方針(前編)
この後どうするか話合うため、百物語を行った教室まで引き返して来た。
だが、誰一人として声を発する人はいない。
実際に怪異に出くわした明美は、普段では考えられないほど弱々しくなっている。
沈黙に耐えかねたのか、恐る恐る卓海が口を開いた。
「すまん。どうしても確認しておきたいことがある。」
他の5人が卓海に顔を向ける。
「赤紙青紙って、何だ?」
本当にわからないという具合に尋ねる。
夏美を除いた4人が脱力する。
百物語の最中に話題に出たにも関わらず忘れたらしい。
少し気まずそうに顔を逸らす。
ちなみ夏美は卓海側だ。
夏美の場合は怖がって耳を塞いでいたからだが・・・。
「僕が説明するよ。」
亜矢が説明係を買って出る。
「赤紙青紙っていうのは学校の怪談によくある話の一つだよ。トイレの個室に入ったときにどこからともなく『赤い紙と青い紙どっちがいい?』って聞かれるんだ。」
「俺なら赤だな。」
何もしらない卓海は好きな方の色を答える。
「それだと体中を傷だらけにされて、血で真っ赤にされて殺されちゃうよ。」
「んな!?なら青だ!」
「それだと今度は体中から血を抜かれて真っ青にされて殺される。」
「じゃあ結局殺されるんじゃねぇか!」
「そうなんだけど、この場合はそのどちらとも違う色を答えるか、何も言わないことで回避できるっていうのがお約束みたいだよ?地域によっては聞かれた時点でアウトらしいけど。」
「そうなのか・・・。怖えな。」
「そうだね。明美と違って卓海は確実に殺されちゃってたってところとかね。」
「達也!嫌なこと言うなよ!!」
「ごめんごめん。でも、事実だよ。」
「そうだけどよー・・・。」
「で、でも、明美が無事が無事で良かったよ・・・。」
夏美は泣きそうになりながら明美にしがみついている。
明美は相変わらず青い顔をしている。
「夏美・・・。・・・ごめんね。」
そう呟くと明美は夏美を抱きしめる。
「んなことより、これからどうするか考えた方がいいんじゃねぇのか?」
雅人がそう切り出すことで場の空気が入れ替わった。
明美は青い顔を上げると厳しい表情で同意する。
怪異に触れた本人だからだろう。
その眼はとても真剣だった。