍ら、置かれた紙を手に取った。


「なになに……結婚の許可申請状?」


「えぇ。病院を退院して一緒に暮らしているクラウディアさんとテイラーさんが近々結婚することを考えているそうで、その結婚に関する許可を求めているようです」


「結婚は個人の勝手であると思うが……だが召喚されて永遠の忠誠を誓っている以上、結婚にも許可が必要と判断したのかもしれないな」


 俺は立ち上がり、書斎机の上においてあるペンを取る。

そして書類をもう一度見直した後、そこにサインを行った。

下には小さく祝福の言葉を書き添え、印鑑を押して封筒に入れたうえで印籠にて封を施した。


「これを送り返してくれ」


「わかりました。すぐに送らせましょう」


「あぁ、それと参加者はどうするんだ? もう誰か呼んであるのか聞いてくれ」


「それに関してはグデーリアン上級大将の執り成しで新婦の家族及び村の面々が、新郎からは部隊の同僚が参加すると聞いています」


 グデーリアンが既に手を回しているのか……手際が良いな。

ならばなおさら拒否する理由もないであろう。

……そうだ、俺も結婚式に参加しよう。


 俺は机の引き出しから紙を取り出し、その上に自分も結婚式に参加したい意思を綴った。

こちらも同じく封筒に入れて印籠で封を施し、オリビアに預ける。

彼女はそれを受け取ると部屋を出ていき、手紙の配送を依頼しに行った。


 俺がこの式に参加しようと思ったのは、単なる好奇心ではない。

いずれは行わなければならない結婚式に向けて、結婚式というものを客の立場から俯瞰してみようと思ったのだ。

そのためにはおそらく結婚式の会場となるであろう帝都の大聖堂を使っての結婚式がふさわしいであろう。


 俺は机の上の黒電話の受話器を取り、電話番号を入力して電話をかける。

今、実験をかねてイレーネ島には電話線が曳かれており、大聖堂ともつながっていた。

電話をかけて数度呼び出し音がなったあと、電話にミラが出た。


「もしもしミラ、今大丈夫かい?」


「ルフレイじゃない、何か用かしら?」


「あぁ。今度大聖堂を結婚式の会場として借り上げたいのだが」


「け、結婚式!? それってあなたの……!?」


 非常に狼狽するミラを何とか落ち着かせ、俺ではなくテイラーの結婚式であると伝える。

それを聞いた彼女は納得し、大聖堂を任意の日に貸すことを約束した。

式場の予約を取り付けた俺は、今度は料理などの用意をしようと思ったが、そこで思いとどまった。


(これは2人の結婚式であり、俺の結婚式ではない……俺がここまで用意するのは間違いだな)


 その事実に気がついた俺は、一旦食料調達などの行動を起こすことを止めた。

だが自分の配下の兵であったこともあり、何かをしてあげたいという気持ちは山々であった。

そのため俺は、自らの足でテイラーに会いに行くことにした。





 グロッサー770を運転して俺はテイラーの妻となるクラディアの入院する病院へと移動した。

病院についた俺はクラウディアの入院する病室へと案内してもらい、中へと入れてもらう。

中に入ると案の定、テイラーが病床の隣りに座っていた。


「久しぶりだなテイラー。あれからどうだ?」


「司令! どうしてこんなところに、もしかしてあの手紙、もう読んだのですか?」


「あぁ、読まさせてもらった。後から書面で送らせてもらうが、ひとまずここで祝意を示したい。おめでとう」


「! ありがとうございます!」


 テイラーはそう言うと、膝を折って俺に頭を下げてきた。

結婚は個人の自由意志であり俺が許可不許可を与える次点でおかしなことではあるが、まぁ彼が喜んでいるんだし別にいいか。

俺は持ってきた花を花瓶に差す時、クラウディアが眠っていることに気がついた。


「! ねていたのか。ここで話すと起こしてしまうかもしれないから、一旦外に出ようか」


「そうですね。そうしましょう」


 俺たちはそっと病室を出て、外の休憩室に腰を落ち着ける。

休憩室で俺はテイラーの顔をじっと見つめた。

彼は平静を装っているようであるが、嬉しい気持ちが溢れ出している。


「? 私の顔になにか付いていますか?」


「……いや、何も。それよりも俺がここに来たのは、ひとつお願いしたいことがあるんだ。これはテイラー、君にしか頼むことが出来ない」


「私にしか頼めないこと……ですか?」


「そうだ。どうか俺に君たちの結婚式の手伝いをさせてほしいのだ」


 テイラーは俺の頼み事がよく理解できていないようだ。

結婚式の手伝いをするという行為自体は別に変なことでもなんでもないだろう。

それ故に彼は何故そこまで頼み込むのかと不思議に思っていたのだ。


「その、もちろん折角の結婚式を盛り上げたいという気持ちが第一だ。だがその上で、少し自分勝手な理由だが言ってもいいか?」


「自分勝手な理由? えぇ、どうぞ」


「実はこの結婚式を、将来行われるであろう俺の結婚式のリハーサルとしたいんだ。そのためにできる限り本番を想定した豪華な結婚式としたいと考えている」


「……なるほど、そういう理由でしたらいくらでも協力しましょう。クラウディアもきっと喜ぶはずです。それに2人で何とかできる限り豪華なものにしようと話し合っていましたし、それを助けていただけるのであれば大歓迎です」


 俺の頼みに意味を理解したテイラーは、すぐに賛同してくれた。

彼とクラウディアは元々結婚式をできる限り盛大にしようと考えていたようで、今回の申し出は願ってもないことであったらしい。

それを聞いた俺は安堵した。


「じゃあ日程などはそちらで決めてくれ。その日時に会場を取るから」


「わかりました。何もかもありがとうございます」


「いや、構わないさ。それと、これを……」


 俺は手に持っていたカバンから小さな小瓶を出してテイラーに渡す。

彼はそれが何なのか理解できず、首を傾げながらこちらを見てきた。

そんな彼に俺は一言言った。


「それは魔法の薬、夢を叶える薬さ。結婚式の直前に新婦に飲ませてあげると良い」


「そうなんですね。ではありがたく頂戴します」


 テイラーは恭しく小瓶を受け取った。

あれは研究目的に追加で買ったポーションであり、効くかどうかはわからないが、もしかしたら彼女の足になにかいい影響を与えるのではないかと思って用意しておいたのだ。


 俺はその後再びグロッサー770で宮殿へと戻り、各地へと物資調達のための連絡を取った。

その結果、結婚式はかなり壮大なものになることが予想された。

その後、結婚式への準備は着々と進んでいく……。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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