表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一次選考通過!】異世界司令官〜【統帥】スキルで召喚されし無敵の帝国軍よ、誇り高き軍旗とともに前進せよ!〜  作者: あるてみす
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

154/476

第153話 歌え、歓喜の歌を! 讃えよ、神の歌を!

 クラウスは指揮棒を持って音楽隊の前に立つ。

するとそのとき、突然部屋をまばゆい光が満たした。

俺達はその輝きに思わず目を閉じる。


「なんだ、何が起こったのだ!」


 光が収まったので、俺は目を開く。

するとそこには、居ないはずの人間がいた。

彼らは皆それぞれの楽器を持ち、そして顔は隠されている。


「君たちは……」


 俺は呼んだ覚えのない彼らに困惑する。

だが彼らは何も答えず、ただそこに立っていた。

そんな状況をただ1人、クラウスだけが直感で理解したようで、彼は手に持つ指揮棒を振った。


 ” Freude!”  ” Freude!”

 『歓喜よ!』 『歓喜よ!』


 ” Freude!”  ” Freude!”

 『歓喜よ!』 『歓喜よ!』


 "Freude, schöner Götterfunken,Tochter aus Elysium

  Wir betreten feuertrunken.Himmlische, dein Heiligtum!"

 『歓喜よ、神々の麗しき霊感よ 天上楽園の乙女よ

  我々は火のように酔いしれて 崇高なる者よ、汝の聖所に入る』


 彼の指揮通りに演奏が始まった。

驚くべきことに、顔を隠した集団は一度も合わせて練習したことがないにも関わらず完璧に演奏をこなしている。

それに本来はいないはずの合唱をする人までいるのだから驚きだ。


 "Deine Zauber binden wieder,Was die Mode streng geteilt;

  Alle Menschen werden Brüder,Wo dein sanfter Flügel weilt."

 『汝が魔力は再び結び合わせる 時流が強く切り離したものを

 すべての人々は兄弟となる 汝の柔らかな翼が留まる所で』


 俺は【言語適応】があるので意味を理解できるが、他の人は何を言っているのかよく分かっていない。

だがこの歌が確かに神聖なものであることは肌で感じていた。

そして彼らは歓喜の歌に酔いしれ、夢中になっていた。


 ”Wem der große Wurf gelungen,Eines Freundes Freund zu sein,

  Wer ein holdes Weib errungen,Mische seinen Jubel ein!”

 『ひとりの友の友となるという 大きな成功を勝ち取った者

 心優しき妻を得た者は 自身の歓喜の声を合わせよ!』


 その瞬間、窓から日光が差し込んでくる。

先程まで空一面が雲に覆われていたのに、こんなにも急に晴れてくるものなのだろうか。

俺は思わず窓辺に移動して、そこから空を覗いた。


「!」


 ”Ja, wer auch nur eine Seele Sein nennt auf dem Erdenrund!

  Und wer's nie gekonnt, der stehle Weinend sich aus diesem Bund!”

 『そうだ、地球上にただ一人だけでも 心を分かち合う魂があると言える者も歓呼せよ!

  そしてそれがどうしてもできなかった者は この輪から泣く泣く立ち去るがよい!』


「空が……割れている……」


 ”Ja, wer auch nur eine Seele Sein nennt auf dem Erdenrund!

  Und wer's nie gekonnt, der stehle Weinend sich aus diesem Bund!”

 『そうだ、地球上にただ一人だけでも 心を分かち合う魂があると言える者も歓呼せよ!

  そしてそれがどうしてもできなかった者は この輪から泣く泣く立ち去るがよい!』


 空を見ると、あれほどあった雲がこの宮殿を中心として円形に消滅していた。

そしてその間からは日光が柱のように海面へと降りていく。

ヴィロンたちもその異常さに気がついたのか、窓辺によってきた。


 ”Freude trinken alle Wesen An den Brüsten der Natur;

  Alle Guten, alle Bösen Folgen ihrer Rosenspur.”

 『すべての存在は 自然の乳房から歓喜を飲み

  すべての善人もすべての悪人も 自然がつけた薔薇の路をたどる』


「これはこれは、たまげたなぁ……」


 べオルトが空を見てそうつぶやく。

他の者達はその光景に圧倒されて言葉も出ていなかった。

そんな驚く俺たちの後ろで演奏は続けられる。


 ”Küsse gab sie uns und Reben,Einen Freund, geprüft im Tod;

  Wollust ward dem Wurm gegeben,und der Cherub steht vor Gott.”

 『自然は口づけと葡萄の木と 死の試練を受けた友を与えてくれた

  快楽は虫けらのような者にも与えられ 智天使ケルビムは神の前に立つ』


 ぽっかりと開いた雲の穴が光り始める。

何が起こったのかと思っていると、そこからは環状の虹がゆっくりと降りてきた。

それも1つではなく、全部で6つの虹の輪っかが同心円状に並んだ。


 「これが神の使徒の治める国、神の導き……我々には到底……」


 ”Küsse gab sie uns und Reben,Einen Freund, geprüft im Tod;

  Wollust ward dem Wurm gegeben,und der Cherub steht vor Gott!”

 『自然は口づけと葡萄の木と 死の試練を受けた友を与えてくれた

  快楽は虫けらのような者にも与えられ 智天使ケルビムは神の前に立つ!』


 空に現れる虹を見たユリウスが膝から崩れ落ちる。

それに続いてべオルトとヴィロンも崩れ落ちた。

軍務卿だけは唯一立ったままだったが、その額からは冷や汗が流れ落ちていた。


 ”und der Cherub steht vor Gott!”

 『智天使ケルビムは神の前に立つ!』


 ”steht vor Gott!”

 『神の前に立つ!』


 虹の輪っかの中心に文様が浮かび上がる。

十二枚の羽、イズンを、創造神を象徴するものだ。

その様子をべオルトらは膝を折りながらも、泣きそうになりながらも、ただ目に焼き付けていた。


 ”vor Gott!”

 『神の前に!』


 これを最後に、演奏は終了した。

俺ははっと我に返り、演奏者たちの方を振り向く。

すると顔を隠した彼らは、光りに包まれながら消えようとしていた。


「まて、君たちは一体どこから!?」


 俺は消えゆく彼らにそう問いかける。

すると1人が笑ったように口角を上げた。

いや、実際にそれは見えていない、だが俺はただそう感じたのだ。


「……シャングリラ(理想郷)より。愛を込めて」


 そうとだけ答えて、彼らは光の粒子と化した。

そこに先程までいたはずの彼らはもういない。

クラウスたちもまた一連のことに驚いていた。


「クラウス、彼らは何も喋っていなかったがなぜ指揮棒を振らねばと思ったんだい?」


「はい。特に何か言われたりしたわけではないのですが、私は気がつけば指揮棒を振っていました。まるでそうすることが当たり前のように、定められた運命であるように」


 ……こんな事ができるのはイズン唯一人しかいないな。

当の本人は先程から変わらない場所に無表情で立ち尽くしている。

この会議が終わったら理由を聞こう、と俺は思った。

最後まで読んでいただきありがとうございました!



私事ですが、どうやら風邪をひいてしまったようで体調が優れません。

投稿に支障はないと思いますが、もしも悪化した場合普段通り投稿できない可能性があります。

毎日楽しみにしてくださっている方には申し訳ないのですが、そうなる可能性があるということはあらかじめお伝えさせていただきます。

その時には後日複数話投稿するなどで対応させていただくつもりです。

皆様もどうかお体には気をつけてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ